その2.経済力

 「軍資金」という言葉がある様に、戦いには金が掛る。もっとも、何かをしようとすれば大抵のことに金が掛るのがこのJAPANと云う国なのだが………。
 ともあれ、仮面ライダーズの戦いもまた資金を必要としたケースは見受けられる。いの一番に挙げられるのは「少年ライダー隊」の運営であろう。
 まだ小学生でしかない隊員達を雇っていないにしても、制服を始め様々な支給品を用意し、本部にライダーガールズを常駐させ、FBIやインターポールやアンチショッカー同盟といった世界的組織や世界でも屈指の科学者達とある程度の交流を持つことを考えただけでも莫大な資金が掛りそうである。
 だが、作中において立花藤兵衛が金銭で頭を悩ませていた様子はなかった。本当に金銭的に問題がなかったのなら、藤兵衛経済力はそれだけで頼もしい戦力と云えるのだが……………。
◆どれだけの資金を必要としたのだろうか?
 前述した様に、原作での立花藤兵衛は本郷家の執事で、猛自身が亡き両親から莫大な遺産―最新鋭のコンピュータールームをあっさり増築出来た程―を相続し、それを藤兵衛が管理していたから金銭に困ることはなかったが、肝心のTV版ではどんな経済力が窺えるだろうか?
 勿論どんな莫大な資金・財産も瞬時に消滅させるのは可能だ(笑)。それを云い出せば切りがないので、まずは必要経費を考えてみたい。

 まず『仮面ライダー』から『仮面ライダーストロンガー』まで共通して最低限必要と思われるのは以下の通りである。
 ○ライダー達の生活
 ○無線を始めとする通信機器及び運用費用
 ○ハイスペックマシーンをメンテナンス出来るだけの設備・備品に関する費用。
 ○ジープの維持費


 では1つ1つ検証したいが、まず第1の「ライダー達の生活」だが、仮面ライダー1号から仮面ストロンガーまでライダー達に就職していた様子は見られない
 勿論、「世界の平和を守る」という「仕事」はきっちりこなしてくれたが、所謂「生業」としての就業はこれっぽっちも見られない。となると、藤兵衛は彼等の生活を支えていた可能性も高い。
 勿論、働いていないことを責める気はない。そもそもこの文章を綴っている時点(2014年6月28日)、うちの道場主は無職…………ぐええええぇぇぇぇぇぇぇ……(←道場主のギロチン・チョークを喰らっている)。
 ゲホゲホ……真面目な話、本郷猛・風見志郎・神敬介・城茂(荒木茂)は城北大学(または城南大学)や沖縄の水産大学の学生で、アマゾンは密航者(?)のまま悪の組織との戦いに巻き込まれ、就業どころではなかっただろう。
 例外は一文字隼人と結城丈二(山口暁)で、前者はカメラマンという職にあり、後者はデストロンに所属して一般社会の外にいた。それゆえ真面目に職業について論じる対象となるのは一文字だけなのだが、「フリーのカメラマン」だったので、自営業に近い。恐らくショッカーによって仮面ライダー2号に改造された後は充分な収入を得られる程にカメラマン業に精を出せなかった(まあカメラを1台しか所持してないからどこまで本業に精を出していたか怪しいが)。

 いずれにせよ、立花藤兵衛成人1人が生活するのに必要な経費を捻出する必要を背負っていた可能性が高い。

 続いて第2の「無線を始めとする通信機器及び運用費用」だが、居住地兼基地としていた場所には少年仮面ライダー隊やFBIやICPOやアンチショッカー同盟とも連絡を取り合える通信設備を持ち込んでいた点に注目して頂きたい。
 機器そのものは一度持ち込めばそれでいい物なので、場合によっては滝辺りを仲介としてFBI等から「協力者への貸与」とされたことも考えられるが、それらの機器を動かす電気代・通信費は馬鹿にならなかっただろう(携帯電話も一般に普及してから数年は通話料が馬鹿高かったのを思い出して頂きたい)。

