人造人間キカイダー全話解説

第1話 恐怖のグレイサイキングは地獄の使者

監督:北村秀敏
脚本:伊上勝
グレイサイキング登場
 足掛け二年に及ぶ人造人間シリーズの始まりは夜の車道だった。音楽を鳴らしながらデコトラを転がす運転手(団巌)は、インタポールのジョージ釜本でも、プロレスラーのミスター怪力でもない(←元ネタ、分かるかな?(笑))。
 音楽を聴きながらご機嫌の運転手だったが、突如そのラジオに怪音が混じったかと思うと眼前に赤い光が浮かんだ。
 怪光の正体はグレイサイキングの眼光で、その体当たりを受けてトラックは横転・炎上。つまるところ、運転手は哀れにもグレイサイキングの能力テストの犠牲となったのだった。

 場面は変わってとあるダム。ダムは落成式を翌日に控えた日本一の発電ダムであることが青野(三島耕)・後藤(鈴木志郎)の二人の警備員による会話で明かされていたが、ここにグレイサイキングの魔手が迫っていた。
 青野と後藤が控室に入るとその部屋にいた警備員が全員殺されていた。驚愕した青野が警察に連絡しようにもホラーの常識で電話は繋がらず(苦笑)、無駄な事はよせとばかりに床を突き破ってグレイサイキングが現れ、ダーク部隊最強ロボットであると名乗った。
 う〜ん登場する奴が次々に「最強」を名乗るのは『仮面ライダーBLACKRX』のクライシス帝国と同じパターンか?(笑)。勿論、この『人造人間キカイダー』の方が遥かに早く放映されているのだが(笑)。

 ともあれ、姿を現したグレイサイキングは2人にダムの心臓部へ案内せよ、と強要。即座に青野を体当たりで殺害した。いきなり殺してしまっては白状のしようが無い……という気もするが、もう一人に対して「逆らえばこうなる。」と思わしめる為の示威行為と取れば分からなくはない。四十数年前の撮影技術ゆえ、壁が発泡スチロールなのは丸分かりとはいえ、現実に即して見れば、グレイサイキングの体当たりでぶっ飛ばされた体がコンクリートの壁をぶち破って屋外に飛ばされるほどの衝撃なのだから、目の当たりにした青野にとっては物凄い恐怖である。
 ほうほうの態で屋外に逃げ出した青野だったが、忽ち待ち受けていたアンドロイドマンの一隊に取り押さえられた。

 為す術なく捕らえられた青野の腕を捩じり上げてダム心臓部の場所を白状しろと強要するグレイサイキング。血の通わなくなった青野の右手は忽ち青白くなり、やがては灰色になった。グレイサイキングの台詞によると10万馬力の怪力で締め上げたかららしい。つまりはそれがダークのアンドロイドの基本スペックなのだろう。
 だが青野は知らないの一点張り、ほんの数秒の会話で「しぶとい奴め。」と凄むグレイサイキング短気過ぎ(笑)。万事休すの青野だったが、「猫の子一匹いない」筈のダムにギターの音が鳴り響いた。
 訝しがるダーク部隊の中で、一人のアンドロイドマンがダムの上に立つ男に気付いた。勿論ギターを奏でていたのはジロー(伴大介)。主人公の初登場だった。

 誰だ?とグレイサイキングに誰何されたジローは「ダークの恐ろしい野望を砕く為に来た男」と称した。自分達がダークであることを何故知っているのかと訝しがったグレイサイキングだったが、即座にアンドロイドマン達にジロー殺害を命じた。
 命を受けてダムを駆け上がるアンドロイドマン達だったが、勿論ジローの敵ではない。とはいえ、数々の特撮や時代劇の殺陣に比べるとジローの動きはどこかぎこちない。まだ当時の伴氏が殺陣に不慣れだったのだろうか?
 一方のジローはグレイサイキングに連行される青野の方が気になった様で、ダムから飛び降りつつグレイサイキングに突撃。人間如きが自分に敵うものかと迎撃するグレイサイキングだったが、普通の人間がダムから飛び降りて攻撃出来るかどうか考えろよな(笑)

