宇宙刑事ギャバン全話解説
第44話 ドンホラーの首
監督:上原正三
脚本:田中秀夫
遂に最終回である。
冒頭、烈とミミーは前話終盤で息を引き取ったボイサーの墓に詣でていた。墓は富士山ろくに立てられ、墓石には「ボイサー 民子之墓」と刻まれていた。民子は烈が6歳の時に亡くなっていて、前話でも烈がボイサーに母の墓参りに行こう、としていたので、ボイサーの死を受けて改葬されたと思われる。まあ、ナレーションではボイサーの遺骨を母の墓に葬ったとあったので、墓石だけ変えたのだろう。
墓前で手を合わせるミミーはせっかく再会出来たのにすぐ死に別れた無念を訴えたが、烈は自分の胸の内に父も母も生きているとした。
だが、そんな感傷に暮れる烈とミミーにマクーの魔手は迫っていた。二人の様子を窺っていたダブルガール(東まり子)がトランシーバーで暗号のような言葉を口にすると、トラックが行動を開始した。
場面は替わって約2ヶ月ぶりのアバロン乗馬クラブ。そこでは豪介が月子に烈が何処に行ったかと尋ねていた。どうも作中に出ていないだけで烈はアバロン牧場にて働き続けていた様だったが、月子から出掛けたと聞いた豪介は、烈が一日まともに働いたのを見たことが無いとして、解雇をぼやいていたが、そこに冒頭のトラックが現れた。
トラックの荷台からは拳銃を持った数名の男が現れ、銃を突き付けられて忽ち豪介、当山、月子、わかばと陽一、更にはUFOの特ダネ写真撮影成功を嬉々として伝えに来た小次郎までもが捕らわれの身となった。
直後、烈が戻って来たのだが、当然人っ子一人、馬っ子一人いない異常な状態に気付かない訳がなかった。現場には小次郎が自慢使用して持ってきた写真が落ちてお降り、その裏には「人質を助けたければ大岩山に来い」という文言とサン・ドルバの名が記されていた。
その大岩山では豪介達が一人一人崖の上で十字架に架けられていて、要所要所に救出に来るであろうギャバンを討たんとして、バズーカ砲手が潜んでいた。だが、ギャバンはサイバリアンを駆使して突撃を敢行。数々の砲撃を躱すとやがてギャバンとサイバリアンは赤い球体となって崖の上に到着し、あっさり豪介達を解放した。この球体変身、もはや何でもあり、だな(苦笑)。
勢い、サン・ドルバ並びにクラッシャー達との大殺陣が展開されたのだが、前話以来怒りに燃えるギャバンはクラッシャー達をサイバリアンに乗ったまま次々とサーベルで斬り伏せ、サン・ドルバとの一騎打ちとなった。なかなかに好勝負が展開され、サーベルVS三又鉾にて干戈を交える様も良いアクションだった。西田健氏には『帰ってきたウルトラマン』時代に岸田文夫隊員として、宇宙人相手に掛かるアクションを見せて欲しかったと思うのはシルバータイタンだけではあるまい(笑)。
だが、好勝負は魔女キバの水入りで中断された。やはり母の身として息子を危険に晒したくなかったのだろう。
しかし、同じ親でもドン・ホラーはそういう態度には出なかった。
ボイサーを攫われ、X計画が水泡に帰し、人質を取りながらギャバンを討てずあっさり奪い返されて帰還した息子に対して、勘当とマクーからの追放を命じた。
周囲のダブルマン達から間で刀剣を突き付けられ、憤慨しつつも「分かりました…出て行きます!」と云って、御前を去ったサン・ドルバ。キバはこれを追い、これからどうするつもりか?と尋ねた。これに対してサン・ドルバは半ば不貞腐れ気味に「銀河中を暴れ回ってやる!」としたが、キバは止めた。と云うのも、サン・ドルバがこれまであちこちでちやほやされたのも、彼に「ドン・ホラーの息子」という立場があったからで、勘当された身となっては誰もまともに遇しはすまいとした。
ならばどうすればいい?と難詰するサン・ドルバにキバが耳打ちしたのは、ギャバンとドン・ホラーを相打たせ、漁夫の利を得んとするものだった。この老婆、息子に対する愛情は確実にあるが、夫に対する愛情は微塵もないな(苦笑)。
