仮面ライダーW全話解説
第1話 Wの検索 / 探偵は二人で一人
監督:田崎竜太
脚本:三条陸
冒頭、真夜中の高層ビルで、謎の巨大な装置の内部に幽閉された若者を、壮年の男と若い男の2人組が助け出していた。壮年は追って来た男達から銃撃を浴びて、致命傷を負ってしまう。
「おやっさん!おやっさん、しっかり!」と叫ぶ若い男の悲痛な声に、壮年は自分の帽子を形見として若い男に被せると息を引き取った
哀しむ間もなく、高層ビルの窓からは軍用ヘリが。更には女性型の謎の怪人まで現れて彼等を追い詰める。絶体絶命の境地に、巨大装置から救出されたばかりの若者が「悪魔と相乗りする勇気はあるか?」と口を開いた。
開かれたアタッシュケースの中には謎のベルトとスティック状の機械。一体何を聞かれているかなど解る筈もなかったが、若者はその機械に手を伸ばし、同時にヘリからの爆撃を受けた。2人の若者は消し炭も残さず爆死したかに思われたが、次の瞬間凄まじい突風がビルの内部に吹き荒れた。
コントロールを失ってビルの外壁に衝突し墜落するヘリ。そして荒れ狂う風と、それを起こした存在に恐れをなして逃亡する女怪人。吹き荒れる風の中心には若者2人の姿はなく、マフラーをたなびかせた1人のシルエットだけが立っていた。
冒頭のシーンから1年後、舞台は街中のいたるところに風車が設置されくるくると勢いよく回る不思議な街・風都で、そこに1人のハードボイルドをこよなく愛する私立探偵がいた。
その名は左翔太郎(桐山漣)。ある日そんな彼のいる事務所にやたら元気な女の子が尋ねてきた。彼女は自分が権利書を提示して、大家であることをたてに翔太郎に立ち退きを要求した。
翔太郎に「中学生」と見間違えられたその女性は20歳との事だが、確かにそうは見えない(笑)。ちなみに演じる山本ひかるさんは当時18歳。
そんな彼女が名乗った名は「鳴海亜樹子(山本ひかる)」……探偵業の師匠であった鳴海荘吉(吉川晃司)=おやっさんからその名を聞いていた翔太郎はさすがに驚愕した。
亜樹子に荘吉の消息を尋ねられた翔太郎は1年前(冒頭のシーン)を思い出すも、事実を告げられず、「当分戻ってこねえ・・・」と言葉を濁すしか出来なかった。
真実を伝えるべきか否か迷う翔太郎だったが、ここで事務所のドアが開き1人の客が入ってきた。依頼人である。
依頼人は津村真里奈(山内明日)。翔太郎の同級生で、失踪してしまった恋人・戸川洋介(YHO)を探して欲しいというものだった。
「この街は俺の庭だ。任せておけ」と豪語した翔太郎はハードボイルドな捜査を始めるが、亜樹子がついて来て、ハードボイルドな雰囲気はぶち壊しに(笑)。どうやら父の仕事を継いでいるという人物の監査が目的らしい。
そんな2人の前でトンネル事故が発声。高層ビルが真横に倒れ、トンネルをブチ抜くという大事故で、野次馬と警備の警官を押しのけて現場にはいった翔太郎に、顔見知りらしい若い刑事が噛み付いてきた。
刑事の名は真倉俊(中川信吾)。どうやら一般人としか見做していない私立探偵の立ち入りを快く思っていないようである。そこへ一人のベテラン刑事が仲裁に入った。
真倉の上司でもあるその刑事の名は・刃野幹夫(なだぎ武)。邪魔者をつまみ出したように装いつつ、翔太郎に手早く状況を説明し、二人してドーパントの仕業であることを確認すると、「ま、何か分かったら連絡しろ」と翔太郎を解放した。
後に分かることだが、二人はかなり以前からの旧知で、翔太郎が「刃さん」と呼ぶ刃野刑事は真倉とは正反対で、翔太郎に気前よく情報を提供し、見返りとして翔太郎から容疑者逮捕の手柄をいただく、持ちつ持たれつの関係を保持していた。
人探しの筈がドーパントに突き当たったことにぼやく翔太郎に、ドーパントが何なのか分からない亜樹子がスリッパで殴りつけながら説明を求める。そこに翔太郎の携帯が鳴った。
電話の主は彼の相棒・フィリップ(菅田将暉)からのものだった。つまり冒頭シーンで装置から連れ出された男だが、薄暗い部屋で分厚い本を片手に通話していた。
犯人が使っているガイアメモリの検索をフィリップに依頼しようとした翔太郎だったが、眼前にドーパントが現れたことでこれを中断。
翔太郎と亜樹子の前には現れたのは、全身を紅蓮の炎に包んだ怪人、マグマ・ドーパントだった。
勿論、ドーパントを初めて見た亜樹子は、辛くも翔太郎に抱きかかえられて危地を脱したところで、定番台詞、「あたし聞いてない!」を初めて発した。
場所は代わって、「園咲」という表札を掲げた大豪邸に一人の初老の男と、若い二人の美女がいた。彼等は風都を影から牛耳る大富豪・園咲家の人間で、父・琉兵衛(寺田農)、長女・冴子(生井亜実)、次女・若菜(飛鳥凛)による親子水いらずの晩餐会が行われていたのだが、少し遅れて来た妹に嫌味を言う姉と、それにこっそり舌打ちする妹。父はほほ笑みを絶やさず猫を抱いているが、どうも姉妹仲は険悪なようだ。
琉兵衛は風都で起きた事件を笑いながら話し、父娘達の会話から、ドーパントが体に差して変身するアイテムであるメモリは彼等の会社の人間が売り歩いていることが分かる。
