仮面ライダーW全話解説

第27話 Dが見ていた / 透明マジカルレディ

監督:坂本浩一
脚本:三条陸
 場面は翔太郎、フィリップ、亜樹子、照井の4名での会食シーンから始まった。「何でこいつが?」と照井の参加に不服気味だった翔太郎だったが、送られてきたチケットが4枚だったから、とのこと。
 そしてショータイムではマジシャン・フランク白銀(山野史人)と、その孫娘・リリィ白銀(長澤奈央)による人間消失マジックで、リリィは見事にガラス張りの棺桶から布をかけるや姿を消したのだった。

 翌日、前回のフロッグポットに続き、新しいガジェットがまた1つフィリップによって完成していた(もちろん設計元はシュラウドで、フィリップは会食の際もその図面を読んでいた)。
 新型ガジェットの名は「デンデンセンサー」といい、あらゆる光の波長や変動をキャッチ出来、見張りや敵の探索が役立つとのことだった。
 そのフィリップによる性能説明が終わるか終わらないかのタイミングで、デンデンセンサーが事務所の何もない空間に突然反応を示した。
 それに呼応するように突如虚空から姿を現したのは、昨日の会食で出会った美人マジシャン・リリィ白銀だった。リリィは翔太郎に覆いかぶさる形で着地し、その態勢は些かアブナイものがあったが(笑)、翔太郎も嬉しさを隠せず、亜樹子のスリッパツッコミを複数回に渡って食らうのだった。
 無理やり落ち着きを取り戻しながら透明マジックの種明かしを尋ねる翔太郎だったが、本当に消えると答えながらジャケットを脱いで差した腕には生体コネクタがあった。
 それを見て、翔太郎、フィリップ、亜樹子は一斉に「ドーパント!?」との叫び声をあげずにはいられなかった。

 とはいえ、彼女は悪人という訳ではなかった。目的はマジックのためで、結局透明マジックの正体はガイアメモリによって、インビジブル・ドーパントと化したことで得た能力だった。
 そもそも彼女はマジシャンの孫として生まれながらその才能は全く無く、昨日のステージも透明マジック以外は酷いものだった。
 そんな彼女が悩みの中でガイアメモリを手に入れて驚喜したのも束の間、自分の意志で出たり消えたりが出来なくなり、メモリも身体から出て来ない、とのことだった。
 フィリップは通常ならメモリを挿した瞬間に超人体に変身する筈なのに、透明化が後で発揮されることからも、インビジブルのメモリには重大なバグが発生している、と見た。
 だがリリィはガイアメモリを買ったのではなく、物腰の柔らかそうな紳士風の人物から「貰った。」と言うのだった。

 途中から照井も捜査に合流し、いつものメンバーでメモリの人物を探す翔太郎一行。リリィはここでも照井の上に乗っかり、胸を押し付けるというドジを発動。羨ま………あ、いやいや、照井には迷惑でしかなかったようで、2人は(リリィが)重い、重くないで口論し、たちまち仲違いしたが、特にあかんべーをするリリィは大人げなかった(苦笑)。
 しかもリリィがドーパントと知った照井は翔太郎達の正気を疑う程激怒し、いきなりリリィを逮捕しようとする。
 何とか逮捕を押し留め、リリィにガイアメモリを譲った人物を特定にかかると意外に早く判明した。その人物とは井坂深紅郎だった。
 問い詰める相手が照井と知って、井坂は「そうか、照井雄治の息子ですね君は。」と呟く。当然照井の目の色は変わり、何故知っているのかを問い詰めれば、去年の8月に会った、と井坂は答える。当然、その答えは井坂が照井の家族の敵=「Wのメモリの持ち主」であると答えているも同然だった。

 こうなると照井の激昂は抑えられたものではなかった。だが展開や配役からしてウェザー・ドーパントに変身した井坂は強く、Wとアクセルの2人掛かりをもってしても歯が立たなかった。
 マキシマムドライブが効かない事態に翔太郎はもう一本マキシマムを増やして攻撃せんとしたが、フィリップはツインマキシマムの危険を訴えてこれを制止せんとした。
 1人で2人が戸惑っている間隙を縫って、相手の危険性を認識していないとしか思えないリリィが乱入し、自分のメモリの修理を依頼し出した。
 体の安全よりメモリの効果を重んじるリリィに戸惑うWだったが、リリィ=依頼人に井坂を庇われては一時休戦せざるを得なかった。
 井坂はリリィの懇願をあっさり快諾し、彼女を連れて姿を消し、照井はようやく見つけた仇を逃がした悔しさに荒れ狂った。

 場面は替わって園咲邸。食堂にて井坂への不信感を募らせた若菜が、久々の舌打ちを連発しながらむくれていた。否、手にしたティーカップを粉々に砕くほどだから、内心の怒りは尋常じゃなかった。
 さしもの琉兵衛が娘を案じて、何があったのかと声をかけると、若菜の答えは最近力の加減が効かないとのこと。琉兵衛はドライバーを使っていれば防げる筈のメモリ暴走状態に首をかしげていると、若菜が先日井坂に少しドライバーを預けたと云うので、聞き捨てに出来なかった。