そして腹に一物を秘めたサン・ドルバとキバはドン・ホラーに、富士山麓にあるドルギランのポートに魔空城を突っ込ませる作戦を提案し、もう一度だけチャンスが欲しいと申し出た。
ドルギラン共々ギャバンを討てれば良しで、最悪討てずともドルギランを潰せば、未来兵器による援護を受けられないギャバンを魔空空間に引き摺り込むことで討ち果たすのは可能だとし、内容に納得したドン・ホラーはこれを承諾。サン・ドルバとキバは密かに顔を見合わせてほくそ笑むのだった。
場面は替わって富士山麓。そこに魔空城が現れ、烈はドルギランを駆使して迎撃に出た。両者が光線を放ち合う中、サン・ドルバとキバはこっそりその場を離れて両者の戦いに巻き込まれまいとしたが、そんな腹の内はとっくにドン・ホラーに読まれており、ドン・ホラーは目から黄色い怪光線を放って二人を麻痺状態に陥らせると、ギャバン抹殺を息子に命じ、それをやり遂げる以外サン・ドルバに生きる道は無いと宣言。こうなってはサン・ドルバには否も応もなかった。
ドルギラン内の烈はマリーンにドルギランの操縦を託してギャバンに蒸着。富士山麓にてサン・ドルバと対峙した。遂に最後の一騎打ちが展開されたが、今度は前哨戦とは打って変わってサン・ドルバは精細さを欠き、三又鉾を振るいつつ、徒手空拳のギャバンに対して劣勢に立ち、これを見たドン・ホラーは魔空空間の発動を命じた。
ホームレンジの魔空空間とあってか、サン・ドルバはサーベルを抜いたギャバンを相手に互角の撃剣を展開した。それでもややギャバンが優勢だったが、しばらくすると両者の間に突然ミミーや陽一が割って入り、その都度矛先を鈍らせたギャバンにサン・ドルバが攻撃を加えた。
勿論ミミーや陽一はキバの変装。だが理屈で分かっていてもやはり親しき者の姿に矛先が鈍るのはギャバンの性格故で、その後何度もキバはわかばや月子の姿にも変身してギャバンの攻撃を鈍らせ、サン・ドルバは何度もその隙を突いた。
キバも何度も嘲笑いつつ姿を見せ、ギャバンが斬り掛かろうとする度にわかば・陽一・月子の姿に変え、ギャバンを逡巡させた。そんな中、徐々にサン・ドルバの攻撃がギャバンの体を捉え出した。
満身創痍となったギャバンは姑息な母と息子の攻撃に対し、前話で父と交わした、「元気になったらともに戦おう。」に台詞を思い出し、悪しき親子攻撃に負けまいと自らを奮起させた。そしてそんなギャバンにとどめを刺さんとしてサン・ドルバも宙高く舞い、両者が空中で激突戦としたその刹那、突如、赤い球体が両者の間に割って入った。
球体は断崖の上に上がると赤いメタリック・ボディを露わにし、何者かと誰何するサン・ドルバに「宇宙刑事シャリバン」と名乗った。
勿論その場にいた三人全員がシャリバンとは初対面だったが、自分と同じメタリック・ボディを持ち、宇宙刑事を名乗る以上、ギャバンにはこれ以上ない頼もしい加勢で、ディメンションボンバーでサン・ドルバとキバの二人に食らわすと立て続けに、サン・ドルバにスパイラルキックを、キバにギャバンキックを食らわせた。
更にレーザーZビームを浴びせられたサン・ドルバは円盤群を召喚して加勢を命じたが、これに対してギャバンはギャビオンを召喚して迎撃させた。サン・ドルバもそれまでのダブルモンスター同様、円盤群に乗り込んでの鉱石を敢行したが、やはりギャビオンによって打ち落とされ、遂に最終決戦に突入した。
時折キバによるヒット&アウェー的な加勢を得ながらも、サン・ドルバの三又鉾と、ギャバンのレーザーブレードととの撃剣が展開され、なかなかの好勝負が続いた。やがてキバがギャバンの背後に妙な妖術を駆使するとギャバンの体は金縛り状態となり、これを受けてサン・ドルバはチャージ攻撃でギャバンを串刺しにせんとした。