「最近ガイアメモリを売りまくっている優秀な営業マンがいるという」父の言葉に反応した冴子は、冒頭で現れたあの女性型怪人=タブー・ドーパントに変身し、結婚したい人が見つかった、と告げた。
場面は再び、鳴海探偵事務所に戻り、亜樹子は、今度は地下室でフィリップと出会った。秘密基地然とした地下室内に何枚も並べられたホワイトボードにビッシリと文字を書き込みながら、ブツブツと呟くフィリップ
彼独特の検索を行っていたのだが、そこに亜樹子が生まれ故郷・大阪を強くすりこんだため、フィリップの検索は大きく横道にそれ、タコ焼きに没頭(笑)。
今後何度も登場する定番台詞、「ゾクゾクするね。」と呟きながら「たこ焼き」に熱中するフィリップを見て、「こうなったらフィリップはたこ焼きの全てを閲覧し終えるまで動かねえぞ…。」と頭を抱えながら、亜樹子を糾弾した。
自分の落ち度に納得のいかない亜樹子は、再度ドーパントについて尋ね、ようやく翔太郎の口から、怪しい存在によってばら撒かれた「ガイアメモリ」なるアイテムをもって、とんでもない超人と化した存在であることが伝えられた。
フィリップの謎の能力はドーパント事件解決に必要不可欠なものだが、一度脱線してしまうとテコでも動かないその姿勢に2人は一晩またされることになった。
「たこ焼き」の閲覧が終わったところで、翔太郎が言うところの「”地球(ほし)の本棚”」による検索が開始された。
フィリップが目を閉じると、その意識は”ここではないどこか”に飛び、目を開くと、地平線の彼方すら見えない空虚な空間に何億という数の本棚が並ぶ光景が広がる。
そこは「地球の本棚」と呼ぶ彼の脳内で、彼自身の膨大な知識をすべて納めた巨大な図書館だった。
フィリップが「マグマのガイアメモリ」、「戸川洋介」、そして彼が務めていた「ウインドスケール」に「WS−09K−097C」というキーワードでもって一冊の本にまで対象は絞り込まれ、検索は完了した。
この作品世界においては、この翔太郎が足で捜査し持ちかえった情報を、フィリップの地球の本棚によって検索し真相を導き出す、というスタイルがスタンダードとなる。
第4の事故を未然に防ぐため、フィリップが検索したウインドスケールの店舗でいまだ唯一襲撃されていない風谷支店へ急行する翔太郎。だが、「行くぜ」と言われたフィリップは動こうとしない。訝しがる亜樹子が「一緒に行かないの?」と問うと、フィリップの答えは、「もちろん行くさ。僕達は2人で1人の探偵だもの」という謎めいたものだった。
ついにウインドスケール風谷支店で戸川洋介を見つけた翔太郎。だが戸川はいきなり喧嘩腰で、ガイアメモリでマグマ・ドーパントに変身して襲い掛かってきた。
「止めてやるよ俺が。イヤ・・・俺達が!フィリップ!」と呟きながら翔太郎がベルトとともに黒いガイアメモリ・「ジョーカー」を取り出すと、同時に事務所の地下ガレージに居残るフィリップも緑のガイアメモリ・「サイクロン」を取り出した。「変身!!」と離れた場所にいる2人が同時に叫び、ベルトにガイアメモリをセットすると、直後にフィリップはその場に倒れてしまった。
メインとなる翔太郎の肉体にフィリップ側は意識だけを飛ばしてベルトに宿るような形で、変身した仮面ライダーWは定番決め台詞、「さあ、お前の罪を数えろ!」を初披露。
有利に戦いを進める中、マグマ・ドーパントの途中火炎弾攻撃に曝されると、早速の多段変身を披露。フィリップが(翔太郎に無断で)メモリを緑の「サイクロン」から金色の「ルナ」にチェンジすると、Wの右半身も黄色へと変化し、伸縮自在の手足を鞭のようにしならせて攻撃する能力が発揮された。
とどめは、「メモリブレイク」なる技で、サイクロンジョーカーの基本体に戻ると、ドライバーから「サイクロンジョーカーマキシマムドライブ」、「ジョーカーエクストリーム!!」の声が出て、ライダーキック…………と思いきや、急降下中パカッ!と左右真っ二つに割れるWの身体。それぞれの半身が異なるタイミングで、計2発のキックが命中した。
マグマ・ドーパントは爆発とともに吹き飛び、戸川の肉体から飛び出したマグマのメモリは破壊された。敵を殺さず、元の人間に戻すとはなかなか道徳的な結末だ(笑)。
事件は解決したが、戸川が会社をリストラされた恨みからマグマのガイアメモリを使った報復に走ってこの様になってしまったことを真里奈に伝えなくてはならないことに頭を抱える翔太郎だった。
ところが次の瞬間、事態が急変。巨大な怪物=ティーレックス・ドーパントが突如地中から出現して戸川の胴体に喰いついた。容易ならざる事態に翔太郎はスタッグフォンを操作し、秘密兵器リボルギャリーを発進させた。
事務所地下室で意識を失ったフィリップをオロオロしながら見ていた亜樹子は、いつのまにか変形したリボルギャリーの中へ転がり込んでしま、状況が理解出来ない彼女を乗せたままリボルギャリー発進し、以下次週へ。
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平成三〇(2018)年五月二九日 最終更新