仮面ライダーOOO全話解説

第1話 メダルとパンツと謎の腕

監督:田崎竜太
脚本:小林靖子
 冒頭はとある美術館の倉庫内から始まった。2人の警備員が美術品を盗み出そうとして、獲得した獲物の質量に歓喜していた。弟分と思しき方が、もう1人いる警備員(川合鉄平)を気にしたが、兄貴分(伊佐陶太)の説明によると、睡眠薬で眠らせているらしい。
 ところがその時、展示品の石棺に、同じく展示品のメダルが大量に集まったかと思うとそれがたちまち人型を形成し、あっという間に4体の怪人となった!その直後、何かのセンサーが反応したらしく、美術館の本社と思しき社内に警報が鳴り響き、完全武装した十数名の者達が出動した。
 彼等は各々1枚のコインを受け取り、自動販売機のようなものに投入すると自販機はバイクと化し、彼等はそれに搭乗して美術館に向かった。

 リーダーと思しき青年(君島麻耶)が「こちらライドベンダー第一小隊隊長・後藤。メダルが覚醒を始めました、指示を仰ぎます。」と通信すると、社長らしき人物(宇梶剛士)は「殲滅」を命令。壁を破って突入したバイク集団は、訳も分からず立ち尽くす泥棒2人組の目の前で、有無を言わさず4体の怪人に集中砲火を浴びせた。
 どうやらこの集団は謎の怪人の復活を予見し、それに備えて組織された戦闘集団の様で、その対応は極めて迅速なものだった。そして彼等が熾烈な戦いを繰り広げる中、BGMはなぜか「Happy Birthday to You」で、後藤小隊長に殲滅を指示した人物=鴻上ファウンデーション会長・鴻上光生は何故か上機嫌でこの歌のレコード(←今どき?!)をかけながら自身も鼻歌で口ずさみ、スーツ(←色彩派手!)にエプロン姿という格好でバースデーケーキをせっせと作っていた。

 だが現場ではバイク部隊は4体の怪人に全く歯が立たず次々とやられていく惨劇が繰り広げられていた。有能そうに見えたバイク部隊は程なく全滅し、戦いの渦中で美術館も半壊したが、鴻上会長はどこか楽しげで、バイク部隊が戦っていた相手に対し、「流石はグリードだよ。」と賛辞を送っていた。どうもよくわからないキャラクターである。時代劇で度々見たり、『ウルトラマンガイア』で正義のチームに所属する役をしていた宇梶剛士氏のキャラクターとは随分異なるようだ(笑)。

 会長の賛辞を聞かされた秘書の里中エリカ(有末麻祐子)も、会長がこのことを予想していて、とても悔しそうには見えないことを言及。それを受けた会長の言によると、「どんなものであれこの世に誕生するということは素晴らしい。」とのことで、当面の敵と思われるグリードの復活も「悪いことばかりとも限らないしね。」としていた。
 妙なことを妙なテンションで述べる鴻上会長はある意味怪人よりも理解し難い存在と見える(笑)。まだ主役が顔出していないんだから変な目立ち方するなよ(苦笑)。

 その頃、事件現場となった美術館の警備員詰所では1人の青年が目を覚ました。盗賊に一服盛られて熟睡していたためか、目覚めとともに足元に落ちていたメダルをバイト代と錯覚するボケ振りが初登場シーンとなったこの人物こそ、主人公・火野映司(渡部秀)である。
 歴代ライダーの主役を演じた俳優達と比較しても不遜ないどころか頭1つか2つ抜きんでたイケメンである。警備服を着替えようとパンツ一丁になったその時、詰所の壁がメリメリと音を立てて崩壊。そこで彼は初めて美術館が半壊していることに気付いた。
 警察達が驚きの表情で生存者を覗き込む中、パンツ一丁で突っ立ちつつ、警察相手に両手を挙げる姿は「全員集合」時代のドリフのコントの様だった(笑)。

