ウルトラマンA全話解説

第2話 大超獣を越えてゆけ!

監督:筧正典、満田かずほ
脚本:上原正三
古代超獣カメレキング登場
 ストーリーはとある工事現場から始まった。そこに突如現れた銀色地に緑の斑模様を持つ不気味で巨大な卵が地中からせりあがって来た。その卵はキレンジャーを………じゃなかった、作業員(畠山麦)を飲み込んでしまった!
 そう言えば畠山氏は『仮面ライダー』で客演したときも殺される役だった。現実世界の貴方には自分に殺されることが無ければ良かったのに(泣)。
 目の前で同僚を飲み込まれた運転手は恐慌を来たし、即座にTACが呼ばれたが、卵は地中深くに潜ってしまい、いくら掘っても出ないことから現場検証に立ち会った警察官は「土砂崩れによる事故」と判断した。毎週怪獣が登場する世界なのに、この手の証言が一笑に付されるのは昭和ウルトラシリーズの最も不可解なパターンの1つと言える。
 北斗と夕子は釈然としなかったものの、肝心の卵が出て来ないのでは「後はこちらで引き受けます。」という警察官の勧めに従う他なかった。

 だが卵が見つからなかったのも道理、件の卵は空を飛んでいた。それを飛行物体としてTACのレーダーが捕らえたため、パトロール中の北斗に確認命令が出た。その指令が夕子から伝えられる際に、「もうすぐだな、俺達の歓迎パーティーが始まるのは。」というのほほんとした発言をしたり、その能天気振りを咎められるや場所も聞かずに確認に向かおうとしたことを注意されたり、と新米隊員にありがちな迂闊さを見せた北斗だったが、この時をもって「TAC内で信頼されない北斗」のイメージが確立したのだとしたらチョット痛過ぎる………。
 ともあれ竜隊長の丁寧な指示もあって北斗は飛行する卵を発見。卵は金色に変じ、サイズも20mほどに拡大していたが、数発のミサイル攻撃を受け、爆発して消えうせたかに見えた。

 場面は替わって北斗と夕子の歓迎パーティー会場。
 開催に当たって、竜隊長は「地球は狙われている。」というどこかで聞いたような台詞を持ち出し(笑)、TACの使命の重大さ、そこに若き力が必要であることを説き、北斗と夕子は正義と自由を守るために戦うことを誓った。
 ところがパーティーがたけなわとなる頃、北斗が仕留めた筈の巨大卵が虚空から現れ、旅客機を破壊するという大事件を起こしていた。
 コサックに扮する今野が踊り、同じコスプレで吉村がギターを奏でる中、緊急事態を告げる通信が入り、隊員一同は事件を知った。
 画面に現れた巨大卵を見て、自分が仕留めた筈の卵が飛んでいることを告げた北斗に山中と今野がやり玉に挙げ出した。
「お前、爆破したんじゃなかったのか?」(山中)
「しました!」(北斗)
「じゃあ、あれは何だ!!」(山中)
「不思議です…。」(北斗)
「北斗…お前、パーティーに早く来たくてちゃらんぽらんでほったらかして来たんだろう!?」(今野)
「そんな…」(北斗)
「何ぃ?!馬鹿野郎!!」(今野)
「信じてくれ!俺は確かにやったんだ!」(北斗)
「北斗!お前も男なら卑怯な言い訳はするな!200名もの命が失われたんだぞ!」(山中)
 あかん………第2話目にして全然信用されていない………長年ウルトラシリーズを繰り返し見てきて、このような全話解説を作る前に山中や今野の性格は熟知しているから、苛めや性格の悪さで北斗を責めている訳ではないのは分かるし、山中が言うように200名の命が失われた重大さから責任追及が鋭くなるのも分かるが、なんぼ何でも「パーティーに早く来たくて」という邪推は酷過ぎる……………。まさか、今野は前回置いてけぼりを食らったことを根に持って…………ニェート(No)、今野はそんなねちっこい奴じゃなかった………。

 ともあれ、竜隊長が最前の北斗の攻撃でオシログラフから反応が消えたのを見ていたことを証言して北斗を庇ってくれたおかげでその場は収まった。だが、卵迎撃を命じた竜隊長は北斗には残って謹慎するよう命じた。
 些か可哀想だが、200名の人命が失われた事態に関わっていたとあっては、止むを得ない措置だろう(潔白が証明された後に謹慎を解いても遅くはないのだから)。竜隊長にまで疑われている、と思い込んでショックを受けた北斗だったが、夕子は先の迎撃時のことを話して、隊長が北斗を信頼していることを伝えた。

 富士山麓を飛び立ったTAC機は巨大卵を発見し、これに機銃掃射を加えた。攻撃を受けて忽然と卵が消えた様子を不審に思った竜隊長と山中。竜隊長はこの反応から卵の正体を「宇宙物体」と推測し、同時に北斗もこれに騙された、と断じた。
 成程、竜隊長は北斗を信頼し、それでも確実なことを確認するまでは厳しい態度を崩せなかったのだろう。この、隊員達を信頼しつつも、起きたこと、確認したことに基づいてその場その場での必要な信賞必罰に徹するのが竜隊長という人間の優れたところである。
 山中と今野も決して嫌な奴ではないのだが、竜隊長がいなかったら、TACは険悪な雰囲気を漂わせる組織になっていただろう(苦笑)。

