3.最強戦士としてのゾフィー

3−1.颯爽と登場した雄姿
 恐るべき宇宙恐竜ゼットンの猛攻を受けて、ウルトラマンは大地に倒れ伏した。云うまでもなく、『ウルトラマン』最終回のワンシーンである。
 この後、ゼットンは岩本博士(平田昭彦)が発明したペンシル爆弾(別名:無重力弾)を用いた科学特捜隊の手によって討ち取られ、ウルトラマンを迎えに赤き球体に乗ったゾフィーが二つの命を持ってやって来たのは今更ここに書くまでもない有名な話だが、実は当初、準備稿ではゼットンゾフィーが倒すことになっていた。

 結局、ウルトラマンハヤタ(黒部進)を助けに雄姿を現したゾフィーだったが、その戦闘力を見せることはなく、ウルトラマンを連れてM78星雲へと帰り、『帰ってきたウルトラマン』の最終回でも名前が出ることでM78星雲にて触角宇宙人バット星人の連合艦隊と戦っていたであろうことを匂わせていたが、その戦争は2011年3月現在、映像化されておらず、僅か1週間後の『ウルトラマンA』にてウルトラマンウルトラセブン帰ってきたウルトラマンウルトラマンAを率いて地球にやって来た所を見ると、大した戦争じゃなかったのかなあ?(苦笑)
 この時もウルトラ兄弟はAの地球常駐開始を見守ったぐらいで、ゾフィーを初め、誰もこれと云って戦わなかった。

 だが、ようやくゾフィーにも最強戦士としてその戦闘能力を披露する時が来た。
 それは『ウルトラマンA』の第5話で、地底エージェントギロン人の罠に落ちたAからのウルトラサインを受けたゾフィーはウルトラコンバーターを携えて地底に閉じ込められたAとTAC隊員達を助けに来た。
 ウルトラコンバーターからのエネルギー充填を受けて地底を脱出したAは、ゾフィーがTAC隊員の乗ったTACビル救出を優先したため、一時、ギロン人大蟻超獣アリブンタのタッグに単独で立ち向かわねばならず、苦戦を強いられた。
 しかしゾフィーが駆け付け、体当たりとチョップでギロン人アリブンタAから引き離し、マン・ツー・マンの戦いになるや、たちまち形勢は逆転した。

 戦闘の詳細を追うと、Aは単独ではギロン人アリブンタには苦戦を余儀なくされた。そしてゾフィーの加勢を得て、マン・ツー・マンになると忽ち優勢に転じ、最後にはゾフィーAがそれぞれの相手をヘッドロックに捕え、互いの頭部を鉢合わせることで決着がついた。ギロン人アリブンタはしばし頭部を痙攣させた後、目から眼光が消え、大地に突っ伏した。ただでさえ一対一ではウルトラ兄弟は戦いを優位に進めたが、それがタッグとなると、光線技さえ必要としなかった。
 これがゾフィーの加勢と同時に起きたことを考えると、ゾフィーは戦闘能力だけではなく、統率能力にも優れていることが窺えるのである。

 第13話、第14話ではこれといった戦闘を見せなかったが、技においてその片鱗を強烈なインパクトで持って披露した(詳細後述)。
 第23話では戦わず、第26話では地獄星人ヒッポリト星人の前に実力を発揮できないままに不覚を取ったが、第35話では戦わず、以後最強戦士としてのゾフィー『ウルトラマンA』においてはその雄姿を見せることはなかった。

 続く『ウルトラマンタロウ』では、第18話の大熊山における対火山怪鳥バードン戦、第33話・第34話の東京近郊における対極悪宇宙人テンペラー星人戦、第40話の海王星における対暴君怪獣タイラント戦で戦闘シーンを見せるが、残念ながら最強戦士としての見せ場ではなかった。
 というのも、バードンタイラントはさすがに相手が悪く、テンペラー星人との戦いにおいてはウルトラマンタロウの成長を促して敢えて手を出さなかったり、他の兄弟達と共同で戦ったり、で展開的にゾフィー個人の戦闘能力が目立つシチュエーションに無かった。

