宇宙刑事ギャバン全話解説

第43話 再会

脚本:上原正三
監督:田中秀夫


 冒頭、ボイサーが拘束具に拘束され、妙な注射器を持ったキバから拷問を受けていた。それを必死に止めんとしてクラッシャー如きに取り押さえられていた烈。まあ、この時点で多くの視聴者が予測出来たと思うが、これは烈の悪夢だった。
 前話でボイサーを助けられず、拷問器具だけを見て、父が毎日地獄の責め苦を受けていることだけ実感させられた烈の焦燥振りは見ているミミーが心配する程だった。加えて、剣山周辺にはもはやマクーの反応もないとのことがマリーンから告げられた(←前話終盤でバード星に帰った筈だが、戻って来るの早!)。

 場面は替わってマクーの鬼首島総本部基地。
 そこではサン・ドルバが苛立っていた。拷問に次ぐ拷問を加えてもボイサーがレーザー増幅装置の機密を吐かない為、ホシノスペースカノンは9割方完成しながら、足止めを食らっており、口を割らないボイサーの精神力に半ば呆れ果てていた。そして烈の悪夢の様に注射器を構えていたキバにも普段の下卑た笑顔が見られなかった。このことから母子はかなり苛ついていたのが見て取れた。
 並の人間ならとっくに死んでいておかしくない程の自白剤が既に投与されており、それでも耐え抜く様をサン・ドルバは「不死身」とまで称していたが、それでもキバは次に射つ自白剤なら必ず履かせられるとほくそ笑み、それに対してサン・ドルバは「頼むぞキバ。」と声を掛けた。相変わらずその態度は母親に対するそれに見えなかったが、それでも彼なりに母を頼りとしている姿が伺えた。

 一方のボイサーだが、牢獄の中でもう一度自白剤を撃たれれば自分は死ぬかもしれないとしていた。物騒なことを書けば、凄惨な拷問の苦痛から逃れたり、レーザー増幅装置の機密を守ったりするだけなら、自害すると云う手もあったと思われるが、それでもボイサーが拷問に耐え続ける道を選んでいたのは、いつか成長した息子・ギャバンに一目会いたいとの一念だった。

 場面は替わってとある埠頭。そこで父のとの幼き日の想い出に耽っていた烈は、そこに居る筈のない父の幻影を見た。どうも距離が近づいたことで親子間に感じるものがあった様で、ボイサーも突如牢獄内でギャバンの名を叫び、それをはっきり聞き付けた烈はドルギランにて鬼首島上空に迫った。
 ドルギランにはミミーとマリーンも同乗しており、レーザーによる探索を行ったが、何の反応も見られなかった。だが艦内から目視にて島がコンクリートの壁でおおわれているのは確認されており、こうなると烈は何の反応もないことが却って怪しいと見て、着陸することにした。すると島内のトーチカから砲撃がドルギランに向かってなされた。これはどう見ても「マクーがいます。」と云っているようなものだった。まあ、現実に即して見て見ても大規模反社組織の存在を示したに等しかった。

 更にいつもの円盤群が襲撃。これを受けてギャバンはギャビオンを出動させると円盤群とトーチカを粉砕。更にギャバンはスクーパーを出動させると、壊れたトーチカの中から現れたホシノスペースカノンもスクーパーレーザーで粉砕した。
 これはサン・ドルバにとって相当な痛手で、近侍していたダブルガール(東まり子)がすぐに撤収することを勧めていたことからも、ホシノスペースカノンが壊れた今、鬼首島に留まる意義は無かったのだろう。
 この進言に対してサン・ドルバはボイサーを連れて行くと宣言。だが、その前にギャバンが立ちはだかり、基地崩壊の煽りで岩石が雨あられと降り注ぐ中(実際に何人かのクラッシャーが犠牲になっていた)、サン・ドルバはボイサーを連れ出すこと諦めて撤収した。

 基地内の探索を続けた烈は遂に牢獄と、その中にうつ伏せで倒れる男を見つけた。だが、男はピクリとも動かず、うつ伏したままで顔も見えない。鉄格子に駆け寄った烈は母と幼き日の自分の写真を収めたロケットを取り出し、それを開くと「青い地球は母の星」が流れ出した。すると男は顔を挙げ、腹這い状態ながら鉄格子にいる烈の元に駆け寄り、ロケットを持つ列の手を握りしめた。
 もはや眼前の男が父・ボイサーであることに疑いの余地は無く、只々涙を流す烈にボイサーはようやく「ギャバン」の名を口にしたのだった。

