仮面ライダーX全話解説

第35話 さらばXライダー

脚本: 伊上勝
監督: 折田至
サソリジェロニモJr.登場

 ストーリー解説に入る前にここで『仮面ライダーX』の話数について触れておきたい。先にやるのは少し嫌な話になるからである。
 仮面ライダーシリーズ3作品目として始まった同作品はこの第35話が最終回となるのだが、これは『仮面ライダーアマゾン』が全24話、『仮面ライダーディケイド』が全31話であるのに次いで少ない話数である。
 しかも『仮面ライダーアマゾン』は所謂「TV局の腸捻転」と呼ばれた局事情が影響した話数の少なさで同作品に人気が無くて短くなった訳ではなく、最初から全24話であることが決まっていた。また、『仮面ライダーディケイド』の場合、当該作以降の作品のストーリーと関連商品のピーク時期を同じスーパーヒーロータイム枠で、毎年2月に放映を開始していたスーパー戦隊シリーズとずらすことを目的として特殊な形態で放送されたとの理由でこれまた当初から少ない話数となることが決まっていた。
 また『仮面ライダーストロンガー』が本来は4クール52話だったのが視聴率が振るわなかったことで下手に長引かせるより、第1期シリーズ終了を「有終の美」で飾る為に3クール39話で終了したと云われていることもあり、その3クールに満たない35話で終わった『仮面ライダーX』を「人気の無かった作品」と決め付ける心無いライダーファンや、書籍関係者もいる。

 確かに視聴率(平均視聴率が関東で16.9%、関西で20.2%、最高視聴率が関東で20.5%、関西で25.2%)では数字だけを見れば全2作品を下回っていた。第21話までと第22話以降で怪人軍団の構成要因も含めてGODの在り様がガラッと変わったのも視聴率苦戦からきた梃入れに違いはないだろう。
 ただ、アポロガイストの人気は屈指だったし、神話怪人も悪人軍団も他の数あるライダー作品の中にあって異彩を放ち、偉大な前2作品との比較や、ロボットアニメブームという逆風の中では善戦していたと見られ、何より「TV局の腸捻転」はこの作品にも影響しており、通常の話数にこだわると『仮面ライダーアマゾン』が物凄く話数の少ない作品になりかねず、いっそ『仮面ライダーアマゾン』を放映せず、その分を『仮面ライダーX』で埋まるとしたら、1年を超える前例のない長編を維持しなければならなかったと見られている。
 この最終回の登場する怪人がサソリジェロニモJr.で、新たな悪人軍団を作らなかったことを思うと、歴史上の人物もネタ切れになっていたと思われる(採り上げる人物によっては関係国の国民を激怒させる可能性も有っただろうし)。
 少なくとも、『仮面ライダーX』をこの全話解説の為に改めて全話見直した身としては、単純な話数で人気の大小を図ることは慎み、偉大な前2作品との差別化にこだわった結果、独創性の強い作品に仕上がったと評価したい次第である。

 長くなったがここから本編解説。
 冒頭、神敬介は遂に活動を始めたキングダークに対して、「あの大巨人が暴れ出したら大変なことになる。」との思いを馳せながら、その破壊を目指してGODアジトの在り処を求めてバイクを走らせていた。
 一方で立花藤兵衛・チコ・マコもまた探索に協力していた。藤兵衛は第33話・第34話で協力してくれていた一文字と風見が(恐らくは何も云わず)姿を消したことを訝しがっていたが、敬介は彼等には別の任務があるからと推測して、二人を頼ってはいけないと藤兵衛をたしなめた。
 意外だったのは、この敬介の意見に同意しつつ、自分達がいることを強く主張していたチコとマコだった。第15話で「目撃者は消せ」的にクロノスに襲われたところを敬介に助けられ、なし崩し的にCOLのバイトととして守られつつも敬介に協力していた二人がいつの間にか敬介の協力者としての誇りと自覚を持っていたことは感慨深いものがあった。

 ともあれ、敬介は再度藤兵衛達と別れて探索を再開した。
 藤兵衛もチコ・マコとともに探索を再開したのだが、しばらくすると藤兵衛の走らせるジープの前に一人の老人(邦創典)が立ちはだかった。急な飛び出してみて、「危ないじゃないか!」の声を上げる3人だったが、老人から急病の孫を病院に連れて行って欲しいとせがまれては、このお人好し達が無視出来る筈なかった(苦笑)。
 老人の案内で如何にも片田舎の農家然とした家にやって来た3人。確かに令和の世ならぬ昭和でも、急病人なら「電話で119番しろよ。」と云いたくなるが、昭和中期の片田舎なら分からないでもない。
 だが、多くの視聴者にとって容易に推測出来るようにこれは罠で、藤兵衛はGOD悪人軍団のサソリジェロニモJr.に捕らえられ、藤兵衛が抵抗している間に逃げるよう促されたチコとマコも戦闘工作員によって捕らえられてしまった。

