宇宙刑事ギャバン全話解説

第2話 盗まれた日本列島

監督:上原正三
脚本:小林義明
ガマラモンスター登場


 冒頭、突如海上を走る50万tタンカー・大日本丸が怪光線に包まれたかと思うと上空に拉致された。勿論マクーの仕業で、異常を察知した船長達はSOS信号を打とうとしたが、航海士として潜入していたダブルマンに阻止された。
 このダブルマンを演じていたのは栗原敏氏。数々の特撮番組でスタントを担ったジャパン・アクション・クラブの一期生で、数々の特撮番組に客演した実績や、後番組である『宇宙刑事シャリバン』でガイラー将軍を好演したのは、この様なサイトを閲覧して下さる様な方々に対しては、今更云うに及ばずであろう(←でも云っている)。
 ちなみにこのダブルマン役でも口髭を生やしているということは、この髭は自前だろうか?

 そして50万tタンカーという巨大なガタイ故に、これが空中に浮かび上がり、姿を消すと云う珍現象は目撃者も多く、普通なら即座に「マクーの仕業か?」となる訳で、実際烈とミミーはそう推測して探索していたのだが、当局は別組織の犯行として対応に当たっていた。
 というのも、日本政府に対して「アルファ」という組織の名前で脅迫状が届き、それに対してICPOまでもが動いたからである。
 ICPOからはジョーンズ長官(トニー・セテラ)が極秘来日し、国会議事堂内で政府高官(河合絃司)と対談していた。まあそれはいいのだが、このジョーンズ長官、握手を交わすのに咥えパイプで行っていた。外国人らしさを表現したかったのだろうけれど、無礼な奴である(苦笑)。
 ちなみにジョーンズ長官を演じたトニー・セテラ氏は日本のTV番組にて外国人役で活躍する在日アメリカ人俳優で、『仮面ライダーW』の第4話では園崎冴子と須藤霧彦の結婚を祝福する神父役を演じていた。令和7(2025)年4月現在御年86歳で現役。いついつまでも元気で活躍して欲しいものである。一方、政府高官を演じた河合絃司氏はチョイ役が多い俳優だが、その分特撮・時代劇・刑事ドラマとジャンルを問わず数多い客演を行っている。かなり昔から「長」のつく役が多く、工場長が非常に似合ういぶし銀的な俳優さんで長く活躍されたが、残念ながら平成20(2008)年12月17日に享年90歳で他界されている。

 ともあれ、アルファの名でマクーが日本政府に要求したのは、「莫大なダイヤモンド」で、受け渡し方法としてそれらを「宇宙ロケットで宇宙空間に打ち上げろ」としていた。もし拒否すれば大日本丸を宇宙空間で爆破し、地上に甚大な被害を出すと脅迫しており、情けないことに日本政府はICPO長官と共に協議しながらあっさり要求に屈した。どうも、50万tタンカーを浮かび上がらせて拉致するような科学力・組織力に日本政府もICPOも抗し得ないと判断したらしい。
 しかも、「莫大なダイヤモンド」を集めるのに日本政府は世界各国の協力を得ていたとのことで、世界各国が雁首を並べてテロリストに屈したことになる。フィクションとはいえ、チョット情けな過ぎないだろうか?

 ともあれ、莫大なダイヤモンドを手に入れた魔空城では、ドン・ホラーの前でハンターキラーダブルマンホラーガールがダイヤを手にほくそ笑み、それ以上に日本政府があっさり要求を呑んだことに味を占めていた。
 ドン・ホラーも日本政府にどこまで脅しが効くかを試そうと云う気になっており、日本政府に次の要求が為された…………こんなことになるから脅迫に簡単に屈するのは良くないんだよな、まあ理屈で分かっていても「毅然と断る。」が簡単に出来ればそれは脅迫ではないのだが。

