宇宙刑事ギャバン全話解説
放映データ
- 製作/テレビ朝日・東映
- 全24話
- 1982年3月5日〜1983年2月25日
スタッフ
- プロデューサー/碓氷夕焼、吉川進、折田至
- 監督/小林義明
- 脚本/上原正三
キャスト
一条寺烈/ギャバン(大葉健二)、ミミー(叶和貴子)、コム長官(西沢利明)、マリーン(名代杏子)、藤豪介(多々良純)、大山小次郎(鈴木正幸)、藤わかば(中島早苗)、藤陽一(藤原進)、当山茂(加瀬慎一)、星野月子(立花愛子)、ハンターキラー(飯田道郎)、サン・ドルバ(西田健)、魔女キバ(三谷昇)、ドン・ホラー(声・飯塚昭三(第1話〜第10話)、渡辺猛(第11話〜第44話))、ダブルガール(尾曳伊都子、東まり子、平瀬りえ、阿知波悟美、山口ひろみ、五十嵐美鈴)、ホラーガール(声・太地琴恵)、ボイサー(千葉真一)、ナレーター(政宗一成)
主題歌 オープニング エンディング 「宇宙刑事ギャバン」 「星空のメッセージ」 作詞 山川啓介 山川啓介 作曲 渡辺宙明 渡辺宙明 編曲 馬飼野康二 馬飼野康二 歌 串田アキラ 串田アキラ
宇宙刑事ギャバンについて
宇宙刑事シリーズ(「宇宙刑事三部作」とも呼ばれる)の第一弾にして、メタルヒーローシリーズの第一弾でもある。
スーパー戦隊シリーズの立ち上げに携わったスタッフの手により作られた新シリーズで、『スターウォーズ』や『宇宙戦艦ヤマト』等で人気を博した宇宙を舞台にしたSFを骨子とした特撮作品で、「FRPにメッキを施したコンバットスーツ」、「レーザーブレード」、「異次元空間でのバトル」、「スーツが転送されて一瞬で変身、ナレーションによる変身プロセスの説明」等の当時として斬新で画期的な設定が仮面ライダーシリーズや戦隊シリーズとも一線を画し、後々のメタルヒーローシリーズを初めとする特撮作品に多大な影響を残した。
名前の通り、宇宙を舞台とする警察組織・銀河連邦警察に所属する刑事の物語で、宇宙犯罪組織マクーから地球を征服せんとしていることを察知し、コム長官の命を受けて宇宙刑事と地球人の混血児であったギャバンが地球に常駐し、コム長官の一人娘ミミーとともにマクーと戦う物語である。
金曜日午後7時半〜8時の放送枠で放映され、当時の子供達は「7時から『ドラえもん』、7時半から宇宙刑事、8時から『新日本プロレス』を見るのが定番だった。
「宇宙刑事ギャバン」主な登場人物
一条寺烈/ギャバン(大葉健二)
本作の主人公。任務中に行方不明となった宇宙刑事ボイサーを父に、地球人の女性・一条寺民子を母に持ち、自身も宇宙刑事として銀河連邦警察コム長官の命令を受けて地球に派遣された。
地球では母方の姓を用いて「一条寺烈(いちじょうじれつ)」と名乗り、アバロン乗馬クラブで地球人として働きつつ、ミミーや大山小次郎のサポートを受けてマクーと戦った。
ギャバンが本名で、「烈」は地球上での名前だが、周囲の地球人に対しては「烈」が本名で、ギャバンはコードネームという事になっている。
ノリが良く、明るい熱血漢で、子供達を初めとする周囲の評判も良かったが、マクーが動き出すと本来の仕事を優先するため、乗馬クラブの仕事が蔑ろとなり、さぼりまくったとしてある月の月給は3000円しかなかった。
元々地球育ちではなかったため、金銭感覚を初め日本社会に馴染めていない面が時折みられたのが珠に瑕。
最後はマクーを壊滅させた功により、銀河パトロール隊太陽系地区隊長に昇進(但し、部下は新任となったシャイダーのみだった)。
ミミー(叶和貴子)
コム長官の一人娘。ギャバンに好意を持ち、助手として彼をサポートする。父親の許可も得ず、地球に向かうギャバンに密航する形で随行した押しかけ助手(銀河連邦警察には所属していない)。