 ともあれ、このときは激突は起こらず、青野を庇って立ちはだかるジローに業を煮やしたグレイサイキングが突撃を敢行。忽ち巨岩が大破するとその粉塵の中から人造人間キカイダーが初めてその雄姿を現した。
 ボディのスケルトン部分から様々な部品が点滅するロボット然とした相手に何者かと問うグレイサイキング。それに対する返答は「正義の戦士キカイダー」だった。
 どうやらグレイサイキングはキカイダーのことを全く知らないらしく、いずれにせよダークの邪魔者は生かしておけない、とアンドロイドマン達にその殺害を命じ、二回目の殺陣が展開された。
 さすがに変身体は人間体を上回り、アクションは決して流麗ではなかったが、一撃一撃の攻撃が確実にアンドロイドマンを戦闘不能に追いやった。

 多少の時間は掛かったが、アンドロイドマンは程なく全滅。するとキカイダーは仕事は終わったとばかりにサイドカーであるサイドマシーンに乗ってその場を去らんとしたが、グレイサイキングの方がそれを良しとせず追撃に掛かった。
 だがグレイサイキングはキカイダーを見失い、その時自身がダークの秘密基地上に立っていることに気付いた。こうなると正体不明の敵は基地内に潜入している可能性が否定出来ない。忽ちアンドロイドマン総動員で基地内の探索が行われたが、その中の一室に一人の博士−光明寺博士(伊豆肇)と、その娘・光明寺ミツ子(水の江じゅん)がいた。勿論本作のキーパーソンとヒロインである。

 慌ただしい事態に何事かと尋ねる光明寺博士だったが、アンドロイドマン達はそれに答えず、代わりに基地内放送から流れて来たダーク首領であるプロフェッサー・ギル(安藤三男)の声がこれに答えた。
 ダーク基地内に人造人間が侵入したとのことで、しかもその相手はダークのアンドロイドに匹敵するか、それ以上の能力を有しているという。その言にそれは興味深いと呟く光明寺博士わざとらし過ぎ(笑)。
 事の成り行きを見守っていたミツ子は潜入者の正体を父に問おうとしたが、光明寺博士はそれを止めて地下室に娘を誘った。

 光明寺博士は、昭和40年代の特撮定番に漏れず、意に反して悪の組織に協力を強要されている科学者で、その一挙手一投足は常に監視されていた。だがそれは裏を返せば博士が正義を捨てておらず、魂をダークに売っていないことを意味し、密かにダークを打倒する手段を監視の及ばない地下室に整えていた。それこそが人造人間キカイダー・ジローだった。
 ジローは最前の前哨戦でグレイサイキングと互角以上に渡り合ったことを述べ、それを受けてミツ子もジローの力で世界がダークから守られることを期待した。
 だが、ジローの製造は完遂していなかった。後一つ繋げなくてはならない部分があるとのことで、世界をダークの魔手から守る為に最後の処置を施そうとなったのだが、皮肉にもこれがキカイダーの弱点にして、アイデンティティにして、同番組を深く考察する重要ポイントとなったのである………。

 地下室を出た光明寺博士を待ち受けていたのはプロフェッサー・ギルその人だった………。

 アンドロイドマンに取り押さえられ、自らの叛意がギルに先刻承知されていることを思い知らされた光明寺博士は娘の身を案じてその名を叫んだ。その声を聞いて博士の身を案じるジローとミツ子だったが、その時にはもう地下室にアンドロイドマン達が雪崩込んできていた。
 いきおい、ジローはミツ子を庇いつつ、アンドロイドマン達と三度目の殺陣を演じたのだが、そのいざこざで地下室には火災が発生し、光明寺博士を助けることもままならず、ジローは博士の、「自分に構わずダークを倒せ。」とのメッセージを受け止めつつ、ミツ子と共に基地を飛び出すので精一杯だった。

 両名の脱出を阻まんとして、ダークはバリケードを築くも、ジローはサイドマシーンで強行突破せんとした。するとそこへジローを激しい頭痛が襲った。頭痛の正体はギルの吹く杖状の笛によるもので、「ダークに生まれし者はダークに還れ。」との名台詞を念じながら吹く笛が如何なる要因でジローに苦痛を与えるかは超有名だが、この第1話ではそこまでは触れられなかった。
 ともあれ、アンドロイドマンすら蹴散らせず、ミツ子も拉致されるかと思われたが、相当な苦痛に苦しみつつも、ジローはミツ子を取り戻しての強行突破に成功した。