 場面は替わってCOL。そこでは敬介が捕らえられたことを知らない藤兵衛達の帰りを待っていた。店外にジープが止まる音を聞きつけ、藤兵衛が帰って来たと思って迎えに出た敬介だったが、そこにはジープが止まっているだけで藤兵衛達の姿は無かった。否、正確にはハンドルに一匹の赤蠍が鎮座していた。
 そしてその赤蠍からはGODが藤兵衛達を捕らえていること、返して欲しくばRS装置設計図の最後の1枚を持って多摩丘陵まで来る旨が発せられた。

 勿論敬介は即座に多摩丘陵に急行。到着すると小高い丘の上に藤兵衛達が逆さ吊り状態で拘束されていた(←何故かチコだけ普通に立って縛られていた。小板さんに健康上の問題でもあったのだろうか?)。
 刃物や銃器を突き付けられたり、ギロチンに架けられたりした状態ではなかったとは云え、逆さ吊りは充分に無残な姿で、さしもの敬介も「何て酷いことを……。」と呟かずにはいられなかった。
 見張りが二人しかいないのを見て即座に藤兵衛達救出に向かわんとバイクを走らせた敬介だったが、大切な人質の見張りが甘いのを罠と見るのは世の定石で、案の定、藤兵衛達は「来ちゃいかん!」と叫ぶし、何処からともなく飛んできた槍がバイクの行く手を塞ぎ、そこで止まるように命じるサソリジェロニモJr.の声が響いてきた。

 約束通り設計図を持って来たので3人を返すように求めて叫ぶ敬介の前に、馬ではなくバイクに乗ったサソリジェロニモJr.とネイティブ・アメリカンっぽく頭に羽飾りを着けた戦闘工作員達が現れた。
 自分が倒した筈のサソリジェロニモが眼前に現れたことに若干驚き気味の敬介だったが、サソリジェロニモJr.は即座にその息子であることを名乗った。ちなみにサソリジェロニモサソリジェロニモJr.は頭部の羽飾りが少し異なり、後者の胸部にはでっかく「JR」と書いてあるので、知っていればすぐにその相違が分かるが、初対面なら親父の方と思っても不思議ではない。

 ともあれ、例によって交渉が始まった。
 自分達の身の上よりも、GODが再度RS装置を手にすることで世界が破滅に向かうことを懸念する藤兵衛はいつもの様に自分達に構うなと叫ぶが、サソリジェロニモJr.は戦闘工作員達に藤兵衛を殴りつけて黙らせ、更にはチコとマコの頭の皮を剥ぐと云って(←如何にも放映当時ネイティブ・アメリカンに抱かれていたイメージだ(苦笑))、戦闘工作員達に二人の娘の頭部にナイフを突きつけさせ、要求に応じるよう迫って来た。
 さすがにこれには手も足も出ず、設計図を渡した敬介は「俺はGODとは違う。約束は守る。」と云って、3人を助けに向かわんとした。しかし、敬介が揶揄した通りGODに約束を守る気は更々なく(苦笑)、加えてサソリジェロニモJr.は父の仇である敬介への恨み骨髄だった。

 サソリジェロニモJr.はバイクに乗った戦闘工作員に敬介を襲わせ、古代の車裂きに敬介を掛けんとした。敬介の四肢にロープを括りつけ、四方に引っ張ってその身を裂かんとしたが、事ここに至って敬介は抵抗を決意。無理もない………このまま大人しく殺されたところで藤兵衛達の無事は保証出来ないし、GODが再度RS装置を手にすれば世界の終わりなのだから、最悪藤兵衛達の犠牲は覚悟しなければならないところ、と誰しもがこの状況では考えるだろう。
 意を決した敬介は立ち上がると膂力でもって自分を引く戦闘工作員を引き倒し、大変身を敢行。まずはジャンプ一番藤兵衛達の元に駆け付けると3人を助け出した。