明るく可愛らしい性格だが、任務の途中で逃げ出したり、「バード星へ帰りましょう」と言ったりするなど、些か臆病な面を度々見せ、クモ、ヘビ等が苦手なところは地球人の女性に近い。
戦闘は殆んど行わないが、ペンダント型映像転換装置・レーザービジョンを用いることでインコに変身(放送開始当初は様々な動物に変身出来るという設定だった)して主に尾行や偵察に活躍し、移動や緊急脱出に役立てていた。
その他、バード星人特有のテレパシーや予知・透視能力を持っており、ギャバンの危機を救ったこともある。
ギャバンと同様、普段はアバロン乗馬クラブで働いている。密航の際には日本円で1個数千万円相当の宝石を大量に持参していたため、地球の金銭感覚に掛けるギャバンの欠点をカバーしていた。第32話で母親の看病のために地球を離れたが、第42話で復帰。
コム長官がギャバン以降の宇宙刑事を指揮していたことから、後作『宇宙刑事シャリバン』、『宇宙刑事シャイダー』にも客演した(レギュラー出演は本作のみ)。
コム長官(西沢利明)
銀河連邦警察の長官で最高責任者。ギャバンの父・ボイサーの親友でもあり、行方不明となった彼に替わってギャバンを一人前の宇宙刑事に育て上げた。多数の悪の組織を滅ぼした伝説の宇宙刑事としてマクーや、後作での宇宙犯罪組織においてもその名を知られている。
立場上、普段はバード星からの通信で各組織の情報や指令を伝えるのが主任務で、警察本部から出ることも、直接前線に立つことも滅多にないが、強さや技量は健在。ギャバンに対して自ら地球に赴き、直接特訓を行ったこともあり、その際には撃剣にて現役であるギャバン以上の技量を見せ、剣捌きの甘いところを指導していた。
マリーン(名代杏子)
コム長官の秘書。銀河連邦警察隊員。機械の操縦や手当の技術には長けているが、格闘することはない。術などは特に身に着けておらず、戦闘能力はミミーと同じでほぼ無い。
母親の看病のために一時地球を離れたミミーに代わり、しばらくの間ギャバンのサポートを担当したこともある。
ミミーとはかなり金銭的感覚が異なり、地球でショッピングの際に服の値段を見て「高いわね。」と諦めていた。
藤豪介(多々良純)
烈の勤めるアバロン乗馬クラブのオーナー。2年前に死んだ息子夫婦に代わり、孫のわかばと陽一の面倒を見ている。孫の友達に対しても暖かく接し、ハイキングやスポーツを通じて体を鍛えることを説いていた。
大山小次郎(鈴木正幸)
UFO専門のルポライター。あちこち取材に出向いては頻繁にマクーを目撃して巻き込まれたりするが、毎回無事に生き延びる強運の持ち主。怪事件が起こると必ず烈に知らせに来るが、彼がギャバンであることは知らない。
女好きで狂言回し的な役が多く、一人暮らししているアパートの部屋は汚く、典型的な三枚目だが、宇宙刑事三部作すべてに唯一人レギュラー出演した地球人キャラクターである。
藤わかば(中島早苗)
豪介の孫娘で、動物好き。たびたび事件に巻き込まれる。
藤陽一(藤原進)
豪介の孫でわかばの弟。烈を慕っている。
当山茂(加瀬慎一)
アバロン乗馬クラブで働いている青年。烈が事件でいなくなる度に仕事が増えてしまう。
星野月子(立花愛子)
第11話から登場。
ボイサーの親友でプラズマエネルギー装置・ホシノ・システムを開発した星野博士の娘。ギャバンが宇宙刑事であることを知ると、乗馬クラブで働くと同時にギャバンの地上捜査にも協力する。
かなり信用があるのか、ギャバンが潜入出来ない手術室などにも平然と入れたりする。しかし、それゆえにマクーによって命の危険に晒されることも多い。