 Bパートに入るとボイサーは当然の様にドルギラン内に保護されていた。一応、椅子に座り、ミミーの出したスープを口にする余力は残されていた。そしてそこへ月子が現れ、ボイサーに縋り付いてむせび泣き、ボイサーは機密を守り抜いたことを告げた。
 視聴者的には分かっていたことだが、ここで改めてボイサーの口から、星野博士が発明したレーザー増幅装置は太陽光線を数万倍のパワーに増幅させることが出来、マクーがそれを兵器転用すれば悪魔の兵器が生まれ、平和利用されれば人類が石油に頼らない無尽蔵のエネルギーを得られることが説明された。
 かかる重要機密を守る為、マクーによる拷問の日々に耐え抜いたボイサーにミミーは信じられない思い出驚嘆し、烈は「それが宇宙刑事」として改めて父を誇らしく思うのだった。だがここでボイサーは意外なことを口にした。マクーが散々拷問を咥えて聞き出さんとしたレーザー増幅装置の設計図はボイサーの記憶になく、それゆえ、いくら拷問を咥えても薄情のしようが無かったいうのである。では、設計図は何処に?と聞こうとしたところでボイサーが激しくせき込んだため、一同はボイサーを休ませることにした。

 ベッドに横たわったボイサーは、枕元に控える烈に共にマクーと戦おうと呼び掛けたり、母との想い出を語ったりして、その後送るであろう息子・ギャバンとの未来に意欲的な態度を示した。その為にもまずは体を治すことだと諭す息子に頷くボイサーは。ロケットを取り出し、その後画面には過去に流された幼き日の烈を描いた回想シーンが流れた。
 だが、ボイサーの体には既に致死量に相当する自白剤が打たれ続けており、拷問の日々にて肉体は消耗し切っていた。恐らく、一目成長した姿が見たいと思っていた息子との再会を遂げ、命を賭して親友の機密を守り抜いたことをその娘・月子に告げることが出来たことで、燃え尽きる前の蝋燭が最後の炎を増大させていたと思われる。
 結局、回想シーンが終わる頃、ボイサーはロケットをベッドの上に取り落としており、その目が開くことはなかった…………。

 気配を察してか、ミミー、マリーン、月子も寝室に入って来て、ボイサーが息を引き取ったのを悟った。月子も烈同様ボイサーに取り縋って滂沱に暮れたのだが、このとき、烈はボイサーの手にレーザー増幅装置の設計図があるのに気付いた。ナレーションによるとそれはボイサーが息を引き取り、体温が低下したことで現れた物で、機密を守る為にはどんなに辛くても死ぬ訳にいかなかった、辛いからと云って自害する訳に行かなかった、そうまでして親友との信義を守り通したボイサーの偉大さが改めて示されたのだった。

 そしてラストシーン。とある埠頭で烈は沈みゆく夕陽に向かって父の想いを受け継ぎ、マクーを倒すことを誓った。BGM「父よ」が流れ、その歌詞を追うとようやく再会を遂げ、しかしながら死に別れてしまったことの悲惨さがより一層引き立てられた。
 そしてナレーションにて、烈は改めて父から本当の勇気と優しさ学んだことが告げられ、マクーへの最期の戦いに対する戦意をより一層燃え上がらせて第43話は終結したのだった。
 正直、せっかく救出出来た父がすぐに亡くなったことには異論が無い訳でもないが、それでも『仮面ライダーV3』『仮面ライダーX』にて風見志郎・神敬介が第1話で父を殺され、『仮面ライダー(スカイライダー)』の最終回三部作で、生きているかも?と思われた筑波洋の父が既に殺されていて、再会直後の母が殺されたケースを見て来ていたので、ボイサーが最後の最後に息子と会話を交わし、親友の娘に親友との信義を語れたのがまだマシに見えてしまうのだから、改めてヒーローとは二親と縁遠い存在であることが多いのを感じた次第だった。


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令和六(2024)年四月一七日 最終更新