キカイダー01全話解説

第45話 サムライワルダー暁に死す

脚本:長坂秀佳
監督:今村農夫也
浪人武士ロボット登場


 「サムライワルダー暁に死す」……………この主要人物が落命することがバレバレのサブタイトル、何とかならんものだろうか(苦笑)。まあ『キカイダー01』放映当時、ビデオデッキがある家庭は少なく、確実に視聴して貰う為にもインパクトあるサブタイトルでもって「見逃してはならない…。」と思わせる意図があったであろうことは分からないでもないのだが。

 ともあれ冒頭、ハカイダーがダブルマシンで疾走するイチローを狙撃した。ただ、得物はいつものハカイダーショットではなく、弓矢だった。前話で峠英介に奪われる形になったからだろうか?まあ、それはさておき、矢はイチローの右上腕部に刺さった。
 勿論そんなところに刺さっても致命傷とはなり得ないのだが、矢尻には得体の知れない黄色い液体が付着していた。

 場面は変わってシャドゥアジト。そこではワルダービッグシャドゥに謁見していた。ワルダーザダム、シャドゥマン達を前にしてビッグシャドゥは最前ハカイダーがイチローに付着させたものと同じ思しき黄色い液体の入った試験管を前に今回の悪企みを解説していた。
 黄色い液体は一つの方法を除いて一生消せない特殊なインキで、しかもそのインキに対して鋭敏に反応して斬り倒しに掛かる五振りの日本刀−暗殺血風刀(注:漢字表記が正しいかは不明)があり、その使い手としてザダムは五人の浪人武士ロボットを召喚した。

 その前に、シャドゥマンの一隊に黄液体が付けられており、数人のシャドゥマンの中からその1体を判別して攻撃するようにビッグシャドゥが促すと、浪人武士ロボット達は居合の技で全員が標的であるシャドゥマンを誤らず斬撃を加えており、哀れにも実験台とされたシャドゥマンは自害後の項羽宜しく、頭と両手両足を斬り落とされていた。
 要するに黄液体を付けられたイチローは暗殺決闘刀にターゲットロックオンされたに等しく、浪人武士ロボットによって討たれるのも時間の問題で「三日と持つまい。」とした。
 当然そうなってはワルダーは当初の契約を果たせない。抗議するワルダーに対してビッグシャドゥは前々回同様、殺りたいなら先に殺れ、と促した。ただ今回異なっていたのは、もし浪人武士ロボットが先に01を倒すようなら、自分がワルダーを生かしておかないと宣言していたことだった。
 そしてこの浪人武士ロボットビッグシャドゥの言が嘘ではないと云いたい気にワルダーを囲んで睨みつけていたのだが…………………その容姿は羽織の家紋部分にシャドゥのエンブレムを付けていた以外は顔を白塗りにした武士役者そのもの……………云われなきゃロボットとは全く分からない容姿で、これまた着ぐるみ予算の不足を匂わせるものだった(泣)。

 さてこの浪人武士ロボット達、次のシーンでは既に荒野にてイチローと対峙。五人掛かりで斬り掛かっても対して優位に立てていない様だったから、その剣技は格段に優れているようには見えなかった(苦笑)。
 だが、一太刀上着を切り裂いただけでイチローがかなり狼狽えており、その後の彼等の言によるとダイヤモンドをも切り裂けるとのことで、『ルパン三世』石川五右衛門の斬鉄剣、『魁!!男塾』赤石剛次の一文字流斬岩剣もびっくりの名刀振りだった。

 堪りかねてイチローは01にチェンジしたが黄インキは01の左上腕部にくっきり残っており、そこに浪人武士ロボットの一体が「01封じ暗闇切り」なる、時代劇的には「円月殺法」と呼ばれる剣技の様な技を駆使すると01の左腕は肩口から斬り落とされてしまった!
 圧倒的優位に立ち、次は右腕を斬り落とすと高らかに宣言したが、そこに2本の矢が飛んで来て、あっという間に二体の浪人武士ロボットが討ち取られた……………弱っ!!

