ウルトラマンA全話解説

第52話 明日のエースは君だ!

監督:筧正典
脚本:市川森一
遊牧星人サイモン星人、最強超獣ジャンボキング登場
 冒頭、円盤対円盤の打ち合いに始まり、片方がとある山村に撃墜された。それを調査せんとして駆け付けたTACの面々だったが、程なく北斗が携帯していた計器の反応から搭乗者である宇宙人を発見した。
 発見した宇宙人はまだ子供で、体格も地球人の子供並みで、ウルトラ兄弟に扮した子供達(←マン、ゾフィー、セブンの御面を被っていた)のリンチ攻撃に遭っていた。

 勿論TACの面々はこれを止め、宇宙人の子供を保護した。これに対して子供達は「そいつを死刑にするの?」と尋ねた。死刑にする理由は「宇宙人だから。」とのことで、どうも「宇宙人=悪」との偏見は(架空の世界とはいえ)根強い様だった。まあ、地球にやって来た宇宙人の殆んどが敵対的だったから、無理ない気もする。
 北斗は子供達がウルトラ兄弟の御面を着けていることに触れつつ、ウルトラ兄弟が何も悪いことをしていない者を宇宙人であるというだけの理由で訳もなくいじめたりしない、弱い者の味方であることを諭した。
 これに対して子供達は気まずそうにしながらも素直に聞き入っていたから、思い込みが強かっただけで、分からず屋だった訳ではない様だった。

 ともあれ、宇宙人の子供はTAC基地に保護されることになった。TACパンサーでの移動中、北斗・竜隊長・山中の会話から宇宙人が遊牧星人サイモン星人で、サイモン星人はかつてヤプールの襲撃を受けて宇宙を遊牧する破目に陥っていたことが説明されていた。さすがにTACでは中盤までの宿敵にして、作品を通じてその影をちらつかせていた存在であるヤプールのことは研究していたようである。
 そんな会話が為されていた中、突如サイモン星人の子供が頭上の発光器を赤く点滅させ始め、TACの面々は何かに脅えている、と判断した。

 次の瞬間、上空に巨大な光が現れ、TACの面々はただ事ではないと色めき立った。そして、数々の光のシルエットが浮かび上がり、

「地球の空を彷徨う超獣の亡霊達よ Aの手で空の塵となった幾多の超獣の怨霊よ ここに集まれ。」

との声が響き、ユニタングマザリュースカウラの影が浮かび上がった。そして「今一度生き返るのだ!」というヤプールの号令一下、それ等が合体すると最強超獣ジャンボキングの姿となって実体化した(名前は出ていなかったが、マザロン人の体も含む)。
 謂わば、超有名なタイラントに先駆けて登場した合体超獣だったのだが、それにしてもマイナーな超獣ばかりで構成されているよなあ、コイツ…………(苦笑)。(タイラントはレッドキング、ベムスター、イカルス星人、シーゴラスといったメジャー怪獣の合成体)

 とはいえ、数々の超獣の能力を結集しただけあってジャンボキングの能力は強力で、口から発する火炎とミサイル弾の連射はTACガンで応戦出来るものではなく、TACパンサーは炎上、竜隊長達は本部に一時退却し、北斗はサイモン星人の子供を庇って山中に逃れた。
 すると最前北斗に諭された子供達が出迎え、自分達の秘密基地に匿うと申し出た。「秘密基地」とはどこかの納屋を利用した子供らしい隠れ家だったのだが、3少年の1人の親が医者とのことで、無線機や救急箱も常備されていた。
 サイモン星人に先ほどのことを詫び、北斗とサイモン星人の手当てをする子供達は完全に北斗の諭しを理解していた。直後にヤプールが、自分達はサイモン星人を追って来たもので、地球人に用は無く、サイモン星人を引き渡せば何もしないが、匿えば地球を攻撃する、との脅迫・要求を行った際も、「ウルトラ兄弟は弱い者の味方。」として、脅迫に屈しないことを誓い合っていた。

 これに満足し、単身ヤプールジャンボキングを討たんとして屋外に出ようとした北斗だったが、突如サイモン星人が赤い光線を北斗の足に浴びせてこれを妨害した。訝しがる北斗に子供達は、「サイモンが行かせたくないから。」とし、サイモン星人もその言に頷いた。
 その様子に子供達が弱きものの味方に徹する姿を見出して、痛みをこらえつつ微笑む北斗だったが、ジャンボキングは街を破壊し始めた。
 TAC基地からはTACファルコン、TACアロー×2機が出撃し、機銃掃射(山中の言によると熱光線での攻撃も含まれていたらしい)を加えたが、勿論最強超獣に効く筈もなかった。並大抵の武器では効かないと見た山中はアロー空対空ミサイルの使用を提言したが、竜隊長は市街地への影響を考慮してこれを却下し、ジャンボキングを郊外へ誘導するよう下知した。
 その為、TACファルコンとTACアローから投網を放ってジャンボキングを連行せんとしたが、最強超獣の圧倒的なパワーの前にTACアローは逆に振り回され(←勿論「脱出!」した)、ヤプールは街の半分を破壊したことと、明日の8時までにサイモン星人を引き渡さないと残る半分も破壊するとの脅迫を残してジャンボキングを撤収させた。

