宇宙刑事ギャバン全話解説

第1話 東京地底の怪要塞

監督:上原正三
脚本:小林義明
シャコモンスター登場登場


 冒頭、東京郊外にあるアバロン乗馬クラブを舞台にこの『宇宙刑事ギャバン』はスタートした。クラブのオーナーである藤豪介(多々良純)が審判を務める中、子供達はサッカーに興じていた。
 しかし、豪介のこの服装、モンゴル人みたいで、「乗馬=欧州スポーツ」のイメージを一変させるものが有った。完全な新シリーズ故のこだわりだろうか?まあ、それはともかく、一段落したところで休憩に入った豪介が広げた新聞にはスペースコロニーが完成間近との記事があり、人類が宇宙時代に向けて新たな一歩を踏み出すであろう未来に思いを馳せて豪介は相好を崩していた。

 だが、スペースコロニー完成で新たな一歩や、それまでを遥かに凌駕する宇宙開発が期待出来る一方で、その宇宙とは地球人類の科学や想像がまだまだほんの僅かしか及ばない未知にして広大過ぎる世界で、多くの謎に満ち満ちていた。
 そんな謎の一つである宇宙の裂け目とも云える巨腔の中に居を構える宇宙犯罪組織マクーの本拠地である魔空城が存在していた。

 折しも、魔空城に一隻の宇宙船が到着し、その中から城内に入って来たハンターキラー (飯田道郎)が膝を折ると首領であるドン・ホラー (声:飯塚昭三)が部下一同に訓示する形でマクーの目的が語られた。
 地球を植民地化するだけなら特撮番組に有り触れた悪の組織の目標なのだが、マクーは単に地球を自分達の支配下に置くだけではなく、「犯罪に満ちた惑星にしなければならない。」、「人間どもから善なる心を奪い取り、悪魔の魂を植え付ける」といった、地球を悪徳が横行する地獄の様な世界にせんとの意志が悪質さに拍車を掛けていた。
 普通、征服して支配下に治めるまではどんな残忍な手段や卑怯な手法を採る組織でも、支配が確立すれば安定を望み、それが治安を生むのだが、犯罪組織であるマクーはそれを望まないと云う。一体何が楽しくてそのような統治を望むのだろうか?もし、世の中が悪事の飛び交う世界にすることに価値観を感じての存在なら、下手な侵略者より恐ろしいと云うより、悪質と云える組織である。

 ともあれ、ドン・ホラーはかかる悪質侵攻の手始めにスペースコロニーを血祭りにあげるよう命じた。これを受けてハンターキラーの両脇を固めていたダブルマンが呼び掛けるとハンターキラー眼前の床面からシャコモンスターなるベム怪獣が現れ、一隊は宇宙船に乗ると魔空城を発ったのだった。
 宇宙船からは十体前後の円盤部隊が飛び出し、次々とスペースコロニーに攻撃を仕掛け、更には壁面を破ってシャコモンスターも襲撃に加わった。どうもスペースコロニーには武装は無い様で、中にいた職員は次々と殺され、コロニー自体も爆砕された。
 追い打ちを掛ける様にコロニーの破片が次々に地球上に飛来し、東京でもそれらの直撃を受けて数々のビルが壊され、その間隙を縫うようにして円盤群は地球の地下に降りたった。
 ナレーションによると「宇宙海賊」とも称されるマクーは地球上の富も人材も独占する気でいて、侵略の為の資材を次々と地球上に運び込んでいた。

 だが、宇宙にいるのは悪魔だけではなかった。
 場面が宇宙空間に変わるとそこには超次元高速機ドルギランが航行し、中には銀河連邦警察の特命を受けてバード星から地球に向かう宇宙刑事ギャバン(大葉健二)の姿があった。
 ギャバンが機内の通信システムを作動させるとそこにコム長官(西沢利明)とその秘書・マリーン(名代杏子)の姿が映し出された。コム長官は地球に着いたらハンターキラーに用心するよう告げた。ハンターキラーは元宇宙刑事でありながら銀河連邦警察を裏切ってマクーについた人物とのことで、その説明を受けたギャバンは母の故郷である地球をマクーの勝手にはさせないとして戦意を燃やしていた。

