5.代表としてのゾフィー

5−1.代表を振られる立場
 肩書で見れば、「ウルトラ兄弟の長兄」にして、「宇宙警備隊隊長」でもあるのがゾフィーである。つまりはウルトラ兄弟及び宇宙警備隊を1つの団体と見た時、自然とゾフィーは「代表」の役割を振られることになる。

 勿論、この「代表」が持つ言葉の意義は広い。「長兄」は「兄弟の代表」となりえ、「警備隊長」は「警備隊の代表」となるのは必然である。
 また「代表」と一言でくくっているが、その権限も千差万別である。一般社会でも「代表取締役」や、大規模な組織の「代表」となれば権利・役得が大きい一方で責任・義務も重大である。
 だが、学生のクラス代表や、組織でも下っ端が集まった際の代表の権限は小さく、下手すりゃ「傀儡」で、若き日の道場主が何らかの「代表」になった時は間違いなく傀儡…………道場主から虐待されそうなので、話を本筋に戻します!

 ここで注目すべきは、そもそもゾフィー『ウルトラマン』におけるウルトラマンや、『ウルトラセブン』におけるウルトラセブンや、『ウルトラマン80』におけるウルトラマン80の様に、一番組にて単独で戦う主人公として活動するだけの存在なら「代表」として活躍することは無く、ゾフィーが兄弟や宇宙警備隊の「代表」としての顔を見せることなく、偏にウルトラシリーズが長い歴史を持つ故の産物と云えよう。

 これは、云い換えれば、ウルトラ兄弟が怪獣・超獣・円盤生物といった交渉不可能な敵対的存在、または交渉の余地なき侵略的・通り魔的宇宙人を相手にするだけなら、ゾフィーは「代表」と云う立場に立つことは無い、ということである。
 つまりは友好的宇宙人(例:地球人・L77星人)・邪悪且つ敵対的でも交渉能力を持つ宇宙人がいて、そこに光の国や宇宙警備隊の「代表」としてスケールの大きな、星一つのレベルで納まらない重要任務を担う存在だからと云える。
 ウルトラシリーズは基本、「正義のヒーローVS怪獣」を主軸としたドラマである。ましてや主人公としての立場を持たないゾフィー代表としての側面を見せるシーンはそう多い訳ではない。
 しかしそこには数少ない場面だからこそ、他の兄弟には持ち得ないゾフィーのアイデンティティーがあることを見逃してはならないだろう。


5−2.代表として接してきた相手
 云うまでも無くゾフィーの初登場は『ウルトラマン』の最終回で、宇宙恐竜ゼットンに敗れたウルトラマンを迎えに来た時である。この時点のゾフィーはまだ宇宙警備隊隊長ではなく、ウルトラマンを助けたことで隊長に昇格したとされているが、シルバータイタンは地球に向かった段階で隊長就任は内定したいたのではないか?と睨んでいる。
 何せ、宇宙警備隊は100万人の陣容を誇っている。そして隊長と大隊長以外には役職の存在がはっきりしていない。あ、恒点観測員340号とその上司という良く分からん役職があったよな(笑)。

 いずれにしても100万人に指揮出来るという物凄い権限の役職がたった1つの手柄で舞い込むとは思えず、地球防衛を科学特捜隊が担っていた時代にたった一人で宇宙空間にて秘かに地球を守っていたゾフィーサコミズ(田中実)が邂逅していたシーンからも、宇宙警備隊の中でも太陽系を守る代表としてのゾフィーの立場は内定していたと推測される。
 40年という、ウルトラ兄弟にとっては瞬きする程の時間でも、地球人にとっては二世代程変遷しかねない時間を控えて、宇宙警備隊の代表として、ゾフィーが対面したサコミズはその状況における地球人の代表だったと云えよう。

