仮面ライダーW全話解説

第28話 Dが見ていた / 決死のツインマキシマム

 遂に禁断のヒートトリガーツインマキシマムが放たれた!弾丸は凄まじい炎のレーザーとなってウェザー・ドーパントに突き刺さった。
 だがこれほどの派手なアクションを見せながら、ウェザー・ドーパントは無傷だった……。
 そしてWは変身が解除され、フィリップの危惧していた翔太郎は全く動けなくなるほどの重傷を負った。
 鼻歌交じりに止めを刺そうとする余裕のウェザー・ドーパントを前に絶体絶命と思われたが、そこにテラー・ドーパントに変身した園咲琉兵衛が現れた。
 驚いて見上げる冴子と、平然と「一体何の御用ですかな?」と問う井坂に対して、テラー・ドーパントが言うのは、「見て分らんかね?お茶の誘いだよ、井坂くん。」とのことだった(←分からんわい!)。
 口調こそ穏やかだったが、例の黒いドロドロを滾らせるその佇まいは明らかに威嚇的だった。結局これが意外な助け舟となって、井坂は死にかけライダー達に止めを刺すことなく、琉兵衛について去って行った。
 すぐさま瀕死の翔太郎に亜樹子が駆け寄って介抱しながら、その無茶振りを詰問。息も絶え絶えに翔太郎が答えたのは、「へへ…照井の泣き顔を見たら身体が勝手に動いちまったよ…こいつも今じゃ俺達の大切な仲間だしよ…後は頼んだぜ照井。リリィを助けてやんなきゃな。俺達は…この街の”仮面ライダー”なんだからな…。」とのことで、言い終わった翔太郎はそのまま意識を失ってしまった。
 こんな台詞を聞かされても、怒り心頭が続いているのか、照井は「どこまでも甘ったるいことを…馬鹿が。」と呟く有様だった。一体誰のために翔太郎がここまで傷つき倒れ伏したやら……。

 場所は替わって鳴海探偵事務所。フィリップと照井はのっぴきならないほど険悪な状態にあった。検索により、井坂の仕掛けた罠からリリィを救う方法が1つだけあるのを見つけたが、それにはアクセルの協力が必要不可欠。だがそれを断った照井に普段温厚なフィリップは怒りを漲らせていた。
 だが、そんなフィリップの怒りを無視するように、照井は「井坂の居場所を検索しろ。」と居丈高に振る舞う。そりゃ、フィリップじゃなくてもキレるわ……。
 照井の為に翔太郎が重傷を負ったのに、今風都にいるただ1人の仮面ライダーであることを無視することを詰問するフィリップにも、逆ギレ気味に「俺に質問をするな!」というお決まりの台詞を吐くだけ。あまつさえ、「翔太郎の言葉が届かなかったのか!」と掴みかかったフィリップの顔面を思い切り殴りつけ、事務所を出ていく始末だった………。

 場面は替わって園咲邸。
 そこでは井坂が琉兵衛達に、時折現れるメモリとの相性が異常に高い人間=過剰適合者について説明していた。その卓上には「お茶」だけで済まず、膨大な量の食事をこなした後が残されていた。
 そんな井坂の異常なまでのカロリー消費を琉兵衛は「複数のメモリを吸収する君の貪欲さそのもの」と評し、「こんな状況で飯が喉を通る」という井坂の豪胆さ(というか、図太さ)を褒めながらも、同時に「冴子と何を企んでいるのかね?井坂君。若菜も困惑していてね。我が家族を乱す者はこの地上に存在を許さない。」との詰問も欠かさなかった。さすがにかなりの威厳である。様々なジャンルの番組にて多種多様な役柄をこなしてきた歴年の名優・寺田農ならではと言えよう。
 自分の名前も出された冴子もいざという時の覚悟を決めたのか、テーブルの下で密かにタブーのメモリを握り締めたが………その横で突如井坂はツナギのホックを外し、服を脱ぎ始めた。井坂がワイシャツをはだけ、胸元を露にするとそこには7つもの生体コネクタが点在していた……………って、ケンシロウかい!!
 よく見りゃ、5つのコネクタと2つの乳首だったが(苦笑)、ウェザーのコネクタが頭部にある事を考えると、少なくともウェザー以外の能力を5つも持っているという事が伺える。
 詰まる所、琉兵衛の疑惑に対する井坂の答えは、「ガイアメモリの真実を解き明かしたいという欲求」で、自分ほどミュージアムに貢献している人間はおらず、その想いは琉兵衛も冴子も同じはずである、と言い切り、自分を実験体にしてもいい、と申し出た。
 これに対して琉兵衛は笑って井坂を褒め、(正体がばれて)もう病院には戻れない彼を邸に居候することを勧めた。勿論気を許した訳ではないだろう。果たして如何なる存念によるものや?

