仮面ライダーW全話解説

第9話 Sな戦慄 / メイド探偵は見た!

監督:柴崎貴行
脚本:三条陸
 今度の事件は名パティシエ達の連続失踪事件。
 「警察が相手にしてくれない」という不可解な理由で事務所にいきなり5人もの依頼人が殺到した。その5人は行方不明となった身内が名パティシエという以外に一切の共通点はなかった。
 突如の大量依頼に(事件そのものは1つでも)多忙に直面した鳴海探偵事務所で、翔太郎は亡くなってしまったおやっさんへの義理を果たす為にも、何かと行動的な亜樹子を危険な目には遭わせたくないと苦悩していた。
 しかしその説得に「おやっさんへの責任」と言ってしまったために、亜樹子に「お父さんと連絡くらい取れないの?」と聞かれて言葉に詰まる。おやっさんの死も、その理由も話せずにいた翔太郎は未だ迷いの中にいた。

 そんな中で大量の依頼人が事務所を訪問したことで、捜査の為にこの問題は中断された。次の場面で亜樹子は喫茶店にて依頼人の1人・浅川麻衣(乙黒えり)の父・浅川雄三(加藤満)に関する資料を眼前に熱中した。
 また、れっきとした大量失踪事件にも関わらず警察が動かないことを訝しがった翔太郎は風都署の刃野刑事を訪ねた。そして翔太路が喫茶店を去った直後、麻衣はとある「お屋敷」が原因という聞き捨てならない台詞を呟いた。

 その直後、屋台ラーメンでは翔太郎と刃野刑事と真倉刑事がラーメンをすすりながら情報交換をしていた。相変わらず私立探偵の介入を快く思わない真倉刑事が、署が動かない訳ではなく、風都中を探し回っても何も得られていない状態である、と不快そうに答えた。
 どうでもいいが、犯人にしても、失踪者にしても、「風都の外にいる可能性」というのは思考の中に浮上しないのだろうか?この人達(苦笑)。
 一方、刃野刑事は一箇所だけ未捜査の所があって、浅川雄三が消えたと言われる現場が有名な園咲家だと告げる。ちなみに捜査出来なかったのは「門前払い」を喰らったからとのこと。

 現実の世界に警察の捜査を拒める権力者なんて、シルバータイタンの知る限り米軍基地ぐらいしか思い浮かばない(勿論、捜査令状が有っての話だが)。捜査令状が出されなくて踏み込めないのならともかく、「捜査なら直にやるので警察は立ち入らないでもらいたい。」の一言で刃野刑事達が怖がって踏み込めないと云うのは幾らフィクションの世界とはいえ、リアリティが感じられないが、とにかくそういうことだった(苦笑)。

 フィリップの検索により、甘いものに目がない園咲家の当主のために、週代わりで一流パティシエを招かれ、失踪したパティシエはすべて該当していたことが分かった。
 あからさまに怪しいのだが、どうも動機が分からない。そして戻らない亜樹子の身を案じる翔太郎は、フィリップから亜樹子がメイドに化けて園咲邸に潜入したことを知り、愕然とした。

 その頃、亜樹子は紅茶の淹れ振りを琉兵衛に褒められていたが、それも束の間。ミックに自作の猫まんまを無理矢理食べさせて体調不良で寝込ませるわ(考えようによっては大殊勲になるところだったが)、邸の令嬢である園咲若菜に「本物だぁ〜!」と無礼な口を叩くわ、とひっちゃかめっちゃかだった(苦笑)。潜入捜査員が目立ちまくってどうすんねん?!
 案の定、メイド長の杉下克子(川俣しのぶ)に大目玉を喰らい、彼女は城塚福美(井上佳子)と佐々木由貴子(濱田万葉)に亜樹子への基礎からの教育を命じた。
 2人の先輩メイドは園咲家のメイドが「見ざる・言わざる・聞かざるが大原則」であることと、「仕事で必要な場合を除いて、御家族の方と接触するのは御法度」という厳格さを伝え、亜樹子は性格的に出来ないと呟けば(←本気で潜入捜査する気あるのか?)、城塚は「じゃあ辞めちゃえばぁ?」とポテチバリバリ食いながら勧告する始末。ホントに厳格なのか?

