2.アブゴメス 人間体の声も担当
怪人Profile
登場作品 『仮面ライダー』第71話「怪人アブゴメス 六甲山大ついせき!」 怪人所属 ショッカー軍団(地獄大使傘下) 任務 性格・特徴 好戦的且つ冷酷残忍
ストーリー概要 ショッカーは日本中の通信網を大混乱に陥れる電気攪乱装置を開発する為に電子工学の権威・木原通俊博士(徳大寺伸)を拉致せんとした。
その任務遂行の為に地獄大使(潮健児)はメキシコ支部からアブゴメスを召喚した。
標的とされた木原博士は海外から湯治の為に有馬温泉に赴いていたのだが、それを尾行してアブゴメスも来日。一方、FBIもこのアブゴメスの動きを追っていて、滝和也(千葉治郎)の盟友にしてFBI捜査官のジョージ(大神信)も神戸港にやってきたが、彼はそこでアブゴメスの為に返り討ちに遭った。
捜査官の口を封じたアブゴメスだったが、殺害するところを滝に目撃され、人間体(佐藤京一)をアメリカ人少女キャシー(ルース・ボール)に見られたため、彼女から計画が漏れ、本郷猛(藤岡弘)の知るところとなった。
勿論これによりキャシーはアブゴメスから口封じ対象としてその命を狙われることとなり、本郷と滝は両名の命を守らなければならなくなった。
そこで本郷は木原博士に変装し、替玉での誘き寄せを図ったが、この手の変装は必ずバレるのが定番で(笑)、アブゴメスは変装と見抜いた上で本郷をロープウェイ内に拉致。そこで改めて本郷の計略を見抜いていることと、別動隊が本物の木原博士拉致に動いていることを告げると本郷をロープウェイから叩き落とした。
ただ、滝壺や崖下に落ちた者が生きているのも特撮界のお約束(笑)。首尾よく本物の木原博士を拉致したアブゴメスとその一味は、同様に拉致した立花藤兵衛(小林昭二)達を処刑せんとしたが、そこに当然の様に生きていた仮面ライダー1号が乱入し、最終決戦となった。
指ミサイルで抵抗したアブゴメスだったが、ライダーニードロップに敗れたのだった。
注目点 「日本人独特の舶来コンプレックス」と云うとかなり語弊があるが、良くも悪くも日本人は海外からやって来たもの(物・者)を特別視する傾向が強い。
ショッカーを初めとする悪の組織にあっても、わざわざ海外から召喚した改造人間は肩書や実績を引っ提げ、日本での活躍を期待され、歓迎される傾向が強い(『仮面ライダー(スカイライダー)』における魔神提督(中庸助)はその典型だろう)。
アブゴメスもまた牛をも殺す恐るべき猛毒アブの改造人間としてその手腕を期待されて召喚された存在だった(もっとも、地獄大使との対面では自らが取り逃がした子供の口封じを無視して本郷猛抹殺を進言したことで地獄大使の怒りを買っていたのは笑えたが)。
ただ、FBI捜査官ジョージを返り討ちにした以外にはこれといって恐ろしさを感じさせる存在ではない。そもそもアブ自体が日本人にとっては然程恐ろしいというイメージを抱き辛い存在である。
かつてサマーキャンプに良く出かけた身としては確かに山中のアブは厄介な吸血生物だ。しかし、設備の整ったキャンプ場ではアブやヒルは少なく、蚊の方が余程鬱陶しい存在と云えた。更に云えば牛をも殺す猛毒を持ったアブなど聞いたこともなく、現実的恐怖感に乏しい。
ついでを云えばショッカーの目的は木原博士をショッカーに拉致して悪だくみに協力させることで、仮面ライダーを倒せるかどうかは主題ではなかった。
勿論改造人間であり、何時仮面ライダーの妨害を受けるかも知れないことを考えれば戦闘に優れていることに越したことはないが、日本全国の通信網を大混乱に陥れることが出来れば、例え仮面ライダーがいたとしても情報戦や大衆扇動により仮面ライダーの妨害を物ともしない世界征服戦略を展開出来た筈である。
それを考えると、アブゴメスは備考者に気付いてこれを始末したり、本郷猛の変装を見抜き、引っ掛かった振りをしながら別動隊に本物の木原博士を拉致させ、戦いにくいロープウェイ内で本郷に襲い掛かった手並みから無能ではなかったが、改造人間として然程強い方でもない割には好戦的だったのが痛かったと云える。
まあ、アクションとしてはスタントマンを用いず、命綱無しで130メートルの高さでロープウェイにぶら下がった藤岡氏の奮戦・殺陣に完全に食われていたよな(苦笑)。
アブゴメスと八代駿氏 アブゴメスの人間体を演じたのは佐藤京一氏で、佐藤氏は後に『仮面ライダーV3』で火炎コンドルの人間体であるチベット僧、『仮面ライダーX』でパニックの人間体である八百屋を演じた。
アブゴメス人間体では五分刈りにサングラスという「如何にも」な風体で、体格も顔つきもごっつく、それでいてごく普通の立ち居振る舞いもこなしていた。チベット僧の格好をしたときはさすがに終始怪しさ爆発だったが、八百屋を演じたときは顔・体格同様の野太い声色ながら子供に理解を示した振りをしつつ、そこだけを見れば理解ある親父を演じるのにも佐藤氏は長けていた。
だが、この第71話においては、人間体の声も八代氏が当てていた。怪人の声を演じる声優が人間体を演じるケースは稀有である(主に怪人の正体がバレる際のみ当てるケースは散見されるが)。
学生時代に再放送でこの第71話を始めた見た道場主は、八代氏が声だけじゃなく人間体も演じたのかと思った程、極自然に声を当て、ジョージと対峙するシーンともマッチしていた。
八代氏が声を当てた怪人には直情的で好戦的な者も多く、アブゴメスもまたこのキャラとマッチしていたが、八代氏には是非とも怪人のみならず、人間としての出演もして欲しかったと思われてならない第71話だった。
次頁へ
前頁へ戻る
冒頭へ戻る
特撮房へ戻る
令和三(2021)年八月二六日 最終更新