 死闘に水が入った翔太郎達は井坂が過去に起こした惨殺事件を探っていた。照井家惨殺以外にも、当時溺死や感電死などといった謎の殺人事件が多発していた。
 まさにウェザー(気象)が示す如く、あり得ない局地的な異常気象による連続殺人に戦慄する翔太郎。
 そして直の仇である照井は怒り静まらず、「リリィを助けなければ。」と言えば照井は「自分から悪党について行った女」と見做すリリィの救出に拒否的なだけでなく、「奴は強いから共闘しないと勝てない。」と言えば仇討ちの為には自らの死も顧みないと吼える照井。
 それに対して翔太郎も「死んでも構わないだと?お前こそふざけるなよ照井。 周りを見てみろ・・・お前を心配してる奴等がこんなにいるじゃねーか!」と激昂し、まともな会話が成り立たなかった。
 結局照井は1人で井坂との決戦に向かってしまい、そんな照井の変貌に、出会った頃の照井の姿を見出す亜樹子だった。

 場面は替わって井坂診療所。相変わらずリリィにどこかエッチな触診を施す井坂に表情を強張らせる冴子がいた(井坂に聞こえるように愚痴っていたのは言うまでもない)。
 横たわるリリィにペン立てをぶつける冴子が実に大人気ない。
 程なく井坂は「治療」を終えた。但し、メモリは身体の中に残ったままとのことで、問題はないというが気になる台詞である。
 自在に消えたり出たり出来るようになって喜ぶリリィだったが、そこに憤怒の形相の照井がやって来た。自分を捕まえに来たのか?とうろたえたリリィだったが、勿論照井の狙いは井坂で、この状況では彼女は眼中になかった。
 「もうここを突き止めましたか…流石は刑事の息子です照井竜くん。」と薄ら笑いで皮肉る井坂。既に自分の名を知っていることを訝しがる照井に井坂は照井の父・雄治の最期を話し、その殺害が能力の実験が出来れば誰が対象でも良かったと続け、照井の怒りは仇云々を超えるまでにヒートアップした。
 怒り心頭の照井が「貴様…今まで何人をそのメモリで殺してきたんだ!」と問えば、「お前は今まで実験で死んだモルモットの数を覚えているのか?」と外道な回答を返す井坂。  ああ見えて、まだ自分を抑えていたらしい照井が「覚悟しろ井坂……俺はもう自分を抑えられん!」と告げると、照井とは違った意味で、井坂もまた「自分を抑えられない?いいですねェ。私もですよ。」と答えた。

 並々ならぬ決意で決戦に挑むアクセルだったが、やはりウェザー・ドーパントとの戦力差は歴然としていた。「1人では無理だ!」と加勢するWに「奴は俺の敵だ邪魔をするな!」と逆に斬り掛かる始末。
 共闘すればまだ勝機はあるのだろうけれど、頭に血の上った照井のせいであっという間に2人とも追い詰められてしまうのだった。
 そんな苦戦の中、ウェザー・ドーパントの強力な能力が、いくつもメモリの力を同時に使用出来ていることに見たW。井坂曰く、「人とガイアメモリは引かれ合う!」とのことで、1つの能力で満足出来ない井坂は、多彩な力を持つウェザーのメモリをも不足とし、研究の末、様々なメモリの能力を吸収して進化出来るようになったと云う。
 勿論、リリィへの加療もその能力を取り込むのが目的で、彼女は実験動物に過ぎず、最初から体内でロックするよう井坂自身が調整したもので、最後には彼女は全生命エネルギーの使い果たして死ぬと云う。井坂の目的はそこにあった。
 これまでも外道なドーパントは何人もいたが、その多くはメモリに自我を薄れさせ、悪意を増幅されたものだったが、自らの目的の為に進んでメモリを取り込む、他者に平気で自分の為となる犠牲を強いる意味では井坂の悪逆振りは群を抜いていると云えよう。

 その頃、井坂の悪企みを知らず、リリィは自宅へ戻ると、彼女を心配していた祖父であり、師匠でもあるフランク白銀に、彼のラストステージは必ず成功させる、と約束した。つまり、リリィがメモリの力を欲したのは私利私欲ではなく、祖父を安心して引退出来るよう、最後のステージを成功で飾りたい一心からだった。
 だがそんな祖父想いのリリィの思いを踏み躙るかのように、井坂はリリィがメモリブレイクしても助からない、と嘲笑う外道振り。そして嘲笑混じりの余裕溢れる戦い振りでアクセルの攻撃を難なく受け止め、パンチ一発で変身を解除させてしまった。
 「家族と同じ死に方をプレゼントしてあげましょう。」と嘯くウェザー・ドーパント。それを目の前にして手も足も出ず無念の涙を流しながら絶叫する照井。その姿を見て遂に翔太郎はツインマキシマムを発動させる覚悟を決めた。
 勿論フィリップは翔太郎の身を案じて止めに掛かったが、翔太郎は「もう…これしか手はねえんだよ!」と制止を聞かず、ヒートトリガーのマキシマムドライブを差し込んだ。
 次の瞬間、Wの身体から凄まじい炎が吹き出した。「マキシマムドライブ」の電子音声が幾度も重ねられ、突撃を敢行したところで以下次週へ。


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平成三〇(2018)年七月四日 最終更新