 番組で云えば『ウルトラマン』の時代から6年半の時を経て、ゾフィーはウルトラ兄弟の代表として、あるものと接した。それはウルトラタワーである。
 前週である『ウルトラマンタロウ』の第24話にて、宇宙大怪獣ムルロアによって闇に閉ざされた地球を救う為に、ウルトラの母の呼び掛けに応えて第25話にて光の国に帰還したウルトラマンタロウゾフィーの発したウルトラサインに従ってウルトラタワー前で待つ兄弟の元に駆け付けた。
 目的は地球の闇を払うウルトラベルを入手する為、ウルトラタワー内に潜入することである。ゾフィーは弟達にタワーが3万年前の宇宙大皇帝エンペラ星人との熾烈な戦いの戦勝記念物であること説明し、タワー内に潜入する為には兄弟の願いが純粋なものでなければならないことを説いた。
 一方でタワーは建造物でありながら意思を持つ存在で、ウルトラベル入手の為にタワー内に入ることを欲するウルトラ兄弟の意志が純粋なものであることを確認し、タワーの灯を消した。
 ウルトラ兄弟はウルトラオーバーラッピングによってタロウの体に他の五兄弟の肉体と命を重ねた六重体となってタワー内に潜入したが、タワー内はそこまでしても1分間しか命を保ちえない過酷な環境だった。
 恐らく、ウルトラタワーの気分次第では兄弟を拒むこと等造作も無かったことだろう。肉体的な代表は番組の主人公であるタロウが務めたが、ウルトラの歴史を語り、タワー内に兄弟の純粋な気持ちを集めて入ることの大切さを説いた、兄弟代表としてのゾフィーが担った役割はとてつもなく思いと思う。

 そしてゾフィーがウルトラ兄弟の代表としての一面を最も色濃く見せたのは『ウルトラマンレオ』の第38話・第39話だろう。
 ウルトラタワーが倒され、ウルトラキーが奪われ、M78星がコントロールを失って地球に衝突せんとする、という前代未聞の一大事に裏切り者アストラ(説明するまでもないがババルウ星人の化けた偽物である)を倒し、ウルトラキーを奪い返す為にも、ゾフィーウルトラマン帰ってきたウルトラマンウルトラマンAを率いて地球にやってきたが、ウルトラマンAが激昂する中、疑惑の渦中にあるレオ兄弟を前にして、ゾフィーは極力自らが攻撃することを戒め、指揮官に徹し、レオに対しても手出ししないことを求めた。
 そして第39話にてウルトラ兄弟とレオ兄弟の愚かな戦いを制止する為に、伝説の長老・ウルトラマンキングがその姿を現した時、まさしくゾフィーはウルトラ兄弟の「代表」として前に出てキングに握手を求め、キングもそれに応じた。

 ウルトラ戦士の対人関係や歴史やこの時の状況を考えると、このワンシーン並びに前後のゾフィーキングの言動はかなり興味深い。

 不気味に笑う偽アストラババルウ星人がウルトラキーを構え、その破壊力を知るウルトラ兄弟がうろたえる中、突如天空が曇ったかと思うと落雷がウルトラキーを真っ二つにへし折った。勿論キングの仕業である。
 結果を知る身としては、後にこのキーはレオ・(本物の) アストラによって修復され、ウルトラの星に戻されて事無きを得たから、キングがキーを折ったことに然程の問題は感じないが、リアルタイムで見ると、一刻も早くキーをウルトラの星に戻さないと地球が消滅しかねない危機的状況の中で、「何故ウルトラキーを?」と尋ねたゾフィーならずとも激しく謎だっただろうし、「キーなど問題ではない!」とのたまうキングの爺さんに対して、「大問題だ!!」と思った当時の子供達も多かったことだろう(笑)。

 つまり、このシーン、ウルトラキーをへし折ったキングの不可解な行為に対し、糾弾の声や非難の声を挙げまくってもおかしくなかったのに、まずゾフィーは握手を求めているのである。
 恐らく、ゾフィーを始め、ウルトラマン帰ってきたウルトラマンA達もこの時初めてキングと顔を直に合わせたのだろう。
 番組的にはウルトラマンキングの登場は第26話以来の2回目で、気を失っていたレオを除けば、モロボシ・ダン(森次晃嗣)だけが二度目の御尊顔拝謁となる。そしてその第26話でキングは「M78星雲でもL77星でも「必ずどこかにいる」と云われながら誰も見たことのない存在」と紹介されていた。恐らくは帰ってきたウルトラマンA辺りでは恐縮して、それこそゾフィーでもなければまともに対応できなかったのではなかろうか?

