ウルトラマンA全話解説

第1話 輝け!ウルトラ五兄弟

監督:筧正典、満田かずほ
脚本:市川森一
ミサイル超獣ベロクロン登場
 ストーリーはミサイル超獣ベロクロンの度アップから始まった。ベロクロンが現れたのは広島県福山市で、工業都市としての発展が期待されていた同市に火炎放射が浴びせられた。暴れ、破壊を続けるベロクロンが標的とした1つに主人公・北斗星司(高峰圭二)がいた。
 パン屋の運転手を務めていた北斗は荷台に積まれたホームの子供達が食べるパンを怪獣なんかに踏みつぶされてたまるかと、その攻撃を避けて車を走らせまくったが、火炎に呑まれた(車ごと踏み潰されたら、「ホームの子供達が食べるパン」の前に自分の命が危ないのだが……)。

 ベロクロンの破壊は続き、その魔手は病院に伸びた。そこには白衣の天使=看護婦(←当時の呼称)として同院に勤めていた南夕子(星光子)がいた。少女の乗る車椅子を押しながら患者達の避難誘導にも努めていた夕子の病院もまたベロクロンによって壊された。

 この暴れる怪獣(←まだ「超獣」とは呼ばれていない)を捨てておけじ、と20数機の戦闘機が迎撃に出た。戦闘機は地球防衛軍に所属(← MATはどうした?)する部隊だが、玄海老師………じゃなかった隊長(幸田宗丸)の奮戦空しく、ベロクロンの火炎放射、全身から放たれるミサイル攻撃に丸で敵わず全滅した。ナレーションによるとベロクロン1匹の前に地球防衛軍自体が全滅したとも取れた(←くどいが、MATはどうした?)。何故ならこれからしばらくして地球防衛軍全滅を受けてTAC(Terrible monster Attacking Crew)が編成されたからである(←真面目に問う、MATはどうした??)。

 抵抗勢力を全滅させたベロクロンの大暴れは続き、福山のコンビナートは廃墟と化し、北斗は辛うじて助かったもののトラックと荷物(パン)は丸焦げ。更にベロクロンの進撃は北斗がパンを届けようとしていた聖エリザベスホームにも迫り、その門前で北斗星司と南夕子は初めて顔を合わせた。
 北斗は夕子が押す車椅子の避難を手伝おうとしたが、迫りくるベロクロンを見て、傍らに駐車してあったタンクローリーに乗り込んで(←窃盗だって)、ベロクロンに突撃を敢行したが、ベロクロンはびくともせず、タンクローリーの方が炎上した………。
 程なく、ベロクロンは虚空の彼方(=異次元)に去り、爆発に巻き込まれて倒れ伏す北斗と夕子の元に光の国の戦士−ウルトラ5兄弟が現れた(←前週に語られていたバット星連合艦隊との戦争は良いのか?)。

 ウルトラ兄弟達は地上(?)に降り立った瞬間にそれぞれに必殺技のポーズを決め(←意味あんの?)、ウルトラマンAが「ウルトラ兄弟の5番目、ウルトラマンAだ。」と名乗ると4人の兄はハイ●・ヒ■ラーのポーズで「ウルトラマンA!」と続けた(←否、本人今名乗ったし…)。
 ともあれ、Aは銀河連邦の一員たる証であるウルトラリングを北斗と夕子の中指に授与し、「そのリングの光るとき、お前達は私の与えた大いなる力を知るだろう!」と宣言し飛び去った。ウルトラマンとハヤタの邂逅時にも言えるけど、肝心な事を言わない上にエラソーな兄弟やね(苦笑)。

 ともあれ数日後、北斗と夕子は大勢の子供達に見送られ、地球の守り・TACに入隊すべく故郷を後にした。去り際に「パンを食ってデカくなれ。」という北斗と、「食べ過ぎちゃ駄目よ。」という夕子の、各々の台詞が前職を忘れておらず、なかなかに素敵(笑)。
 その、全滅した地球防衛軍に替わって組織されたTACでは飛行テストにパスした北斗と夕子が入隊を果たし、先輩隊員達を紹介された。
 射撃の名手・山中一郎隊員(沖田駿介)、宇宙生物に関するTACの生き字引・吉村公三隊員(佐野光洋)、ロケット工学のオーソリティ・今野勉隊員(山本正明)、タイピングに務める美川のり子隊員(西恵子)等が、彼等を束ねる竜五郎隊長(瑳川哲朗)によって紹介された。
 しかし、一様に愛想よく初対面の再撮をする中、グラサンを掛けた山中だけ丸でチンピラだ(苦笑)。
 自己紹介する2人に「君達は誕生日も同じ7月7日だそうだな?」と誰かに説明するかのように問う吉村。ま、第1話ならではの会話やね(笑)。

