5.タイガーネロ GOD悪人軍団最高幹部候補

怪人Profile
登場作品『仮面ライダーX』第34話「恐怖の武器が三人ライダーを狙う!」
怪人所属 GOD悪人軍団
任務 極分子復元装置設計図の奪取とその完成
性格・特徴 強殺・騙し・仲間殺し、と何でもあり
ストーリー概要 第24話以来連綿と続く極分子復元装置(以下、「RS装置」)の設計図を巡る争奪戦も大詰めを迎えていた。
 9つに割かれた設計図は7枚が神敬介(速水亮)の手に、1枚がGODの手にあり、最後の1枚が香港にいる雨宮博士(城戸守)の手で日本に持ち込まれようとしていた。

 立花藤兵衛経由で一文字隼人から雨宮博士の帰国を知った敬介は空港に迎えに行ったが、雨宮博士は既にタイガーネロの支配下にあり、巧みに誘き出された形で敬介はGODに捕らわれの身となり、雨宮博士も用済みとばかりに殺された………。
 敬介を人質としたタイガーネロはその身柄―拘束し、目隠しした敬介を鉄塔から吊るさんとした姿―を盾に藤兵衛にRS装置の設計図を寄越すよう強要した。

 それまでに敬介が入手していた設計図は立花コーヒーショップ・COLに隠されており、藤兵衛は例えRS装置がGODの者もとなっても仮面ライダーXさえ生きていれば何とかなり、逆にRS装置を渡さずともXライダー亡くばこの世はGODのものになると断じ、取引に応じることとした。
 案の定、タイガーネロは約束を反故にして、設計図を強奪するや敬介を吊るさんとした。敬介の危機は駆け付けた仮面ライダーV3・風見志郎(宮内洋)の尽力で回避されたが、タイガーネロには逃げられ、RS装置の設計図はすべて奪われてしまった。

 念願の設計図をすべて手に入れたタイガーネロに対してキングダーク(声:和田文夫)は彼を「GODの最高幹部に推薦してやる。」としていた。
 GODの首領(または総司令)と組織の在り様に関しては何とも断言し辛いものがあるが、これまで組織にあってこれと云った地位や役職を見せてなかったGOD悪人軍団が出世を約束されたのは他に例がなく、これはかなり稀有だった。

 大手柄のタイガーネロはそのままRS装置の製造を命じられた。
 一方、設計図を奪われた敬介は戦闘工作員の一人にこっそり発信機を取り付けていたのでそれを頼りに仮面ライダーV3と共にGODアジトに向かったが、目的地に到着する前に完成したRS装置を引っ提げてタイガーネロが現れた。

 原水爆をも上回る破壊力を持つRS装置を食らっては仮面ライダーといえども一溜りもない我が身を犠牲にする覚悟で装置を破壊せんとして揉めるXとV3だったが、結局二人して突撃を敢行。
 二人まとめて討ち取らんとしてRS装置を発動したタイガーネロだったが、RS装置は仮面ライダーズを撃たず大破。その爆風にもんどりうって倒れ込んだタイガーネロを嘲笑う戦闘工作員が覆面を取るとその下から現れたのは一文字隼人だった。

 隼人は予めGODアジトに潜入しており、奪われ設計図の中でも一番重要な心臓部の設計図を密かに取り戻すと同時に、RS装置には自爆装置を組み込んでいた。
 地団駄踏んで悔しがるタイガーネロを尻目に隼人は2号ライダーに変身。タイガーネロはトリプルライダーを相手に格闘に入り、初めは有利とも振りともつかぬ勝負を展開。
 途中で何故か2号とV3が画面から消え、タイガーネロはXライダーと一騎打ちとなり、最後は真空地獄車の前に落命。手柄も成果も地位も水の泡となったのだった。



注目点 GOD悪人軍団の構成員怪人は設定からしてかなり個性的である。今更解説するまでもないが、歴史・伝説上の悪人の子孫に動物の能力を植え付けた改造人間故に、モチーフとなった悪人の個性が反映される。
 まあ、その反映度には個体差が大きく、タイガーネロはその点、反映度が大きい訳ではない。

