ウルトラマンレオ全話解説

第2話 大沈没!日本列島最後の日

監督:真船禎
脚本:脚本:田口成光
サーベル暴君マグマ星人、双子怪獣ブラックギラス、双子怪獣レッドギラス登場
 冒頭は勿論第1話のおさらいである。補足としてウルトラセブンとウルトラマンレオが最初で最後の共闘を行った黒潮島は海中に没していたことが判明した。
 レオに応戦しつつ、暴虐を尽くす双子怪獣の為に東京は家々が流され、横転した車両が火を吹き、そんな中で飛んできた車からカオルを守らんとした百子がその下敷きとなってしまった………。
 双子怪獣のギラススピンに翻弄され、カラータイマーの点滅が始まり、敗色が濃厚となってくる中、それを狙いしましたかのように襲い来るマグマ星人。今回も一騎打ちならレオが優勢に見えたが、常にタイミングを計っているマグマ星人がそんな堂々とする勝負をする筈がなく、掌から双子怪獣の角に光線を放つと双子怪獣はギラススピンを再始動させ、右腕のサーベルに続き、左腕にも鉤爪フックを纏った。

 現状、ギラススピンに対して打つ手は無かった。レオは何度も弾き飛ばされ、その都度マグマ星人のサーベルによる刺突が襲った。辛うじてそれを躱すも勝算は見出せず、見かねたモロボシ・ダンは杖を放り投げると変身出来なくなった我が身に残された最後の能力であるウルトラ念力を発動した。
 両手をグーにしてクロスを組み、そこから発する念動波の様なものはこの後も幾度か登場し、その度に微妙に異なる効果を見せるのだが、概ね共通しているのは敵の動きを封じる、鈍化させるもので、この時の双子怪獣は行動不能に陥り、マグマ星人は居眠りしかけている様に見えた。

 好機と見たレオはレッドギラスの、次いでブラックギラスの角を空手チョップで叩き落とした。だが、(有名な話だが)ウルトラ念力は精神力を初めダンの寿命をも大きく消耗する。それゆえ長時間駆使するのは不可能で、短時間の駆使でもダンは倒れ伏した。
 これにより意識を取り戻したマグマ星人と双子怪獣だったが、ギラススピンが使えないとなると劣勢は明らかで3体は忽ち遁走した。

 戦いを終え、変身を解いたおヽとりゲンは当然の様にダンの元に駆け寄ったが、ダンの態度は取り付く島もない。そしてゲンは自分の知らずにいたことを次々と思い知らされた。
 勝利はダンの助力によるものであった事、故郷を奪われた憎しみの心のみで戦って周囲の状況が見えない中、百子が瀕死の重傷を負ってしまった事、そして同時にダンは次に自分達がマグマ星人達の襲撃から守り切れなければ日本は沈没するとさえ言った。

 ダンから百子の重体を聞かされ、慌てて病院に駆け付けると、そこには大村と猛とカオルがいた。一様に沈痛な表情の中、大村は百子が怪獣に向かうゲンを心配していたことを告げ、我が身よりも常に誰かを気遣う百子の心根に、体を張って救われたカオルは泣き出し、病院を飛び出したゲンは林に入ると様々な激情をぶつけるように木々を蹴り倒した。
 だがそこへダンが現れ、そんな技では双子怪獣は倒せないという………えっ?訓練だったの?!…………まあ、それはさておき、悔しいか?と問われたゲンは半泣き顔で「悔しい!」と即答した。第二期ウルトラシリーズの主人公は当初は未熟さが目立ち、おヽとりゲンも例外ではなかったのだが、ここまで自らの能力の至らなさに打ちのめされた表情を見せた者もいない。
 勿論、様々なカラーの主人公がいて、それでこそのシリーズなのだが、今でこそ評価の高い『ウルトラマンレオ』が放映当初に人気面で低迷したのも、リアルタイムで観ている分には辛い描写が多かったからではないだろうか?

 ともあれダンは、双子怪獣はトカゲの尻尾の如く角を再生させて三度襲撃してくるのも時間の問題とし、ギラススピンにスピン攻撃で対応すべし、と助言した。
 ダンは独楽を回すとその上空に杖を錐揉みするように投げ、落下した杖は独楽を芯から真っ二つにした。これを見たゲンはスポーツセンターにてきりもみキックをマスターすべく初の特訓に入ったのだが………ぶら下がってぶん回される姿ははっきり言って拷問だった
 一応、トランポリン上にて行っていたので、飛び上り、体を捻り、何度も何度も放り出されて落下してもそれが大怪我を伴うものにはならなかったにしても、付き添っている猛は気が気でなかった。同時に、特訓中のゲンもまた百子の身を案じて気が気ではなかった。
 遂には居た堪れなくなってスポーツセンターを飛び出そうとするモダンに止められた。

