7.サソランジン 改造人間の悲哀をクローズアップさせた希少存在

怪人Profile
登場作品『仮面ライダー(スカイライダー)』第4話「2つの改造人間 怒りのライダーブレイク」/td>
怪人所属 ネオショッカー(ゼネラル・モンスター傘下)
任務 
性格・特徴 人間時の個性をかなり不安定な形で残している。
ストーリー概要 ネオショッカーの大幹部ゼネラル・モンスター(堀田真三)はロボット工学の権威である本田博士(河合弦司)にネオショッカーへの協力を強要していた。
 最後通牒を突き付けられても頑として協力を拒否する本田博だったが、電話を切ったところに謎の女(里見和香)が現れ、サソランジンに変身すると博士を殺害した。

 直後、偶然博士のマンションの前を筑波洋(村上弘明)が通り掛かり、異音を聞いた洋はマンションへ向かったが、現場には本田博士が溶けた跡が残るのみだった。
 空いた窓から怪人が逃走するのを見た洋は後を追ったが見失い、マンションの外でサソランジンの人間体とぶつかるも、その女性がサソランジンと気付く由も無かった。

 一方ネオショッカーのアジトではゼネラル・モンスターが本田博士暗殺の成功とともにサソランジンが誘導型改造人間であることを大首領(声・納谷悟朗)に述べていた。
 そもそも改造人間は組織の都合に動かされる存在だが、サソランジンはリモート装置で動くが、その間の行動は本人さえ知らないという悪辣なコントロール下にあった。
 報告を受けた大首領はサソランジンにネオショッカーの敵対者を消させるようゼネラル・モンスターに命じ、彼は次のターゲットを、本田博士同様にネオショッカーへの開発研究所協力を拒む城北大学の石渡博士と定めた。

 この石渡博士の助手である山本(田中隆)が偶然洋の知人だったことから、ネオショッカーからの脅迫を受けて研究室に引き篭り状態の博士を訪ねてやって来た洋は最前の女性がキャンパスにいるのを見つけた。
 先の事件現場に居た女性と再度鉢合わせたことは充分怪しかったが、同時に女性は不可解な行動を見せていた。
 女性を姉と呼んで小さな女の子(長谷川真由美)が縋り付いていたのだが、女性はこれを無表情でガン無視した挙句女の子を突き飛ばした。これにより女の子が泣き出したことで人が集まり、ゼネラル・モンスターはリモート装置から作戦の中止を命令し、女は現場を立ち去ったた。

 洋が少女・上村可也を介抱して聞いたところ、不可解な女性は可也の姉・美也とのことで、行方不明だったという。
 洋は可也を志度ハンググライダークラブに連れ、志度博士(田畑孝)と石渡教授の護衛について相談し、志度博士が石渡教授に成りすますことで侵入してきたサソランジンの迎撃に成功。
 スカイライダーはサソランジンの胸に美也と同じペンダントがあるのを見つけ、その正体を察知。サソランジンの放った矢をかわしたスカイライダーはこれを投げ返してサソランジンのペンダントを破壊した。
 するとサソランジンは倒れ伏し、美也の姿に戻った。志度博士の鑑定からペンダントがリモート・コントロール装置であることも判明した。

 かくしてネオショッカーの魔手から可也の姉・美也を取り戻したかに思われたが、アジトにてゼネラル・モンスターはこれを失敗ではないと大首領に説明していた。
 ゼネラル・モンスター曰く、「例えリモート・コントロールが切れても、後数時間もすれば女は、サソランジンに自動的になります。」とのことで、美也は依然ネオショッカーの支配下にあった。

 その頃、美也は洋にバイクで自宅に送ってもらっており、道々自らが改造されたことを思い出していた。
 手術台に拘束された状態で人間でなくなることを泣いて拒絶する美也の意思を無視して手術が強行されたことを思い出し、悲観する美也に対し、自分もまたネオショッカーに改造された身であることを明かした洋は彼女の目の前でライダーに変身し、妹の可也が待っているから戻ろうと促した。

 尚も美也は改造人間となったが自身を「一度死んだ。」とし、現在の身の上を「妹には云えない」と嘆くばかりだった。
 それでも「例え身体は改造されても、心までネオショッカーに売り渡したわけではない。妹さんだってきっと分かってくれます。」と云う洋の説得を受け、何とか美也は志度ハングライダークラブで可也との再会を果たした。

 姉妹再会は果たされたが、スカイライダーは彼女をゼネラル・モンスターが放っておくとは思えずにいると丸でそれに答えるかのようにライダーの耳に「改造人間がどうなるのか教えてやる」というゼネラル・モンスターの声が聞こえてきた。
 そして同時に美也の体に異変が起きた。美也は自分の腕がサソランジンとなっていることに気付き、慌てて可也を避ける様に部屋に閉じ籠ったのだが、変貌は止まらず、やがて美也の姿は完全にサソランジンのそれに変じた。