 確かにモデルとなった暴君皇帝ネロ宜しく、用済みになった雨宮博士を刺殺したり、人質・設計図交換の約束を反故にして敬介を殺そうとしたり、発信機を取り付けられた戦闘工作員を惨殺したり、と残忍さや悪辣さを見せてはいるが、その程度の残忍さや卑劣さは従来の怪人にも普通に見られていたし、戦闘工作員を殺した以外にはネロの様に身内・仲間に対する酷薄さが際立っている訳でもない(タイガーネロを弁護する訳じゃないが、ランプと音を出す発信機に丸で気付いていなかった戦闘工作員にも落ち度はある)。

 それゆえ、個性面でのタイガーネロは特に目立つ存在ではない。やはり目立つのはストーリーとの絡みだろう。
 第一は、RS装置の設計図をすべて手に入れ、(一文字に重要部分をすり替えられはしたが)装置を完成させたことだろう。
 敬介を人質にしたことであっさり手に入れた感が強いが、目的の第一段階に成功したことに疑いはない。それまでのGOD悪人軍団怪人が呆れるほど偽物の設計図を掴まされていたから(苦笑)、本物をすべて手に入れたことは特筆値する。

 もう一点挙げられるのは仮面ライダー3人を同時に相手にし、堂々と渡り合ったことだろう。最終的にはXライダー単体の技で敗れたので滅茶苦茶強さを感じさせた訳ではないのだが、そもそも(劇場版を別にすれば)昭和シリーズで3人の仮面ライダーと対戦したのはユキオオカミ、原始タイガー、グランバザーミー、魔神提督、そしてこのタイガーネロしかいない。
 ネオショッカーの大幹部である魔神提督は別格として、キバ一族の母なる魔女である原始タイガーとネオショッカー怪人にあって最強クラスの猛者であるグランバザーミーは3人ライダーとも互角以上に渡りっていたが、ユキオオカミは明らかに劣勢に立たされていた。
 詰まる所、仮面ライダー相手に1対3に立たされること自体がとんでもなく不利な勝負を強いられることを意味し、余程の強者でない限り勝負にもならない(通常はWライダーを相手にする時点で手も足も出なくなる怪人が大半だ)。

 そんな中、タイガーネロの戦い振りは「可もなく、不可もなく。」と云った感じだったが、まず3人ライダー相手に優勢に立たずとも、これと云った劣勢を見せていないこと自体がかなりの強者と云える。
 前述した様に、途中で何故か一騎打ちと化し、他の多くの悪人軍団怪人同様真空地獄車一発でやられたのが痛かったが、途中でライダーを劣勢に追いやるシーンが一回でもあれば、タイガーネロの猛者振りはかなりその知名度を上げたのではないかと思われる。



タイガーネロ八代駿 タイガーネロ八代駿氏が声を当てた怪人の中ではかなりの猛者に入り、稀有な存在である。八代氏が声を当てた怪人は、「強敵」は決して少なくないものの、その強さも特殊能力や戦術によるものが多い。

 実際、コミカルな怪人や精神的な落ち着きに難の有る怪人が多く、正面切っての猛者は少ない(←八代さん、失礼!!)。それゆえ八代氏がタイガーネロの様な存在の声を当て、それに違和感が無いのは嬉しく、興味深く、もう2、3体は八代氏が声を当てた強豪怪人が見たかった気がする。

 個人的にタイガーネロ八代氏の声色から注目するのは、タイガーネロが立花藤兵衛に云い放った、「GODに約束などないわ!」と云う台詞である。
 悪の組織が人質を初めとする取引に際して約束を反故にすることは日常茶飯事で、彼等はそれを恥じるどころか「信用する方が馬鹿。」みたいな罵声を浴びせることは決して珍しい話ではない。
 ただ、個人的な感傷だが、『仮面ライダー』にて、死神博士(天本英世)が「馬鹿め!約束を守るショッカーだと思ってか!」と云って、本郷猛を嘲っていたのが分かり切っている筈のショッカーの悪辣を醸し出していたのが秀逸過ぎたため、他の怪人の同様の台詞も、「まあ、悪の組織はそんなもんだ。」と受け流してしまう。
 一方で、余り声に重みや渋みが無い八代氏の声(←再度、失礼!!)でこの台詞を云われると、小馬鹿にされた感が半端無かった

 八代氏の担当怪人らしさの薄いタイガーネロだが、それでも八代氏ゆえの面白み・興味深さが内包されているのは嬉しい発見と云えよう。


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令和三(2021)年九月二日 最終更新