キカイダー01全話解説

第1話 無敵!! 人造人間ゼロワン誕生!!

脚本:長坂秀佳
監督:永野靖忠


 前作『人造人間キカイダー』の成功を受け、昭和47(1972)年末には放映が決まっていた本作。その冒頭は前作終盤で戦死した筈のハカイダーが新たな軍団を率いて登場したところから始まった。
 暗雲立ち込め、落雷が轟く岩山が連なる中に隠されたアジトの中で、「ハイル・ハカイダー!」と云うナチ式の掛け声に応じて、落下して来た火の玉からレッドハカイダーブルーハカイダーシルバーハカイダーが、そして落雷の中から戦闘員であるアンドロボット達がその姿を次々に現した(3体のハカイダーは胸部プロテクターの色が個々に異なる)。
 前作ラストの様子からは、白骨ムササビの前に瀕死の重傷を負い、頭部に在った光明寺博士の脳を抜かれ、そのまま野垂れ死にしたか、廃棄されたとしかた思えなかったハカイダーが何故に生きて活動可能なのか?その説明には触れられない。
 「時が来た!」と宣したハカイダーは、世界を夜の闇で覆う、として、その為にアキラという少年(五島義秀)の入手が急務であると一同に告げ、まだ近くにいると思われるアキラの探索を命じて、自らも部下3名と共にバイクに搭乗して「出陣」した。

 場面は替わってとある郊外。そこには最前紹介されたアキラが暗い表情でとぼとぼと彷徨い歩いていた。ナレーションによると、アキラは記憶喪失らしく、微かに父の事だけを覚えていたものの、それ以外は何も分からないまま数日間彷徨っていたとのことだった(←飯、風呂、寝床はどうした?)。
 そんなアキラがふと足を止めたのは関東原子力研究所の前。飲み水を求めて潜入したアキラだったが、そこには既にハカイダー部隊の魔手が迫っていた。
 ブルーハカイダーは電磁鞭を、シルバーハカイダーはロッドを、レッドハカイダーはクロスボウを得物に次々と所員達を殺害した。恐らく第1話ゆえに、ハカイダー部隊の残忍さと強力さを披露しようとしてのシーンと思われるが、一般ピープル相手に電磁鞭で絡め取った所員をぶん回して悦に入っていたブルーハカイダー、小物感満載過ぎ(苦笑)。
 ただ、人造人間としてのスペックによるものか、得物のスペックによるものか、破壊力は尋常ではなかった。レッドハカイダーのクォレル(クロスボウの矢)は所員の体を半貫通させ、シルバーハカイダーのロッドは棒身をぶつけただけで所員を死に至らしめていた。
 更にシルバーハカイダーは空中に投げたロッドを鉄棒代わりに大車輪を披露……… Xライダーかい!!!(笑)
 まあ、何か良く分からん能力の誇示を経て、塔の上に降り立ったハカイダーは研究所を破壊してでもアキラを燻し出して捕らえるよう命じた。
 勿論、原子力を研究する様な施設が破壊されれば、放射線が漏れ出して大惨事を招くことは想像に難くないのだが、そんなことを丸で意に介さないように命令は即座に実行され、炎に包まれた研究所の中で、アンドロボット達に追われてアキラは逃げ惑った。

 かかるハカイダー部隊の暴虐を止める者はいないのか?とナレーションが問い掛けた直後、とある寺の門前にある仁王像の目が青く明滅したかと思うと大破した像の中から本作の主人公・キカイダー01がその雄姿を現した。
 ナレーションによると、太陽電池で動く正義のヒーロー01は仁王像の中に眠ること3年、「日本を取り巻く悪の力が増大し、巨大な悪のエネルギーとなって動き出したとき、そしてそれが一般市民の平和な生活を脅かす危険を生じたとき、仁王の中に組み込まれたコンピューターが作動し、キカイダー01を自動的に誕生させるシステムになっていた」とのことだった………一体、どんな計測システムなんだ?!?(笑)

