仮面ライダーX全話解説
放映データ
- 製作/毎日放送・東映
- 全35話
- 1974年2月16日〜1974年10月12日
スタッフ
- 原作/石ノ森章太郎
- プロデューサー/平山亨、阿部征司
- 監督/折田至、内田一作、田口勝彦、山田稔
- 脚本/長坂秀佳、伊上勝、鈴木生朗、村山庄三、島田真之、平山公夫、中瀬当一
キャスト
神敬介/仮面ライダーX(速水亮)、水城涼子・霧子(美山尚子(二役))、立花藤兵衛(小林昭二)、チコ(小板チサ子)、マコ(早田みゆき)、神啓太郎(田崎潤)、アポロガイスト(打 田康比古)、GOD総司令(声・阪修)、キングダーク(声:和田文夫)、ナレーター(中江真司)
主題歌 オープニング エンディング 「セタップ!仮面ライダーX」 「おれはXカイゾーグ」 作詞 石森章太郎 八手三郎 作曲 菊池俊輔 菊池俊輔 編曲 菊池俊輔 菊池俊輔 歌 水木一郎 水木一郎
仮面ライダーXについて
第一期仮面ライダーシリーズの第三作目。世界観としては過去作である『仮面ライダー』、『仮面ライダーV3』に続き、『仮面ライダーアマゾン』以降のライダー作品とも同一の世界であるが、第4話までは前作関係者は登場せず、悪の組織であるGODもショッカーやデストロンとの関連が作中にて語られることは無かった。
前作『仮面ライダーV3』とは一線を画す形で始まり、仮面ライダーXは本来深海開発用の改造人間―カイゾーグとして主人公・神敬介の父である神啓太郎教授が開発した技術でもって(蘇生の為に止む無く)改造された。
敵対組織であるGOD機関も、世界征服を目指した従来の悪の組織とは異なり、日本壊滅を目的としていた。その為、作戦スケール自体は前作よりかなり小さかったが、直接的な破壊を目的とした暗躍が多く、身近な脅威としては過去の組織に引けを取っていなかった。
また悪の組織を構成する怪人も、これまでの組織が人体に動植物の能力や機械性能を組み込むタイプの改造人間を駆使していたのに対し、GODではギリシャ神話の英雄・神々・怪物をモチーフとした改造人間を駆使し、後半では歴史上の悪雄の子孫に動物の能力を組み込むタイプの改造人間を駆使し、同一組織が全く組成概念の異なる改造人間軍団を率いていたのも稀有な例だった。
他にも万能武器・ライドルを持つことで武器を常用する初めての仮面ライダーともなった(『仮面ライダー』では、戦闘の途中で敵の武器を奪って攻撃に使用することはあっても、元人間であることのこだわりから、止めは自らの肉体によるものとすることをモットーとしていた)。
第5話より立花藤兵衛がレギュラー出演し始め、『仮面ライダー』以来の世界と同一舞台であることが明らかにされ、第27話、第28話、第33話、第34話では仮面ライダー2号、仮面ライダーV3も帰国。
かように新旧織り交ぜた様々な試みが為された作品だったが、過去二作ほどの人気を得るには及ばず、「TV局の腸捻転」により端から全24話と決められていた『仮面ライダーアマゾン』を例外とすると、昭和シリーズでは最短となる全35話で完結した。ただ、これには「腸捻転」が同作品にも影響していたと見る向きもある。
尚、作中では恋人同士でありながら主人公・神敬介と初期ヒロイン・水城涼子は結ばれなかったが、両俳優は放映終了後に交際・結婚に至り、二人の間に生まれた香坂優介氏は『仮面ライダーアギト』のオーディションを受けたが、最終選考を前にして速水氏の子息であることがバレ(苦笑)、親子で主役を演じることを厭うた制作陣の意向で当選はならなかった等、様々なエピソードを放映後も残し続けている。
「仮面ライダーX」主な登場人物
神敬介/仮面ライダーX(速水亮)
本作の主人公。世界を股に掛けた船乗りになるのが夢の大学生だったが、沖縄の水産大学から東京に帰郷した折にGODの襲撃を受ける。母を早くに亡くし、父・啓太郎の男手一つで文武両道の熱血漢に育てられながら、共に頑固な性格が祟って互いに素直になれない。
GODの襲撃と父の苦境を受けて協力しようとした矢先に婚約者の水城涼子に裏切られ、父と共にGODに殺されるも、瀕死の父が最後の力を振り絞って改造手術を施したことでカイゾーグ・仮面ライダーXとなる。
当初は父を失い、恋人に裏切られた衝撃で厭世的でもあったが、立花藤兵衛と出会い、父に代わって薫陶を受けたことや、好敵手・アポロガイストとの死闘、先輩ライダーの教えを受けて心身の成長を遂げる。
移動・戦闘に乗用する専用マシンはクルーザーで、水陸両方の走行が可能で、短時間なら飛行も可能。