 場面は替わって白銀邸。白銀邸を張っていた照井はそれを見つけたフランク白銀に招き入れられた。
 尋問する照井の凄まじい形相をも笑い流してマジックを披露しながら、孫への想いを語るフランク。孫が自分の想いを理解し、マジックに尽力する姿が嬉しいと語る、例えそれが不正であっても……。
 その実態を知っていたのか?と問う照井に、詳しくは知らないものの、「消える大魔術をやらせてくれ。」と言ってきた時点で、マジックの師としては喜びつつも、祖父としては心配していた旨を語るフランクだった。
 それに毒気を抜かれたのか、帰宅したリリィを見つけた照井は、メモリを使わないよう説得を試みた。だがリリィは祖父の最後ステージだけでいいから使いたい、その為には自分は死んでも構わないと言って、聞かない。
 そんな彼女に照井が言ったのは、「そう思ってるのはお前だけだ!少しは周りを見ろ!心配している家族がいるだろう!」という台詞だった(笑)。その瞬間、自分が前回翔太郎に言われたのと同じ台詞を発していたことに気付き、ようやく翔太郎の想いに気付いた照井。
 「フッ…俺が左と同じ言葉を言うとはな…。」と言葉こそ自嘲気味だったが、ようやく反省出来、リリィの肩をガッシと掴むと、「ワンステージだけだぞ。それが終わったら俺の処置を受けるんだ。俺の仲間達が見つけた、君を助ける為の処置をな。」と言って、白銀邸を後にした。

 とある公園で再会した照井にフィリップはいきなり殴りつけた。曰く、「これは殴られた後の仲直りの儀式さ。翔太郎から教わった。」とのことで、照井も「フフ…左も粋なことを知ってるな。」と言って「儀式」を受け入れた。これも『ジョジョ』における花京院典明とジャン・ピエール・ポルナレフからのインスパイアーか(笑)?2人の場合は肘鉄だったが。

 そしてフランク白銀のラストステージ当日。照井・亜樹子・フィリップの3人はステージが無事終わるのを祈りながら固唾を飲んで見つめていた(翔太郎はまだ重傷で臥せっていた)。
 そしてその観客席に何食わぬ顔で、フィリップ達の側に悠然と現れた井坂深紅郎。目的はそろそろ命を落とすであろうリリィからメモリを回収することにあった。
 今度は冷静さを取り戻していた照井は、フィリップが危惧したように理性を吹っ飛ばしてウェザー・ドーパントに突っかかったりせず、「お前などに構っている暇はない。俺はリリィを助けに行く。彼女はマジシャンの端くれ…そして俺も仮面ライダーの端くれだからな。」と告げた。
 事ここに至って、照井竜は真の意味で「風都2人目の仮面ライダー」となったのだった。照井はガンナーAをウェザー・ドーパントに当たらせて時間を稼ぎつつ、自身はリリィの元へ駆け付けた。彼女は既に死ぬ寸前で身体が消えかけていた。
 ほぼ諦め顔で照井を「ちょっと怖いけど……カッコイイ刑事さん。」と評して別れを告げるリリィ。それに対して「君は俺が守る。」と告げてアクセルに変身した照井はなんとエンジンブレードで彼女の体に斬り付けた!
 リリィの身体が崩れ落ちると、彼女の体からはメモリが排出…………つまり彼女は命を落としたのだった………フランク白銀が悲鳴を上げて孫娘に駆け寄った。
 だがアクセルがリリィの身体に剣先を当て、電気を流すような処置を施すと、彼女の体はビクン!と跳ね上がり、すぐにその目を開けた! AED処置ということか?!
 死ななければ排出されない筈のメモリが排出されているにもかかわらず、リリィが目を開けたことに驚愕するウェザー・ドーパント。それに対しフィリップはリリィの心臓を一時的に止め、仮死状態にしてメモリに彼女が死んだと認識させ、排出後に蘇生させると云う、「逆転の発想」で行動したことを告げた。

