仮面ライダーW全話解説

第7話 Cを探せ / フィリップはそれを我慢できない

監督:田崎竜太
脚本:荒川稔久
 ある日、フィリップは地球の本棚でどうしても閲覧することが出来ない本を発見した(彼のイメージの中では本に鍵が掛っていた)。その対象は”ヘブンズトルネード”といい、分かっているのは稲本弾吾(森崎ウィン)という17歳のストリートダンサーが持つ究極の技ということだけだった。
 何にニーズがあるのかさっぱり分らんが、フィリップには(閲覧出来ないということが)捨て置けない事態だった。

 その時、ラジオでは若菜が視聴者からの投稿で、「ゴキスター」なる最近風都で噂になってるヒーローを紹介していた。ゴキスターはヒーローマントを纏った、「悪党どもに天誅を下す闇のお仕置き人」とのことで、若菜は平然と「あの仮面ライダーさんのお友達かな?」と言って微笑んでいた。
 「おいおい姫、そんなのとWを一緒にしないでくれよ」と翔太郎が不快さを表した瞬間、事務所の窓ガラスが投石で砕かれた。石は何枚かの万札とともに【風花高校に怪しい奴が来る。絶対に捕まえてくれ】との手紙に包まれていた。
 つまりは依頼なのだが、とんでもなくふざけた方法である。勿論翔太郎に依頼を受ける気などなく、ガラスを割った犯人として、調査・締め上げの対象となっただけだったのだが、犯人探索の頼みの綱、フィリップは「ヘブンズドルネード」を求めて単身外に出掛ける準備をしていた。

 組織に狙われているフィリップの単独外出を止めようとする翔太郎だが、知識探究欲に取り憑かれたフィリップは聞く耳を持つようで持たない。
 結局フィリップは外出し、心配した亜樹子もこれに同伴。翔太郎は文句を言いつつも風花高校へ向かった。そこでお目当ての技の持ち主、稲本弾吾を見つけたフィリップは彼の前でいきなり(稲本の私物である)ラジカセのスイッチを(勝手に)入れるや彼の前でダンスを踊り始めた。
 普段検索ばかりをしているフィリップの意外な運動神経に驚く亜樹子だが、フィリップに言わせると、検索したからこそとのこと。だがそれでもヘブンズトルネードだけは分からない欲求不満に駆られるフィリップは稲本にヘブンズトルネードを見せて欲しいと懇願するが、稲本の回答は「一人じゃ出来ない。」というものだった。

 とはいえ、フィリップをこのままの状態で捨て置けない亜樹子は「鳴海探偵事務所の死活問題なのよ。所長の私としてもね…。」と言った途端に稲本の顔色が変わった。
 つまり投石した依頼人とはコイツで、亜樹子達が所長と知って、落胆し、逃げ去った。だがこの時点で稲本の豹変が分からない二人は訳も分からないまま慌ててこれを追いかけた。そして翔太郎が懸念した様に、フィリップの動きは彼を狙う組織の監視下に曝されていた。そしてその監視者とは、園咲家のペットである猫=ミックだった。

 そのとき、風谷高校の構内では、星野という校長(白石タダシ)が、ゴキスターと思しき仕置き人の襲撃を受けていた。罪状は「一人の男子生徒を深く傷つけた。」というもので、星野校長を忽ち殺害、そこにタッチの遅さで翔太郎が駆けつけた。
 対峙し、変身したWに「風都にヒーローは2人もいらない!」と述べて襲い掛るその動きは非常に素早く、必死に繰り出すWの攻撃は丸で当たらない。ルナトリガーのホーミングレーザーで何とか攻撃を当て、追い詰めるかに見えたが、亜樹子からの連絡でまずいことが起きたことが知らされた。

 Wが変身する際、フィリップの精神は翔太郎に移るので、肉体は気絶状態になる。このとき、バスに乗って移動する稲本をフィリップと亜樹子が尾行していたので、変身時に気を失ったフィリップをバスの座席に座らせていたのだが、ターゲットである稲本がバスを降り、そのままでは尾行困難に陥っていたのである。
 結局、ゴキスターと戦うか、稲本を尾行するかの二者択一で迷っている隙にゴキスターには逃げられてしまった。

 その頃、園咲邸では外から戻って来たミックを見た琉兵衛が「何かを見つけてきたのかね?」と語りかけ、メモリをベルトに挿入。するとミックはスミロドン・ドーパントに変身し、再度邸の外へ飛び出した。
 その様子を物陰から霧彦が伺っていたが、琉衛兵にはしっかりばれており、皮肉たっぷりに「ミックに負けないよう頑張りたまえ。」と告げた。園咲ファミリーの面々が普通の人間と異なる存在であることは先刻承知していても、義父から猫と比べられる霧彦にチョット同情(笑)。

