ウルトラマンレオ全話解説

第1話 セブンが死ぬ時!東京は沈没する!

監督:真船禎
脚本:田口成光
サーベル暴君マグマ星人、双子怪獣ブラックギラス、双子怪獣レッドギラス登場
 春のうららかさを感じさせるBGMの中、アクロバティックな動きを見せた一人の青年。彼こそがこの作品の主人公おヽとりゲン(真夏竜)で、BGMが主題歌に代わるや鉄棒、マット運動、空手に歴代主人公と比して群を抜いた身体能力の冴えを見せつけた。
 ちなみにこのときゲンと空手の組み手を行っていた者達の内一人はウルトラマンレオのスーツアクションを担った二家本辰巳氏。つまり真夏氏の格闘の冴えは本職のスタントマンと比べても遜色なく、光線技無き初期のレオのアクションに歴代ウルトラマンとは異なった魅力を添えた。

 主役の簡単な紹介が終わると場面は替わって黒潮島。そこは東京から250km離れた場所で、その近海でウルトラセブンが双子怪獣ブラックギラスレッドギラスとの戦闘状態にあった(余談だが、この時のセブンには耳が無く、後年マニアの間で「耳無しセブン」と呼ばれた)。
 互いに膝まで水に浸かった状態で動き辛い中、双子怪獣は連携してセブンを攻め、両者が抱き合って高速回転する攻防一体技・ギラススピンはセブンの肉弾攻撃はおろかアイ・スラッガーをも弾き返した。
 双子怪獣は水戦を得意とするらしく、深みからセブンの足を引き、海岸にて二匹掛かりで羽交い絞めにした。すると、戦況を見極めた様に双子怪獣の操り手・サーベル暴君マグマ星人が現れた。
 マグマ星人の構えるサーベルに危うく刺し貫かれんとしたセブンは、済んでのところで自分と取り押さえていた双子怪獣を振り解き、その魔手を躱したが、形勢不利は変わらず、遂に仰向けに組み伏せられたところを、ブラックギラスによって右足をへし折られてしまった!
 その攻撃は足首を掴んで何度も捩じり上げるもので、「カキカキ!」という、乾いた、しかしながら耳障りの悪い音が複雑に折ったものであることを表していた。

 致命傷ならずとも、深手を負った上に1対3とあっては、絶体絶命と思われたその刹那、上空から巨大な赤い球が飛来した。赤玉の正体は主人公・ウルトラマンレオで、その雄姿を現すや、マグマ星人レオキックを見舞った。
 辛うじてこれをかわしたマグマ星人だったが、助太刀に来たレオに対して明らかに格闘能力で劣っていた。劣勢を挽回せんとして指笛で双子怪獣を呼ぶも、双子怪獣はセブンの両腕で首根っこを押さえ込まれて加勢が叶わなかった。
 挽回が叶わぬと見たマグマ星人は黄色い煙幕を発して姿を隠すと、サーベルから光線を放ってセブンを撃ち、双子怪獣は海中に、自身は虚空に遁走した。

 戦いを終え、セブンはモロボシ・ダンの姿に戻り、レオもまたおゝとりゲンの姿に戻ると、海岸に倒れたダンの元に駆け寄った。木切れを杖に、血を滲ませた包帯で足を覆うという痛々しい姿のダンは自分を救ってくれた成年に、自分をモロボシ・ダンと知って助けてくれたのか?と尋ねた。
 ゲンはその問いを肯定し、ダンがセブンであり、MACの隊長であることも知っていることを告げた。そして自身のことを問われると、「ウルトラマンレオ」であるとを名乗った。
 自身の故郷は獅子座L77星で、ほんの一ヶ月前には夜空に美しく輝いていたが、マグマ星人と双子怪獣の襲撃で滅ぼされ、それがためにレオ自身は故郷と似た星である地球に飛来し、そこで「おゝとりゲン」と名乗り、地球を第二の故郷として平和に暮らしていたという略歴をダンに話した。

 ゲンの身の上を聞き終えたダンは、ゲンに「愛する地球を君自身の手で守るんだ。」として、宇宙パトロール隊MACへの入隊を要請した。自分にはゲンが必要で、ゲンにもまた自分が必要であるとしたのだが、それに対してゲンはダンが、ウルトラセブンがいるから、として暗にその必要は無いとばかりにやんわりと断らんとした。
 恐らく、憎き一族の仇であるマグマ星人によってセブンがピンチゆえに成り行き的に助太刀したまでで、自身はそこまで戦いたいとの意思は無かったのだろう。だが、最前ブラックギラスに脚を折られた記憶を脳裏に浮かべたダンは、「セブンはもういない…。」と宣う。
 驚くゲンの前でダンがウルトラ・アイをかざそうとすると、ウルトラ・アイは発火・炎上・半壊してしまった………。
 変身失敗はダンに多大な疲労を伴ったようで、膝を折る自分を助け起こさんとするゲンに、ダンは「やってくれるな……?」と問い掛け、ゲンも受諾した。
 そしてウルトラマンとして戦うことの叶わなくなった我が身と、自分の意志を継いでくれる新たなウルトラマンを得たことを指してダンは、「あそこに沈む夕日が私なら、明日の朝日はウルトラマンレオ、お前だ。」と例えた。
 改めてMAC入隊を乞うゲンと握手を交わしたその刹那、ダンは突然ゲンを投げ飛ばした。上着を残してその投擲を辛うじて交わしたゲンに、如何なるときでも油断はするな、と師として最初の教えを与えた。
 そして負傷し、かくして地球を故郷と定め直した二人の宇宙人は共闘を誓い…………こんなサイトを見て下さる方々には全く不要な解説ですな(苦笑)


