7.融合体としてのゾフィー

7−1.地球人との融合必要性
 地球人は宇宙空間で生きられない。そして月、水星、金星、火星、木星、天王星、海王星、冥王星等の衛星・惑星の環境にも生物学的に耐えられない(と推測される)。これは同時に地球と異なる環境の星を出身とする異星人もまた地球上での活躍に大きな制約が課せられることを意味する。
 当然、M78星雲人であるウルトラ兄弟も例外ではない。

 実際、番組中においてウルトラマンを初めとするM78星雲人は3分間、L77星人であるウルトラマンレオは2分40秒で活動限界に至る。
 このことは『帰ってきたウルトラマン』の第1話にて、帰ってきたウルトラマン郷秀樹(団次郎)に対して、「私はこのままの姿では地球に留まれない。」と云っていることからも明らかにされている。
 故にウルトラ兄弟は地球に常駐するにおいて、ある者は地球人と一体化し(例:ウルトラマン帰ってきたウルトラマンウルトラマンAウルトラマンタロウ)、ある者は地球人の姿に変身した(例:ウルトラセブンウルトラマンレオウルトラマン80ウルトラマンメビウス)。
 こうして見ると後者に番組後半で連戦に対する疲労を滲ませた者達がいるのが分かる。やはり故郷と異なる環境の生物に化けるのは体に無理が掛るのだろうか?

 さて、本作の主人公であるゾフィーだが、ゾフィーは地球常駐経験が無い故に地球人の姿を取る必要がなかった。何せ多くは地球を訪れて戦ったその足で帰還していたのだから…。
 だが、物事には例外があり、決して長い逗留でないにもかかわらず、ゾフィーは二度、地球人の体を借り、融合体となって戦っていた。これもゾフィーのまた一つの姿なのである。


7−2.ゾフィーに選ばれた人達
 「選ばれた」というと少し語弊があるかも知れないが、いずれにしてもゾフィーは三人の地球人に憑依し、補佐的とはいえ、宇宙人と戦った。
 その三人は、ZAT協力者にして宇宙生物学の権威である大谷博士(竜崎勝)、名もなきバレーボール選手、そしてGUYSジャパンのサコミズ・シンゴ隊長(田中実)である。
 前二人は『ウルトラマンタロウ』第33話・第34話でのことで、サコミズは『ウルトラマンメビウス』最終回でのことである。

 大谷博士に憑依したのは、極悪宇宙人テンペラー星人との戦いにおいての事だった。それまでの戦いですっかり兄達に頼り癖の着いてしまったウルトラマンタロウに甘えを許さず、しかしながら理由も無しにウルトラ兄弟とテンペラー星人との戦いに巻き添えを食わされている地球人を救う為、ゾフィー以下ウルトラ兄弟達はZAT隊員に憑依した。
 その時のZAT隊員は荒垣副隊長(東野孝彦)、北村隊員(津村秀祐)、南原隊員(木村豊幸)、上野隊員(西島明彦)と大谷博士で、ZAT隊員にはウルトラマン以下の弟達が憑依し、ゾフィーは大谷博士に憑依して融合体となった。

 大谷博士との融合体となったゾフィーは第33話・第34話にてこれと云ったことはしていない(苦笑)。一般市民の避難誘導はZAT隊員に憑依した弟達が行い、第33話でテンペラー星人を単独で打倒するのに成功したタロウ東光太郎(篠田三郎)が思い上がるのを第34話にて一喝したのも弟達で、彼がやったのはテンペラー星人の罠に落ちた光太郎救出の際の指揮だった(これも事実上は荒垣副隊長に憑依したウルトラマンが執っていたが)。

 しかし、第34話後半にてテンペラー星人の特殊スペクタクル光線の前に大谷博士並びにZAT隊員に憑依していたことが星人にも光太郎にもバレ、ゾフィー達は新たな憑依先を必要とした。
 というのも、テンペラー星人にはテンペラー星の科学の粋を極めたウルトラ兄弟必殺光線が装備されており、この光線に手も足も出ない兄弟達は星人に気付かれぬ様に近づくことが必要で、その為に新たな憑依先として、兄弟対星人の巻き添えを食って気絶していたバレーボールの選手六名がなし崩し的に選ばれた。何て傍迷惑な兄弟達なんだ(苦笑)
 もっとも、この融合体としての行動はウルトラマンボールに潜伏したことですぐに終わることとなった。やれやれ(苦笑)。


 サコミズ隊長との融合は、殆ど前頁の「盟友としてのゾフィー」にて触れている。
 科学特捜隊時代に亜光速航行中の邂逅が縁でサコミズとゾフィーはいつの日か再会することを誓い、「ウルトラマンと供に戦いたい。」というサコミズの願いに『ウルトラマンメビウス』の最終回にてゾフィーは応えた。

 GUYSジャパンの仲間達と融合したウルトラマンメビウスフェニックスブレイブ暗黒宇宙大皇帝エンペラ星人と戦うのを見守るサコミズに光の中から声を掛けたゾフィーはサコミズに憑依してメビウスに加勢した。
 実際、メビウスに加勢するだけだったらゾフィーがサコミズと融合する必要は無かっただろう。過去に地底エージェントギロン人大蟻超獣アリブンタ地獄星人ヒッポリト星人火山怪鳥バードン暗黒宇宙人ババルウ星人と戦った際にも、ゾフィーはそのままの姿で地球に降り立ち、地球人を寄り代とはしていない。
 偏にサコミズの想いに応えたものだろう。過去に地球人との融合体になった時に比べて非常に粋である(笑)。


7−3.ゾフィーは何処に?
 ゾフィーはウルトラ兄弟の長兄にして、M78星雲の宇宙警備隊長にして、最強戦士でもある。本作では他の側面も述べてきたが、触れておきたいのは、視聴者はゾフィーを初めとするウルトラ兄弟の活躍を地球上の視点でのみ見がちだということである。

 勿論各番組の舞台は圧倒的に地球が多く、それ以外にはウルトラの国や一部の惑星があてられるぐらいで、ゾフィーにした所で、M78星雲・海王星・その他一部で見られるだけである。
 何が云いたいのかと云うと、描かれざるゾフィーの活躍はかなり大きいのではないか?と云うことである。

 様々な肩書を持ち、それ故に宇宙各地にて八面六臂の活躍を繰り広げるゾフィーはサコミズに宣していたように、人知れず多くの人々を守っていたことだろう。当然それらは後々のウルトラシリーズにて明かされるかもしれないし、明かされないにしても様々な伏線となり得る。
 地球常駐時以外にウルトラマンが荒垣副隊長に、ウルトラセブンが北村隊員・カザモリ隊員に、帰ってきたウルトラマンが南原隊員に、ウルトラマンAが上野隊員に融合したように、ゾフィーもまた大谷博士やサコミズ隊長以外にもストーリーの重要所を演じる人物と融合した活躍を見せて欲しいものである。



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令和三(2021)年六月一一日 最終更新