マクーの壊滅後は銀河連邦警察に入庁し、後作にも客演。
ハンターキラー(飯田道郎)
元宇宙刑事で、ボイサーの要請に従って地球に派遣されたが、銀河警察を裏切る。
その際にホシノスペースエネルギーの情報をマクーに提供し、開発者・星野博士の抹殺とボイサーの拉致に一役買い、マクーの地球侵攻指揮官となった(その動機は最後まで明かされなかった)。
マクーにて数々の作戦計画を立案・遂行し、ギャバンにとって仇敵にして厄介な強敵であり続けたが、魔空城に帰還したサン・ドルバと魔女キバの復帰により地位を奪われることを恐れたことと、元々正反対の性格ゆえにサン・ドルバと非常に仲が悪かったこともあって、マクーをも裏切った。
宇宙刑事の暗号を用いてキバの妖術をギャバンに警告した。だがこの背信行為を魔女キバに看破され、かまを掛けられた際に暗に密告を認めてしまった。
マクー側では元々「用済み」として彼を抹殺する予定であったことから、ドン・ホラーによって暗黒銀河へ永久追放される。
その後、銀河警察のパトロール隊に発見されて保護されたものの、衰弱が激しく、収容先の銀河警察病院の病床での尋問の末、コム長官にボイサーの居場所とX計画の存在を教えて息絶えた。
サン・ドルバ(西田健)
第30話より武者修行から帰還したことで登場したドン・ホラーと魔女キバの息子。
それまで指揮官を務めていたハンターキラーに代わってマクーの地球侵攻指揮官に就任。武勇に長けているが、酒と女が好きで不真面目な性格。加えて己の武勇を過信しており、直情的。
それ故、作戦時に搦め手を立案することはあまり得意ではなく、親(主に母であるキバ)に頼り過ぎる傾向がある。
性格的な難は彼を溺愛する魔女キバからも案じられ、その地位が親の七光りによるものであることを伝え、諭されていたが、時に母親を呼び捨てにし、父であるドン・ホラーと口論すらしていた。
最終決戦で鬼首島の総本部基地を陥とされて後がなくなり、度重なる失敗もあって遂にはドン・ホラーから勘当され、魔空城をドルギランと接触させる提言してドン・ホラーとギャバンの相討ち、その後のマクー乗っ取りを画策したが失敗。
ギャバンを倒す以外に生きる道を失い、最期はレーザーブレードの投擲を受けて負傷したキバを庇おうとしたところにギャバン・ダイナミックを叩き込まれ、戦死した。
魔女キバ(三谷昇)
第30話から登場。ドン・ホラーの妻で、サン・ドルバの母親。
強力な妖術使いで、悪知恵が働き、溺愛から幾度も息子の作戦をフォローし、時にドン・ホラーに叱責される息子を庇うも、サン・ドルバからは余りを母親らしく接してもらえず、ドン・ホラーから妻として接せられるシーンも皆無だった。
最終決戦で息子から庇われるも共に戦死した。
尚、「魔女」であり、「母」でもあったが、演じた三谷昇氏は勿論男性である。
ドン・ホラー(声・飯塚昭三(第1話〜第10話)、渡辺猛(第11話〜第44話))
全銀河の征服を企む宇宙犯罪組織マクーの首領にして、獣星帝国の王。その正体は各種媒体によって相違があり、公式には不明である。
魔空城の広間中心の玉座に石像のような巨体を鎮座させ、自ら立って動くことはないが、強力な超能力を持ち、伸縮自在の腕や目からの光線による攻撃を仕掛け、首を刎ねられてもその首を浮かせて攻撃出来る。
悪の組織の首領の例に漏れず、冷酷な性格だが、真面目に努力するギャバンと対照的に遊び好きの息子サン・ドルバに苛立ったり、ギャバン打倒よりも息子の教育を優先させたり等、父性と組織首領としての自覚が綯交ぜになっていてどこか人間臭い。
特にサン・ドルバ登場後の作品後半にその傾向が強く、最終決戦では魔空城に乗り込んだギャバンを賞賛しつつ配下たちを下がらせて、一対一の決闘で決着をつけようとした。