 そして当のゾフィーは、ウルトラ兄弟の長兄にして代表として伝説の長老に自然と敬意を払い、未曾有の危機に即座な対応を行う為の場面転換に繋げる為にも、キングに握手を求めたのだろう。
 一段落を付けた彼は即座にキングを詰問(?)している。キングは前述の一喝(笑)の後、ウルトラ兄弟とレオ兄弟の戦いが極めて愚かな行為であることを諭し、洗礼光線で持って、実の兄であるレオにも見破れなかった偽アストラ=ババルウ星人の正体を暴くと、悪魔の正体に激昂する若きウルトラ兄弟を押し留め、星人追討よりももっと大切な事があることを諭し、ウルトラ兄弟に光の国への帰還を促し、ゾフィー以下三兄弟は一も二もなくそれに従った。
 これも推測だが、この時、ゾフィーがいなかったら、弟達を統率する者がいなかったら、若い二人などは周章狼狽するか、感情に任せてレオ兄弟やババルウ星人に対する報復を止められなかったのではないだろうか?

 そして常識で考えるなら、これ程の未曽有の危機にウルトラの父が行動らしい行動を起こしていないことにはかなりの謎が残る。
 推測ばかりで恐縮だが、キングウルトラの父から見れば、この未曽有の危機にしても、若きウルトラ戦士だけで充分対処可能、または本当に能力に余る際も自分達が出張ればすぐに片付くこと、と見られていたのではなかろうか?
 となると、ウルトラ兄弟及び宇宙警備隊の代表として事の解決に当たっていたゾフィーにとってこの一大事さえも試金石だったのかもしれない。ゾフィーにとっては代表として、とんでもない難題が降られたわけだが、その結果、レオアストラと云う後々にも大切な二人のウルトラ兄弟を加えることとなったのだから悪い賭けではなかっただろう。

 後々の事だが、これ程の難局を乗り越えてウルトラ兄弟・宇宙警備隊の代表を務めるゾフィーなればこそ、ウルトラマンヒカリの処遇・エンペラ星人の追討・タロウメビウス間の地球常駐問題にもウルトラの父は余計な口を挟まなかった、と見るのは穿ったものの見方だろうか?

 戦士としての、長兄としてのゾフィーも魅力的だが、代表として見た際の彼の成長もまた、長いウルトラの歴史においては教務深く、魅力的なものがあると云えよう。


5−3.ウルトラファミリー、立場の変遷
 長くウルトラの父の本名は不明だった。まさかバカボンのパパみたいに生まれた時からそんな名前だったとは思っていなかったが、近年になってから『大怪獣バトル ウルトラ銀河伝説 THE MOVIE』にて「ウルトラマンケン」が本名と判明した。
 そしてこの作品の主人公であるゾフィーはこのウルトラマンケン=ウルトラの父の後を襲うかのような立身出世を重ね、近年ではウルトラの父以上に代表としての立場を見せ、ゾフィーが「征夷大将軍」なら、ウルトラの父は「大御所」と化している風が見える。

 当年とって16万歳のウルトラの父は3万年前のエンペラ星人とのウルトラ大戦争で戦功を挙げ、ウルトラ史上最多怪獣討伐記録(約数百体を倒し、今も破られていない)とかみさん(勿論ウルトラの母)をGETし、直後に結成された宇宙警備隊の初代隊長隊長となった。
 そんなウルトラの父のウルトラオリンピックにおける光線記録(八〇万度)をM87光線による八七万度の新記録でレコードを塗り替え、地球暦で昭和四二(1967)年に警備隊長に就任したのがゾフィーである。
 ウルトラの父ゾフィーの間に宇宙警備隊長に就任したウルトラ戦士がいたかどうかは不明だが、ウルトラの父が13万歳で就任した役職にゾフィーが2万5千歳で就任しているのは驚異的だが、大戦争に対する体験が違うから一概には比較出来ないだろう。まあ、ゾフィーが既に妻帯していたとしたらウルトラの父の面目は丸潰れだが…。う〜ん、ウルトラセブンが息子・ウルトラマンゼロを何歳で儲けたか、かなり興味深くなってきたな(笑)。
 ま、四〇歳過ぎて独身である内の道場主に人様の妻帯問題をガタガタ云える資格はないのだが……ぎええええええええええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ(←道場主のジャガーショック・コンドルジャンプ・モンキーアタックの三連打を喰らっている)。

 痛てててててててててて…。いずれにしても主人公たる番組を持たないゆえにゾフィーは他のウルトラ兄弟が持つものを持たず、他のウルトラ兄弟に無いものがあったりする。そしてそれは彼を様々な立場での代表として見て、彼の前任であり、現在は大隊長となっているウルトラの父と比較するとかなり興味深いものがあることを改めて明記しておきたい。



次頁へ
前頁へ戻る
冒頭へ戻る
特撮房へ戻る

令和三(2021)年六月一一日 最終更新