キカイダー01全話解説

第46話 よいこの友達 人造人間万才!

脚本:長坂秀佳
監督:今村農夫也


 ついに最終回である。
 冒頭で飛行機が映し出され、その機内にいたのは、01とキカイダーの生みの親で、謂わば作中ストーリーの祖となった光明寺博士(伊豆肇)その人だった。前作『人造人間キカイダー』の最終回で一家でスイスに旅立って以来の帰国なら、作中設定で3年振りに帰国したことになり、機内でも、タクシーの中でも久々の日本の景色に目を細めていたが、やがて行き先がおかしいことに気づいた。
 そのことをタクシー運転手に告げる光明寺博士だったが、特撮番組におけるかかる状況下でタクシー運転手がまともな人間でないのは当然お約束である(笑)。
 何者かと問われ、「俺をお忘れかね?」の台詞と共に見せたその正体はハカイダー。勿論一時は自分の脳が埋められていたその存在を光明寺博士が忘れている筈が無かった。

 その頃、一通のエアメールを手にしたミサオはヒロシ・アキラと共に旧光明寺邸にやって来ており、同様にイチローもエアメールに導かれてやって来た。だが、光明寺と云うメジャーとは云い難い苗字を事前に認識していなかったヒロシ・アキラ兄弟は勿論、イチローも手紙の主を知りつつも、呼び出しの意図を図りかねていた。
 するとそこへ第26話以来、五ヶ月振りとなるギターの音色が流れて来た。勿論奏者は服部半平ではなく(笑)、ジローである。そう云えば敵もいない状態で楽器が演奏されるのって最初で最後ではなかっただろうか?(笑)

 ともあれ、イチロー・ミサオ・ヒロシ・アキラの元に降り立ったジローは挨拶もそこそこに開口一番「光明寺博士が大変なことになった。」と切り出した。
 邸内では光明寺博士が行方を絶って三日になることと、光明寺博士がロボット再生装置なる大発明を成していたことが語られていた。同時にジローはそれをシャドゥが狙っていると推測していた。
 ジローはその装置を、自分達の元にあればシャドゥを完全に叩き潰すことが出来るが、シャドゥの手に渡れば世界が大変なことになるとして、イチローも一刻も早くシャドゥアジトと博士の行方を突き止め、ロボット再生装置を取り戻さなくてはならないとした。

 場面は変わってシャドゥ基地。
 ハカイダービッグシャドゥの前に光明寺博士を引っ立てて来た。その額右部分が赤く腫れあがっていたことのを初め、細かい傷が見られ、ひどい拷問を受けたことが見て取れた。
 ハカイダーは、光明寺博士を散々痛めつけたことで彼にロボット再生装置を作らせることに成功したことをビッグシャドゥに報告した(←重要装置の完成で得意になっていたのか、当初の様にタメ口だった)。

 名前からおおよその機能は丸分かりだったが、ハカイダービッグシャドゥに促されてその性能を実演した。シャドゥマンの1体をハカイダーショットで射殺・爆散させると今度は銃口を光明寺博士に突き付け、装置の発動を強要した。
 博士が数か所のナイフスイッチを入れると四散したシャドゥマンの遺体が回収され、数秒でシュート口からシャドゥマンは元通りの体で出て来た。
 これを見たビッグシャドゥは、例え何体のシャドゥマン・シャドゥロボットが壊されようとその都度再生が可能で、シャドゥは無限の兵力を手にしたことでシャドゥの不滅と世界帝国建設の成功を確信して高笑いするのだった。
 そしてロボット再生装置の完成をもって光明寺博士を用済みとして抹殺を命じるビッグシャドゥだったが、ハカイダーは光明寺博士を、01・ビジンダーを誘き寄せる囮にしてから殺すとした。

 かかる展開を受けて、今度こそ01とビジンダーを抹殺すると息巻くビッグシャドゥだったが、「噂をすれば影(←シャドゥだけに)」と云おうか、アジトにはマリが潜入していた…………そう、シャドゥアジトはあっさり突き止められていた。何の脈絡も無しに
 シャドゥマンは何とか蹴散らせても、罠に苦戦するマリだったが、既にイチローも潜入しており、二人はどんどんアジト中央部に近付いた。