 ともあれ、01はダブルマシンに搭乗すると現場に急行した。
 現場ではアンドロボットの追撃を撒いたアキラ(←つまり、子供に肉薄しながら撒かれる程アンドロボットは無能(苦笑))はマンホールを見つけ、地下に逃れていた。別のマンホールの口を見つけたアキラがそこから出ようとしたとき、重さに苦闘するアキラを一人の老婆(津路清子)が手助けした。
 だが、黒ずくめの『白雪姫』に出て来る魔女を彷彿とさせるいでたちでにんまり笑う老婆を見た瞬間、アキラは軽く悲鳴を上げて逃走(苦笑)。アキラの名を呼んで追う老婆だったが、アキラの前方からはハカイダー四人衆が現れ、アキラにとって「後門の虎、前門の狼」状態となった。

 そしてすれ違いざまにアキラはハカイダーの小脇に抱えられ、そのまま連れ去られんとしたが、そこへ荒野にトランペットの音色が鳴り響いた。
 一体何者か?とハカイダー四人衆がその姿を探し求める中、ハカイダーが見つけたのは崖の上で真っ白なトランペットを吹く青いヘルメット、赤いジャケット、ジーンズルックの男・イチロー(池田駿介)。
 前作の主人公がギターをかき鳴らして敵を睥睨していたのに対し、完全に敵に背中を向けているイチローが何だかなぁ……(苦笑)。
 何者かと問うハカイダーをしばし無視するかのようにトランペットを吹き続けたイチローはしばらくしてから「悪のある所必ず現れ、悪の行われる所必ずゆく、正義の戦士キカイダー01!」と啖呵を切った(この台詞は以後恒例となる)。
 かつてのライバル・「キカイダー」の名が現れたことに驚くハカイダー。アキラを解放せよとの要求を拒絶するようにハカイダーショットを放つと、部下達も次々と得物をイチローに投げつけた。それ等のいくつかはイチローに命中するも然したるダメージは与えられなかった。
 とはいえ、1対4で人間体のままでは不利と見たか、イチローは「チェンジキカイダー01!」との掛け声とポージングを取り、次の瞬間ヘルメット額部分が回転すると中から太陽電池が現れ、太陽光エネルギーを吸収するやイチローの姿をキカイダー01にチェンジさせた。

 宿敵の前にその雄姿を現した01は、記録コンピューターの情報でダーク壊滅と共にハカイダーは死んだと認識しており、何故生きているのかを問うた。
 問われたハカイダーは、前作の悪の首領プロフェッサー・ギルの脳を得て再生し、同時にダークの優秀な科学者三人の脳をもって部下のハカイダー達を生み出したと答えた。
 謎が明かされたところで01は改めてアキラの解放を要求したが、ハカイダーが応じる筈もなく、ここに初戦闘が展開された。
 白兵戦を見るに、キカイダーを「柔」とするなら、01は「剛」と云え、ブルーハカイダーの電磁鞭やシルバーハカイダーのロッドを受けても動じた風は無く、ゼロワンカットなるベルリンの赤い雨手刀打ちはアンドロボット達の頭を次々と粉砕し、次いでゼロワンドライバーなるスクリュードライバー全身錐揉み回転から放たれたパンチがハカイダーからアキラを奪還せしめた。

 アキラを奪還した01はダブルマシンを駆って戦線離脱。ハカイダー四人衆もバイクに搭乗してこれを追ったが、執拗に追跡するもダブルマシンは飛行能力を発揮し、これによって追跡は振り切られたのだった。

 Bパートに入り、とある湖畔でイチローはアキラの身の上を尋ねていた。だが、父の名を尋ねられれば「パパ」と答え、母の名を聞かれれば無視、何処から来たのか?何処へ行くのか?の問いにはただ遠方を指すだけというアキラの返答は、下手したら(記憶喪失ということもあるのは分かるが)「舐めてんのか?」と云いたくなるものだが、そんな状況に深く同情するイチロー大人過ぎ(苦笑)。
 ともあれ、少年の素性も謎なら、その子がハカイダーに狙われる理由も謎で、首を傾げていたイチローだったが、そこに女性に悲鳴が聞こえて来た。イチローはアキラにその場を動かないよう諭して悲鳴のした方向へダブルマシンを駆った。そして残されたアキラの、陽光を浴びた背中に浮き上がったのはなにがしかの設計図と思しき図面だった…………。