だが、ギャバンは全く身動きが出来なかった訳では無く、辛うじて可動する叛意でもレーザーブレードをキバに投げ付け、その触覚が断たれたことで妖術は解け、すんでのところでサン・ドルバのチャージを躱すことが出来た。
チャージを躱されたサン・ドルバは触覚を失い倒れる母を案じ、そのもとに駆け寄った。だが、そのときにはキバの触角を断ち切ったレーザーブレードがブーメランの如く旋回してギャバンの手に戻っており、そこから繰り出されたギャバン・ダイナミックの前にサン・ドルバと魔女キバは共に討死を遂げたのだった。
ギャバンをそのままサイバリアンに騎乗して魔空城内に突入。遂にドン・ホラーの御前に到達し、ラスボスの身を守る筈のダブルマン達は半ば恐慌状態にあった。ドン・ホラーはここまで到達したギャバンを褒め、「小僧!」と呼びつつも、ダブルマンやホラーガール達を下がらせ、一騎打ちに臨んだ。
それまでドン・ホラーは巨大の装置の裏から顔と両腕だけを見せた状態で、云うならば紅白歌合戦の小●幸■状態だったのだが(笑)、腕を光線状にして伸ばしてギャバンを絞め上げたり、目からサン・ドルバ達の動きを止めた黄色い怪光線を発したりしてギャバンを攻撃した。いずれもサーベルを一閃すると防げる程度で、遂にギャバンをはその警部をサーベルで一閃した。
だが、今度はその首が宙を舞い始めた。首は炎を纏い、元々兜についていた頂戴な角を駆使して何度もギャバンの体を斬り付けた。その素早い動きを前にギャバンは翻弄され、何度も傷ついたが、やがてレーザーブレードの刺突がドン・ホラーの額部分を捕えるとドン・ホラーの動きは鈍り、前方宙返りからのギャバン・ダイナミックにて遂にドン・ホラーも討ち取られたのだった。
ドン・ホラーの死を受け、魔空城は炎上。城内にいたホラーガールやダブルマン達は右往左往するだけで、そうこうしている内に遂に魔空城は爆発・炎上して宇宙の藻屑と消え、ここに宇宙犯罪組織マクーは滅亡したのだった。
戦い終えて、富士山麓に降り立った烈をミミーとマリーンが出迎えた。そしてその背後にはコム長官と、宇宙刑事の服を纏った伊賀電がいた。電の姿を見て驚きつつも、すぐに前々話で助けた青年であることに気付いた烈に、コム長官は新しく地球地区担当となったシャリバンを紹介した。自己紹介し、先日の命を救われた礼を述べるシャリバンに対して彼の無事生還と、新しい仲間が出来たことを喜んだ烈だったが、地球地区担当は自分ではなかったのか?と訝しがった。
それに対してコム長官はギャバンが銀河パトロール隊の隊長に昇進したことを告げ、ギャバンは地球のみならず、太陽系全体を管轄することとなった。まあ現実の企業に例えていうなら、全国に支社を持つ会社の大阪支店長が関西営業本部長になったようなものと云えようか?
突然の出世に実感がわかず戸惑う烈に電は改めてこれからも宜しくと申し出、両者は握手を交わし、コム長官は二人の肩に手を置いて美しい地球を守り抜こうと誓うのだった。
かくして、宇宙犯罪組織マクーの壊滅と、その貢献者である宇宙刑事ギャバンが銀河パトロール隊隊長に昇進し、新任宇宙刑事シャリバンと共に戦うことを示唆して『宇宙刑事ギャバン』全44話は終結し、シリーズとしては『宇宙刑事シャリバン』に続くのだった。
最後に野暮ったいことを書けば、アバロン乗馬クラブの面々との別れはしっかり描いて欲しかった。この後のシリーズにもそこそこ登場する大山小次郎や星野月子はまだしも、藤豪介、わかば、陽一、当山茂の出番が人質解放だけで終わったのは些か寂しく、穿ったものの見方だとは思うが、取り敢えず最終回だから出しとけ的に出た感は拭えない。
『宇宙刑事ギャバン』から『宇宙刑事シャリバン』へのリレーが見事なだけに些か惜しまれる次第である。
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令和六(2024)年四月一七日 最終更新