 ほどなく卵が再度現れ、勇んで攻撃しようとした今野を竜隊長が止めた。場所的に街に被害が及びかねないからで、そうこうしている内に卵はとあるビルの屋上に鎮座した。これを基地内のモニターで見ていた北斗は激昂して、謹慎を命ぜられたにもかかわらずTACパンサーで現場に向かい、迫撃砲でこれを破壊せんとした。「信頼されない側にも問題あり」だな(嘆息)。
 勿論卵はそれしきの攻撃ではびくともせず、北斗は駆け付けた竜隊長の叱責を受けた。叱責されて尚、自分の過失を自分の手で償わせてくれ、と懇願する北斗だったが、竜隊長は宇宙物体相手にそれしきの攻撃は無意味だと告げた。
 そうこうしている内に、異次元空間ではヤプールが古代カメレオンと宇宙翼竜の合体を命じ、地中からは冒頭の銀卵が浮上。ビル屋上の金卵は緑の斑模様を発光させ、あれよあれよという間に2つの卵が合体し、更に巨大な卵と化した。

 BパートはTAC基地から始まった。今頃になって謹慎中の独断専行を詫びる北斗に、竜隊長は「猪突猛進」と「勇気」の違いを諭し、謹慎は北斗が無茶をすると見たため、と説明。親からもらった1つしかない命を粗末にしない様にも諭した。人を見る目がある上に、いい人だ………ま、現実にTACのような組織が編成された場合にはこれほどの人物でなければ隊長は務まらないとは思うのだが。
 ともあれ竜隊長はコーヒーを飲みながら沈思黙考していたのだが、そこに梶が古代エジプトの古文書を携え、卵の正体は古代超獣カメレキングであると告げた。
 古文書には挿絵まであり(笑)、アトランティス大陸を襲った超獣とされていた(←やり過ぎ!)。山中と吉村も卵のX線写真を撮影しており、内部での成長した姿からカメレキングであることに疑いの余地はなくなった。
 卵の内に叩くべし、と断じた竜隊長は梶に新兵器を取りに行かせ、美川にはニューヨーク本部への報告を命じた。ちなみに美川隊員演じる西恵子さんの英語の発音はかなり綺麗なものだった。
 一方、梶の持ち込んだビッグレーザー50というレーザー銃を50倍の威力に改造した大型ライフルだった。それを聞いた竜隊長は出動を下知し、北斗にも「一緒に来い!」と命じた。

 満を持してのレーザー銃攻撃は、山中と吉村が同時発射し、北斗が検査機の様なもので生体反応を探りながら進めたが、奮闘空しく、卵からはカメレキングが誕生してしまった。
 ビッグレーザーは勿論、先の迫撃砲や個々のTACガンによる銃撃が次々とカメレキングに浴びせられたが、残念ながらこれで討ち取れるようならウルトラマンAの存在は必要ない(苦笑)。
 カメレキングはTACの攻撃を物ともせず、傍若無人に暴れ回った。そして攻撃中のTACに1人の女性が助けを求めて来た。現場から逃走しようにも子供達を乗せたバスがエンストして動かないというのだ。快く応じた竜隊長達がバスの元に駆け付けると、乗車していた3人のクソガキが、迫るカメレキングを見て、「カッコいい!」に一言で見物に飛び出してしまった……………何て阿呆な、ガキだ………。
 飛び出したアホガキどもは本当に阿呆で、9秒でカメレキングが起こした火風に吹き倒され、「助けてぇ!お母さーん!」と叫び出す始末……。すぐに北斗と夕子に助けられ、その間にバスのエンジンもかかった。それを見届けた竜隊長は基地にTACアローの搬送を命じた。というのも、古文書によるとカメレキングの弱点は舌とのことで、そこにワンポイント攻撃を仕掛けるという危険な任務に竜隊長は自ら向かう、と宣言し、その決意に山中と今野も姿勢を正して敬礼を送った。

 機中の人となった竜隊長は単身、カメレキングにワンポイント攻撃を仕掛けんとしたが、肝心のミサイルが発射せず、機体からは煙まで吹いていた。そのまま無言で操縦を続ける竜隊長が特攻に出るのは明らかだった。
 それを察知したのか、北斗と夕子のリングが発光。各々バイクに乗っていた2人は「ウルトラタッチ」ならぬ「ライダータッチ」でウルトラマンAに変身した(←よくバイク壊れなかったな……)。
 Aとカメレキングの戦いは、殴り合いでは互角だったが、しばらくすると飛行能力を利したカメレキングが上段攻撃に出ると形勢はAの不利に転じた。だがカメレキングがガス攻撃に出た間隙を縫って接近戦にも仕込むと投げ技を駆使してグロッキーに追い込んだ。
 結局勝負は、Aがカメレキングの両翼をもぎ取り、メタリウム光線を食らわせて勝利を収めた。

 ラストシーンはとある海岸。そこでは先の特攻で足を負傷した竜隊長が松葉杖をついて海風に吹かれていた。そこで竜隊長と見舞いに来た北斗との間でとりとめのない会話が交わされたが、さして重要でもないので割愛。以下、次週へ。



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平成三〇(2018)年七月九日 最終更新