仮面ライダーW全話解説

第25話 Pの遊戯 / 人形は手癖が悪い

監督:石田秀範
脚本:長谷川圭一
 ある日、事務所に謎の擬似メモリと新型ガジェットの設計図が送られてきた。送り主をフィリップはシュラウドと推定。曰く、「擬似メモリと新しいガジェットの設計図だ」とのこと。早速これを造ってみることにした。
 その隣では一冊の書物を読みながらひたすら「泣けるわぁ…。」の台詞を繰り返し、滂沱に暮れる亜樹子。読んでいたのは巷で噂のベストセラー小説『少女と人形の家』だったが、気が付けば亜樹子の眼前には1人の少女がいた。
 「リコ」と名乗るその少女(澤田萌音)は亜樹子の質問にはほとんど答えず、「ねえお姉ちゃん、人形の声を聞いて。」と何度も言い続けた。
 どこから現れたのか、いつの間に事務所内に入ってきたのか謎のまま、やたらと事務所の中を走り回るリコは亜樹子にどこぞの住所が書かれた紙切れを亜樹子に差し出した。
 亜樹子は翔太郎に彼女を紹介しようとしたが、いつの間にか姿を消してしまっていた。う〜ん……『8時だよ全員集合』で異形の存在がいたことを信じてもらえない志村けん状態だな(苦笑)。
 しかし掌中には紙切れが残され、自分が見たものは白昼夢ではないことを証明していた。ともら、亜樹子は自分1人で住所のマンションへと向かった。

 やって来たのは文芸評論家の唐木田有紀(峯村リエ)という初老の女性宅。
 唐木田曰く、「何か今朝宅配便で送られてきてね。差出人も分からないし気持ち悪いからさっさと持って帰って頂戴。」と言われたので、意外にあっさりと人形を持ち帰ることになった。
 しかし亜樹子が唐木田と世間話をしている時に事件は起こった。唐木田が『少女と人形の家』も評論したと知って、「感動しますよね。」と述べた亜樹子だが、唐木田は「自分の娘を美化した親のエゴ丸出しの作品よ。その著者、娘のことなんて本当は愛してないわよ。」と意外な酷評。亜樹子が驚き、訝しがりつつ人形を持って帰ろうとすると、箱の中に人形はなく、突如聞こえてきた唐木田の悲鳴。
 驚いて彼女のもとに行くと、人形が1人で歩き出し、彼女に襲いかかっていた!愛らしかったその表情は、ホラー映画『チャイルド・プレイ』のチャッキーか、『ジョジョの奇妙な冒険』第3部にて呪いのデーボに操られていた人形状態。冗談抜きで、子供には怖かったことだろう。
 結局、唐木田は2階の窓から人形のキックで蹴落とされ、一命は取り留めたものの腰を折って病院へ担ぎ込まれた……。

 事件を受けて駆け付けた警察は例によって、いつものメンバー(苦笑)。普段から鳴海探偵事務所の面々に好意的ではない真倉刑事は亜樹子の、人形が動いてやった、という証言を鼻で笑う。
 いつもながらの真倉刑事の分からず屋ぶりに腹立たしいところだが、実際の傷害事件で現場にいた者がそう証言しても相手にされると思えないことを思えば無理ない気もする。実際、普段は物分かりのいい刃野刑事も今回ばかりは亜樹子を胡散臭げに見ていた。
 それどころか、人形が動いたということに頼みの綱である翔太郎も親身になっているとは思えず、誰も自分を信じてくれない状況に絶望した亜樹子は、己で潔白を証明することを決意。そのまま唐木田宅を飛び出した…………って、おいっ!事の真偽はどうあれ、この時点で重要参考人と思しき亜樹子にそう簡単に飛び出されてどうすんだ、警察!!

 亜樹子はリコから渡された紙切れに書かれていたもう1つ住所に向かった。そこでもあの恐怖の人形」出現。亜樹子はチョコマカ近づく人形をキックで何度も吹っ飛ばしたり、ゴミ袋を投げつけたり、と些か子供じみた抵抗を繰り広げたが、被害者の負傷を軽傷に留めた。最終的には人形を容赦なくバイクで吹っ飛ばして参戦した照井のおかげだったのだが、ともあれ亜樹子は自分の言うことをただ1人信じてくれた照井に感激。
 照井は照井で同様の事件が既に2件発生し、いずれの被害者宅にも同じ空き箱があったことからこれをドーパントの仕業と睨んでのことだと説明した。
 となると、刃野刑事と真倉刑事の不信振りが納得いかなくなるのだが、照井が教えていなかっただけなのだろうか?それはそれで超常犯罪課の体制としてチームワークが無さ過ぎて問題だが ………。