 直後、ドルギランは円盤群と遭遇。ギャバンはこれを迎撃し、ドルギラン各所から出るレーザー光線は次々と円盤を打ち落とした。一方、円盤群側の攻撃も命中するのだが、ドルギランは巨大な円盤(ギラン円盤)の下にスペースシャトルの母船がくっついたような全貌を持ち、円盤の何十倍ものガタイもあってか、円盤からの攻撃は全く功を奏さず、何機かの円盤が撃たれたところで撤収し、初開戦はギャバンの勝利に終わった。

 そんな勝利を喜ぶギャバンの背後から「いけない人」と云いながら一人の女性が現れた。女性の正体はミミー(叶和貴子)で、ドルギランに密航する形でギャバンに同行せんとしていた。勿論ギャバンに内緒で乗り込んだもので、「いけない人」なのはこの女の方と云える(苦笑)。
 ギャバンは密航を「コム長官の娘」であることを傘に来たわがまま行為として、「今ならまだ間に合う。」として補助艇でバード星に帰るよう促したが、明らかにギャバンへの好意から彼に追随した彼女がそれを受け入れる筈もなく、映像転換装置・レーザービジョンでセキセイインコに変身すると「地球で会いましょう。」と云ってその場を去ったのだった。
 余談だが、コム長官を演じた西沢利明氏は時代劇で悪役(主に悪代官・悪奉行)を演じまくっている人物で、一方の叶和貴子さんはこの宇宙刑事シリーズとほぼ並行して代表的時代劇である『大岡越前』の第7部・第8部に女岡っ引き・おけい役でレギュラー出演していた。時代劇で対照的な役どころの二人が親子とは興味深い組み合わせである(笑)。

 ともあれ、マクーに続いてギャバンも地球に降り立った。母の故郷に初めて降り立ったギャバンは宇宙刑事の姿でマクーへの戦意を燃やし、一足先に地球に降り立っていたミミーとも合流した。
 一方で、スペースコロニーの破片が次々地上を破壊するような出来事に多くの人々が関心を寄せ、その真相を追っていたことでギャバンとミミーはレギュラーとなる人物と次々と邂逅した。
 富士山麓でスペースコロニー墜落の報道を信じず、撃墜されたと確信するUFOルボライター・大山小次郎(鈴木正幸)、そして好奇心からマクーを追い、数人の友人と共に地下アジトに潜入した豪介の孫・藤陽一(藤原進)等である。

 陽一達はトラックを駆る兵士クラッシャーの異形を目撃してこれを追い、マクーが前衛基地を作っていたのを見た訳だが、少年の一人が消火器を蹴倒すと云うべたなばれ方でクラッシャー達に追われ、何とか地上に出ることは出来たが、そこでダブルマン率いるクラッシャー達に包囲された。
 だが、直後にギャバンとミミーが乱入。ギャバンはジープを駆って次々とクラッシャーたちを撥ね飛ばし…………初会戦でいきなり車で轢かれると云う仕打ちは、特撮界における戦闘員の悲惨さと比較しても些か可哀想だったな(苦笑)
 そして懐からインコを取り出したギャバンはこれを子供達の方へ投げ、人間体に戻ったミミーに避難誘導を促した。

 ジープから飛び降りた後もクラッシャー達を千切っては投げ、千切っては投げを繰り返したギャバンに対し、ダブルマンは頭上からシャコモンスターにギャバンを強襲させた。これを受けたギャバンは「蒸着!」と叫ぶとコンバットスーツを身に纏い、宇宙刑事ギャバンに変身した。
 この「蒸着」という言葉、本来の意味は金属や酸化物などを蒸発させて、素材の表面に付着させる表面処理あるいは薄膜を形成することなのだが(実際にギャバンのスーツは真空蒸着によって作られている)、ナレーションによるとギャバンから指令を受けたドルギラン内のコンピュータが粒子状に分解したコンバットスーツを電送してギャバンに装着させ、宇宙刑事としての武装を完成させることを意味し、その蒸着に必要とする時間は僅か0.05秒とのことだった。「何故変身中に攻撃しないんだ?」とのツッコミを阻止する見事な設定だった(笑)。本当、この『宇宙刑事ギャバン』の少し前の特撮作品、変身アクションが長くて、よく「何故変身中に攻撃しないんだ!」と当時良く突っ込んだもんなあ、特に仮面ライダースーパー1には(笑)。