 「ちょっとした大魔術だろう?井坂。」という台詞に、それまでの憎々しいまでの冷静さをかなぐり捨てて、欲しがった玩具を奪われた子供の様に地団駄踏むウェザー・ドーパント
 怒り心頭のウェザー・ドーパントがアクセルに襲い掛かったが、ここでタイミング良く(笑)翔太郎が意識を取り戻し、フィリップはWファングジョーカーに変身。
 「左!意識が戻ったのか!」(照井)、「僕も驚いたよ。大丈夫かい翔太郎?」(フィリップ)、  「そう思うならとっとと片付けて休ませろ」(翔太郎)という皮肉たっぷりの会話がここでは心地いい(笑)。
 3者2体の心が通い合い、怒れるウェザー・ドーパント相手にも互角以上に渡り合うWとアクセル。業を煮やしたウェザー・ドーパントは気合の咆哮とともに一際巨大な竜巻を作り出し放出した。だがWとアクセルは「タイミングを合わせてライダーツインマキシマム」を、「今こそ呪われた過去を…振り切る」為に発動。
 Wが単独で行ったツインマキシマムは自分を傷つける暴挙でしかなかったが、2人の仮面ライダーが力を併せた真のツインマキシマムは、伝統と信頼のダブルライダーキックとなって、放たれた!
 「ライダーツインマキシマム!!」の掛け声とともに放たれたWキックは巨大竜巻を真正面から蹴り返し、メモリブレイクの力を上乗せしてウェザー・ドーパントに倍返しした。
 惜しくも倒すには至らなかったが、この大反撃にさしものウェザー・ドーパントも這う這うの体で戦線離脱せざるを得なかった。
 井坂には逃げられたが、リリィ白銀は救えたことを、危険なメモリ摘出法を躊躇無く、しかも正確に行った照井のおかげ、と称賛するフィリップ。それに対して「ちっ、俺が寝てる間にまたお前らだけで仲良くなりやがって。」と病床でどこか焼きもち気味の翔太郎。
 かくして翔太郎・フィリップと照井は改めて互いの力を認め合い、仲間意識を強くするのだった。
 そしてそんな2人を陰から見ながら、「強くなってきた…いいわよ竜…来人…。」と呟くシュラウド。フィリップを本名で呼ぶこの女の正体はもしや………?

 場面は替わって園咲邸。ズタボロ状態で帰還し、仮面ライダー侮り難し、と回顧する井坂。彼の姿に驚きつつも、無事を喜び、1人で無茶をしないで欲しいと諭す冴子。
 そして甘えた声で井坂に抱き着く姿に霧彦が完全に過去の存在になっていることが伺えるのだが、井坂は喜びの表情を見せるでもなく、虚ろな目でミックを見つめながら心の中で空腹を呟くのだった。

 ラストの場面は鳴海探偵事務所。訪ねてきたリリィはい「命の恩人」たる照井にベタ惚れでいきなり頬にキス。しかしそこはまだまだ固い照井、「やはり軽過ぎる…。」と呆れ顔(苦笑)。恐らくは誰かが誰かにキスをするというシーンなど初めて見たであろうフィリップは「興味深い。今の行為はいったいどういう意味なんだい?」と純粋な興味で質問しているともうが、その顔は笑っている(笑)。つまり知識にないだけで、本能では悟って、面白がっているのだろう。すっかり困惑した照井の、いつもの「俺に質問するなぁ〜!!」の叫びが今回だけは微笑ましかった(笑)。
 ちなみにラストのタイプライティングもベッドの中で、今回は最後まで重症状態の翔太郎だった。ま、次週には元に戻っているんだろうけれど。


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平成三〇(2018)年七月四日 最終更新