6.盟友としてのゾフィー

6−1.ウルトラ兄弟の友情
 そもそも「友」という言葉が持つ意味はかなり広い。単に「友」と云う言葉が着く単語を振り返って見ても、「親友」、「級友」、「旧友」、「戦友」、「盟友」、「悪友」、「学友」、「メル友」、「ペンフレンド」…と様々あるし、中には単語に「友」の字を含むだけで友情が成立していないこともある。
 道場主等、かつて振られた相手の自宅に電話した際に「Yさんの級友のHと申しますが…。」と云って、速攻で電話を切られたことがあるが、相手は「友」という念を一欠けらも抱いては………ぐえええええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇ(←道場主のクリップラー・クロスフェイスを喰らっている)

 痛ててててて…まあ、ゾフィーならずともウルトラ兄弟自体がどんな「友情」を持っているかを簡単に見たいのだが、以下のケースが挙げられる。

 ○正義のチーム内部での、隊員同士の友情(例:MAT内での郷秀樹(団次郎)と上野一平(三井恒))
 ○人間体時の私生活での友情(例:北斗星司(高峰圭二)と梅津ダン(梅津昭典))
 ○他の宇宙人との友情(例:ウルトラセブン=モロボシ・ダン(森次晃嗣)と小熊座の少年・ボック(小山渚))

 等が挙げられるのだが、実際には正義のチーム内部での隊員同士の友情を除けば分かり辛いものがある。2番目の例等は友情といよりは保護者と被保護者の関係に近い。
 また、上記とは異なる例で、『帰ってきたウルトラマン』の第38話では暗殺宇宙人ナックル星人用心棒怪獣ブラックキングとの再戦で苦戦に陥った際にナレーションは「ウルトラマンは負けない。初代ウルトラマンウルトラセブン友情が心の支えになっているのだから。」とあったが、この時は「ウルトラ兄弟」という概念が確立されていなかったこともあり、ウルトラ兄弟間の情も「友情」とされていた。

 かように「友」と云う概念が断言し難いが、ゾフィーに至っては地球に常駐した経験が無い故に友情を展開するシーンが少ない。一方で、人間より遥かに長い寿命を持ち、宇宙警備隊長として、ウルトラ兄弟の長兄として、数多くの宇宙人と交流を持っていてもおかしくなく、その交際レベルにも多種多様なものがあるであろうことは想像に難くない。
 それゆえに僅かな例しか見せていないゾフィーが織り成す友情劇は非情に興味深く、常に戦いに身を置くゾフィー盟友として見せる側面に注目したい。


6−2.ウルトラマンヒカリとの友情
 光の国………云わずと知れたウルトラ兄弟及びウルトラファミリーの故郷だが、我々視聴者がTV画面を通じて目にする面々の多くは宇宙警備隊に属するが、その人員数は100万人で、当然180億の人口の内僅かな割合でしかない(地球の人口に換算して33万人=鳥取県の人口より少し多いぐらいに相当する)。
 そんな中、M78星雲の宇宙科学技術局に所属する研究員がある事件から復讐の鬼と化したのがハンターナイトツルギウルトラマンヒカリである。
 そしてそのヒカリの心の迷走を救い、宇宙警備隊にスカウトしたのがゾフィーである。

 研究者時代に見守り、愛していた惑星アーブが高次元捕食体ボガールに滅ぼされたことを、悲しみ、憤ったヒカリはアーブの知性体の怨念を鎧として纏い、ハンターナイトツルギと云う名の復讐の鬼となった。
 その後、地球上での活動の為に自らが乗っ取ったGUYSジャパンの前隊長セリザワ・カズヤ(石川真)の潜在意識から説得を受け、同じGUYSジャパンのアイハラ・リュウ(仁科克基)やヒビノ・ミライ(五十嵐隼士)の説得を受け、「ウルトラの心」を取り戻した。
 しかしエネルギーを使い切ったことによって一度は命を落とし、ウルトラの母に助けられるも、アーブギアを失い、一戦ごとにダメージの蓄積する肉体となっていた。そんな彼にゾフィーは光の国への帰還命令を発した(←この時点では命令権は無いのでは?)