 Bパートに入ると特訓の場はとある海岸に移っていた。
 一つの岩を蹴り割り、幾許かの特訓成果を示したゲンだったが、ダンは「欠けたに過ぎない。」としてこれを認めず、杖で岩を叩き割ると、杖でさえ可能な岩割りが出来ない内は何があっても特訓を止めるなと言明した。

 だが、遂に角を再生させた双子怪獣の襲撃が始まってしまった。
 ダンは全マッキーによる総攻撃を命じ、マッキー2号は分離して双子怪獣に波状攻撃を掛けた。つまるところ、正義のチームによるワンパタ機銃掃射なのだが、青島や桃井が憤怒の形相で掃射を続けるも、勿論効果は無かった(苦笑)。
 自らもマッキー3号にて攻撃に加わるダンだったが、マッキーは次々と双子怪獣の角から出る光線に撃墜され、当のダン自身MACの力で双子怪獣を倒せるとは思っていなかった様で、時間稼ぎが精一杯の中、心の中で特訓中のゲンに呼び掛けていた。

 それからしばらくして何とかゲンは何とか岩を蹴り割ることに成功。快哉を叫ぶや即座にウルトラマンレオに変身し、双子怪獣の元に向かった。
 特訓で自信も得たものか、レオは双子怪獣の2体掛かりにも優勢に応戦し、レッドギラスの角光線もバク転で躱してはヒット&アウェイ的に双子怪獣を殴打していった。
 するとそこへ虚空から三度マグマ星人が加勢に現れた。そしてその間隙を縫って双子怪獣はギラススピンを発動すると、これまで同様レオの攻撃を弾き飛ばしつつ、スピン状態から光線まで放って来た。
 これに対してレオは光線をかわしつつ、東京への被害を防ぐべく、水戦達者な双子怪獣相手に不利を承知の上で沖合に誘き寄せた。

 そして最終局面。相も変わらずギラススピンとその隙を突くマグマ星人のセコイ攻撃の前にカラータイマーが点滅を始め、幾度かギラススピンによって弾き飛ばされたレオはその体を海中に沈めた。
 レオはそのまま海中に没してしまったのか?周囲には不気味な沈黙が漂った………。油断なく海面を注視していたマグマ星人だったが、程なく海中から真一文字にレオが上空へと飛び出した。
 その動きを注視しながらサーベルを構えたマグマ星人だったが、レオが飛び出したのは双子怪獣の頭上だった。落下しながらきりもみ回転をしていたレオはきりもみキックを炸裂させるや、ギラススピン中だったレッドギラスの首を、次いでブラックギラスの首を瞬時に切断した!

 勿論、短時間で角を再生出来る双子怪獣と言えども、首ちょんぱされては絶命するしかなかった。仰向けに倒れた体はそのまま海中に没し、双子怪獣の戦死を見たマグマ星人は当然の様に即座に戦線離脱した。

 戦いを終えたゲンが病院に駆け付けると、そこに横たわる百子は死んでいるか、生きているにしても生還には程遠い状態で眠っていた。大村と猛は沈痛な表情のままで、カオルだけが疲れ果てた表情で大村に抱かれて眠っていた。
 またも居た堪れなくなって病院を飛び出したレオは四つん這い状態で必死に死なないでくれと叫ぶしかなかった。すると天空にある獅子座が獅子の顔を映し出したかと思うと、その顔が咆哮するや黄色い光線が放射された。ゲンは黙ってそれを見上げていたが、やがてその光線によるものか、百子は命を取り戻し、同時に黒潮島も海上に浮上して甦った。

 ナレーションでははっきり言及されなかったが、この現象はレオマスクパワーによるもので、死人を甦らせ、沈んだ島を復活させるとは何とも凄い能力だが、後に黒潮島で犠牲になった数々の島民がそのままだったことが判明し、『ウルトラマンレオ』ではMAC隊員の殉職や、レギュラーメンバーの惨死も続くこととなることから、このパワーは何らかの条件が組み合わされないと発動出来ない、能動的には活用出来ないものと思われる。
 ともあれ嵐の晴れた海岸では起き上がれるようになった百子が島と自分が助かったことへの礼をゲンに述べていた。とはいうものの自分が何かをしたという意識のないゲンは釈然としない。それどころか自分の為に百子が重傷を負ったことに対する罪悪感にさえ捉われていた。だがそれでも百子はゲンに助けられた夢を見たことを根拠にそれを確信しているとした。

 何とも丘野かおりさんの笑顔が作中屈指のチャーミングさを見せる良い雰囲気だったが、そこへダンとカオルが現れたことでラブシーンには至らなかった(笑)。笑いながら海岸を走る百子とカオルを見守るゲンの横でダンは、ゲンが自然を初めとするあらゆるものを守ったと告げ、労った。
 それを受けて喜びと使命感を綯交ぜにしているゲンに、いつかまた悪賢いマグマ星人がやって来るであろうことをナレーションが仄めかしつつ、第2話は終結した。


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令和二(2020)年一〇月五日 最終更新