外観は、主題歌に歌われている様に、マスクを初め銀のカラーリングを基調とし、マフラーと手袋・ブーツは黒、ガードラングと呼ばれる特殊超合金ハイスチール製のリング状の外骨格は赤で、主題歌にも反映されている。
最初はレッドアイザーとパーフェクターで仮面ライダーXにセタップ(set up)=変身していたが、第28話で風見史郎からマーキュリー回路を内蔵する手術を受けてからは変身ポーズを変え、掛け声も「大変身」となる。
必殺技はXキック、真空地獄車。万能武器・ライドルを常用し、ライドルはホイップ(フォイル状)、スティック(棒状)、ロープ(縄状)、ロングポール(竿状)に変形可能で、電気を流しての攻撃も可能。
水城涼子・霧子(美山尚子(二役))
第1話から第8話まで登場。双子の姉妹で、姉の涼子は神啓太郎教授の助手を務めていたことで敬介と知り合い、将来を誓う仲となっていたが、GODの密かに通じていて神父子を裏切る。
その後もGODの手先として様々な形で敬介の前に立ちはだかったが、実際には国際秘密警察の一員としてGODに対抗する為、妹・霧子とも連絡を取り合っていた。だがGODの信を得る為に改造手術を受けることを余儀なくされ、第8話にて子供を庇って致命傷を負い、敬介に真相を話した後に体内爆薬を起爆されて爆死した。
妹の霧子はその存在を敬介にもGODにも伏せられ、姉と連絡を取り合い、敬介をサポート。婚約者に裏切られたことに打ちひしがれる敬介を時に叱咤し、時にGODの罠に落ちた敬介を救出したりしたが、第8話でアトラスの矢から敬介を庇って殉職した。
立花藤兵衛(小林昭二)
第5話から登場。『仮面ライダーV3』完結後、コーヒーショップ・COLのマスターになっていたが、世界レーサーを育てる夢は今も健在。第5話で園児集団失踪事件を通じて敬介と知り合い、時に敬介の師として、時に敬介の父として厳しくも、温かく敬介をサポート。
過去作同様、時には戦闘工作員との格闘も辞さず、GODの人質となることもしばしばだったが、敬介達の足手まといにならない為に自ら命を絶とうとする自己犠牲精神も相変わらず。
チコ(小板チサ子)
第16話から登場。城北大学の大学生で、偶然GODの作戦司令を知ったことでマコともどもその命を狙われ、敬介・藤兵衛に匿われたことでなし崩し的にCOLのアルバイト・ウェイトレスに。
人質要因となることもしばしばで、当初はGODに狙われ続けることとなった我が運命を嘆く風もあったが、後には歴代ライダーに負けない敬介のサポート役を自認していた。
マコ(早田みゆき)
第16話から登場。城北大学の大学生で、城北大学の大学生で、偶然GODの作戦司令を知ったことでチコともどもその命を狙われ、敬介・藤兵衛に匿われたことでなし崩し的にCOLのアルバイト・ウェイトレスに。
人質要因となることもしばしばだったが、チコに比べて楽観的で、風邪一つ引いたことのない健啖家。チコ同様歴代ライダーに負けない敬介のサポート役を自認していた。
神啓太郎(田崎潤)
第1話・第2話に登場(第2話は声のみの出演)。敬介の父で、城北大学の教授。海洋科学と人間工学の世界的権威でその卓越した頭脳と研究成果をGODに求められたが断固として拒否したことで殺されることとなった。
自分の研究が悪の組織に狙われることを前々から予測していたためか、「科学者にも腕っ節が必要だ」として、敬介を幼い頃から文武両面で鍛えていた。
その頑固な性格から学会では変人扱いされて孤立し、敬介とも親子喧嘩が絶えなかったが、互いに素直になれないだけで、互いに大きな愛情を抱いていた。
GODの襲撃で致命傷を負い、共に撃たれた敬介を瀕死の状態で仮面ライダーXに改造。術後、死亡したが、自らの全人格・全知識を海底基地・神ステーションにインプットして敬介をサポートする段取りを整えていた。だが、第2話で改造人間となった敬介にとって神ステーションが要らざる依存や甘えを生む不要のものと判断して、ステーションを自爆させ、完全にこの世の存在ではなくなった。敬介は深く悲しみながらも、最後の愛情に深く感謝した。
アポロガイスト(打田康比古)
GOD秘密警察第一室長。第8話でその姿を見せ、第9話より登場。肩書通り、秘密警察の隊員を率い(単独行動の方が多いが)、怪人達の任務遂行を監視し、時に叱咤し、稀にサポートした。
人間態は白のスーツを纏った潔癖症っぽい振る舞いの気障な男で、怪人達はアポロガイスト本人を、そしてそれ以上に秘密警察の存在を恐れていたが、基本監視役のアポロガイストを疎ましく思い、大半の者は敬意を払っていなかった。
役立たずや裏切り者に冷徹な悪の組織にあって稀有なほど総司令からの信任は厚く、怪人達の生殺与奪権を託され、総司令の正体を見たことがあるのは彼一人と云われていた(真相は不明だが)。