 また、ゾフィーが不覚を取った2体を倒したタロウこそ「最強戦士」とする意見もあるが、シルバータイタンはこれを支持しない。タロウバードンタイラントに勝ち得たのは、ウルトラの母の助力や、ゾフィーを初めとするウルトラ兄弟との連戦で怪獣の体力が消耗していたとの見方があり、対テンペラー星人戦にて、最終的には単独でテンペラー星人を倒す力を発揮したタロウも、当初のウルトラ兄弟・テンペラー星人・地球人達が下した評価は「最強戦士」には程遠いものだった。
 ウルトラの父の実子としての潜在能力を問うなら、タロウも素質的には「最強戦士」足りうるかもしれないが、少なくとも精神面においてはまだまだ未熟だったと云わざるを得ないものだった
 不覚を取ったとはいえ、戦った相手や、その相手が最後はあっさりとタロウに敗れた消耗度からも、(些かこじつけがあるのは認めるが)「最強戦士」としてのゾフィーの立場は揺らがないと思う。

 そして『ウルトラマンレオ』の第38話・第39話に登場した際のゾフィーだが、暗黒宇宙人ババルウ星人の姦計に嵌って、ウルトラ兄弟とレオ兄弟が戦うという悪夢が展開されたが、よくよくみるとこの時のゾフィーは指揮官に徹して、戦っていない
 この時点で地球は迫りくるウルトラの星の引力を受けて、天変地異が続発していた。ウルトラセブン=モロボシ・ダン(森次晃嗣)の指導を受けてパワーアップしたウルトラマンレオはウルトラ兄弟2人を同時に相手にしても互角以上、という恐るべき戦闘力を発揮したが、そんな叩き上げの強戦士・レオとウルトラ兄弟の「最強戦士」たるゾフィーが本気で戦えばその余波を喰らった地球がもっと大変なことになるのをゾフィーは悟っていたのだろうか?
 これはシルバータイタンの仮説に過ぎないのだが、もし、ゾフィーがそこまで考えていたのであれば、単に戦闘に優れているだけの「最強戦士」と云う訳ではないことがうかがえて興味深い。

 そんなゾフィーが「最強戦士」としてのカラーを色濃くするのは何と云っても『ウルトラマンメビウス』であろう。
 宇宙警備隊の大隊長となったウルトラの父と、警備隊教官となったウルトラマンタロウとの間で、ゾフィーは人知れず、「最強戦士」としての能力を発し続けた。
 本編では主にウルトラマンヒカリや、宇宙警備隊の共感を務めるウルトラマンタロウとの絡みが多く、最終回を除いて主人公であるウルトラマンメビウスと絡まない。
 視点を変えると、メビウスと絡まないからこそ、主人公特権に妨げられることなく、ゾフィー最強戦士ぶりを発揮していると云っても過言ではない。

 主人公であるメビウスや、メビウスが活躍する舞台である地球人の目に留まらない所でゾフィーはその戦闘能力を遺憾なく発揮している。
 時系列的に云って最初は『ウルトラマンメビウス外伝ヒカリサーガ』のSAGA2(第18話の直前)では宇宙大怪獣ベムスターに苦戦する光を援護し、勝利に導いている。過去にベムスター『帰ってきたウルトラマン』『ウルトラマンタロウ』でウルトラ兄弟・防衛チームを苦戦させてきたのを観てきた特撮ファンにはベムスターの強さは周知(その割には『大怪獣バトル ウルトラ銀河伝説 THE MOVIE』カプセル怪獣ミクラスに負けているが)だろう。
 そしてそれを破るのに大いに貢献したゾフィーの強さも推して知るべし、であろう。

 また劇場版ではタロウと供にメビウス及び4兄弟の危機に駆け付け、神戸港を舞台に究極巨大超獣Uキラーザウルス・ネオの打倒に協力し、他の兄弟が触手の切断に空中を舞う中、ゾフィーはM87光線で持って大ダメージを与えていた。
 最終的にはゾフィー以下5兄弟がメビウスと合体したメビウスインフィニティーのコスモミラクルアタックが決着をつけたが、単体の力でUキラーザウルス・ネオに最も強いダメージを与えたのがゾフィーであることは比較適用に画面上で推察出来る。