 そこではシャドゥ一味の隙を見て光明寺博士が工具でもって何かをしていた。それを見つけたハカイダーが何をした?と詰問し、「何もしていない。疑うなら調べてみたらどうだ?」と云う光明寺博士を何度も殴りつけ、見張りがなっていないとして見張り役のシャドゥマンを射殺。そのシャドゥマンがロボット再生装置で再生されるのを見てようやく(異常が無いことに)納得するのだった。
 直後、ハカイダーに虐待される光明寺博士を発見したイチローとマリだったが、見張りの多さから博士が人質にとられるのを懸念して手が出せなかった。
 つかず離れずで光明寺博士の後を追った二人が見たのはギロチンに架けられた光明寺博士だった。ギロチンとなると、大刃を支える綱の行方だが、4本の綱がハムスターを入れたゲージの中に入っており、ハムスターはゲージの中のリンゴを食べており、それがある程度食べ尽くされるとリンゴに結ばれている綱が外れるであろう仕掛けが見て取れた。ハムスターがどんな食べ方をするかなど予想がつかないから、何時刃が落ちるか分からない状態はかなりの恐怖である。
 ちなみにその詳細を01とビジンダーは視力を20倍にする望遠回路でもって目視したのだが、その発動形態は眼球が飛び出すもので、チョット気持ち悪かった(苦笑)。

 光明寺博士をギロチンに架けたハカイダーは彼を助けに来るであろう01とビジンダーに備え、シャドゥマン達は個々に銃を構え、普段滅多にアジトを離れないザダムも待ち伏せに加わっていた。
 そんな状態の敵の待ち受けには如何なる罠や仕掛けが有るか分かったものでは無い。01はビジンダーに命を落とす救出任務になるかも知れないと告げたが、ビジンダーは光明寺博士を死なせる訳にはいかないと返した。そしてそこに生みの親である光明寺博士を救うのに「兄さん達だけに任せる訳にはいかない。」としてジローも合流し、01は3人中2人が倒されても残る1人が光明寺博士を救うべしとして、チェンジしたキカイダーも加えて散開突撃を敢行した。

 各々のマシンで突撃する01・キカイダー・ビジンダーに大砲やシャドゥマン達の銃撃が襲い掛かったが三人は珍しくマシンから機銃掃射をしてこれに応戦した。だが、早くもロボット再生装置はその活動を始めており、機銃掃射で倒されたシャドゥマン達は次々に回収され、元通りの体で次々と復活した。そして再生したロボットの送り出し口の横には、再生させたロボットの数を示すカウンターが動いていたのだった………。

 ただ、銃撃や砲撃を駆使してもそれで01達を倒すには至らなかった。恐らく、他の特撮番組よりは戦闘員が数を活かすことのキカイダーシリーズ故、無限の人海戦術で01達の疲弊を狙う気の長い戦術だったのだろう。何体ものシャドゥマン達が次々に取り縋り、次々に倒され、回収され、ロボット再生装置で再生されて戦列復帰を繰り返し、その中にはビジンダーレザーによって破壊されたハカイダーも含まれていた。
 程なく01達は光明寺博士の傍近くまで迫ったのだが、ゴール近くに罠があるのは双六のお約束で(←何の話だ)、地中からせり出した鉄檻が01とビジンダーを閉じ込めたが、これはすぐにキカイダーのデンジエンドで破壊された。

 直後、光明寺博士は近寄ってくる三人に来てはならないと呼び掛けた。周囲には地雷があり、それを踏めば人造人間と云えども破壊されるのは必至と考えていた光明寺博士は三人に「命を粗末にするな。」、「私は君達をロボットとは思っていない。」と呼び掛けた。
 とはいえ、そう云われても風前の灯火状態である光明寺博士の命を案じずにはいられない三人。それに対する光明寺博士の答えは、「シャドゥを道連れに死ぬのなら本望。」という意味深な言葉だった。

 そう、光明寺博士には勝算があった。ハカイダーに見咎められ、虐待される直前に仕掛けたのは自爆装置で、すぐに露見しないようにロボット再生装置が30体目の再生をカウントしたところで装置がアジト全体を木端微塵にする大爆発を起こすよう仕掛けを組み込んでいるとのことだった。
 首枷で拘束された状態でも光明寺博士は01達が倒したロボットの数をきっちり数えており、あと13体のロボットを倒すよう促した。