サン・ドルバに対しては表向き厳しい態度も取り、勘当を云い渡したりもしたが、最終話で裏切りが発覚して尚、魔空空間や戦闘円盤による援護は行っており、多少なりとも父性愛は存在していた。
最終決戦では、ギャバンと一対一で勝負を挑み、ギャバンを追い詰めるもが、一瞬の隙を突かれて不覚を取り、戦死した。
ダブルガール(尾曳伊都子、東まり子、平瀬りえ、阿知波悟美、山口ひろみ、五十嵐美鈴)
女性の獣星人。主に人間の女性に化けたスパイ活動や作戦の補佐に従事。手裏剣を武器にギャバンと戦うこともあった。
ホラーガール(声・太地琴恵)
ドン・ホラーの秘書。鳥のような顔をしており、独特の奇声を発する。第26話を例外として人語を話さない。最終話で魔空城と共に爆死。
ボイサー(千葉真一)
ギャバンの父。地球地区担当の宇宙刑事で、地球人・一条寺民子との間にギャバンを儲けた。
捜査中に友人の星野博士が開発したレーザー増幅システムの秘密を知ったため、同じ宇宙刑事でありながらマクー側に寝返っていたハンターキラーの裏切りに遭い、マクーに拉致され、消息不明になっていた。
マクー基地にて監禁され、長年に渡り致死量に近い自白液を注入されるなどマクーの拷問を受けていたが耐えて生き続けることでシステム設計図の秘密を守り抜いていた。
第43話でギャバンに救出されるが、長年に及ぶ拷問の影響で肉体は限界に達していたため、息子に看取られながら息を引き取った。
敵対した組織・宇宙犯罪組織マクー
宇宙犯罪組織マクーとは
名前の通り、宇宙を股にかけた犯罪組織。
全宇宙規模でその名を轟かす強大な組織で、獣星帝国の異名を持ち、強大な武力によって数万年に渡って数々の惑星を支配下においている。
2万6000年という、宇宙警察機構より古い歴史を有し、魔空空間と呼ばれる宇宙の裂け目にある一種のブラックホールに浮かぶ魔空城を本拠地に惑星間で犯罪を繰り返し、人的・物的資源を独占するために暗躍していた。
高度な科学力を持つ一方、獣星の神を祀る儀式のためにギャバンの首を供えようとするなど、宗教的な一面も見せていた。
組織としては、主に間諜を務めるダブルマン、ダブルガール、作戦実行に直接携わるベム怪獣・ダブルモンスター、戦闘員である兵士クラッシャーで構成されている。
ダブルマンは制圧してきた惑星に生息していた宇宙人を改造した獣星人で、人間社会に(社会的地位が高い者、各所にコネの利く者として)潜伏させ、作戦活動を実行・補佐する者の姿を取ることが多い。
出身星による相違で数種類の姿のものが存在するが、作中ではすべて「ダブルマン」としか呼称されていなかった。ダブルガールについては上述参照。
ベム怪獣はマクーが制圧してきた星に生息していた進化したエイリアンモンスターで、名前の最後に「モンスター」と付く。凶暴で知性が低いため、言葉を全く話さず、巨大化可能の者も存在。
そのベム怪獣とダブルマンを、香月教授を脅迫して完成させた生体合体装置を用いて合体させたのがダブルモンスターで、ベム怪獣のパワーとダブルマンの知性を合わせ持つことでベム怪獣の3倍の戦闘力を持つ存在として第13話から登場。名前の最後に「ダブラー」と付く。
多くは人間体を持ち、医師や社会的影響力の大きい人間、各界に出入りできる人間の姿を取る。知能が高い個体も存在(言葉を話さない等、知能の低い個体も存在)。
当初は動物モチーフのものが多かったが、後々には事象や機能をモチーフとしたものが多くなった。
放映リスト及び解説
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令和七(2025)年四月一九日 最終更新