 場面は代わってどこぞのデパートの屋上と思しき喫茶店。
 情報収集に様々な人脈を持つ翔太郎が会っていたのは、クイーン(板野友美)とエリザベス(川西智美)という2人の女子高生だった。翔太郎曰く、「風都の高校生の事なら何でも知ってる。」という2人に情報を求めていた訳だ。
 そこで翔太郎はクイーンから「闇の害虫駆除」なる裏サイトの存在を教えられた。
 そこに「星野」を殺して欲しいとの依頼書き込みがあった訳だが、同時に殺された「星野」は、殺害を依頼された「星野」とは同姓の別人で、謂わば星野校長は人違いで哀れにも殺されたことも判明した。
 本来殺される筈だったのは、星野千鶴(藤井玲奈)という女子生徒で、翔太郎は謎の依頼者の正体は星野千鶴の知り合いで、彼女をゴキスターの襲撃から守ろうとしていた者、と推理した。

 その頃、千鶴の身を案じて稲本は風谷高校にやって来たが、刃野刑事達に止められた。
 しかしこの稲本、態度が悪過ぎる!明らかに未成年なのに中年の刃野刑事にタメ口を利き、真倉刑事に「雑魚は引っ込んでろ!」と、いくら千鶴の身を案じて焦っているとはいえ、その前後も誰に対してもこんな態度だから好感は抱けない。
 尚も校内に入ろうとする稲本を一人の教師(渡洋史)が止めに来た。あっ、宇宙刑事シャリバンだ!というのは置いといて(笑)、聞けば稲本は同校の退学生(自主退学)で、元々稲本と千鶴は何がしかのパートナーだったが、今彼女はシンクロナイズドスイミングに専念しているとのことである。稲本が(態度を含め)快く思われないのも必然である。

 校門から叫んでも、校内からは何の反応もない…………って、普通聞えんだろ!?稲本よ(苦笑)。そして次なる稲本の行動は校庭の真ん中で踊り始めるというもの(←はぁっ!?)。
 教師と稲本の会話から、フィリップは「ヘブンズトルネードの正体はコンビ技」と判断し、「稲本弾吾と星野千鶴、この2人が揃えば見れるということだね」とほくそ笑んだ(←事態を見ているのか、フィリップ?)。
 だが、期待に胸を弾ませながらプールへと向かうフィリップの前にスミロドン・ドーパントが現れた。その体に装着されたドライバーを見て、「幹部か。僕をさらいに来たのかい?」と警戒色を強めたのだった。

 そしてフィリップが向かおうとしていたプールではゴキスター=コックローチ・ドーパントが、本来の標的である星野千鶴を殺害せんとしていた。
 殺される理由が分からず、恐怖しつつ訝しがる千鶴に、コックローチ・ドーパントは稲本からの依頼であると告げた。おいっ!何処の世界に依頼人の身元を明かす殺し屋がいるんだよ?!(勿論、殺し屋自体がそもそも世に認められる職ではないが……)
 そこへ千鶴を救わんとして翔太郎とともに飛び込んできた稲本はモップを得物に体を張って千鶴を守らんとしたが、ついさっきコックローチ・ドーパントから稲本からの依頼で殺されようとしたのを告げられたばかりの千鶴にとって、稲本は恐怖でしかなく、当然のように強烈な拒否反応を返された。
 シルバータイタンは現実でも、ドラマでも、一度抱いた誤解から聞く耳を持たなくなる人物に嫌悪感を抱くことが多いが、これはタイミングが悪過ぎるし、命が掛っていれば無理もないと思う。
 まして千鶴には「コンビ解消」という、恨まれる「身の覚え」があるのだから。

 千鶴と稲本の問題はともかく、翔太郎としてはコックローチ・ドーパントを放っておけない。すぐにでもWに変身して迎撃したいのだが、フィリップが「幹部」に追われていて変身(することで気絶するのを懸念して)出来ない。
 言わないこっちゃない、と毒づく翔太郎だったが、直後にフィリップは歩道橋からゴミ収集トラックの荷台へダイブし、なんとかスミロドン・ドーパントの追跡を振り切り、Wに変身することに成功した。
 トラックに追い付けないようなら、後年劇場版で仮面ライダーアマゾンに敗れたのも無理はないな、スミロドン・ドーパントよ(笑)。

 Wは再びルナトリガー無双でコックローチを追い詰めたその頃、稲本は逃げる千鶴を必死に追うが、やはり千鶴は恐怖心から聞く耳を持たない。それを聞いたフィリップは、「もう2度と…って…それじゃヘブンズトルネード見れないじゃん!」………おいっ!心配するのはそこかい!?
 翔太郎も戦闘に集中しないフィリップに業を煮やす。コックローチ・ドーパントもその隙を突き、何とルナトリガーのメモリがドライバーから引き抜かれてしまった!というところで以下、次週。


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平成三〇(2018)年六月八日 最終更新