仮面ライダーOOO全話解説

第2話 欲望とアイスとプレゼント

監督:田崎竜太
脚本:小林靖子
 本作も他の平成ライダー作品同様、基本は2話で1セットとなっている。そして後半となる偶数話では、前回のポイントを「3枚のメダル」に因んで3点、「3つの出来事」としてナレーションが紹介する。
 今回紹介されたのは、「1つ、メダルの怪人が誕生。2つ、この男・火野映司が謎の腕・アンクと遭遇、そして3つ、変身、OOOに変身した。」であった。

 冒頭は映司とアンクの言い争いで始まった。泉刑事の体を乗っ取ったアンクに猛抗議する映司だったが、元々自己中なアンクがそんなことを気に掛ける筈もなく、「どうなってもいいだろ。どうせ死ぬ寸前だったんだ。」と逆切れと恩着せを同時に発する始末だった。
 そしてその口論は、ひょんなことから中断された。タカカンドロイドの大群が出現し、前回倒したカマキリヤミーからこぼれ出たセルメダルを咥えて飛び去ってしまい、これにアンクが慌てたのだった。
 カンドロイドとは、鴻上ファウンデーションがグリードに対抗する為に開発した缶ジュースサイズの超小型自律ロボットで、前作のガジェットに近い。
 トンビ(タカ)に油揚げ(セルメダル)を攫われたアンクは人間がメダルを集めるという事態に、自分達が封印されている間に何が起きたのか、と訝しがった。

 場面は替わって鴻上ファウンデーション。タカカンドロイド達がセルメダルを咥えてここに帰巣していた。思った以上にたくさん集められたことにご満悦な鴻上会長は里中にそれを「ライフワーク」と話し、その為にグリードもOOOも必要な存在、と述べた。
 その横で関心なさそうにケーキを食す里中。会長の狙いがはっきりするにはまだまだ時間が掛かるのだろうか?

 場面は戻って、ここからアンクによる背景の説明が始まった。
 それによるとグリードとは800年前にオーメダルによって創られた……とのことだが、ここでいきなり映司が「いや説明されてもわかんねえし。それより刑事さんの体返せよ。」と説明を中断させた。
 泉刑事の身を案じての台詞だろうから、分からなくはないが、こんなところで止められると視聴者的に混乱する(苦笑)。

 アイスキャンディーを3本(←アンクが勝手に氷菓子屋のクーラーボックスから盗ったので、映司が代金を肩代わりした)もジュポジュポ頬張りながら、まずアンクが述べたのは、泉刑事の体を利用するために寄生しているアンクとしても、刑事に死なれては困るから死なさない、との言葉だった。
 その説明の最中、話がもつれ、映司が無理矢理引っ張るとアンクの腕は泉刑事からあっさり離れたのだが、アンクから離れた泉刑事は髪維持時になるらしい。慌ててアンクを泉刑事に戻し、刑事の肉体を死なさないために食事を再開したアンクは映司の口にも、アイスキャンディーをねじ込み、メダル集めの為には映司にも倒れられては困る、と告げた。
 ここからアンクのヤミー講座が再開したのだが、まずはメダルにコアメダルとセルメダルの2種類があり、「アイスキャンディーに例えるなら、棒がコアでアイスがセルだ」とのことで、「コアを中心にしてセルがくっついているのが俺達グリード。お前が倒したヤミーは棒のないアイス、だと思っとけ。」と続けた。
 そして800年前、グリード達が封印され、その封印中に何枚かのコアメダルが喪失。そうなると「棒の無いアイス状態」という、不完全な復活となった。前回、4体のグリードが不完全さを感じていたのはそういうことだったのか………。
 そんな中で、アンクはコアメダル不足で右手しか復活出来なかったとのこと。残りの4体に遅れを取らないためにも早くコアメダルを集めたいというのがアンクの狙いだった。
 そしてその目的故に映司を利用せんとするアンク。映司は映司で泉刑事から目が離せない。ここに奇妙な共闘関係が成立(?)した。
 直後、映司は刑事の携帯に入ったメールから彼に妹・比奈がいることと、その妹があの怪力少女であることを知った。

 場面は替わって4体のグリードがたむろする森林。彼等の会話から、アンクにカマキリバッタと2枚のコアメダルを奪われているウヴァが最も焦っていて、先陣を切ったことが分かる。
 そして噂のウヴァは前回病院送りになった盗人コンビの前に現われ、兄貴分の方の金への執着(←懲りずに現金輸送車襲撃を画策していた)に付け込む形で新たなヤミーを生み出した。
 ヤミーは現金輸送車と銀行を立て続けに襲って金を食いまくり、それに力を得るとオトシブミヤミーとして進化した。アンクにはヤミーの出現が感知出来るらしく、早速映司を連れて現場に駆け付けた。
 オトシブミヤミーの乱暴極まりない暴れ振りを見て、映司は早速OOOに変身してこれと戦わんとしたが、アンクはその時点でもメダル貸与を拒否した。
 アンクの狙いは少しでも多くのセルメダルを集めることで、その為には「豚は太らして食え」的にオトシブミヤミーの成長を待つ、と宣言した。だがそれは(例え一時的にせよ)オトシブミヤミーの更なる暴虐を傍観することでもあり、映司には納得がいかなかった。

