暴言四、被害者置き去りをどないかせい!

 正直、被害者の気持ちを考えれば少年犯罪への激甘振りのみならず、殺人事件の99%が死刑にならない裁判の実態には到底納得がいかない。
 ここは恥を晒すが、道場主の馬鹿は司法がほんの10数年前まで「被害者」と云う存在を思い切り軽視していたことを認識していなかった。勿論裁判は法の定めるところに則って公正公平に裁かれなければならないから、窃盗や掠り傷程度の傷害に「死刑にしろ!」と叫ぶ様な声の云いなりになる必要はないが、全く無視するのも考え物だろう。



■思い切り無視されていた被害者の権利
 少年犯罪でなくても判例偏重による被害者の声を無視する態度は弁護士のみならず、裁判官や検察すら時にひどいものがある(昨今では、死刑を求刑して一審二審ともに無期懲役だった際に検察が遺族の叫びを無視して上告を諦めるケースが目立つ)。
 実際、「処罰」よりも「更生」を優先して、年齢によっては「処罰」を全く度外視する少年法の在り様は、加害者への処罰を求める被害者を思い切り無視するものと云わざるを得ない
 ほんの30年ほど前では、被害者遺族は触法少年がどんな判決を下されたかを知ることすら出来なかった。勿論加害者の氏名も、出所後の動向も伏せられた。まあ、被害者遺族が触法少年に対して私的報復に出る可能性を考えれば、二次犯罪を防ぐためにも伏せなければならない事柄が存在するのはやむを得ない。
 だが、そのことを考慮に入れても、余りにも公開されざることが多く、「自分の家族は何故殺されなければならなかったのか?」、「本当に反省しているのか?」、「贖罪の為に一体何をしているのか?」まで完全に隠蔽されていたのだから、被害者と全く向き合わさずに「更生」と抜かすなんて「ちゃんちゃらおかしい!」としか云い様がない!!!
 被害者の苦しみ・怒り・悲しみと向き合わない者が本当に反省したり更生したりすると司法は本気で思っているのだろうか?
 本作の趣旨と少し逸れるが、凶悪犯罪で死刑判決が濃厚な裁判で被告側弁護人が「生かして償わすべき。」と主張するのを聞いても、被害者と向き合っていると思えない状況下では本当に信用出来ない。
 過去作でも触れたが、本当に罪を悔い、反省し、被害者の苦しみ・怒り・悲しみと真摯に向き合って償いに務めている加害者がいるなら(皆無と思わないので)俺に教えて欲しい。
 正直、そこまでしているものを聞いたことがない。

 平成12(2000)年に前後して、凶悪な少年犯罪の続発に際して、司法の世界で本当に被害者が無視されていることが世間に知れ渡り、犯罪被害者の会が結成され、その地道な運動で以前よりは被害者の権利が重視され、情報公開も進むようになったとは思うが、まだまだ司法には被害者を腫物扱いするように「触れずに済むなら触れずにおこう」との姿勢は根強いように感じる。



■「少年の保護」=「被害者をいじめ、苦しめること」ではないぞ!
 「あちらを立てればこちらが立たず。」と云う言葉があるように、加害者の権利を優先すれば被害者の権利が犠牲になるのは起こるべくして起こりうることである(逆もまた然りだ)。
 司法の裁きは法に則って公正公平に行われなければならないから、被害者加害者の双方にとって感情的に納得のいかない展開や判決も起こり得よう。実際、殺人事件の被害者の9割9分では、遺族は「自分の大切な人は殺されたのに、相手は生きている!」と云う想いに苦しめられるというひどい話が罷り通っている。

 詰まる所、裁判と云うものは「被告をどう裁くか?」に主眼が置かれているか
ら、被害者の声を無視する傾向になっていたのだろう。確かに公平公正を重んじる為に時として被害者の声・感情・境遇に目をやれないこともあるかも知れないし、中には「司法は被害者の為にあるのではない!」と叫ぶ者すらいる。だが、「被害者をいじめ、苦しめる為のもの」ではない筈である。



■被害者置き去りは少年法だけの問題にあらず!
 まあ、ほぼほぼ上述済みだが、被害者無視・軽視は成年犯罪でもひどい例をいくつも見た。
 特に性犯罪では被害者女性は裁判そのもので法廷にて自分がどんな目に遭わされたかを大勢の前で暴露されることで二重三重に苦しむ(取り調べ段階でなかなか被害状況を供述出来ずにいる強姦被害者の女性(主婦)に、「どうせ処女じゃないんだから。」と云って証言を促したふざけた取調官もいた!)。
 また損害賠償問題でも、基本判決が下った後の司法は無責任だ。加害者が賠償金を払わず逃げ続けた際には被害者が自分で裁判を起こさなければならない(しかも時効になる前に)。
 殺人や重度の生涯を負わされた方が一家の大黒柱だった場合、その妻子はその日から路頭に迷い、生活苦と戦いながら裁判経過を注視しなければならない。
 加害者側弁護人の中には、被告の味方をしなければならない弁護士の責務を考慮に入れても「ひど過ぎる」と云わざるを得ない程被害者や被害者遺族を責めて被告の責任逃れに邁進する者もいる(本当に被害者側に重大な問題があるケースもあるから余計に厄介だ)。



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令和四(2021)年六月一四日 最終更新