 OP曲・摩季ネェの「Anything Goes!」が終わり、映司は2人の刑事から事情を聴かれていた。刑事達には美術館が半壊状態でも熟睡し、壁が敗れた状態でパンツ一丁だった映司は怪しいというより不可解だった様だ。
 とかく映司の発言は、怪しくないが不可解だった。グリード達に襲われた先輩(盗賊)達を「大丈夫ですかね?」と尋ねるので(←重傷だが、命に別状はなかった)、泉信吾刑事(三浦涼介)が2人と付き合いが長いのか?と尋ねられると「はい。」と肯定するも、実態は「今朝からのです。」とのこと。どうも常人とはかなり尺度の違う人間の様である。
 相方の刑事が住所と電話番号を尋ねると、映司(←ここで初めて名前が出た)の答えは「俺あちこち移動しながら暮らしてるんで、連絡先とか無いんですよ。」とのこと。ある意味、『ウルトラセブン』第1話でのモロボシ・ダンの、「風来坊です。」に匹敵する怪しさだ(笑)。
 次に持ち物を確認すると、パンツと小銭だけ。刑事ならずとも、「移動しながら暮らしてるのにこれはないだろう?」と言いたくなる。特についさっき、日本にいないこともある、と言いながらパスポートを持っていないのもおかしい。だが映司は「ちょっとのお金と明日のパンツ」さえあれば放浪生活は可能と断言する。
 能天気なのか、肝が太いのか判断に迷うところだが、次の瞬間そのパンツに焼け焦げ穴が開いてるのを発見するや「お、俺の明日がぁあ〜!!」と情けない声をあげてしまう。尺度だけでなく、価値観も常人と異なるようだ。『仮面ライダー555』の乾巧も第1話で2枚のパンツが所持品だったが、関連あるのだろうか?それとも脚本家か監督にパンツマニアがいるのだろか?

 次のシーンで、何か代わりのバイト見つけないと今日の宿も明日のパンツもなしだと途方に暮れながらいずこへともなく歩く映司は先に手に入れたメダルが気になって手にしたところ、それを自販機の下に落としてしまった。入り込んだメダルをなかなか拾えず、難儀しているところを偶然通りかかった親切な女子大生(高田里穂)が助けてくれたのだが、その方法というのが、自販機をひょいっと担ぎ上げるというもの(←棒切れを持ってきて書き出すという選択肢はなかったのか?)。
 何の脈絡もなく、背景もなく怪力少女にされた女子大生に驚く映司だったが、直後何故か彼女は驚愕に目を見開くと、悲鳴を上げてその場から走り去ってしまった。
 彼女が驚いた対象は宙に浮かぶ異形の怪人の右腕。どこから喋っているのか、その腕はメダルの所有権を主張し、返還を要求してきた。

 場面は替わって、とある森林の中。鴻上会長がグリードと呼んでいた4体の怪人達が体に違和感を抱いていた。どうも彼等の体を構成するのに必要と思しき、「コアメダル」とやらが足りないらしく、それを「アンク」なるものが持ち逃げしたらしい。
 妙なマスクマンっぽいガメル、頭にシャチを被った女性の様なメズール、悪のライダーを思わせるバッタ型(?)のウヴァ、猫っぽいカザリ。果たしてこやつらは今後どうストーリーに絡むのか?
 ともあれ、彼等が完全体になるためにコアメダルが必要のようで、状況打開の為、まずはウヴァが事件を起こした。貴金属店を強襲すると、逃げ惑う客の中から1人のオバちゃんを選び、その肉体にセルメダルを(コア=核、セル=細胞からして、コアメダルの方が重要そう)。
 驚愕するオバちゃんの腹から、のっぺりしたミイラ男の出来損ない見たいな怪人が誕生し、オバちゃんの手にあるダイヤの指輪を(←1億円するらしい)飲み込んでしまった。ウヴァが「お前の欲望が生んだお前の姿そのもの」と称する、この下位怪人は名称を「ヤミー」といい、人間の欲望を糧に成長する性質を持つ。「欲望」は良くも悪くもこの作品を形成する重要なユニットとなるのだが、今回のケースではオバちゃんの貴金属に絡む欲望を食ったようだ。
 更に宝石店のショーウインドゥの商品も次々と飲み込んだヤミーは、脱皮してカマキリヤミーへと進化した。進化形がカマキリなのは、メダルをくれたグリードの特性を受け継いだからで、今回は昆虫系グリードであるウヴァの影響を受けた故にカマキリになったらしい。
 そしてウヴァカマキリヤミーにアンクを探し出し、コアメダルを奪い返すよう命じた。

