3.マッハアキレス Xライダーが初敗北を喫した“瞬間湯沸かし器”

登場作品『仮面ライダーX』第9話「Xライダー必殺大特訓」、第10話「GOD秘密警察!アポロガイスト!!」、第21話「アポロガイスト最後の総攻撃!!」
怪人所属 GOD神話怪人軍団
任務 日本総支配の実験段階としての一村支配とその機密保持
性格・特徴極めて怒りっぽく、思い上がりが強い
ストーリー概要 悪の組織GOD機関は人間を自在に操ることが出来るドリームウィルスを開発し、それを使用した「日本人ロボット作戦」を目論んだ。
 マッハアキレスはそのテストとして山中にあるとある村をドリームウィルスにて村民達を洗脳し、一村丸ごと占拠した。

 だが一人の少女ミキが崖下から転落したことで村外に逃れた。
 ミキの母親を洗脳したことでミキが村外に逃れたことを知ったアキレスは機密保持の為に彼女の行方を追うこととなったが、「探しても無駄だ!」と云いつつ白いスーツの気障な男(打田康比古)が現れた。
 男はアキレスの短気な性格を揶揄すると激昂する戦闘工作員やアキレスの攻撃を難なくかわすとバイクで走り去り、男を訝しがっていたアキレスもGOD総司令(声:阪侑)から3日後の作戦開始の為に機密保持とミキの追跡を命じられたことで任務に戻った。

 一方ミキは転落のショックで記憶喪失となり、偶然レース訓練中の神敬介(速水亮)・立花藤兵衛と遭遇し、保護された。
 これを察知したアキレスは名前の由来となったギリシャ神話の英雄アキレス宜しく健脚振りを発揮してジープで逃げる藤兵衛にも追いすがった。
 だが、戦闘工作員の陽動作戦を振り切った敬介が即座に駆け付け、Xライダーにセットアップしたため、いきおい一騎打ちとなるかと思いきや、謎の爆発が勝負に水を差した。勝負を妨害され、怒り心頭のアキレスの前に現れたのはアポロガイスト名乗る改造人間。
 アポロガイストはアキレスに自分の任務を忘れるなと告げるとともに彼の短気な性格に改めて釘を刺した。

 一方、妙な形で基地を脱した敬介と藤兵衛は報道機関を通じてミキを知る人物に呼び掛け、アキレスはミキの父親に成りすまして彼女を引き取りに行った。
だが、敬介達はタイミングよく現れた「父親」を怪しみ、尾行していたことでアキレスの正体を見破った。
 ミキの口を封じようとしたアキレスの前に立ちはだかったXライダーは途中にアポロガイストの銃撃を交えつつも漸くにして一騎打ちが展開。だが脚力に優れるアキレスはXキックをも躱し、Xライダーをフルネルソンに捕らえるとそのままぽて繰り回して海に放り込むことでGOD怪人初勝利をもたらした。
 とどめを刺し損ねたものの、Xライダーが重傷を負ったことは確実で、アキレスもアポロガイストも作戦開始の3日後までに回復するまいと見た。

 だが、Xライダー=神敬介はボロボロになり、初敗北に打ちひしがれながらも藤兵衛の叱咤激励を受け自らを鍛え直す大特訓に挑んだ。

 話は第10話に入り、密かにその様子を見ていたアポロガイストは敬介を敵ながら天晴な根性の持ち主と見定め、再戦すればアキレスも危ういかも知れぬと見た。
 そしてXライダーも苦しい特訓の中、冷静になるよう諭す藤兵衛のアドバイスからアキレスの武器であるジェットローラースケートこそが弱点―アキレスの踵―であることに気付き、新必殺技の目途を着けたのだった。

 GOD総司令から改めて作戦遂行の厳命を受け、Xライダーは倒したのに、何故?と訝しがるアキレスの下に現れたアポロガイストはXライダーが生きていることと、猛特訓に挑んでいる近況を伝えた。
 本来命令を重んじるなら支配中の村を守ることに努めるべきを、短気を起こしたアキレスはXライダー打倒に向かった。総司令は直接通信でアポロガイストに止めないのか?と疑問を投げ掛けたが、アポロガイストはアキレスが性格的に今回の作戦に向いていないことを告げ、総司令も全幅の信頼を置くアポロガイストの言を重んじて両者は次善の策に移ることとした。