 矢を放ったのはビジンダーで、浪人武士ロボット達の卑怯なやり方(五人掛かりの事かな?)を許せないとしてビジンダーレザーを放ったが、浪人武士ロボット達は暗殺血風刀を交差させてこれを弾き、ビジンダーレザーは01を撃つ始末だった。
 さすがにこれにはビジンダーも01を連れて撤収するしかなく、浪人武士ロボットはビジンダーに対しても暗殺血風刀がある限り、自分達は誰にも負けないと豪語した……………………たった今、二人倒されたばかりで良く云うものだ………(呆)
 ともあれ、撤収するビジンダーと01を二人の浪人武士ロボットが追撃せんとしたが、リーダー格と思しき一体が慌てることは無いとして押しと留めた。リーダーは代わりに暗殺血風刀を空高く放擲すると、それは追尾ミサイルの如く01を追い掛け出したのだった。

 場面は変わってとある洞窟のような場所。そこではイチローがマリによる修理を受けていた。幸い左腕はすぐに繋がったが、二日間は戦えない状態で、かといってもたもたしていては暗殺血風刀の力で浪人武士ロボット達が襲ってくるのは目に見えていた。
 それを躱すには黄インキを消さなくてはならないのだが、冒頭でビッグシャドゥが云っていたこれを消す為のたった一つの方法をマリは知っていた。それは初恋花と云う花を用いるものだった。
 ただ、まんの悪いことにマリがその存在を知っていることはビッグシャドゥが先刻承知で、ビッグシャドゥはマリが採取に来るであろう初恋花の咲く崖にワルダーを張り込ませていた。

 読み通りマリが来るのをモニタリングしたビッグシャドゥハカイダーハカイダーは久々に激痛回路を発動させた。苦悶するマリは自らの体に仕掛けられた水爆のことをまだ知らず、駆け付けたワルダーにブラウスのボタンを外して欲しいと懇願した。
 第3ボタンが外されることで水爆が発動すればビジンダーを殺し、01の体から黄インキが消されるのも防げる訳だが、そのままではボタンを外したワルダーも殺すことになる。「どれ助けるか…。」と呟いたハカイダーだったが、ビッグシャドゥは捨て置くよう命じた。ビッグシャドゥの方ではそろそろワルダーは邪魔者でしかないと見做しており、01抹殺は浪人武士ロボットに任せれば良いとしていたので、ビジンダーとワルダーが心中するのは望むところで、説明を聞いたハカイダーもそれは良いとばかりにほくそ笑んだ。

 だが、事は二人の望んだとおりに展開しなかった。ワルダーは第3ボタンを外す直前にマリの体内にある水爆の存在を察知し、同時にビッグシャドゥの汚いやり方も察知した。そしてそれに憤ったワルダーは当身でマリを気絶させるとその体から水爆を取り除かんとした。
 だが、事は簡単ではなかった。下手に水爆を取り除くとマリの命がなくなる構造となっていた。上手い例えが浮かばないが、カタツムリの貝殻や、亀の甲羅が外せないのと同様と云うべきだろうか?
 一応、方法が無い訳ではなく、ワルダーのエネルギー回路の一部を取り付ければ水爆を取り除いてもマリの生命活動は持続出来ることが見込まれたが、それを行えばワルダーの命は一週間持たないとのことだった。
 だが、ワルダーはその方法を選択した…………。

 Bパートに入り、元気を取り戻したマリは珍しく満面の笑みでワルダーに礼を云ったが、シャドゥの汚いやり口にうんざりしていたワルダーは「当然のこと」とし、暗殺血風刀を用いるような汚いやり口には刀で対抗するしかないとして、ワルダー家に先祖代々伝わる二振りの名刀風神村雨と雷神村正を披露し、風神村雨をマリに託した。
 他にも何か云いたそうなワルダーだったが、マリは「行くところがある。」と云って去り、その背中にワルダーは「拙者の身勝手を許して下され……。」と意味深に呟くのだった。

