人造人間キカイダー全話解説

第2話 怪奇 グリーンマンティスは殺人鬼

監督:畠山豊彦
脚本:伊上勝
グリーンマンティス登場
 冒頭、山中の車道をサイドマシーンで走っていたジローをヘリコプターに乗っていたアンドロイドマン達が発見。即座にジローに砲撃を加えた。
 直撃はしなかったが、アンドロイドマン達が着陸すると停まっていたサイドマシーンの傍らでジローは地面に突っ伏していた。だがこれはアンドロイドマン達を誘き寄せる為のジローの擬態。笑いながら立ち上がったジローはアンドロイドマン達を蹴散らしつつ、彼等を指揮しているであろうアンドロイドを挑発した。
 その挑発を受け、巨岩を斬り裂きながら姿を現したのはグリーンマンティスだった。名前の通り、カマキリのアンドロイドであるグリーンマンティスは右腕こそカマキリ然とした蟷螂だったが、左腕は長大な触腕で、痩身故か身軽さに優れているようだったが、何度かキカイダーとすれ違うも、キカイダーの方は黒幕を突き止めたことを安心したかのようにその場をサイドマシーンで走り去った。
 まだ2話しか経過していないが、ここまで見る限り、キカイダーは決して好戦的ではないと見える。変身しながら戦わないのも不可解だが(笑)。

 と思っていたら、グリーンマンティスをまいたジローは次のシーンで山小屋に身を潜めているミツ子とマサルの元に食糧を届けていた。確かに追撃をかわすには相手が何処にいるか分かっている方がやり易い。
 ともあれ、ジローは二人に何処か安全な場所に身を顰めることを提案し、ミツ子は父の親友である石神博士なる人物の研究所が適切とした。ミツ子曰く、石神博士もその妻も人格的にも信頼出来る人間とのこと。しかし、悪の組織から匿ってくれるよう頼れるとしたらかなりの信頼関係だ。現実に即して考えるなら、「ヤクザに追われているから匿って!」と言われたらかなりの親友でも躊躇すると思う(と云うか、官憲の保護を求めるだろうな、普通)。

 だが、無情にもその石神電子工学研究所にはダークの魔手が伸びていた。
 研究所内にて丸で改造人間の研究をしているかのような石神博士(有馬昌彦)のところに突風とともに現れたのは光明寺博士だったが、その無表情で抑揚のない喋り方は特撮に慣れた視聴者なら一発で「本物じゃない。」と断じられる不審振りだった。だが石神は疑うことなく5年ぶりの再会を喜んだ。
 両者の会話によると20年来の付き合いとのことで、光明寺とミツ子がダークの為に世間から姿を消して5年になることも判明した。つまり、石神の喜び振りには、光明寺の無事な姿(←本物ではないが、本人はそう思っている)を見れたから、というのも含まれていた訳だ。
 だが、その喜びをぶち壊す様に偽光明寺=グリーンマンティスは石神の殺害を宣言。ダークでも石神が光明寺の一番の親友であることを掴んでおり、ミツ子とマサルがここを頼るであろうことを予測して先手を打った訳である。
 まあ、その眼の付け所は良いにしても、殺害対象をさっさと始末せず、計画内容をべらべら喋って無駄な時間を浪費する辺り、グリーンマンティスも二流以下だな(苦笑)。

 かくして哀れにも石神博士は殺害された。更に異変を察知してやって来た妻の前で光明寺の姿に戻り、石神を殺した、と告げて妻の怒りを光明寺博士に向けさせた。二流以下で稚拙ながらも、芸は細かいな(笑)。

 目的を果たしたグリーンマンティス達は引き揚げに掛かったが、その途中、自動車と接触事故を起こし、そのまま走り去った(やはり二流以下だ(笑))。
 その事故を起こした相手はこの第2話よりレギュラーメンバーとなる服部半平(植田峻)。当て逃げした相手に初登場独特の説明っぽい台詞で(笑)自分が伊賀忍者服部半蔵16代目の子孫であることを述懐しながら、探偵らしく車のナンバーを控えたりしていた。まあ職業に准じた行動を取っていた訳だが、服装は派手でも車のローンがまだ終わっていないことを口にしていた当たり、余り儲かってはいないのだろう(苦笑)。

 翌朝、石神電子工学研究所近くまで来てパトカーが出て来るのを見たミツ子とマサルは胸騒ぎを覚えて研究所に急行した。だが、石神夫人は状況から光明寺が犯人と思い込んで、恨み骨髄状態となり、以前は(自分達に子供がいない故に)我が子同然に想っていたミツ子とマサルにも露骨な敵意を向けた。まあ現実の世界には本人に成りすませるほどの高度な変装技術は今尚存在しないから、夫を殺されたショック状態の抜け切らない夫人がそう思い込むのも無理はない。
 勿論、ミツ子もマサルも父が石神を殺したなど信じられる筈が無い。生前交流があった人柄からも光明寺が石神を殺す筈が無い(動機も無いしね)ことを訴える姉弟だったが、さすがにこれで理解してもらうのには無理があり、夫人は所内に引っ込んだ。