 それはさておき、マクーが次に要求したのは富士山で、それを譲渡する旨を約した書類をロケットで送るよう要求した。
 そんなマクーの動きに対して烈も行動していた。つまり宇宙刑事としての任務に従事した訳で、そうなると体は一つしかないから、アバロン乗馬クラブにおける仕事をぶっちすることになり、豪介も姿を見せない烈をクラブの子供達共々訝しんでいた。まあ、ある意味リアリティがあると云えなくはない。
 ウルトラマンシリーズでも、仮面ライダーシリーズでもヒーローの多くは周囲にその正体を隠す。そして本来の姿で活躍し、それが多くの人々の目に留まるとき、当然日常での存在はその場にいないことになる。だが、そのことをいちいち言及される訳ではない。まあ、毎度毎度言及していたら番組が成り立たないが(苦笑)、「バイト不在」を言及しているのはある意味現実を踏まえている。

 ともあれ、烈は日本政府の動向を追って富士山麓のロケット発着場に向かった。勿論銀河連邦警察の宇宙刑事であっても、地球や日本的には一民間人としてしか認識されていない(と云うか、戸籍があるかも怪しい(苦笑))から、潜入することになる。
 元々スタントマン出身であることもあり、既に『バトルフィーバーJ』『電子戦隊デンジマン』で特撮ヒーローとしての経験もあり、ここで大葉氏は高所の壁と壁の隙間に体を挟み込むように入れて巡回警備員による監視の目を躱す見事なアクションを展開していた。
 ただ、アクション−つまり体裁きは見事(3F近い高さから難なく飛び降りていた)なのだが、ガタイと場所的にはバレない方がどうかしている身の振り方だった(苦笑)

 まあそれはさて置き、多少の時間は掛かったものの基地内部に潜入した烈は長官と側近の会話から富士山が要求されていること、側近は日本の象徴である富士山を譲渡することに屈辱を感じていていたが、長官は完全にアルファのちらつかせる破壊に屈していたこと知り、「マクーめ……。」と呟いていた。この時点ではまだマクーの名前は誰の口からも出ていないのだが、烈は完全にマクーの仕業と決めて掛かっていた。ま、正しいのだけれどね(苦笑)。
 厳密にはドルギランにてコム長官との通信で、マリーンからアルファなる組織は存在していないことを聞かされ、「アルファ=マクー」と断じていたのだが、世の中には存在自体巧みに隠匿している組織なんてごまんと存在するであろうに、アルファが存在しないと云い切っていたマリーン凄過ぎ(笑)である。

 ともあれ、コム長官は烈に譲渡書をマクーに渡してはならない、としてその阻止を命じた。ギャバンは早速ドルギランの下部である電子星獣ドルを切り離すとダブルマン率いるマクー戦闘母艦及びマクー戦闘円盤を迎撃。
 ギャバンはドルの頭部に立つと、口から吐く高熱火炎ドルファイヤー、目から赤いレーザーを放つドルレーザー、尻尾による打撃・スクリューアタック、前脚部による打撃ドルキックを駆使して円盤群を打ち落とし、マクー戦闘母艦を撤収せしめた。
 退却する戦闘母艦を目視しながら、「思い知ったかマクーめ!」と吠えるギャバン……………ドルのアクションは見事なのだが、そのアクション中頭部に乗っていたのはただただ危険でしかなかったと思う(転落及び狙撃の可能性から)。
 撤収し、悔しがるダブルマンに対し、ドン・ホラーはこの借りを100倍にして返すとして、ハンターキラーに大日本丸の東京突入を命じた。脅迫先である日本政府が逆らった訳ではなく、ギャバンが勝手に迎撃しているのに対して仄めかしていた危害を実行に移しても日本政府が脅迫に応じる訳でもないから、意味のない気がするが、犯罪そのものの横行もマクーの目的の一つであることを見れば、実入りを伴わない破壊にも一定の意味があるのかもしれない。