 場面は替わってMAC基地アジア支部。
 基地は日本上空400qの地点に浮遊し、地球周辺の宇宙をパトロールし、同時に地球に侵略してくる宇宙人に備えるのが任務である。宇宙からの侵略者が地球に降り立つ前に迎撃するのには良い位置にあると思うが、地上で事が起きた際に素早く駆け付けるには不適切な気がする。まあ、千代田区のど真ん中で日々騒音をまき散らし、やばくなったら基地ごと上空にトンズラするZATよりはマシか(苦笑)

 ダンは隊員達に新入隊員おヽとりゲンを紹介し、隊員達−黒田(黒田宗)、青島(柳沢優一)、赤石(大島健二)、白川(三田美枝子)、桃井(新玉恭子)がそれぞれ名を名乗った。
 前作の隊員達が方角づくめ(東・西田・南原・北島)だったのに対して、今作は色なのね(笑)。それはともかく、名乗る隊員達の紹介のつもりなんだろうけれど、隊員達を杖で刺すのは態度悪過ぎるぞ、ダンよ(苦笑)

 MACに入隊したゲンは城南スポーツセンターにやって来た。
 同所のトレーナーだったゲンが、エリート組織であるMACに入隊したことは同所にとっても名誉なことの様で、冒頭でゲンのアクロバットを見ていた所長の大村正司(藤木悠)を初め、ゲンの同僚トレーナーである山口百子(丘野かおり)、野村猛(伊藤幸雄)、そして梅田カオル(富永美子)を初めとする訓練生達もゲンの出世を祝福し、猛を初め、多くの訓練生達がゲンに続いてMACに入らんとの意欲を示していた。う〜ん………『ウルトラマンA』のTAC並みMACが地球における精鋭中の精鋭として英雄視されていることを示した描写なんだろうけれど、第二期ウルトラシリーズの正義のチームは噛ませ犬扱いの側面が色濃く、MACは特にそれが色濃いんだよなぁ…………(嘆息)。
 ともあれ、MACに入隊したとはいえ、非番時には引き続きスポーツセンターのトレーナーも兼業することとなったゲン。恐らくは『帰ってきたウルトラマン』の郷秀樹同様の待遇なのだろう。
 郷も加藤隊長から非番の日に坂田自動車修理工場で坂田の手伝いをしつつオートレーサーを目指すことを認められていたが、トップの肝煎って、大切なのね(笑)。

 かくして、カオルとともに束の間の平和を享受するゲンだったが、そこにMAC本部から再度双子怪獣が現れたとの報が入り、初出撃となった。
 波打ち際で我が物顔に暴れる双子怪獣によって大津波が発生し、多くの島民達が逃げ惑う中、大津島はMAC本部への「沈む。」の一言を最後に通信は途絶えた。
 レーダーに現れた被害地域は東京から150qの地点で、徐々に東京に近づく状況を見てゲンは「マグマ星人だ!」と色めき立ったが、それに対してMACの先輩隊員達の反応は冷淡だった。
 あたかも、後輩が分かり切った風な態度を取るな、と言いたい気な感じだったが、ダンは例え万に一つの事でも、それを確認することもMACの大切な任務として出動を命じた。

 だが、マッキー1号でゲン達が飛来したとき、現場から双子怪獣の姿は消えていた。ウルトラマンレオであるゲンの目には海中に隠れた双子怪獣が見えるのだが、マッキーに搭載されたレーダーには感知されず、ゲンには仲間達にそれを証明する術を持たなかった。
 ゲンの要請で一度は再探査をしてくれた先輩達だったが、それでも黙視も、レーダー確認も出来ないとなると「異常なし。」として帰投してしまった(←無理はない)。

 納得のいかないゲンは基地にてダンにその旨を伝えたが、ダンは、自分達は宇宙人だが、地球人として地球に暮らす以上、地球人のやり方に従わねばならない、とゲンを諭した。
 しかし、そのやり方に従っていては東京が沈没すると断じたゲンはダンへの反論を止めず、最後には「勝手にします。」とまで言い出した。命令不服従に杖を振りかざして止めんとするダンとゲンの雰囲気が劣悪化する中、白川が東京湾での異常高潮を伝えてきたため、両者の論争は水入りとなった。

 黒潮島、大津島同様、沿岸を津波が襲い、双子怪獣が上陸した。
 都民は逃げ惑い、倒れ伏し、津波は城南スポーツセンターをも襲った(扉の窓ガラスに津波が映っており、実に芸が細かかった)。大村と百子も子供達を誘導して避難した。そしてそこへゲンが現れ、レオに変身するや双子怪獣に立ち向かった。
 だが、双子怪獣に挟まれて抱きかかえられたレオはそのままギラススピンにぶん回され、目を回して倒れてしまった…………。しばらくして辛うじて立ち上がったレオだったが、倒れていた時間が長かったためかそのときには既にカラータイマーが赤に変じていた。
 レオは双子怪獣の一体が相手なら互角に戦えそうだが、2対1となると明らかに劣勢立たされていた。しかもナレーションによるとレオの地球上での活動可能時間はM78星雲人より短い2分40秒とのこと………勝機を見出せず、劣勢のまま第1話は終結したのだった。


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令和二(2020)年一〇月五日 最終更新