第14話にてXライダーに決戦を挑み、戦死したが、総司令はその死を惜しみ、第15話にて再生改造手術を行い、第16話にて再生アポロガイストとして復活。武装を強化させたが、改造手術による余命は一ヶ月しかなく、第21話で体の不調を感じ、Xライダーに最後の戦いを挑んで戦死した。
勿論、組織に対する忠誠心も、任務に対する忠実さも強く、二度の戦死に際してもXライダーを道連れにすることを目論み、Xも彼を好敵手と認め、その死を惜しんでいた。
GOD総司令(声・阪修)
GOD機関の首領で、第1話〜第21話まで声のみ登場。様々な設置物(カラーコーン、リカちゃん人形、胸像、祠、etc)を通じて怪人達に指令を与えていた。怪人達は指令を与えられる一方で、会話をしていたのはアポロガイストのみ。
アポロン宮殿の地下深くにその身を潜め、直にあったことがあるのはアポロガイストのみと語られていたが、第22話のキングダーク編に入るとその名前も出なくなった。キングダークの頭脳である呪博士が総司令その人とする意見もあるが、多くの特撮ファンはその説に懐疑的である。
キングダーク(声:和田文夫)
第22話から登場。GOD悪人軍団を率いる大幹部にしてシリーズ初の大巨人キャラ。普段はうつ伏せ状態で悪人軍団に指示を出しており、当初はその巨体を動かす為には極分子復元装置(RS装置)が必要とされたが、この設定はいつの間にか消滅し、第31話より自らの力で立ち上がり、その巨体をXライダー達の前に見せることもあった。
しかし最終回まで直に暴れることは無く(念力の様なもので落石を呼んだことはあった)、いざ暴れ出すと「鋼鉄の巨人」と称されたのに恥じない膂力と頑強さでXライダーの攻撃をものともしなかったが、最終的には口腔より体内に侵入され、その頭脳にして正体であった呪博士が倒されたことでその身は爆発・四散した。
呪博士は、敬介の父・神教授の親友で、「悪魔の天才」と称されたその存在を敬介も知っていた。彼は「儂がGOD」と称していたことで、GOD総司令その人と見る向きもあるが、前述通りこれには異を唱える声が多い。
悪の組織考・「仮面ライダーX」編
GOD機関とは
正式名称・「Government Of Darkness」=「暗闇の政府」で、その頭文字を取って「GOD」と呼ばれれる。尚、作中では正式名称が出たことは無かった。
東西両大国の首脳が日本を滅ぼすべく密かに手を握って作った暗黒組織とされるが、只でさえ謎が多く、その実態が完全に解明されることのない悪の組織にあって、GODは首領、組織構成、歴代悪の組織との関連等において謎が多い。
番組前半ではギリシャ神話に登場する英雄・怪物・神をモチーフとした改造人間集団である神話怪人軍団がGOD総司令の命令を受けて破壊工作に従事し、それを秘密警察第一室長アポロガイストが監視・監督、時にサポートしていた。
番組後半では、歴史上多くの人々の血を流した悪人(独裁者・怪盗・暴君)の子孫に動物の能力を受け付けた改造人間集団である悪人軍団が極分子復元装置(通称:RS装置)の設計図を巡ってその奪い合いとそれに伴う要人誘拐・暗殺等がストーリーの肝となった。
放映当時の「東西両大国の首脳」と云えば、アメリカ大統領リチャード・ニクソン、ソビエト連邦書記長レオニード・ブレジネフが該当するが、さすがに内容的にヤバすぎる為か(苦笑)、具体的な国名や人物名は出なかった(苦笑)。
それゆえ、組織の陣容にも謎が多く、原水爆を撃ち込まれてもビクともしないアポロン宮殿並みのアジトを世界各地に持つ国際規模の組織でありながら、海外での暗躍はほとんど語られず(劇場版では歴代ライダーがニューヨーク、パリ、モスクワ、タヒチで戦ってはいたが)、GOD総司令はキングダーク編以降名前すら登場しなくなった。
第34話でのキングダークの台詞から、彼以上の存在があることが仄めかされている一方で、キングダークの正体とも云える呪博士は自身がGODであるとしていたが、度々前述した様に多くのファンがこれに異を唱えている。
歴代悪の組織との関連も語られず、『仮面ライダーストロンガー』最終回にてGODもまたショッカーから続く歴代悪の組織同様、デルザー軍団大首領に裏で糸引かれていたとされ、Xライダーは大首領の声に対して、「GOD!」と叫んでいたが、両者の担当声優は異なる(苦笑)。
放映リスト及び解説
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令和五(2023)年六月一四日 最終更新