 金を食い続けるオトシブミヤミーを黙って見ていられい様子の映司にアンクが言ったのは、オトシブミヤミーが食っているのは)金じゃない。”欲望”だ。セルもコアも、元は…人間の欲望。」とのことで、同じ頃、鴻上ファウンデーションでは会長が後藤に欲望を「素晴らしいエネルギー!」「すべては人間の「欲しい」という思いから生まれた欲望の塊っ!」「赤ん坊はこの世に生を享けた瞬間、「欲しい!」といって泣く!欲すること!その最大にして最強の力から生まれたメダルを最大限に集めたその時!手に入るのは∞(無限大)の力……いやそれ以上の…!」と熱弁を振るいまくっていた。
 欲望は必ずしも悪ではなく、人間が行動をなす根幹と言いたのであろうか。確かに一理ある理論である。テンションだけを見ると暴論と言いたくなるが(笑)。
 そして鴻上は、生クリームで描いた∞の横に、興奮しつつ更にOを描き加え、「無限大を超えるモノ」としてOOOの名を絶叫した。
 タイトルの「OOO」とはメダル3枚という象徴の他に、「無限大+α」という意味も込められていることをここで語っており、これはなかなかに深い。

 場面は戻って人型サイズを遥かに超えた怪獣サイズとなったオトシブミヤミーと対峙する映司とアンク。オトシブミヤミーは高層ビルの竣工パーティーで人がごった返すビルを破壊しながら這い上がり、現場は阿鼻叫喚の地獄絵図に。
 見ていられず、ベルトとメダルを渡すよう要求する映司だったが、アンクにとっては人間や町の犠牲などどうでもいいことで、「勘違いするな。お前は俺の命令通りにメダルを集めていればいいんだ。楽して助かる命はないって言ったな?正論だ。タダで助かる命もないんだよ。」と冷たく返した。
 そのとき、泉刑事の携帯が鳴り、「比奈」の着信表示を見た映司は、兄を想っている妹の姿を想像すると、「泣いてる」と呟いた。
 意味が分からず、「あん?」と訝しがる声を上げたアンクに重ねて「泣いてるんだ!」と叫ぶ映司。その脳裏には、銃弾飛び交う中、半壊した石壁の前で恐怖に怯え泣きじゃくる1人の少女(←肌の色から、中東と見える)が映っていた。何とか彼女を助けようと手を伸ばしたが、それよりも早く彼女は爆風に飲み込まれ、救えなかった……という回想シーン。
 次の瞬間、映司はアンクが止めるのも聞かず倒壊寸前の高層ビルの中に飛び込んでいた。それに対してアンクは「バカにも程があるぞ。」と揶揄した。
 だが、崩れゆくビルから多くの人々を避難させた映司が、大きく傾いた高層階から投げ出されて落下のピンチに陥ると、映司に死なれても困るので、その腕を掴んでこれを助け、ベルトとメダルを渡して変身を促した。
 映司の人命救助の衝動と、アンク野映司に死なれては困るとの打算が合致した訳やね。だが、映司はただの御人好しではない(御人好しであること自体に間違いはないが)。今後のことも考えてか、変身を自分の意志に委ねるよう約束を迫り、「メダルを人の命よりも優先させるな!それが出来ないなら二度と変身しない!」と言い放った。
 アンクは返答に困り、悩み続けたが、その間に映司の力は尽き、高層ビルの上層階から地表に向かって一気に落下!これに屈する形でアンクはメダルを渡し、映司は地面との衝突寸前で変身を果たし、トラクローを外壁に突き刺し、地表への激突を免れた。
 するとそこには大きな箱を持った後藤慎太郎が現れた。荷物はOOOへの誕生日プレゼントだと云う(勿論鴻上会長から指令)。後藤は鴻上の名は出さず、「ある方からのプレゼント」として、メダルを傍らに在った自販機と剣に使うように、との説明もした。
 箱の中身が剣=メダジャリバーであることと、自販機がバイクになったことに子供のようにはしゃぎ、戦意を高揚させた
 後藤は更に自分の自販機=ライドベンダーにメダルを投入して大量のタコカンドロイドを出すと、上空に向かって放たれた無数の蛸達はビルの上層部への巨大な架け橋となった。
 見ず知らずである後藤に礼を述べるとライドベンダーを走らせ、タコの架け橋を駆け上がったOOOはオトシブミヤミーとの決戦に挑んだ。

 騎馬兵の如くメダジャリバーを振り回した後、OOOは前回での利用が性に合っていたのか、タカキリバにチェンジし、華麗な連続斬りで瞬く間に自分より遥かに巨大な体躯を持つオトシブミヤミーを地面に這いつくばらせた。
 最後にメダジャリバーにメダルを入れるのを思い出し、巨大ヤミーの真下をバイクで駆け抜けながら、そのガラ空きの腹部を一閃し、ヤミーはおろか背後のビルまで真っ二つに両断した。
 公共物の破壊に唖然と仕掛けたが、次の瞬間切られたビルの断面は元通りに復元(爆笑)。オトシブミヤミーだけが爆発四散した。敵を空間ごと切り裂いた後、周囲の空間を瞬時に復元させ対象のみを破壊することが可能なのがメダジャリバー特有の特殊能力らしい。
 空からは大量のセルメダルが降り注ぎ、過程はどうあれ、アンクも当初の目論見通りにいったことにそこそこ満足気だった。

 ラストにて、泉刑事の妹・比奈を気遣った映司は、兄の振りをして、ある極秘の事件を追っていてしばらく帰ることが出来ないけど心配しないように、という旨のメールを送ったが、その直後、その比奈とアンクが偶然鉢合わせ。
 比奈は兄の無事を喜ぶが、勿論アンクには訳が分からない。方便が送ったそばから覆されることに仰天する映司。三者が各々に様々な想いを抱く中、話は以下、次週へ。


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平成三〇(2018)年八月五日 最終更新