 美也=サソランジンは心配して駆け付けた志度博士達を押し除けて窓から飛び出してしまい、志度博士からそれを伝えられたスカイライダーはサソランジンを必死で空から探した。
 意に反して怪人の体にされた美也=サソランジンだったが、いみじくも洋が述べた様に、心までは支配下に入っていなかった。サソランジンはふらふらとおぼつかない足取りで、「私は二度と改造人間を作らせないよう、ゼネラル・モンスターを倒す!」と云う悲痛な決意を持ってネオショッカーアジトに向かっていた。
 アジトの前に到着したサソランジンはゼネラル・モンスターに出てくるよう叫んだが、現れたゼネラル・モンスターは彼女を(その意を無視して一方的に改造しておきながら)裏切り者として処刑対象とすることを宣告、アリコマンドにクロスボウの一斉射撃を命じた。
 サソランジンは左腕から矢を放つも、その矢はアリコマンドが盾となり、ゼネラル・モンスターには届かず、逆に数本の矢を胸に受け、致命傷を負った。
 直後、スカイライダーが駆け付けるも、サソランジンにはもう起き上がる力もなく、彼女に刺さった矢を引き抜くスカイライダーに、「ゼネラル・モンスターを倒したかった……」との無念を呟き、最後の最後に美也の姿に戻ると「妹を、妹を頼みます……。」と懇願してその姿はかき消すように消えてしまったのだった………。



注目点 「改造人間が如何に悲しい存在であるか。」という命題を、恐らく『仮面ライダー(スカイライダー)』のみならず、全仮面ライダーシリーズを通しても、一、二を争う程具現化しているのがこのサソランジンでなかろうか?

 人間の体を失った悲しみは仮面ライダー1号を初め何人もの仮面ライダーがこれまでにも述懐していたが、仮面ライダー達が最終的に悲しみを乗り越えて悪と戦う決意を固めたことや、手術台に拘束されても悪に屈すまいとする意志を滲ませていたことで、「カッコよさ」や「前向きさ」が「悲劇」・「悲惨さ」を軽減させていたが、サソランジン=上村美也の場合、一人のか弱き女性として改造されることを必死に拒まんとする姿や、変わり果てた姿を妹に見せられまいとする苦悩からは「悲劇」・「悲惨さ」しかなかった。

 しかも、中途半端に元の心と姿が残されていたことが悲劇に拍車を掛けている。

 特撮作品が非道な悪との戦いを描く以上、時として悲惨な死が描かれるのは避けられず、それもストーリーの重要なファクターである。『仮面ライダー(スカイライダー)』でもネオショッカーによって殺害される人々が度々出て来て、中でも第1話でハングライダークラブの仲間が惨殺されたり、最終回で洋の母(折原啓子)が射殺されたりといった悲劇が描かれた。
 だが、洋の身近な人々が殺された第1話・最終回を別とすれば、上村美也=サソランジンの犠牲は同作でも五指に入る悲惨さと云えよう。特に直近の第2話・第3話が教育指導的なストーリーで犠牲者を出さず、直後の第5話以降がやや明るめに作風がシフトしたことがこの第4話の悲惨さを際立たせていた。

 少しかつての私情を交えると、道場主は幼少の頃改造人間に憧れたことがあった。小柄で腕力も極端に弱く、鈍間に生まれた身を呪い、圧倒的なパワーや戦闘能力を入手出来るなら改造人間になりたいぐらいに思っていた。
 道場主のみならず、道場主の周囲の同級生の中にも、子供独特の安直さや単純な強者への憧れから改造人間の悲しみを一顧だにしない者も多かったが、さすがに大人になる前に人間でなくなることの悲惨さに多少は想像が働くようになった。
 しかも仮面ライダーが元の肉体を失いつつも、ある程度自分の意志で容姿をコントロール出来るのに対し、美也はリモート・コントロールによって自ら容姿をコントロールすることが出来なかった。

 『仮面ライダー(スカイライダー)』は原点回帰や歴代ライダーの客演、空飛ぶ能力に目が生きがちだが単体としても重要な命題を投げ掛けてくれる掛かる作品が存在することを忘れない様にしたいものである。



サソランジン八代駿 云うまでもないが、サソランジンは女性改造人間である。
 『仮面ライダー(スカイライダー)』以前に女性改造人間も僅かながらに存在したが、当然の様に声を当てたのも女性声優だった(例:沼波輝枝、瀬能礼子、曽我町子諸氏)。それを考えるならサソランジンも女性声優が声を当てるところを八代駿氏がこれを担った。

 男性声優のどなたが声を当てても女性怪人を担うのに無理があっただろう。ただ、作品の趣旨として男性声優―八代氏が担ったのは充分理解出来る。
 上述した様に、サソランジンはうら若き女性が意に反して改造され、「女」以前に「人間」とすら云えない異形の姿に変えられてしまったのである。一時的に戻れたことが却って戻れなくなった際の悲しみ・悲惨さを倍増させ、「もう可也の元には戻れない。」と嘆いていた。
 この、「変えられてしまった」、「元に戻れない」と云う悲惨さをクローズアップさせるのだから、声は女性とは程遠い声の方がその効果は高まる。それを考えるとサソランジンの声は八代氏もそうだが、沢りつ夫氏や山下啓介氏もまたいい仕事をしたのではないか?という想像が掻き立てられる。

 これはもう想像でしかないが、八代氏の起用は改造前のうら若き女性とのギャップをとことん狙うと同時に、子供番組ゆえに悲惨さを軽減させることを狙った人選ではあるまいか?
 独断と偏見、更には失礼を承知の上で書くが、八代氏に悲劇は似合わない。怪人役に限定しても、どちらかと云うとコミカル系や、正義を小馬鹿にした様な小憎たらしい役所が似合う。それゆえに「女性」と「悲惨さ」の双方にミスマッチさせる適役として八代氏にサソランジン役として白羽の矢が立ったのではなかろうか?


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令和三(2021)年九月二日 最終更新