 この脅迫を受けて、丸で地球人を巻き添えにしたくないと云わんばかりにサイモン星人ヤプールの元に向かおうとしたが、北斗と子供達がこれを止めた。
街の被害は深刻だったが、子供達はせめてAが現れるまでは自分達がサイモン星人を守ろう、と誓い合い、それを見た北斗は子供達にサイモン星人を託して自分は一先ずTAC本部に戻った。
 そのTAC本部ではジャンボキングの分析とそれに対する善後策が練られていたが、妙案は出なかった。滅びた超獣の集合体をヤプールが操っているのであれば、そのヤプールを倒せば?と美川が進言するも、当然ヤプールが何処に潜伏しているかは杳として知れない。
 打つ手なしと見た山中は、街を守る為には一時サイモン星人を引き渡すのもやむを得ないのでは?との意見を出したが、勿論これには北斗が反対した。サイモン星人を引き渡せば、弱い者の味方をせんとする子供達の純な心を踏み躙ることになるからである。
 街を取るか?子供達の心を取るか?現実にて天秤にかければかなり難しい問題である。北斗は、街は壊れても再建が叶うが、一度踏み躙られた子供の心は容易には元に戻らない、としたが、街の住民にとっては堪った話ではない。
 結局、竜隊長はどちらも犠牲にしない為に、やれる限りのことをやるとして、試作段階なのを承知の上で明朝、細胞分解ミサイルにてジャンボキングを攻撃することを決した。
 そして、その夜、明日こそはAに変身してジャンボキングを倒さんと北斗が念じて見上げる夜空に南夕子の姿が浮かんだ。夕子は北斗が「Aであることを誰かに知られれば地球人として地球に留まれない。」と告げた。
 口を動かさずそう伝える夕子の姿は幻影か想像かと思われたが、北斗は「どうして今それを俺に言うんだ?」と問い掛けていたので、本物の夕子だったのかも知れない。だが、それには答えず、夕子の姿は遠ざかり、夜空に消えたのだった。

 そして翌朝。細胞破壊ミサイル(と云う名だが、実態は巨大レーザー砲)が配備され、ヤプールが指定した8時を前に竜隊長は北斗に子供達とサイモン星人のところへ行くよう命じ、北斗が駆け付けると子供達は10人前後の人数に増え、意気軒高さを見せていた。
 そして、8時が来ると予告通りジャンボキングが出現。即座に細胞破壊ミサイルが発射され、ジャンボキングは紫色の爆煙に包まれた。が、しかし煙が晴れて姿を見せたジャンボキングは全くの無傷。試作段階だったのがいけなかったのか、最強超獣という相手が悪かったのか………いずれにせよ、ジャンボキングは眼から破壊光線を発し、細胞破壊ミサイルは砲台諸共呆気なく破壊された。

 ジャンボキングは益々猛り狂い、子供達の秘密基地の方へ進んで来た。この間、サイモン星人は頭上の発光器を赤く点滅させており、北斗は密かにそれを訝しがっていたが、ジャンボキングはどんどん秘密基地の方に迫り、まずは避難せざるを得なかった。
 そして子供達を先に走らせ、自分はサイモン星人を庇いながらTACガンで応戦していた北斗だったが、そこにサイモン星人からテレパシーが伝わって来た。果たせるかな、サイモン星人の子供の正体はヤプールだった。
 ヤプールは北斗に自分がジャンボキングを操っていることを告げ、今の今まで自分の正体に気付かず庇っていたことを嘲笑い、Aに変身しろと挑発した。勿論昨夜夕子が行っていた様に、変身を見られたら地球に留まれないことを知った上での挑発である。

 これらのカミングアウトはテレパシーにて北斗だけに伝えられたもので、勿論子供達には分からなかった。だが、北斗はTACガンを構えた。
 慌てた子供達が北斗を止めに掛かった。ヤプールは尚も挑発を続け、自分をヤプールと知らない子供達の前で自分を撃てるものなら撃ってみろと嘲笑っていたが、調子に乗って、「私を撃てばお前は子供達の信頼を失うことになるぞ。子供達から優しさを奪い、ウルトラマンAを抹殺することが私の目的だったのだ!」と得意気に告げたところを即行射殺された(笑)
 勿論、サイモン星人(に見える者)の正体を知らない子供達はサイモン星人(に見える者)の死を哀しみ、口々に北斗を罵った。こうなると分からず屋の多かったこの作品(苦笑)ならずとも説得するのは容易ではない。「裏切られた!」という感情の反動で冷静さも、聞き入れ体勢もなきに等しいのだから。つまり自分を撃てば北斗がまずい立場に追い込まれるというヤプールの読みは完全に正しかった。だが、それを踏まえて尚、即行で射殺されるほど北斗のヤプールに対する怒りが大きかった訳だから、ヤプールもとんだ間抜けものだったと云えよう(笑)
 ともあれ、かかる状況の陥っては、現実世界ではまずどんな正論を持ち出しても、言葉は右から左である。だが北斗は説得を試みた。