 その頃、悲鳴を上げていたのは先程の老婆で、ブルーハカイダーがアキラを逃がしたのは彼女のせいだ、と八つ当たり的に鞭でその首を絞め上げていた。
 そこへ01がその殺害を阻止しに割って入った。そして両者の格闘を伺う一人の男・百地頑太(久里みのる)。正体不明の「化け物」同士の格闘に狼狽えながらも、その写真を収めれば、特ダネ獲得をもって一流カメラマンの仲間入りが出来ると興奮しながらシャッターを切り続ける‥‥……ま、第1話ゆえのレギュラー紹介やね(笑)。

 その頃、イチローから待機を云い渡されていたアキラの元にはレッドハカイダーの魔手が迫っていた。一方、ブルーハカイダーを追い払った01は老婆を解放し、その皮膚がおかしいことに気付いた。老婆の顔は変装で、偽装皮膚を剥ぐと中からはまだうら若い女性・リエコ(隅田和世)がその素顔を見せた。
 01は直後に現れた頑太に彼女を病院に連れて行ってくれと託すと、自身はアキラの元に戻らんとした。ちなみにこの段階ではリエコも頑太もまだその名を明かされてはいない。彼等がどうストーリーに絡むか?謎ばら撒きまくりやな(苦笑)。

 場面は替わって湖畔近くの山林。そこではアキラがレッドハカイダーに率いられたアンドロイドマン達に襲われ、01が戻って来た時には囚われの身となり、連れ去られた後だった。
 アキラを捕らえたハカイダーは、01が必ず取り戻しに来ると見て、地雷原でこれを迎え撃たんとしていた。悪くない考えだが、そんな密議を屋外で行い、頑太に盗み聞きされているようでは、ハカイダー部隊の組織力、期待は出来んな(苦笑)。

 ともあれ、01はやって来た。
 頑太の警告の声が届く筈もなかったが、01はダブルマシンでもって地雷原を平然と走り抜けた。途中何度も地雷を踏み、地雷は作動したのだが、ダブルマシンは踏まれた地雷が作動するより早く走り抜けることで難を逃れていた。
 これは単純ではあるが、納得のいく解説だった。地雷はスイッチを踏んだ瞬間に爆発するのではなく、スイッチを踏んだ者(多くは歩兵の足)がスイッチから離れることで作動する。つまり理屈上、スイッチを放してから作動するまでの間に効果範囲外に逃れれば難を逃れられるのである(勿論、人間の身体能力で出来る訳ではない)。
 ともあれ、ダブルマシンのスペックで地雷攻撃を逃れた01は、アジト内に強行突入した。勿論ハカイダーは配下にその抹殺を命じたが、アンドロボット達は01を倒す筈だった地雷原に投げ込まれ、ハカイダー四人衆総がかりで阻止せんとするも、ろくな応戦も出来ないままアキラは奪還され、ハカイダー基地も爆破。ハカイダー四人衆はその崩壊に巻き込まれないので精一杯だった。

 無事アキラを助け出したイチローは、アキラの手当てをしながら彼の持つお守りに気付いた。中を改めると、一枚の写真が入っており、アキラと一緒に最前老婆の顔の下から現れた女性が映っているのを知った。写真裏の記述から女性の名がリエコであることは分かったが、アキラに聞いても何者なのか判然としなかった。
 謎は深まるばかりだが、イチローはアキラをハカイダー部隊から守り、家族の元に届けることを決意するのだった。



次話へ進む
前話(冒頭)に戻る
特撮房『全話解説』の間へ戻る
特撮房へ戻る

 最終更新 令和四(2022)年一〇月二一日