Drei.「博士」達に対するGODの態度
GODに限らず、悪の秘密結社は科学力・科学者を重視する。
何せ、世の中にその存在を伏せた上で世界を征服する力を持つのだから、人海戦術に頼るのは限界がある。それゆえ、悪の組織は世界的権威の博士達を時に拉致し、時に懐柔し、時に理想を共有し、時に脅迫して、一般社会を遥かに凌駕する技術力・科学力・人材力を戦力とする。
勿論、GODも例外ではないどころか、全35話を通じて、様々なタイプの博士が登場した。
登場した様々な博士達は、専攻分野も、性格も、GODとの関係も様々だった(って、当たり前か……)。
博士の一人一人に関しては、頁「Ein」と頁「Zwei」を参照頂くとして、この頁「Drei」では「GODが『博士』という存在をどの様に見ていたか?」を考察したい。
まずGODと博士達との関係(対象・接し方)を箇条書きすれば以下の通りになる。
- 物理学者が多い。
- 城北大学教授が多い(笑)。
- 従属するにせよ、拒否するにせよ、死の覚悟が必要。
- 脅迫を初め、高圧的な勧誘・服従強要が多い。
- 自発的な協力者には莫大な研究も支払っている。
- 協力者達はアポロガイストや怪人達ともタメ口。
- 協力者達は手柄的に自分が優遇されて当然と持っている節がある。
- 身の危険は、家族や友人・知人のみならず、チョットした訪問者にまで及ぶ。
- 仲間や協力者であっても、基本的に信用していない。
この様に書き出して考察すると、改めてGODが悪の組織であることと、技術力・科学力の独占にこだわっているのが伺える。
神啓太郎教授を初め、GODへの勧誘(含む脅迫)を受けた博士は数知れない。勿論拒否すれば「死あるのみ」だが、協力したところで身の安全は怪しい。
一見、自発的であれ、不承不承であれ、協力する博士には資金(例:宮本博士・川上博士の研究費)や待遇(南原博士には専用の休憩室まであった)面で手厚く見えるが、青田博士や宮本博士や南原博士の例を見ても、「用済み」となれば抹殺されると見るべきである。
ちなみにこの思考回路は、現実の歴史で云えば中国・秦が似ている。
韓魏趙斉燕楚と争っていた秦は、始皇帝が秦王だった時代に、対立する六国の重臣買収に動き、金に靡かないに者には刺客を放った。
有能で役に立つと見れば敵国の間者であることを承知の上で利用(例:灌漑工事技術者・鄭国)したこともあったが、逆に有能の士が国政方針に同調しないと見ると罪が無くても処刑した(例:樊於期将軍(の家族))。偏に、他国に亡命して、他国の力となるのを懸念したためである。
これはシルバータイタンの推測に過ぎないが、GODにしてみれば、何らかの開発や研究に従事させた博士が完成後に組織から逃げ、Xライダーや敵対組織に協力するのを警戒したからだと思われる(実際に南原博士はRS装置の設計図を持って逃げた)。
GODは呪博士を初め、科学者の力を重視するからこそ、「必要」かつ「忠実」な者は「頼もしい見方」として優遇したが、「不要」、または「忠実ではない(忠実になりそうにない)」と見た者は処刑した。
それが極端に現れたのがRS装置設計図を巡る争奪戦である。
第27話の冒頭で、13人もの博士がGODのために殺されていたことが判明。しかも立花藤兵衛が「このままでは日本中の博士達が皆殺しにされる!」と憤っていたから、日本国内だけでこの被害が出ていたことになる。
南原博士は日本国外、そして日本人以外の科学者達とも交流があったから、RS装置の設計図の存在は多くの科学者の命を危険に曝したと云える。勿論悪いのはGODなのだが、心無い人や、極端に保身を重視するものなら南原博士を恨んでもおかしくなかった(幸いその様な人物は一人もいなかったが)。
逆に云えば、目的のために手段を選ばないGODの酷薄さの方が際立ったからかもしれない。
ただ、この傾向には若干の推移がある。
初期のGODは、組織から裏切り者を出さない様に、組織のメンバーは全員サイボーグ手術を施していた。水城涼子もそうだったし、河村博士には一家に対して施術しようとした。
だが、初期だけで、宮本博士や南原博士にはその様な手術を施された様子は無い。
やはり人体を改造するということは人体が持つ奇跡的なバランスを崩すことになり、別問題を呼ぶということだろうか?そう云えば、第17話に出て来た化け猫ビールスは、キャッティウスに絶対服従を強いる代わりに、「頭の中身も猫並みになって、駄目です。」という副作用があったよな(笑)。
そしてGODとXライダーの戦いがRS装置の設計図を巡る争奪戦になると、設計図奪取が組織の第一目的となったためか、登場する博士達にGODの味方は皆無となり、GODも博士よりも設計図を求めたためか、博士達を味方に引き込む試みは見られなくなり、何人かの博士が問答無用で殺された。
まあ、南原博士の例から云って、彼と親しい博士達がGODに心から忠誠を誓うとは思えなかったし、取敢えずはRS装置さえ作れれば良かったのだろう。それどころか、南原博士を通じてGODの存在を知った博士達はその優れた能力でGODの敵に回る可能性の方が遥かに高かった。
となると第27話冒頭で語られていた大量殺戮にGODが走ったのも分からない話ではなくなる。
GODの博士達に対する対応を見ていると、科学力であれ、組織力であれ、優れたマンパワーとは、如何なる存在にとっても諸刃の剣であることが良く分かる。
まあ、仲間に引き込んだ博士達を信用出来ないのじゃ仕方ないがな、GODの場合。
スターリンにしても、ヒトラーにしても、始皇帝にしても、源頼朝にしても、人間不信から抜け出せない人間は決して幸せになれないことが現実であれ、フィクションであれ、見事に証明されている(第14話で、「人間が簡単に信じられなくなった。」とアポロガイストに云っていた神敬介は大丈夫か!?)。
GODも独裁者達も、好きで人間不信になった訳じゃないのだろうけれど。
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令和三(2021)年六月一〇日 最終更新