 クルーザーに乗った敬介は同じくバイクに乗るサソリジェロニモJr.一行とバイクによる騎馬戦を敢行。互いがバイクを走らせ、交差する刹那に攻撃を仕掛けるという殺陣が繰り返され、戦闘工作員達は早々に叩きのめしたものの、サソリジェロニモJr.は馬を操る如く巧みにバイクを乗りこなし、Xライダーと互角の勝負を展開した。そのバイクの腕は藤兵衛も認めていたが、藤兵衛さん結構誰でも「見込み有り。」とするからなあ(笑)。
 ともあれ、しばしの殺陣の後、クルーザーで上空に跳んだXライダーにサソリジェロニモJr.が槍を投げ付けると胸部にこれを受けたXライダーは着地後、ふらふらとクルーザーを走らせると山陰に回ったところで爆発が起き、Xライダーが戦死したと捉えて愕然としていた藤兵衛達は再度囚われの身となった。

 Xライダーを討ち取り、設計図も手に入れて得意満面のサソリジェロニモJr.キングダークが始動することで世界が終わるのを見せてやるとして藤兵衛達を連行。世界征服が目的の筈の悪の秘密結社だが、時として世界の滅亡を口にする………本末転倒な気がするが、恐らくは既存世界の滅亡なんだろうな。
 ともあれ、サソリジェロニモJr.は戦闘工作員達に3人を見張るよう命じてキングダークの元に向かうべくアジトの中に入っていった。だが、サソリジェロニモJr.が姿を消した途端、物陰から敬介が飛び出し、忽ち戦闘工作員達を蹴散らすと藤兵衛達を再度解放した。
 詰まる所、敬介が戦死を装ったのはキングダークのアジトを突き止める為で、自分が死んだと思い込めばサソリジェロニモJr.キングダークの元に向かうだろうと踏んでのことだった。

 敬介は再度チコとマコを藤兵衛に託し、サソリジェロニモJr.が入って行った建物の中に飛び込んでいった。大きな扉を開くとそこは確かにキングダークが頬杖をついていた場だったが、そこにその姿は無かった。
 キングダークは既にその場を去り、そこは罠と化しているとのことで、敬介の頭上に多くの岩石が降り注いだ。当のキングダークは屋外にあり、藤兵衛達の前にその姿を現していた。
 そして超重量である鋼鉄の巨躯が大地を踏みしめる度にその振動で岩石の雨が敬介を襲い続けていた。そのままでは良くて生き埋め、悪けりゃ圧死である。ここで神敬介は作中最後の大変身を敢行した。
 地中から飛び出したXライダーの勇姿に安堵の表情を浮かべる藤兵衛・チコ・マコだったが、対峙するXライダーとキングダークとの寸の違いにマコは即座に笑顔を引きつらせずにはいられなかった。
 自分と対峙するXライダーに寸の違いから勝負になるものかとせせら笑うキングダークだったが、Xライダーは怯まない。目から発する赤い破壊光線や、指先からの砲弾を何とか躱すXライダーだったが、巨躯から広い視野と攻撃範囲を持つキングダークは矛先を藤兵衛達に向け出した。
 それを阻止すべくクルーザーアタックを食らわすXライダーだったが、額上部に命中したダメージが大きかったとは思えず、二撃目は平手打ちで打ち払われてしまった。クルーザーをもってしても有効なダメージを与えられないことに急所は何処か?と狼狽えるXライダー。そしてそんなXライダーの狼狽を見透かすようにキングダークは自らを無敵・不死身と大言した。

 苦戦するXライダーはとにかく懐に入り込まんとしてジャンプ一番、キングダークの左角根元に掴まると左拳で眼球を殴りつけた。しかしこれも然したるダメージを与えるには至らず、振り解かれて地面に叩きつけられたXライダーにキングダークは追い打ちとばかりに冷凍ガスを浴びせた。
 だが、これがヒントとなった。
 キングダークは見るからにロボットで、とても生身の生物には見えなかった。ロボットであればこいつは創造物である。Xライダーは冷凍ガスを発する口腔部から内部に潜入出来ると見て、再度クルーザーに搭乗すると口腔部から中に飛び込んだのだった(事前に「噛み砕いてやる!」と云っていたこともあって、藤兵衛達にはXライダーがキングダークに食われたように見えた)。

 狙い過たず、口腔内にクルーザーを残してXライダーは内部への潜入に成功した。だが、作られたものである以上そこに対する用心ぐらいはあったのだろう。まずは機銃掃射がXライダーを出迎え、中には何人もの戦闘工作員達がいた。
 場内アナウンス(?)は体内の者達にXライダーを打つよう命じ、自らは全東京を破壊すると宣言。コントロール室を目指してキングダークの体内を彷徨うXライダーを、毒ガスを初めとする罠や、幾つもの降りてくるシャッター、構造を利用して不意打ちを仕掛けて来る戦闘工作員達が立ちはだかった。
 だが、それ等はXライダーの進撃を鈍化させるだけで止めるには至らなかった。何より、キングダークの外装の鉄壁さに比べて、内部の隔壁は脆過ぎた(苦笑)。そして遂にXライダーはコントロール室に飛び込んだのだったが、そこに待っていたのは異形の人物だった。