 まあ、状況的に夫人の行動は充分理解出来るものである。不可解なのは直後に現れた警察だった。ミツ子とマサルが光明寺の行方を知っていると踏んで二人を訊問し、「私達も父を探している。」というミツ子の言に耳も貸さず、令状も無しに二人を連行しようとした(一応、ミツ子が大人しく応じていたから任意同行の範囲内にはなるが)。
 世間的には5年間行方不明の人間だった光明寺とミツ子に対し、「調べはついている。」というが、何を調べたって言ってんだ、コイツ等?と思っていたら、刑事達はダーク一味の変装だった。

 発覚のキーとなったのは意外にも服部半平だった。
 当て逃げされた際の車のナンバーから、研究所近くに止めてあったパトカーを見つけた半平は相手が警察であることにも臆せず突っ掛かり、無視して去ろうとした警官の腕を掴んだところ、その腕はあっさり外れてしまった。
 驚きの展開に半平はあっさり気絶(苦笑)。驚いたミツ子とマサルだったが、マサルは短躯を利してパトカーから逃亡するの成功。やっぱりこいつ等二流以下だ(笑)。腰を抜かしながらも、先祖の名誉にかけてダークを逃がすまいと戦意を燃やす半平の方が根性は上かも知れない(笑)。

 ともあれ、Bパートに入って間もなく、廃工場跡でマサルを捕らえることに成功したアンドロイドマン達だったが、そこにギターをかき鳴らしてジローが登場すると、マサルをほっぽって(苦笑)、ジローに襲い掛かった。
 勿論アンドロイドマンではジローの敵ではなく、あっさり全員蹴散らされ、マサルは救出された。そのマサルからミツ子の危機を知ったジローはグリーンマンティスを追いにかかった。

 そしてそのグリーンマンティスの口から、石神殺害の狙いが、光明寺を殺人犯とすることで世間にいられなくしてダークの一員として組織に協力させ続けることにあったことをミツ子は知った。父の為に石神が殺されたことや、ダークがいまだに父を利用せんとしていることにショックを受けつつも、身柄を狙われる=父が生きているという図式に喜ぶミツ子…………娘やね(苦笑)。
 そんな会話の中、ダークからの通信が流れ、キカイダーがダークを追っていることが知らされた。直後、背後から追跡してくるエンジン音を聞いてジローでは?と期待したミツ子だったが、追跡者は半平だった(苦笑)。

 守銭奴でもある半平は「絶対に弁償させる。」と息巻いていたが、グリーンマンティスが評していた通りの「へっぽこ探偵」で、真横をすり抜けて走り去ったジローのサイドマシーンに驚いてエンストこいて、そのショックで気絶(苦笑)。
 ジローはマサルを乗せていたサイドマシーンを自動操縦に切り替えるとパトカーの屋根に飛び乗った。そのジローに攻撃を仕掛けるグリーンマンティスだったが、どうもこいつらは「人質を用いて標的を誘き寄せる。」という思考はあっても、「人質を用いて標的の抵抗力を奪う。」という思考は無いらしい(笑)

 ともあれ、そこに鳴り響くはプロフェッサー・ギルの悪魔笛。多少なりともキカイダーを知る人間にとって常識とも言える悪魔笛と良心回路の関係はこの第2話で明らかにされた。
 笛の音に苦しむジローだが、それは逆に笛の音に抵抗しているからでもあり、パトカーから落ちたところを轢き殺されかけたが、危ういところでキカイダーへの変身を遂げており、ミツ子の救出に成功した。

 とある海岸でミツ子を介抱したジローとマサルは互いの情報交換から光明寺博士に近しい人々にダークの魔手が伸びかねないことを懸念し、差し当たっては光明寺の助手を務めていたイザキが危ないと踏んだ。
 そんな2人の推測通り、グリーンマンティスはイザキの元に向かっていた。石神の時同様、光明寺に化けてイザキの不意を突こうとしたグリーンマンティスだったが、研究所のソファーで毛布をかぶっていたのは先回りしたキカイダーだった。
 イザキではなくキカイダーが出て来たことに驚いた偽光明寺だったが、それでも再会に安堵する振りをして惚け倒そうとしたが、影でバレバレというベタなばれ方をしていた(笑)

 結局目から照射された赤色光線 (別名:外道照身霊波光線)グリーンマンティスの正体は看過され、いきおい決戦となった。
 戦いの場は研究所内から屋外に移り、そこにはミツ子とマサルと石神夫人がいて光明寺博士に対する濡れ衣が晴れたことが示されていたが、屋内での会話は聞いていないとそのことは分からない筈なのだが…………ま、いいか(苦笑)。

 戦いはごく普通の白兵戦が展開。前回同様、ダブル・チョップ大車輪投げが食らわされたが、やはりこの2つは牽制技程度の様で、グリーンマンティスに然したるダメージも与えた様子はなく、触腕に締め上げられるキカイダーだった。
 だが、小器用に戦うグリーンマンティスも耐久力に難があるようで、触腕はあっさり手刀一発でぶった切られ、触腕の中から発射されてキカイダーを拘束した鎖もあっさりぶっ千切られて振りほどかれた。
 最後はデンジ・エンドでキカイダーはグリーンマンティスを撃破。ジローはミツ子とマサルの声援を背にサイドマシーンで走り去ったのだった。



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 最終更新 令和元(2019)年一二月四日