 まあメイドへの扮し方に関しては亜樹子には大いに問題があるものの、捜査は真剣なようで、メイドの忠告もそこそこにメモ帳とボールペンを手に屋敷の中を探索に掛っていた。まあ問題新米メイドと化した上に、先輩の話を聞かない様で潜入が務まるとは思えんが。

 その頃、依頼人の麻衣は園咲邸の厨房にてプロレスラーと見紛うごつい風貌の進藤料理長(岡田正典)の手厳しい寸評を受けていた。麻衣自身も父と同じくパティシエであり、今日は彼女が招かれ、亜樹子はそれにくっついてきたという訳だった(苦笑)。
 料理長は麻衣の父とも面識があり、それと比較しての寸評だった。
 直後、麻衣の元に亜樹子が中間報告に来たが、怪しい人物ばかりというぐらいの報告でしかなかった。だが麻衣は真剣に亜樹子を頼り、父親への想いが他人事ではない亜樹子も依頼遂行への決心を新たにした。

 そこへ亜樹子の身を案じてやってきた翔太郎が園咲邸に到着。門扉の外から危険だから帰れと促すも、亜樹子はおやっさんの娘ゆえに探偵としての職務にこだわり、逆に翔太郎は「いつもお父さんの事ちゃんと話してくれないじゃない。」と責められた。
 その台詞に第1話冒頭でのおやっさんの死の場面を思い出し、言葉を失くした翔太郎は戻った事務所でフィリップから亜樹子に真実を告げないのか?と問われた。
 そのときフィリップはおやっさんが命を落とし、自分達が初めてWとなったときのことを、「ビギンズナイト」と呼んでいた。
 それに対し、翔太郎は「言えるかよ!俺が…この俺がおやっさんを殺しちまったなんて……。」と穏やかならぬ台詞を口にした。まあ間接的に死なせてしまったことを差していることは分かるのだが………。

 場面は替って園咲邸。眼前のスイーツに御満悦な琉兵衛が担当のパティシエが誰か?と問えば、ハイテンションで「はいはい御主人様!それを作ったのはこの浅川麻衣さんどぇーす!」と答える亜樹子。
 「このコ面白いかも」と(勿論皮肉で)評する若菜だったが、取敢えず麻衣は琉兵衛のお眼鏡に叶い、名を覚えられた。だが、我が家のメイドの品格が落ちた、と冴子は眉を顰め、逆に若菜はケラケラと笑う。相変わらずの姉妹である。
 その後、キレたメイド長に叱られたり、人相から怪しいと睨んだ料理長の人目を憚った行動が、下手くそなゴルフを少しでも上手くなりたいという練習だったり、と捜査が迷走する亜樹子だったが、そこへ再び園咲邸の門前に翔太郎がやってきて、フィリップの検索結果を告げた。
 それによれば、行方不明になったパティシエは風都No.1〜5までの腕前の持ち主達で、麻衣はNo.6であるゆえに今回狙われるのが彼女である可能性が極めて高いというものであった。

 そこに翔太郎を見つけた霧彦が登場。
 翔太郎の方では霧彦に見覚えがあったが、翔太郎を若菜に対するストーカーと思っていた霧彦にはなかった(苦笑)。
 霧彦は風都を愛し、成功者として、名士として翔太郎に啖呵を切ったが、さすがに独り善がりなサクセスストーリーに翔太郎もドン引き(苦笑)。
 そこへ屋敷の中から麻衣の悲鳴が響き渡り、彼女を助ける為に翔太郎は霧彦を無視して(笑)現場へ急行した。

 麻衣を襲っていたのは、謎の巨大生クリーム。
 翔太郎が麻衣を引きずり出して救い出すと、それはグニョグニョとしたメトロン星人そっくりな人型に変化した。
 化け物の台詞は極上のスイーツを求めるという俗な言い分だったが、こうなると容疑者から琉兵衛が消えることになる。更に恐怖という感情を「舌先を駆け巡る極彩色の甘美」という訳の分からない価値観を持ち出す。
 そんなWとスイーツ・ドーパントの戦いにナスカ・ドーパントが割って入って来た。2度目の戦いだが、互いにその正体に気付いている気配はない。さっき会ったばかりなのに(苦笑)。
 かくしてナスカ・ドーパントスイーツ・ドーパントVS仮面ライダーWという変則マッチが展開されたのだが、そこへ「今日は何やら屋敷が騒がしいな…。」といって現れたテラーのメモリを取り出す琉兵衛がドーパントに変身したところで、以下次週へ!


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平成三〇(2018)年六月八日 最終更新