 そんな会話の直後に、竜隊長が業務に関する話を始めた。竜隊長はベロクロンを「もはや怪獣ではない。」とした。続けて、「地球侵略を目的とした宇宙人達が地上の文明を破壊する為に遣わした超兵器。即ち、『超獣』と呼ばれるべき異次元の改造生物だ。」と定義づけた。つまりはここで初めて「超獣」という呼称が作中に登場したのである。
 そして竜隊長の説明に続くように現れた白衣の男が、「その「超獣」を一発でやっつける新兵器をまた1つ開発してみたんですがね。」と言いながら現れた。男の名は兵器開発研究院・梶洋一主任(中山克己)。
 梶は山中のTACガンを借りて、これをレーザーガンに替える特殊アダプターを取り付け、試射を勧めた。口調は丁寧で上品だが、副隊長格の山中とため口で会話しているところをみると、主任の肩書は伊達ではないようだ(←主任の肩書はまだ呼称されていなかったが)。
 早速テストに掛かった山中。彼は常に2挺のTACガンを携行し、射撃するので、この時は特殊アダプターをつけたTACガンと、通常のTACガンを試射した(←対照実験としては正しいやり方である)が、標的の破壊は1つだけだったので、特殊アダプターによる機能向上の程度は不明だった(苦笑)。

 そんな中、東京K地区一帯に異常事態が発生した、とアナウンスされた。K地区には東京タワーがあり、東京タワーにはTACの通信網が配備されているとのこと。防衛の重大性を強調する背景だろうけれど、何十メートルもの体躯を持つ超獣が暴れたら放っておけないのはどこでも一緒だって(苦笑)。
 ともあれ、竜隊長は出撃を下知した。

 その頃、超獣を操る黒幕である異次元人ヤプールが「恐れを知らない地球人どもに我ら異次元人の「悪魔の力」を見せつけてやる。」として、ベロクロンを3次元に放った。どうでもいいが、自ら「悪魔」を名乗るとは恐れ入る(笑)。
 ともあれ現れたベロクロンは東京タワーにかぶりつき、TACからはいの一番に山中と吉村が出撃。そして2番手はトイレに寄った今野を置き去りにして北斗が抜け駆けした。ために今野は気まずそうにその旨を竜隊長に告げ、美川、夕子とともにTACパンサーに搭乗して出撃。着任1日目で軍令違反をするとは北斗も大概だな。北斗自身には罪悪感もあったようだが、現実の軍事組織では軍法会議か懲罰ものである。
 後年、特撮マニアの間で「仲が悪いのでは?」と囁かれることの多いTACだが、抜け駆けを隊長が苦笑いしているようでは軍事組織としてはかなり「甘い」と言わざるを得ない。

 その頃戦場では山中・吉村の攻撃もむなしく、東京タワーはベロクロンにへし折られ、TACの攻撃は丸で効果を挙げられず(お約束)、ベロクロンの指ミサイルを受け、第1話にして早くも吉村が、そして山中がTAC迷物「脱出!」を経験した(苦笑)。
 まあ「命に代えられない。」という考えは分かるが、苦戦中だと云うのに笑顔の多い組織だ(嘆息)。竜隊長が無事を確認して安堵されて「このくらいではくだばりません、はっはっ。」と笑顔を見せる山中&吉村も問題だし、効果的な攻撃を為した訳でもないのに命中したぐらいで喜ぶ北斗も問題だ。
 ともあれ竜隊長は北斗以外の隊員達にTACガンの一斉射撃で北斗の援護を命じ、ベロクロンの口中に北斗が一撃を加えるや、その動きが止まったので勝負あったかに見えたが、ベロクロンはすぐに再稼働し、吐炎攻撃により、北斗も3人目の脱出者となった。
 地上に降りた北斗と、元から地上にいた夕子は前職の傾向もあってか、子供達の多い学校を守るのに走ったが、何せベロクロンの動きは止まらない………そう思っていたとき、遂にウルトラリングが光った。
 その光を見た北斗は指輪に向かって、「やい!お前が俺達に与えると言った『大いなる力』とは何だ!?くれるんなら今くれぇっ!!」…………態度の悪い奴だ(苦笑)。だが勿論リングは答えない。しかしそのとき夕子のリングも光り、北斗と夕子は互いにを呼び合うと大空に向けてジャンプし、ウルトラタッチが為され、ウルトラマンAはその雄姿を地上に見せた。しかし、南夕子を演じる星光子さんがジャンプする際の気合、チョット勇まし過ぎ……(苦笑)。

 かくしてウルトラマンAと超獣による初対戦が展開された。まず白兵戦ではバランスの悪いベロクロンに対し、Aが圧倒的に有利だった。何せジャンプしたAを目で追って転倒する始末だったから(苦笑)。得意の指ミサイルはAを微動だにさせられず、腕から放つ火球もすべてかわされた。
 それでも口から吐く火炎はAを苦しめ、炎のリングでAの動きを封じ、弱ったAを体格差で押したが、決定的なダメージは与えられず、Aは隙を突いて額からのパンチレーザーベロクロンの口に叩き込み、垂直落下式のドロップキックを顔面に浴びせ、その巨体を頭上に投げ飛ばして、地面に衝突させると必殺のメタリウム光線を顔面に叩きこんで勝利した。

 ラストは超獣出現に備えて情報収集に努めるTAC基地にて、北斗が竜隊長から関東地区の定期パトロールを命ぜられて終わった。出動直前、アイコンタクトを交わす北斗と夕子…………現実の職場でこういうことしたら、絶対両者の中を勘繰られるだろうな……(苦笑)。


次話へ進む
『ウルトラマンA全話解説」冒頭へ戻る
特撮房『全話解説』の間へ戻る
特撮房へ戻る

平成三〇(2017)年七月九日 最終更新