 その頃、映司とアンクはメダルを巡って揉めていた。そこへウヴァの命令を受けたカマキリヤミーがやって来て、グリード対ヤミーの様相を呈した。本来グリードとヤミーの力関係で言えばグリードであるアンクの方が圧倒的に有利なのだが、如何せん右腕だけという状態では分が悪過ぎた。
 そこに「おいおい一方的過ぎんだろ!ちょっと待てよ!」といって割って入った火野映司。さっきまで自分を殺そうとしていたアンクを思わず助けようとするのがこの青年の人間性であった。
 直後、怪人出現によるパニックを聞き付けてパトカーがやって来たが、乗っていたのは美術館で事情聴取した2人の刑事。だが2人はカマキリヤミーの攻撃に曝され、パトカーは派手にクラッシュ。2人とも重傷を負った。
 虫の息になりながらも必死に拳銃を構えたまま気絶した刑事さを見て、映司はその拳銃を手に取ると、カマキリヤミーに向けて発泡。次々と銃弾を命中させたが、特撮界の怪人が38口径の弾丸で落命するケースは極めて稀だ(苦笑)。
 いきなり拳銃を手にして発射時の姿勢を保ったまま発砲し、2発とも当てたのは普通ならかなりの健闘であった(実際にシルバータイタンは韓国で拳銃を撃ったことが有るが、反動は半端なかった)が、残念ながらというべきか、当然ながらというべきか、銃弾は丸でヤミーには効かなかった。
 カマキリヤミーは「お前には関係ない。死にたくなければ引っ込んでいろ人間。」と言い放ったが、それに対する映司の反論は、「関係なくなんかない。ソイツも、刑事さんも…朝からの長い付き合いなんだ!というもの。
 「袖触れ合うも多生の縁」とでも言おうか、その日知り合っただけでも火野映司にとっては「他人」ではない、というのである。
 映司のこの台詞に驚いたアンクは、ある意味彼を見込んだ様で、映司の名を尋ねると、助かる方法を教えるとして、カマキリヤミーを倒す為、メダルを利用することを促した。  それをカマキリヤミーはアンクが人間に味方したと見て、それを尻目にアンクは自分が持ち出したのはメダルだけではない、と笑い(←どこで?)、映司にベルトと3枚のメダルを手渡した。
 これに対してカマキリヤミーは半ば上ずった声でそれを使えば自身もタダでは済まんぞ、と脅しをかけて映司の行動を封じようとしたが、アンクはこのままでは揃って死ぬだけだ、別の脅しをかけ、「変身」を促した。
 結果、メダルを高く弾き上げ、それをキャッチして映司は「やれやれ。世界中あちこち行ったけど…楽して助かる命がないのはどこも一緒だな!」と言い放つと初変身を遂げた。  電子音は「タカ」、「トラ」、「バッタ」と、それに続いて「タットッバッ!」と叫び、ベルトから飛び散った三色の光に映司の身体が包まれ、漆黒のボディに頭部を、腕を・足をに配色され、胸から腹にかけて、大円に上から赤い鷹黄色いトラ緑のバッタをモチーフにした絵を搭載した、平成12人目の仮面ライダー・仮面ライダーOOO(基本となるコンボ)が誕生した!

 「歌は気にするな。そいつの名は”OOO”!どれほどのモンかは戦えば解る!」というアンクの助言を受け、OOOは初バトルに挑んだ。変身したことで体の中に力が溢れるのは映司も感じていたようで、爪で切り裂き、バッタのジャンプ力を利した連続キックを叩き込んでカマキリヤミーを圧倒した。カマキリヤミーはダメージを受ける度にメダルを撒き散らし、如何にも体が削れているようであった。
 更にアンクの指示でベルトの真ん中にセットしたメダルを緑に変えると、「タカ」、「カマキリ」、「バッタ」の電子音からその体は虎の爪からカマキリの鎌に変じた、亜種形態・タカキリバとなった。
 そしてカマキリ対カマキリの対決はカマキリブレードを放ったOOOに軍配が上がり、カマキリヤミーは一刀両断にされた。
 勝利の余韻に浸らず、すぐさま泉刑事を介抱しようとしたOOOだったが、この肉体を利用するためアンクが憑依した。起き上がった泉刑事は髪の毛が金髪に、髪形もえらく奇抜なパーマに変わった。

 事態の成り行きに呆然とする映司の側で妹・比奈からの着信が泉刑事の携帯を鳴らしているのに気付くこともなかったが、この比奈こそが、自販機を怪力で持ち上げた女子大生だった。
 オープニングにも登場する3人が(同じ場面ではないが)揃った訳だが、その頃、鴻上ファウンデーションでは、鴻上会長がまたも「Happy Birthday To You」を歌っていたが、その対象はグリードではなく、OOOだった。果たしてこの会長は何を知っているのか?と言ったところで以下次週へ。


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平成三〇(2018)年八月五日 最終更新