 そしてアキレスは洗脳していたミキを藤兵衛のコーヒーショップCOLに戻し、ミキの口を通じて解毒剤が欲しければ大井埠頭に来いと要求した。
 罠であることを承知の上でやってきた敬介に、アキレスをドリームウィルスで傀儡にした藤兵衛とミキを人質に敬介を捉え、リンチに掛けたが、Xライダーはあっさりその罠を抜け出し、リベンジマッチとなった。

 未完成ながら放たれた新必殺技・X二段キックの前に致命傷こそ免れたものの、狙い通りにジェット装置のある踵を砕かれたアキレスは圧倒的不利に陥った。
 するとそこにアポロガイストが現れ、GOD秘密警察第一室長としての身分を明かすと総司令の名の元に役に立たなくなったものとしてアキレスの処刑を宣言。
 アポロガイストは知らずとも、GOD秘密警察とその恐ろしさを知っていたアキレスは周章狼狽し、それまでの尊大な態度を忘れたかのように必死に命乞いをしたが、アポロショットを受けて炎上・刑死した(第10話はその後も続くが、本作の趣旨上割愛)。

 そして約3か月後の第21話にて、体の不調から自分の余命が幾ばくも無いことを知ったアポロガイストは、再度の延命手段としてXライダーのパーフェクターを奪取する必要に迫られ、大攻勢に出た。
 自らが持つ命の火を死んだ怪人達に与えて蘇生させ、アキレス・ユリシーズ・プロメテスにCOLを襲撃させ、仲間の女子大生チコ(小板チサ子)・マコ(早田みゆき)を拉致させた。

 そのままCOLに残り、気絶した来客の振りをして敬介に襲い掛かった3体だったが、戦闘員並みの戦闘能力しか持ち得ない再生怪人のお約束でユリシーズとプロメテスがあっさり戦死(笑)。
 堪らず逃走に掛かったアキレス俊足だった筈の脚力も活かせずあっさりとライドルロープに絡め捕られた(苦笑)。

 店を半壊されて怒り心頭の眼差しをアキレスに向ける藤兵衛だったが、Xライダーはアキレスに聞きたいことがあるゆえ活かすとした。
 Xと藤兵衛のやり取りを聞いていたアキレスは「見損なうな!」と激昂して敵への協力を拒んだが、Xライダーにアポロガイストの関係を突いたように煽てられるや、「お前達に加勢するぞ!!」と態度を一変させた(苦笑)

 かくしてアポロガイストを嵌めるべく、敬介を縛り上げて連行したアキレスだったが、戦闘工作員の目は誤魔化せても、アポロガイストの目は誤魔化せず、対面した途端にアポロマグナムに撃たれ、二度目もアポロガイストによってその生涯を閉じたのだった(以後も第21話は続くが、本作の趣旨により割愛)。



注目点 アポロガイストとの絡みから直情的な性格や情けない狼狽え振りがクローズアップされがちだが、マッハアキレスはGOD神話怪人軍団の中では強豪と云っても過言ではない。
 特殊能力で一時的に仮面ライダーXを苦戦させたり、強敵感を抱かせたりした怪人は数多いが、完膚なきまでの敗北感を植え付けたのは間違いなくアキレスが最初で、Xライダーが正面切ってここまで打ちひしがれた相手と云うのは実は他に見当たらない。

 だが、一方で、アポロガイストがことごとく指摘した様に、その性格は欠点だらけである(だから面白かったんだけどね)。
 まずアポロガイストをして「瞬間湯沸かし器」と呼ばしめた短気さが挙げられる。日本ロボット化計画の為には、ドリームウィルスを保持し、それを日本中に浸透させるまでその存在を、Xライダーを初めとする敵に察知されないことが大切なのだが、アキレスはとかく目の前の敵を倒すことに心を奪われ過ぎた。

 そして2つ目に挙げられるのは思い上がりが強いことである。
 前述した様にXライダーを正面切っての一騎打ちで、破っているのだから決して弱くない。多くの仲間を屠ったXキックを躱したのも見事だったし、自分の長所を活かした戦い方をしていたのも高ポイントだが、一度の勝利で完全に慢心したことは彼の最大の欠点と云って良いかも知れない。
 アポロガイストから、Xライダーが生きていて、猛特訓を積んでいることを告げられ、「お前も少しは見習ったらどうだ?」と云われて激昂していたことからも、謙虚さも皆無と云えよう。