 更に第3の「ハイスペックマシーンをメンテナンス出来るだけの設備・備品に関する費用」が出て来る。個人の技術面で最も藤兵衛がライダー達の力となったのはバイクの製造・改造・メンテナンスだが、この経費も高くついた筈だ。
 明らかに藤兵衛の手によって製造されたマシーンとしては改造サイクロン・ジャングラーが挙げられるが、ハイスペックマシーンは製造は勿論、単純な部品交換でも時として高価な品を必要とした可能性は充分にある。
 作中、藤兵衛の手が加えられた様子の見えないハリケーン・クルーザー・カブトローも、藤兵衛の性格や、悪の組織との戦いにおける用心から藤兵衛のメンテナンスを受けていてしかるべきだろうし、予備部品の備蓄まで考えるとこれまた頭の痛い経費であっただろう。

 最後に忘れてはいけないのが「ジープの維持費」で、これは当然立花藤兵衛愛用ジープ(SUZUKIのジムニー)の維持費を意味する。単純に車検・ガソリン代・消耗部品代だけでも4年分は消費した筈である。一応、一度も壊されてはいない様ではあるから大掛かりな修理費は必要としていないと思うが。

 シルバータイタンは実際にそんな運営を行ったことがないのでいくら掛るか試算出来ないが、少なくとも特撮房立ち上げ時のシルバータイタンの月給(←手取り20万円を割っていた)では絶対不可能なことだけは分かる(苦笑)。

 これらに付け加えとして、下記の様な経費も必要とした筈である(作品による相違有り)
 ○下部組織の運営
 ○ベース・隠れ蓑となる店舗の経営
 ○世界組織・著名人との交流

 「下部組織の運営」は少年ライダー隊のことである。隊員一人一人に(恥ずかしい)帽子・制服(夏・冬有り)・通信ペンダント・伝書鳩を配布し、維持していたのである。
 少年仮面ライダー隊の隊員がどれぐらいいたかは不詳だが、丹沢地区の隊員がゲルショッカーに丸ごと乗っ取られた際には20名程いて、夏合宿を行った際には50名程いて、更にはデストロン四国占領作戦の動きを察知した際には近畿・中国・四国・東海地方にも相応の数の隊員がいたことが想定される。推定で全国に500名いたかも知れない。
 勿論子供達から金は取っていないだろう。少年仮面ライダー隊は子供達の親からすれば「参加して欲しくない組織」で、参加を認めていた親は余程正義心に燃えているか、悪の組織の存在を信じていない親ぐらいで、「必要経費を払え」なんて云った日には即刻除隊されるだろうから(苦笑)。
 うーん………夏合宿一回だけで大変な経費だな……………。

 続く「ベース・隠れ蓑となる店舗の経営」とは、『仮面ライダー』における喫茶店・Amigo立花レーシングクラブ『仮面ライダーV3』におけるスポーツ用品店・セントラルスポーツ『仮面ライダーX』における喫茶店COL、のことである。
 仮面ライダー達とその仲間達が出入りし、交流・会談・報連相を行う場であり、場合によっては悪の組織の目を欺いて一般社会に紛れる為の場だが、最終的に機密は全く守られていなかった(笑)。
 当然、これらの店舗の運営資金も必要となる。商売が繁盛すれば逆に資金を生み出すもとともなるのだが、悪の組織の襲撃で来客に危害が及ぶことを懸念すれば余り商売繁盛し過ぎるのも歓迎出来ないのが辛いところである(実際、『仮面ライダーX』の第14話ではCOLに来ていた数名の客が狂い虫の犠牲になった)。

 最後の「世界組織・著名人との交流」だが、これは回数も多くないし、場合によっては必要な経費は外部支援が得られるかも知れない。だが、そんな名士達を空港等まで出迎えたり、礼儀を守る最低限の体裁を整えたりする費用は必要だろう。