 そして回想シーンではあるものの第42話ではサコミズ隊長(田中実)が宇宙を亜高速飛行していて異星人の円盤群に襲撃された際に、たった一人で円盤群を一蹴し、ゾフィーが長期に渡って単独で地球を数えきれない数の侵略者から守り続けてくれていたことを告げていた。
 孤独な宇宙の度におけるゾフィーの心意気がサコミズに勇気付けた影響は大きく、最終回三部作で自分がGUYS総監と同一人物であることを明かしたサコミズは地球人に侵略者に屈しない勇気を持つことをTV上で訴える際に、暗にゾフィーが地球を守ってくれていたことを告げた。
そして最強の敵である宇宙大皇帝エンペラ星人との最終決戦において、ゾフィーは旧友・サコミズに共闘を呼び掛け、一体化するやM87光線を放ちつつ、フェニックスブレイブ化したメビウスに加勢し、その打倒に成功した。
 時には不覚を取ったこともあるゾフィーだが、戦ってきた相手が相手であることに注目すれば、勝敗に関わらず、ゾフィーが如何に過酷な戦いを連戦し、如何にその打倒に貢献して来たかを観れば、「最強戦士」との断言は厳しいかもしれないが、「最強戦士の一人」に今後も長くエントリーすることに疑いの余地はない。


3−2. 他の兄弟に無い特殊能力
 光線技や格闘能力に秀でているだけでゾフィーが「最強戦士」となっているのではない。身体能力の一つ一つを見れば、ゾフィーに勝るウルトラ戦士は何人でもいる。しかしそれ以外の特殊能力となるとゾフィーに及ぶものは極端に少ない。
 特殊能力でゾフィーに勝るのはウルトラマンキングウルトラの父ぐらいではあるまいか?

 実例を挙げれば、『ウルトラマン』の最終回でウルトラマンハヤタを分離した力等は、道具を用いたとはいえ、その性能を考えれば、相当なテクノロジーなり、能力を要したのではあるまいか?
 また『ウルトラマンA』では南夕子(星光子)をあっさり異次元に送ったり、北斗星司(高峰圭二)の夢の中に現れたり、他の兄弟と共同とはいえ、Aのゴルゴダ星脱出やスペースQ伝授にもその陣頭指揮を執っている。
 そして『ウルトラマンタロウ』ではバードンに敗れたタロウをウルトラフロストで遺体を凍結し、ウルトラトゥインクルウェイで光の国に送り届ける、という器用なこともやってのけている。
 これらは補助技で、直接怪獣・超獣・宇宙人を倒したものではないが、ウルトラマン以下の弟分達には見られない技であることに注目したい。
 単に戦闘に強いだけで真の「最強戦士」にはなれないことが分かる。


3−3.最強の技・M87光線
 再放送とはいえ、ゾフィー本人ではなく、彼のエネルギーを奪った異次元超人エースキラーによって放たれたものとはいえ、『ウルトラマンA』第14話において、初めてM87光線の威力を見たときのインパクトは忘れられないものがある。

 ウルトラ兄弟から奪ったエネルギーを利用してエースキラーが放つスペシウム光線、エメリウム光線、ウルトラブレスレッドの連打に何とか耐えたロボットエースが、M87光線の前には全く耐え切れずに木っ端微塵に砕け散ったのである。

 それまでの光線技がロボットエースを消耗させていたとも取れなくはないが、あのままスペシウム光線、エメリウム光線、ウルトラブレスレッドの連打を食らい続けたとしても、ロボットエースが木っ端みじんに砕け散ったとは考え難い。ゾフィーのM87光線の破壊力はウルトラ兄弟の光線技の中でも明らかに群を抜いていた。
 尚、この『ウルトラマンA』第14話において、兄弟の故郷であるM78星雲は何故か終始「 M87星」と呼ばれ続けていたが、ゾフィーのM87光線が関連していたかどうかは定かではない(笑)。

 これ程の力を持つM87光線だから、そう簡単に放たれなかった。正直、この技がしっかり放たれていれば、バードンタイラントにも不覚を取らなかったのではなかったか?と思われてならない
 まして、最終的にメタリウム光線一発で仕留められたヒッポリト星人は云うに及ばずだろう(笑)

 M87光線が滅多に放たれなかった理由は「威力の凄さに誤爆して地球や他の星そのものを壊すことでも恐れたか?」と云う強引な推測をするしかないのだが、放たれた相手はUキラーザウルス・ネオエンペラ星人のように、恐らくはこれ程の技でも駆使しないと倒せそうにない強敵揃いである(「揃い」と云う程数多くないけど…)
 またM87光線は単体に放つ破壊力としてだけでなく、前述のサコミズの回想にもあるように、円盤群を一掃する等、広範囲の掃討にも優れた力を発揮していた。

 とんでもない強敵が相手でもなければストーリーを崩壊させかねない超必殺技・M87光線の使い手であることを持ってゾフィー最強戦士とするのは飛躍し過ぎであろうか?



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令和三(2021)年六月一一日 最終更新