 Bパートに入り、ドルギランから東京近海上空を哨戒してマクーのアジトを捜索していた烈とミミーは金属とオイルの反応からある小島にマクーの前線基地があることを突き止めた。
 早速潜入を試みた烈は密かにクラッシャーを次々と打ち倒してアジト内に入り込んだ。しかしアジト内には対侵入者用のトラップが幾つも仕掛けてあり、レーザー砲が撃ち込まれたり、槍が頭上から落ちてきたり、巨大な鉄球が列を押し潰さんとばかりに転がり込んだりして来た。
 殊に合成とはいえ、烈が巨球を必死に躱すアクションはなかなかの迫力で、それ故なのかは不明だが、このシーンはED曲でも毎週流されていた。
 そしてかかる迎撃システムが作動しているのにマクー側がぼーっとしている筈もなく、程なくベム怪獣ガマラモンスターがクラッシャー達を率いて迎撃に現れ、烈はギャバンに蒸着した。

 ガマラモンスターは直立した両生類っぽい容姿で、寸胴気味の体格はとても強そうに見えず、ドン・ホラーも期待していなかったのか(苦笑)、早々に魔空空間の発生を命じた。
 これを受けて第1話同様、ギャバンはサイバリアンを召喚してこれに騎乗して追撃。魔空空間で両者は対峙した訳だが、さして強そうに見えないガマラモンスターも通常の三倍の強さを発揮出来るホームレンジとあってか、全身を球体にした体当たりや、弾力ある腹部を駆使しての、打たれ強さを見せていた。
 また、この戦いの舞台となった魔空空間では、ギャバンとガマラモンスターが土星の環に立って戦う姿がなかなかに幻想的で、これまたこのときの映像がED曲で毎週流用されていた。
 ただ、哀しいかな、打たれ強さになかなか優れていても、アクションでは完全にギャバンに分があり、ガマラモンスターの攻撃は決定打に欠けていた………と思ってたら、レーザーZビームを浴びるや突如巨大化し、毒ガスまで吐き始めた。
 さすがにこの体格差ではまともに戦えないと思ったものか、ギャバンは電子星獣ドルを召喚し、ドルレーザー (最前とは異なり、前脚からリング状レーザーを放つタイプ)を撃たせた。
 勝負はドルファイヤーと毒ガスの応酬から、ガマラモンスターの鈍重そうな体格をドルが長首で掬い上げて転倒させたところに眼光タイプのドルレーザーを浴びせてこれを倒し、勝負が決する共に魔空時空は消失した。
 そしてそこに「勝負はこれからだ!」の叫び声と共に空飛ぶ帆船に改造された大日本丸が現れ、艦砲射撃でギャバンを強襲してきた。艦砲射撃を躱しながらその攻撃が無線操縦によるものであることを察知したギャバンはエレクトロソナーを駆使して海上の小型クルーザーに乗っているダブルマンがこれを操っていることを察知するや再度サイバリアンを召喚した。

 滑空するサイバリアンからクルーザーに降り立ったギャバンは抜刀してダブルマンと撃剣を展開。どちらが有利とも取れない互角の撃剣が続いたが、程なくダブルマンは大日本丸が5分以内に大爆発すると宣して、高笑いしながら港に飛んだ。
 これを追って港に降り立ったギャバンはレーザーブレードを発動。曲刀を振り回しながら打ち掛かって来たダブルマンの攻撃を躱すと、文字通り返す刀でギャバン・ダイナミックを炸裂させてダブルマンを真っ二つにしたのだった。

 だが、勝利の余韻に浸っている暇はなかった。大日本丸は都心に向かっており、爆発は3分後に迫っていた。ドルギランに戻ったギャバンに対して大日本丸は砲撃を放ちつつ都心に向かっていた。
 結局、ドルの爪で大日本丸を捕獲し、宇宙空間に運んだところでスクリューアタックを食らわせる形で更に地球から遠ざけることで地上は守られたのだった。そして都心は数々の脅迫や巨大タンカーによる襲撃が無かったかのように平和な日常が戻ったのだが、その都心で車を走らせる烈とミミーをビルの上からハンターキラーが笑っているとも、怒っているともつかない表情で憎々しげに見送っていた。
 かくして第2話は終結した訳だが、ハンターキラーの複雑な表情は何を意味するのであろうか?


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令和六(2024)年四月一九日 最終更新