 この直後、再生されたハカイダーをまじえた一隊が襲い掛かって来て、更に8体のシャドゥマン達が倒されたところで業を煮やしてザダムが参戦してきた。
 二人の体が側面でくっついたような体躯でまもとに戦えるのか?と揶揄する01だったが、ザダムは分離が可能で、左手にトライデントを持つ青頭が01に、右手にトライデントを持つ赤頭がキカイダーへの戦意を露わにし、突っかかって来た。
 勿論両者とももう片方の腕は無い訳で、2体がくっついているときよりはマシだったかも知れないが、それでも片腕のみで戦っているに等しい訳で(苦笑)、01はブラストエンドで、キカイダーはデンジエンドで各々の相手を瞬殺し、ザダムの分離直後にビジンダーを対戦相手と見定めて掛かって来たハカイダーも再びビジンダーレザーで倒された。

 当然、同時に倒された3体も即座に回収され、ザダムが26体目・27体目として、ハカイダーが28体目として再生されたが、二度目とあってか、17体目として再生された際には「安心して戦え。」と云っていたビッグシャドゥが、再度出て来たハカイダーに「またお前か!?」と呆れていたシーンはチョット笑えた(笑)。
 ともあれ、絡繰りが分からなければ雑兵も敵将も次々と再生されるこの状況は絶望しかなかっただろうけれど、光明寺博士の云っていた30体目が近づいていたのが救いだった。

 とは云え、あと2体倒すのみに迫った最終決戦は01達にとっても苦しい局面を迎えていた。高笑いしながら再度現れたハカイダーザダムに01達は最前相手を倒した技を駆使せんとしたが、既にそれらを発動するだけのエネルギーは尽きていた。
 一方2体のザダムの間に立つハカイダーは両手でザダムの各々が持つトライデントを自らの眼前で交差させ、「ザダムハカイダー三位一体攻撃」を発動させて攻撃せんとしたが、それに対して01・キカイダー・ビジンダーは円陣を組むように手を繋いで空中に飛び上がると水平状態で回転してキカイダー・トリプル・サークラインなるスリープラトン技を発動し、再度ザダムを、再々度ハカイダーを倒し、直後に落ちたギロチンもあわやと云うところで01が受け止めた。

 例によってハカイダーザダムの残骸はまたも回収され、再生装置に掛けられたのだが、これによりロボット再生装置が再生させたロボットの数は30に達し、光明寺博士の仕掛け通りにロボット再生装置はシャドゥアジトもろとも大爆発を起こし、ハカイダーザダムも再生することなくこの世を去り、ビッグシャドゥも些か呆気ない最期を遂げたのだった。

 そして大団円。
 光明寺邸ではようやくにして訪れた平和を満喫する様にミサオ・ヒロシ・アキラが小規模なウェディングケーキ並みの大きなケーキを食し、それを愛用パイプを燻らせながら光明寺博士が目を細めていた。
 最初はがっつくようにケーキを食べていた三人だったが、やがてアキラが自分達だけケーキを食べていることに罪悪感(?)を抱いた。勿論人造人間故に人間の食物を食べない、食べられないイチローやマリ達を慮ってのことだった。
 アキラはその場にいないそんなイチロー達を可哀想と捉えていたが、そんな思いを抱えるミサオ・ヒロシ・アキラに対し、光明寺博士は、

 「ロボットは強い。年は取らない。しかしだからと云ってそれが幸せとは限らないんだよ。
 イチローだって、ジローだって、完全なロボットになるより、不完全でも本当は人間になりたいんだ。」


 として、下手な人間よりもよっぽど人間らしい人造人間の気持ちを推し測りつつ、自分たち人間が人間であることを大切にし、人間として努力して生きていくことの大切さを語って『人造人間キカイダー』『キカイダー01』の両作品が通して抱えていた命題とメッセージを三人に、そして視聴者達に伝えたのだった。

 そして三方から荒野を歩み、合流したところで手を握り合ったイチロー・ジロー・マリは同じ方向に向かって歩き出し、ナレーションは平和の到来と、次なる悪に備えることと、そこにイチロー達がいることを述べて2年間2作品に及んだ同シリーズは完結したのだった。



前話に戻る
『キカイダー01全話解説」冒頭へ戻る
特撮房『全話解説』の間へ戻る
特撮房へ戻る

 最終更新 令和四(2022)年一〇月二一日