 そしてその雄姿を見せたギャバンが宇宙刑事であることを突然現れたハンターキラーが配下に告げた。その相手がハンターキラーであると認識したギャバンは「卑怯者!」と痛罵。それに対してハンターキラーは、地球は間もなくマクーのものになるとして裏切りの動機を簡単に触れると配下にギャバンへの攻撃を命じた。
 勿論、クラッシャー達雑兵に後れを取るギャバンではない。というか後れを取ったら作品が成立しない(苦笑)。何人かのクラッシャーが倒されたところでハンターキラーは早くもダブルマンと共に逃げた。うん、さすがは卑怯者だ(笑)。
 そしてハンターキラーを追ってアジト内を駆けるギャバンは掌から発するレーザーZビームで円盤を一体破壊。そんなギャバンの前に立ちはだかったのはシャコモンスターだった。

 魔空城で一連の展開を見ていたドン・ホラーシャコモンスターに有利な勝負をさせるべく魔空空間を発生させた。魔空空間とは、地軸転換装置を作動することで作り出す、一種のブラックホールともいうべき亜空間のことで、亜空間に逃れたシャコモンスターを追うべく、ギャバンは専用バイク・サイバリアンを召喚した。
 宇宙サイドカーとも呼ばれるサイバリアンは本来助手席が来るであろう場所に立ったまま走行することも可能で、地面があるのかもはっきりしない亜空間も難なく走行した。

 やがて魔空空間に降り立ったギャバンだったが、そこは完全にアウェーの地だった。
 訳の分からない飛来物が襲ってきたり、突如火炎放射が浴びせられたりしたが、ギャバンは前者をレーザーZビームで破砕し、後者はバリアーで防ぎ、シャコモンスターと対峙した。
 そしてギャバンとは逆に魔空空間をホームとするシャコモンスターは魔空エネルギーを得て地上の3倍のパワーを発揮してギャバンに襲い掛かって来た。ただ、それでもアクション的に明らかにギャバンが優勢に勝負は進んだ。まあ、第1話だしね(笑)。
 シャコモンスターは地形を利用した不意打ちを駆使したことでその点だけはやや有利に戦えたが、ギャバンはレーザースコープなる強化ガラス製ゴーグル内部に装備されている探索機能でシャコモンスターの動きを捉えた。
 そしてレーザーZビームを食らわしてシャコモンスターを討ち取ると、尚も妨害して来る魔空空間の環境に対してはドルギランの飛行機部分がドラゴンの如く変身した電子星獣ドルを召喚してこれに対抗した。ドルは眼光で巨大隕石を破砕し、加勢に来たダブルマンにギャバンは剣を抜いて迎撃した。
 更に剣にダイナミックレーザーパワーを注入して青白く輝く剣・レーザーブレードとすると、ギャバン最大の必殺技ギャバン・ダイナミックを発動してダブルマンを真っ二つにしたのだった。

 敵を倒したことで魔空空間は消滅し、周囲は元の環境に戻り、ギャバンは最初の戦いを勝利で飾った。
 そしてラストシーン。ギャバンはミミーと共に陽一達を助けた縁によりアバロン乗馬クラブで働く形で地球に過ごす手段を確保し、母方の姓から一条寺烈と名乗ったのだった(以後、ギャバンに対して人間体時は「一条寺烈」と表記し、コンバットスーツを纏った姿を「ギャバン」と表記します)。
 かくして宇宙刑事ギャバンと宇宙犯罪組織マクーとの戦いの幕が切って落とされ、「蒸着せよ!」とのナレーションの掛け声で第1話は終結したのだった。


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令和六(2024)年四月一九日 最終更新