 自分が倒したのはサイモン星人ではなく、ヤプールだと。

 だが、当然子供達には通じない。何故そう言えるのか?との問いには、

 テレパシーで伝えて来た。

 と答えたが、勿論子供地にテレパシーが使えず、知識で「テレパシーを使えるのはウルトラ兄弟だけだ!」と知っているだけの子供達が実感し、信用出来る筈もなかった。
 口々に北斗の言を否定し、不信を露わにし、罵声を浴びせる子供達。そのとき、北斗の脳裏には昨夜の夕子の姿と言がフラッシュバックした。
 だが、それを振り切るように北斗は子供達に、自分がテレパシーを使えたのは自分がウルトラマンAだからだ、と告げた。この台詞には子供達は信じる信じない以前に驚愕する気持ちの方が大きかった。
 そして北斗はそれを証明する為に、丁度その場にやって来たTACの仲間達にも背を向けると駆け出し、これが最後の戦いであることを告げて一同の眼前でウルトラマンAに変身したのだった………。

 「彼等に真実を伝えるにはこうするしかなかった。さようなら地球よ、さようならTACの仲間達、さようなら北斗星司。」との思念を発してジャンボキングに対峙した。
 かくして北斗が告げた様に、ウルトラマンA最後の戦いが始まった。さすがに最強超獣であるジャンボキングは強く、身長(59m)・体重(6万t)共にAを上回る体格相手では肉弾戦は不利で、間合いを取れば口からの火炎とミサイルが容赦なく降り注ぎ、馬乗りになって攻撃すれば臀部から出たマザリュースの部位が光線を発して妨害した。
 だが、Aはメタリウム光線ギロチン・ショットウルトラギロチンをあのスペースQの要領で凝縮して放った最強技)でジャンボキングを首ちょんぱにして最終決戦に勝利を収めたのだった。

 夕焼け空の中、子供達とTACの面々に向き直ったAは、

「優しさを失わないでくれ。弱い者を労り、互いに助け合い、何処の国の人達とも友達になろうとする気持ちを失わないでくれ。例え、その気持ちが何百回裏切られようと。それが私の最後の願いだ。」

 と云う特撮界屈指の名台詞を残して地球を後にして飛び去った。
 名台詞に余りくどくどいうのも野暮だが、この文章もインターネット上に掲載している以上、常時他国への悪口を書き込み、紙面上でも書き続けている輩にこそ、幼い日々に耳にしたであろうこのウルトラマンAの台詞を思い出して欲しいと思われてならない。

 口々に子供達が分かれの言葉を叫ぶ中、竜隊長だけが「北斗…。」と静かに呟く、些か寂しい別れだったが、主題歌がフルコーラスで流れる中、第1話で初登場したときの映像を用いてTAC隊員達の顔と名前が表示されてこの作品は幕を閉じたのだった。

ある程度予測していたが、やはり「分からず屋」を思わせるTAC内の諍いや、ストーリー上の弱者を集団で責め立てるパターンに対してはかなり酷評・辛口コメントを並べ立てたものになった。
 だが、誤解しないで欲しいがシルバータイタンは決して『ウルトラマンA』を駄作と思っていないし、TACが悪いチームと思ってもいない(この全話解説を通して見て下さった方々は理解して頂けるとは思うが)。
 長いウルトラシリーズにおいて、異次元人ヤプールと云う陰湿な宿敵を抱え、「超獣」という「怪獣」を越えた存在を敵に回し、4作品に渡って好評を博した故に生まれた同作品が歴代作品との相違を見せなければならないという厳しい条件の中で『ウルトラマンA』の制作陣も、俳優諸氏も凄く奮闘されたのは感じる。
 シルバータイタンが酷評したような展開や局面が「あってはならない。」とは言わないが、少しばかり「悪しきパターン化」をした感が否めないのが珠に瑕だったのである。
 「男女の一体変身」も、「超獣」も、「異次元人」も長き歴史における一過性の存在に終わったが、だからこそ再登場の度に独特のインパクトを持ち、「ウルトラ兄弟」の客演をある程度方針付け、「ウルトラファミリー」にまで拡大した功績は見逃せないことを触れて本作の全話解説を締めたいと思う次第である。


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平成三〇(2018)年七月二九日 最終更新