 以上の経費がどれだけ必要になるかはさすがに試算する術を知らない。たが、これはかなり甘く見積もっており、立花藤兵衛に求められる最低限の経済力であることを認識して頂きたい。
 そして藤兵衛が発揮した経済力には、もっと恐ろしい下記の様な実例があるのである。



◆新規事業を即座に
 時として「マスター」と呼ばれることもあった立花藤兵衛には「店主」としての顔があるが、当然、それららの店舗を構えるには費用が掛る。
 特に注目すべきは『仮面ライダーV3』で経営していたセントラルスポーツである。

 このスポーツ用品店がその姿を世間に現したのは同作品の第3話においてのことである。
 第1話の終盤で藤兵衛はデストロンのハサミジャガーの襲撃を受けたが、その際少年仮面ライダー隊本部は地中に埋没した。これが僅か2週間後には地下に秘密通信基地を持つスポーツ用品店に早変わりしていたのである。
 勿論「2週間」とうのは放映日を参考としたもので、第2話で行方を発った本郷猛・一文字隼人を偲んで海に花束を投げた時点で風見志郎が店の新築を全く知らなかったところからもっと短い時間で新築された可能性もある。
 それも「所定の位置にボーリング玉を置いて、ペンダントに反射する光を当てないと扉が開かない」という当時としてはかなりハイテクなセキュリティーを備えていたのだから、地下室は埋没した建物を使ったとしてもかなりの改築・新築費用が掛った筈である(勿論品揃えのための費用も大きい)。
 仮にこの経費が借金だったとしても、滝和也がアメリカに去った後で、後にはICPOとも交流を持った立花藤兵衛ではあったが、そこまでのコネがあったとは考え難い。
 もしかすると過去に何がしかの財を成していたのだろうか?



◆バイク2台をあっさり購入
 正義と平和を守る仮面ライダーをサポートする為、立花藤兵衛は多くの人々の戦闘(または中心)に立って行動し、時には数々の必要な物資を取り揃え、支給した。少年仮面ライダー隊員達への支給はその代表的なものだが、シルバータイタンが個人的に思うのが『仮面ライダーアマゾン』の第3話での話である。
 新たに邂逅した仮面ライダーであるアマゾンが言語を話せないことに困惑しつつも、カマキリ獣人の襲撃から命を救われた御礼と、ニューカマーの戦力アップを期して藤兵衛はアマゾンにバイクをプレゼントせんとした。
 これだけで太っ腹である(笑)。

 ところが、事前にバイクに対して見慣れなさと騒音から嫌悪感を抱いていたアマゾンはバイクを持ち上げるや海中に放り込んでしまった!
 唖然としながら「こりゃあ今までの仮面ライダーとはだいぶ違うぞ……。」と呟いた藤兵衛だったが、一笑すると、「こんな事もあろうかと思ってもう1台用意していたんだ!」と云ってもう1台のバイクを披露したのだから恐れ入った。「こんな事もあろうかと思って」って、本当か?藤兵衛さん!?

 まあ確かにそう考えなければ2台も用意する必然性は無いので、2台あったと云うことは本当にそういう想定をしていたことになるのだろう(勿論バイク自体は1台のバイクを使用しての撮影とは思うが)。丸でフィクションだ(笑)。
 いずれにしても中古バイクの購入に四苦八苦し、それが壊れた後10年以上バイクを再購入していないシルバータイタンには瞬時に2台も用意出来る経済力は羨ましい限りである(苦笑)。

 「世の中金がすべて」という物の考え方は好きじゃないし、金が無ければ悪と戦えないと思いたくないが、ストーリー的に立花藤兵衛が相当な経済力を持っていて、それが悪の組織と戦う武器となっていたのは間違いあるまい。
 余談だが、悪の組織に積極的に協力した科学者の中には、悪の組織から提供された莫大な研究資金に眼を眩ませた者も多数いたことが想像に難くない。経済力は確かに戦力だが、その他の戦力同様悪、悪用は怖いのもまた同様である。


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令和三(2021)年六月一〇日 最終更新