 場面は替わって井坂の診療所。相変わらずタブー・ドーパントとしての冴子を診察し、気色悪く悦に入る井坂。だがその観察眼は一流で、今日の冴子が完璧な状態ではなく、「もしかして何か悩み事があるのではないかな?」と持ち掛けた。
 指摘は図星で、冴子は妹・若菜のことで悩んでいると告げた。曰く、「いつまでも遊び呆けてばかりで自分の使命に気付かないでいる。」として、「完璧なドーパント」への「治療」=自分のために戦う存在にすることを要請した。
 そして井坂は若菜に対し、ガイアメモリを使いたくないと思っていることを指摘し、クレイドールのドライバーを預かったのだった。

 場面は替わって鳴海探偵事務所。フィリップの検索により、人形の標的はいずれも『少女と人形の家』を批判した人物ばかりだったことが判明(小説を酷評したという共通点があった)。
 そうなると、容疑者であろうとなかろうと著者である堀之内慶應(四方堂亘)に捜査の目が行くのは必然で、照井は早くも彼を犯人と見ていた。
 照井曰く、「ドーパントは堀之内本人じゃない。おそらく堀之内の娘だ。」とのことで、堀之内は自分の娘にメモリを使用し、作品を貶した人間達に報復していたのだろうという推理だった。
 唐木田の「あの著者は娘なんて愛してない」という言葉もあり、亜樹子は「早くリコちゃんを助けてあげようよ!」と居ても立っても居られなくなった。

 2人が向かったのはとあるサイン会会場。照井は自分が刑事であることを名乗り、ファンの前にもかかわらず、人として堀之内、作家としての堀之内、父としての堀之内をこき下した。一種の誘いであるのは分かるが、万一事件に無関係だったら名誉毀損ものだな(苦笑)。
 突然の喧嘩腰尋問に狼狽えながらも、怒りを示すでもなく低姿勢で応じる堀之内。
 その帰り道、亜樹子は街中で再びリコと遭遇。「良かった良かった保護してもらおうね。」と抱き抱えるも、「お姉ちゃん、人形の声を聞いて。」やはりその小さな口から出てくるのは冒頭と同じ台詞だけ。一体彼女は亜樹子に何を求めているのか?
 そして冒頭の翔太郎と同じように、やはり照井に紹介しようとした瞬間彼女の姿は煙の様に消えてしまうのだった。

 場面は替わって風都署超常犯罪捜査課。愚痴をこぼす翔太郎とそれを聞いている刃野刑事。翔太郎の愚痴は照井と亜樹子がべったりしていること。「あんな軽い男だとは思わなかったぜ。」とのことだが、そこで刃野刑事が「俺に言わせりゃな翔太郎、ここで俺と一緒に昆布茶すすってるお前の方がみっともねえぜ。本当は自分が所長に頼られてえんだろ?そういうの世間じゃジェラシーって言うんだ」と珍しく慧眼を発揮。
 つまり翔太郎が本当に愚痴っている対象は照井ではなく、亜樹子及び亜樹子に頼られていない自分自身で、図星を突かれた翔太郎は激しく動揺。
 と、そこへ真倉刑事が大きな箱を持って入ってきた。開けてみたらば当然中身は例の人形で、照井の撒いた餌に敵さんが食い付いた状態だったが、哀れ、暴走した人形の前にまた刃さんは後頭部に攻撃を受けて笑顔で失神するのだった。
 そして戦闘に突入。身体多的には余り強くない人形の体ながら、周囲にある様々なものを起用に利用し、車まで運転してアクセルとWを攻撃。トリガーマグナムを奪う程の素早さだったが、やがてアクセルによってメモリブレイク……と思いきやメモリが排出されない。これにより、人形は本物の人形で、犯人は人形になるドーパントではなく人形を操るドーパントだったということが判明。まさに『ジョジョ』第3部の話である。
 ここで操り手はすぐ近くにいると看破したフィリップはスパイダーショックを使用。
 人形をグルグル巻きにして引っ張り出し、その先の人形師を炙り出した。そこにルナトリガーを打ち込むや、真犯人・パペティアー・ドーパントはあっさり降伏した。

 だが、亜樹子が、リコがドーパントでないことに胸を撫で下ろした次の瞬間、またも彼女の腕の中にあった人形からあの声が聞こえてきた。「お姉ちゃん、人形の声を聞いて。」の台詞に驚愕する亜樹子。
 事件はまだ終わっていない。彼は何故凶行に及んだのか。『少女と人形の家』に込められた堀之内の娘への思いとは?というところで以下次週へ。


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平成三〇(2018)年七月四日 最終更新