 両者の一連の流れは『ウルトラマンメビウス』『ウルトラマンメビウス外伝ヒカリSAGA』の両方を見比べないと分かり辛いのだが、ゾフィーは傷ついたヒカリを時に守り、時に加勢し、『ウルトラマンメビウス外伝ヒカリSAGA』では宇宙大怪獣ベムスターを倒すのに共闘している。
 また、ヒカリが地球行きを希望した際には彼の為に渋るウルトラの父を説得してもいる。

 最終的にヒカリもまた宇宙警備隊に加わり、暗黒宇宙人ババルウ星人との戦いに身を投じた。だがここまで気遣えば、ゾフィーにも特別な感情があったのだろう。『ウルトラマンメビウス』の最終回で宇宙大皇帝エンペラ星人を倒し、最後の戦いを終え、もう一人の盟友であるサコミズ・シンゴ(田中実)と目礼を交わすとメビウスに先立ってヒカリと供に光の国に帰還している。

 長いウルトラシリーズの歴史においてゾフィー『ウルトラマンレオ』までの時代と『ウルトラマンメビウス』以降では、明らかに彼の立場は昇格している(制度的にも、対人関係で気にも)。ウルトラの父が大隊長になったことでゾフィーは宇宙警備隊の隊長としての地位は変わらずとも、その地位が持つ重みは増したことだろう。
 だとすると、(ここは推測なのだが)ゾフィーにとってヒカリは新たな気持ちで遇した最初の配下であり、それが配下と云うよりは愛弟子、ひいては盟友としての絆を持った、と見るのは穿ったものの見方だろうか?


6−3.サコミズ・シンゴとの友情
 地球に常駐した経験を持たないゾフィーが唯一個人的な知遇を得た地球人、それがサコミズ・シンゴである。
 サコミズと云えば『ウルトラマンメビウス』の第1話で壊滅したGUYSが再編された折に新隊長として、GUYS総監の地位を隠してGUYSジャパンの指揮を執り続けた人物だが、彼がゾフィーと知己を得たのはGUYSの影も形もない、科学特捜隊の時代で、しかも地球上の事ではなかった。

 『ウルトラマンメビウス』第42話のサコミズとタケナカ最高評議長(佐原健二)との会談中における回想によると、サコミズは科学特捜隊には既にムラマツ(小林昭二)という優れたキャップが務めていたことから宇宙勤務を申し出、亜光速航行中に冥王星軌道上にて謎の円盤群に襲われた際にゾフィーに救われたのがその邂逅である。

 円盤群の襲撃に、自らが盾にならんとして部下達に地球への帰還を命じたが、突如眼前に背を見せる形で現れたゾフィーはM87光線で円盤群を秒殺。呆然とするサコミズに向かい合うと人類が自力にて太陽系の果てまで来た進歩を讃え、人知れず地球を守っていること、人類の更なる進歩に期待していることを告げた。

 この後、回想シーンを観ただけではゾフィーとサコミズが再会したかどうかは詳らかではないが、恐らく最終回まで再会していない、とシルバータイタンは推測している。
 サコミズにとって、ゾフィーとの邂逅の印象はさぞ強烈だったであろうことは想像に難くない。それゆえ「ウルトラマンと供に戦いたい!」との念を彼は長く、強く持ち続け、それはサコミズをして、GUYS総監の地位を隠し、セリザワ隊長の後任隊長ならしめたのである。つまりは、どこかで両者が再会していれば、サコミズは現場に立たなかったかも知れない。
 そして最終回、ファイナルメテオールを解禁し、ウルトラマンメビウス・フェニックスブレイブを激励するサコミズの耳に彼を呼ぶ声が響いた。

 「サコミズ…サコミズ…今こそ君の力が必要だ。共に戦おう。」

 の台詞に、「ゾフィーか?」と思ったのはシルバータイタンだけではあるまい。
 勿論、その推測が正しかったことは程なく証明された(←と云うか、他に誰がいるんだ?by道場主)。

 両者が共闘した詳細は次頁に譲るが、前述したように、エンペラ星人を倒したゾフィーメビウス帰還を目前にしてGUYSジャパンの面々がヒビノ・ミライと別れの挨拶を交わす中、ヒカリと並んだゾフィーとサコミズは静かに笑顔で目礼を交わしていた(まあ、ゾフィーの表情は推測でしかないが)。
 40年の時を経て、たった二回の共闘(しかも一回は一方的に守られただけ)での盟友関係でしかなかったが、両者の友情に余計な言葉は野暮と云うものだろう。



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令和三(2021)年六月一一日 最終更新