 コントロール室に鎮座していたその人物は、頭髪が一本もない極度に肥大した頭部を持ち、目の周りと口腔部が赤いことを除けば体色は白一色だった。そして巨頭のあちこちからコードが伸び、サイドにあるコンピューターのようなものに繋がっていた。
 何者かと誰何するXライダーに、異形の人物は「儂の名は呪博士。そしてお前の父親の親友。」と名乗った。「父親の親友」との言及に驚いたXライダーだったが、すぐに「悪魔の天才」と呼ばれたその人物の名を父親から聞いたことがあったのを思い出した。

 更に呪博士は、「儂がGODで、キングダークは儂の体の一部分なのだ。」と述べた。  実際、キングダークの体内に呪博士がいて、呪博士の頭部がコンピューターの様な物に繋がっていて、両者の声が同じなのを見れば、「キングダーク呪博士」に異を唱える者は皆無と思われる。
 ただ、あたかも「呪博士GOD総司令」であるのかと思わせる、「儂がGOD」の台詞には多くの特撮ファンが異を唱えている。第34話でのタイガーネロとの会話から、GODにはキングダークより上の存在がいることが仄めかされていた。またにアポロガイストに対する信頼や厚遇振りはとてもキングダークと同じ人物(?)の性格には映らない。

 ここはシルバータイタンの推測なのだが、やはりGODは日本壊滅を狙う東西両大国の首脳が密かに組織したもので、万が一にも国際的にその悪巧みが白日の下にさらされない為にも、十重二十重の陣容を持ち、傀儡的な「GOD総司令」を当初用意していたのだろう。
 そして日本壊滅に協力させる日本人として白羽の矢を立てたのが、類稀な天才的頭脳を持ちつつ、その突出した才や特異性を敬遠される余り学界を中心とした世の中から爪弾きにされ、異端者扱いされた神啓太郎であり、呪博士であったのだろう。
 普通に考えれば頑固者でも愛情に溢れた啓太郎と、冷血な悪に走った呪博士が親友だったと云われてもピンと来ないのだが、恐らく呪博士も最初から悪魔だった訳ではなく、彼なりの理想を科学の世界に持っていて、その強過ぎる個性が啓太郎と馬が合う形で二人は「親友」となっていたのではなかろうか?
 そして日本壊滅を目指した数々の計画をXライダーに打ち砕かれた今、最奥部に潜んでいる東西大国の首脳はGODを放棄して、一連の行動を隠蔽したが、スケープゴート的に残された呪博士は自らの理想と世に対する恨みを捨て切れず、「GOD」=「Government Of Darkness(暗闇の政府)」の首魁として邁進する決意から、「儂がGOD」と宣ったのではなかろうか?

 シルバータイタンの推測に関する正誤はさておき、いずれにせよ眼前の呪博士は悪魔に魂を売り渡した日本の、人類の敵として討ち果たすべき対象でしかなかった。差し当たって、討たずば東京が危ない。世界征服の野望を露わにする呪博士に飛び掛からんとしたXライダーだったが、その瞬間背後の扉が開き、サソリジェロニモJr.の槍が背後からXライダーの左胸を貫いた!
 位置的に見て、槍が刺さっていたのは完全に急所だった………まあ通常の人間の心臓とカイゾーグのそれを同様には語れないが、Xライダーは苦悶の声を上げ、明らかにその動きは鈍っていた………。
 勝利を確信し、せせら笑う呪博士サソリジェロニモJr.だったが、Xライダーは渾身の力を振るって槍を叩き折ると、背後から突き出た穂先を逆用する形で、その刃をサソリジェロニモJr.の胸に突き刺し、重傷を負ったサソリジェロニモJr.はふら付きながら呪博士を庇う様にXライダーとの間に立った。
 次の瞬間、Xライダーはマーキュリー回路内蔵手術後全く使用していなかったライドルホイップを久々に抜き、サソリジェロニモJr.呪博士を諸共串刺しにせんと構えた。