 結局、ワルダーは前話ラストの台詞とは裏腹にマリへの好意を捨て切れず、崖の上に咲く初恋花をマリに代わって取りに行き、その途中と崖上に仕掛けられたトラップに苦しみながらも初恋花を手にし、最終的にはトラップによって崖下まで墜落してきた。
 ここまでしてくれたワルダーにマリも満面の笑みで謝意を伝え、その笑顔にワルダーも「生涯で最も幸せな日」として束の間の恋の成就を喜ぶのだった。

 その頃、暗殺血風刀による探索を続けていた浪人武士ロボット達は遂に01を発見し、草陰から一斉に斬り掛かった。しばし3対1ながら互角の白兵戦が展開されたが、程なくビジンダーとワルダーが駆け付け、ワルダーの加勢に対し、不利を悟った浪人武士ロボット達はあっさり撤収した。
 そのワルダーが振り返ると、そこには01のインクを消すべく甲斐甲斐しく尽力するビジンダーの姿があり、微かに戦慄く姿は束の間の恋が破れたことを悔しがってる様だった。
 そんなワルダーの気持ちを知る由もないビジンダーは01に、「とっても世話になったのよ。」としてワルダーに礼を言うよう促し、01も礼を云いつつ握手を求めたが、ワルダーは握手に応じると見せかけて突如斬り掛かって来た!

 突然の態度豹変に怪訝の声を上げるビジンダーだったが、それに対してワルダーは、「うるさい!拙者の心は、拙者の心は誰にも分らん!」と叫んで更なる斬撃を加えて来た。
 だが、ビジンダーにその攻めようが卑怯で、そんなことをしないのがワルダーではなかったのか?と詰問されると、ワルダーは固まり、悔しさを振り払うように風神村雨を振り回しながら去っていったのだった。

 その後、そのまま山道を歩いていた01とビジンダーだったが、そこに浪人武士ロボット達が立ちはだかった。更にワルダーも駆け付け、浪人武士ロボット達に加勢するような助言まですると一緒になって01に斬り掛かって来た。
 ワルダーの思考が全く読めぬ中、1対4でも何とかしのいでいた01だったが、リーダー格が01封じ暗闇切りを発動せんとし、01は最前同様金縛り状態となった。だが、そこへビジンダーが雷神村正を投げ寄越し、それを構えると刀身の反射した光が浪人武士ロボット達を怯ませ、その後は完全に01ペースとなり、忽ち2体が斬り倒され、最後の1体もゼロワンカットの前に戦死した。

 直後、遂に01とワルダーの最終決戦が敢行された。ビジンダーが制止の声を上げるももはや止めようはなかった。
 ワルダーは風神村雨を構える01にそれは01に渡したものでは無いと告げると、01はそれを地面に突き立て、素手で戦うと宣した。一方のワルダーは雷神村正を駆使し、両者は大立回りを演じた。
 そして01はキックで雷神村正を弾いたが、その際に足を斬られた。そのまま立てない01が不利かと思われたが、弾き飛ばされた雷神村正は上空からワルダーの背に突き刺さり、それが致命傷となった。

 良き絶え絶えのワルダーは1週間しか余命の残されていなかった我が身を振り返り、「同じ殺されるのなら、貴様の他に殺されたい人がいたぞ…。」との捨て台詞を残し、地面に倒れ伏すと壮絶に爆死した。
 ビジンダーは初恋花を手に入れるのにとても親切だったワルダーの死を悲しみ、それがロボットの宿命であることを悲しみ、ワルダーの様な可哀想なロボットを生み出す組織を許さない為にビジンダーとしての戦意を燃やし、そしてナレーションはそんなマリの想いをイチローにも投げ掛けていた。

 そして最後の見送りだが、今回それを担ったのはビッグシャドゥだった。さすがにアジトに坐したままだったが、シャドゥには01が聞けば身の毛がよだつような恐ろしい作戦が用意してあるとして高笑いするのだった。



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 最終更新 令和四(2022)年一〇月二一日