 ジローとミツ子に逃げられたとの報告を受けたプロフェッサー・ギルはダークの機密を守る為にもジローの抹殺を厳命、ダーク破壊部隊が出動する運びとなり、破壊部隊に所属するアンドロイド達がシルエットで示された。
 その総勢は13体。最前のグレイサイキングに、グリーンマンティスオレンジアントブルーバッファローイエロージャガーブラックホースローアルゼンバットカーマインスパイダーサソリホワイトレッドスネークスカーレットドッグシルバーキャットピンクタイガーの13体が今後を予告するようにシルエットを見せ、ジロー追跡が命じられたのだが、このうち何体かは後に名前が変わったり、全然違う存在になったりする(苦笑)。
ま、すべてが第1話に準拠するのは厳しかろう(苦笑)。

 場面は変わってとある邸宅。そこでは光明寺博士の息子・光明寺マサル(神谷政浩)が勉強しながらも姉と共に長く帰ってこない父を案じていた。どうも父と姉が悪の組織に軟禁されていることまでは知らないらしい。
 するとそこへ突如父・光明寺博士が現れ、マサルを迎えに来たという。喜んで父の胸に飛び込まんとしたマサルだったが、次の瞬間には父が本当の父ではないことに気付いた。さすがに父親譲りの聡明さによるものか?と思われたが、さにあらず。マサルが父を偽物と看破した要因は「匂い」だった。見破られた正体を現したグレイサイキングだったが、アンドロイドのくせに獣臭いとは………(笑)。
 だが、正体が分かっても少年の力ではアンドロイドの力に抗し得ず、マサルはキカイダーを誘き寄せる人質として拉致された。

 一足遅れて自邸に戻ったミツ子とジローはマサルが拉致されたことを知り、グレイサイキングからの、「(マサルを返して欲しければ)地獄谷に来い。」とのメッセージを受け取った。
 そして人質にされたマサルは吊り橋からぶら下げる形で拘束され、そこにジローが駆け付けた。勿論周囲にはダーク一味が隠れ潜んで待ち伏せていた。
 ジローはサイドマシーンの爆音を陽動にアンドロイドマン達の気を引き、マサルの元に駆け付けたが、遠くから様子を伺っていたグレイサイキングはリモートコントロールで吊り橋を爆破し、マサル諸共ジローを墜死させんとした。
 ここでジローは初めて変身ポーズを披露。右手を三つ指にして前方に伸ばすと、「チェンジ!」と叫び、続けて「スイッチオン!ワン・ツー・スリー。」とカウントしながら右肩・左肩に手を載せて最後には両腕を左右に広げ、変身を完了した。
 変身を遂げたキカイダーはキカイダージャンプで飛び上がってマサルを助けたのだった。

 光明寺博士の作ったサイボーグは死んだとばかりに悦に入っていたグレイサイキングだったが、そこにキカイダーが登場し、決着戦となった。アンドロイドマン達は次々に蹴散らされ、倒された個体が爆発するとそこには歯車を初めとした機械部品が残され、彼等が名前の通り人造物であることが示されていた。
 そして最後に残ったグレイサイキングは体当たり攻撃を繰り返し、その都度様々な物体を破壊してその怪力を見せていたが、キカイダーに対する有効打は生まれず、キカイダーはダブル・チョップ大車輪投げという牽制技を食らわせ、最後に必殺のデンジ・エンドなる、両腕を内から外に交差させながら食らわせる手刀打ちでグレイサイキングを倒したのだった(アンドロイドも、アンドロイドマン同様爆発後に部品や残骸を残していた)。

 直後、ジローの身を案じて駆け付けたミツ子とマサルの姉弟。程なく二人の目にサイドマシーンに乗ったジローが走り去るのが映った。そのまま第1話は終了。光明寺博士安否を初め、まだまだ謎が多いが、まあ第1話はそんなもんやろうね。



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 最終更新 令和元(2019)年一二月四日