 事の成り行きに狼狽えた呪博士は、「やめろー!!」と絶叫。それに対してXライダーは「GODの最期だ!」と叫んでとどめへの意を示した。そんなXライダーに、「儂を殺せば、キングダークは爆発する……お前も死ぬぞ!」と告げてその攻撃を防がんとしたが、Xライダーは目を赤く光らせると背後に一条の爆煙を上げ、「覚悟の上だ、二人とも死ねぇ!」と、ヒーロー的には若干問題のある台詞(苦笑)を吐き、サソリジェロニモJr.呪博士を串刺しにした。
 この攻撃でサソリジェロニモJr.は即死。致命傷を負って息絶え絶えの呪博士は今一歩のところで野望が潰えたことを悔しがり、「貴様も道連れだ!」と絶叫して頭に繋がるコードを次々と外していった。

 コードが外される度にコントロール室内に小さな爆発が散発。恐らく呪博士は自らが命を落とせばキングダークのボディが自爆するように設計していたのだろう。頭のコードは呪博士の生命反応をキングダークに伝達していたと見られ、コードが外されたことで生命反応が伝わらなくなり、キングダークのボディは自爆装置を作動させたのだろう。
 その様子は外部で遠巻きに見ていた藤兵衛達の目にも明らかで、まずはキングダークの右腕が砕け飛び、ついで首がすっ飛んだ(←危うく藤兵衛達に当たるところだった……)。そして呻き声を上げながらふら付く様に歩いていたキングダークはその身を一つの建物にもたれさせると爆発・四散した。

 かくしてGODは滅亡した。
 だが、キングダークの体が砕け散ったことで、藤兵衛達の目にはその中に潜入していたXライダーもまた最期を遂げたように映った。失意と悲しみに暮れてCOLに戻って来た藤兵衛・チコ・マコは敬介を想って肩を落としていたのだったが………程なく藤兵衛はカウンターに藤兵衛宛の置手紙があるのに気付いた。
 封を開き、文面に目を通していた藤兵衛だったが、やがてその顔には見る見る生気が甦って来た。そう、手紙の差出人は敬介で、「生きてるぞ!」という藤兵衛の叫び声を聞いて弾かれるようにカウンターから立ち上がったチコとマコの顔にも生気が甦っていた。

 文面には、
 おやじさん、チコ、マコ
 先輩の仮面ライダーと同じように
 俺も又、新しいたたかいのために旅に
 出ます。
 Xライダーの名をはずかしめない活躍
 を期待して下さい。
 いつの日か又必ずもどってきます。
 それまで さようなら。

神啓介

とあった。

 最後に野暮なことを少し触れるが、名前のところに「神啓介」とあることから、自分の名前の漢字すら間違えていることを指して「神敬介おバカ」説を唱える者もいれば、「「神啓介」が正しい表記」説を唱えるファンもいる。
 これに対し、シルバータイタンは「置手紙代筆」説を唱えたい。GODを壊滅させた神敬介は文面にあったように先輩仮面ライダー同様、新たな戦いの旅に出た訳だが、別れは辛い。自分の手でCOLまで運べば藤兵衛達と鉢合わせ、旅立ちを止められたり、別れが辛くなったりする可能性が高い。
 それ故、敬介は様々な事件を通じて知り合った第三者に代筆と配達を託したと推測している。そしてその第三者は恐らくは子供で、それゆえ文面に平仮名が多く、「けいすけ」の漢字表記を、敬介の父の名が「啓太郎」であることから、「啓介」と誤認したのではあるまいか?
 深読みも良いところかもしれないが(苦笑)。

 ともあれ、仮面ライダーX・神敬介が生きていたこと歓喜の声を三人が挙げる中、敬介の声で文面が読み上げられた。そして笑顔でバイクを走らせる敬介の脳裏に戦いの日々が主題歌「セタップ!仮面ライダーX」をBGMにフラッシュバックした。
 父と共に殺され、瀕死の父の手で改造された運命の日(第1話)、最愛の恋人・水城涼子を失った悲劇の瞬間(第8話)、倒した筈の好敵手・アポロガイストとの再会(第16話)、恩師・立花藤兵衛との邂逅を遂げるきっかけとなったキクロプスXキックで討ち果たした時(第5話)、クルーザーを駆ってアトラスの中地球を弾き返した日の事(第8話)、後半の必殺技を担った真空地獄車の炸裂(第32話)が流れ、そして何度も取ったライドルホイップで「X」の字を描いた決めのポーズを最後に回想は終わった。そして最後に手紙の最後の部分が繰り返され、以上をもって『仮面ライダーX』第35話は終結したのだった。


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令和五(2023)年六月一八日 最終更新