 そして最後に浅慮さが挙げられる。
 ミキの父上に扮してこっそりミキを取り戻そうとしたり、ミキを人質に敬介を捕らえたりしたところから多少の狡猾さはあると見られるが、如何せん浅かった。
 特に捕らえた敬介を車やバイクならともかく、ローラースケートを履いた数人の戦闘工作員に引き摺らせるだけで敬介を処刑しようとし、ろくに見張りもせずに逃げられたのには顎を落とすしかなかった。
 そして短気・浅慮は二度目の最期にも影響した。
 前述した様にアポロガイストの命の炎を譲られて再生を果たしたものの、あっさりとお縄となったアキレスはXライダーへの合力を唆された。
 初めこそ「見損なうな!」と云って敵への合力を拒絶したが、「せっかく生き返った命、惜しいとは思わないか?」と云われるや迷いが生じ、「お前ほどの男がアポロガイストに使われているのはもったいないと思うが……。」と云う見え見えの煽てに乗せられて敵への加勢を決意したことに笑った視聴者は多かったことだろう(笑)。

 パーフェクターを持ち帰ったとしてアポロガイストに面会したアキレスは即行で射殺されたが、アポロガイストへの意図はどうあれ、アキレスは本当にその手にパーフェクターを持っていた(さすがのアポロガイストもそれに気付かずアキレスを撃ったことを悔やんだ節を見せていた)。

 誤解しないで欲しいが、シルバータイタンは一連の流れを馬鹿にしているのではない。一度目の登場時の設定や能力や立場を無視されがちな再生改造人間にあって、アキレスは声だけでなく、生前(?)の性格や対人関係も忠実に踏襲された稀有な例として感心しているのである。

 秘密警察第一室長と云う立場上、怪人達に協力はしても褒めることが皆無に近かったアポロガイストは怪人達から一様に恐れられる一方で嫌われもいた。
 そんなアポロガイストと怪人との関係を色濃く、コミカルに展開したマッハアキレスはGODと云う組織を描く意味でも貢献し、Xライダーを初めて破ったのだから、コミカル面以外の面ももっと注目して然るべき存在と云えよう。



マッハアキレス八代駿氏 「八代氏が声を当てた怪人」として、シルバータイタンが最も書きたかったのがこのマッハアキレスとネオショッカーのアブンガーである。
 アキレスの注目点が様々あるのは前述したが、一番注目されるのはアポロガイストとの絡みであるのは間違いなかろう。そして第8話で姿だけを見せ、第9話で怪人に辛辣なツッコミを入れ、第10話でその恐るべき正体と存在感を露わにした展開にアキレスはいわば紹介役として絡んだと云って良いが、それ故にカッコ悪さが目立った。

 作中初めてXライダーを破るという猛者振りを見せながら、数々の欠点を持ち、それ故に様々なドジっ子属性を発揮し、最期には周章狼狽しながら味方に殺される…………数多くいる声優陣にあって、こういう役所を演じさせたら八代駿氏がピカ一だとシルバータイタンは考える。

 勿論、他の声優諸氏がアキレスを演じられなかったとは思わないが、市川治氏や池水洋通氏が演じればカッコ良過ぎただろうし、山下啓介氏や峰恵研氏や西崎章治氏が声を当てた場合、コミカルさが軽減された思われる。
 沢りつ夫氏や辻村真人氏が演じたアキレスを想像するのも興味深いが、やはり八代氏がベストチョイスだったと思われる。

 少し話が逸れるが、昭和時代の再生改造人間の扱いはかなりいい加減(特殊能力や生前の性格・強敵振りはほぼ無視される)で、初登場時と声優が異なることも多かった。
 実際アキレスにしても第28話でクモナポレオン配下として登場したときは安原義人氏が声を当てていた。ただ、この時のアキレスは一緒に再登場したサラマンドラ共々全くのチョイ役で個性も台詞も無きに等しかった(V3と少し戦っただけで倒されるシーンすらなかった)ので、本作でもほとんど無視している。

 だが、そんな傾向が強い故にアキレスに再度八代氏が声を当てたことにも、初登場時の性格がちゃんと踏襲されていた事にも心から拍手を送りたい。
 推測でしかないが、制作陣も迷うことなく八代氏に再生アキレスのアテレコをオファーしたものと思われるし、そうでなかったら抗議したいところである(苦笑)。


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令和三(2021)年八月二六日 最終更新