ウルトラマンA全話解説

第10話 決戦!エース対郷秀樹

監督:山際永三
脚本:田口成光
変身怪人アンチラ星人、犀超獣ザイゴン登場
 冒頭、人ごみの中、手を繋ぎながら歩いて現れたのは村野ルミ子(岩崎和子)と、坂田次郎(川口英樹)。そう、前作『帰ってきたウルトラマン』で、主人公の弟分と2代目の彼女だった人物である。
 リアルタイムで『帰ってきたウルトラマン』の最終回から2ヶ月と9日が経過していた訳だが、次郎は人ごみの中、郷秀樹(団次郎)の姿を見かけ、驚いて立ち止まった。作中は触れられていなかったが、郷が次郎達の元を去ったのは、遠いウルトラの国で繰り広げられている戦争に参戦する為だったので、その郷が地球に居たこと自体、嬉しい一方で相当な驚きだった。
 勿論ルミ子も郷が地球を去った理由を知っていたから、郷がいる訳ない、として未だ寂しがる次郎に別れ際の挨拶・「ウルトラ5つ誓い」を思い出させて何とか励まそうとするのだった。
 だが次の瞬間、雷鳴と共に犀超獣ザイゴンが出現し、街中を破壊し始めた。とある高層ビルの中にある光に反応している様子のザイゴンだったが、勿論ルミ子や次郎は気付く由もなく避難に掛かった。

 猪突猛進ならぬ犀突猛進でそのビルだけを体当たりで貫通させたり、炎を吐いて炎上させたりする、いまいち目的や性格が謎なザイゴン。勿論TACにとって駆除対象であることに変わりはなく、竜隊長は自分と美川がTACスペースで、他の者はTACファルコンで出撃するよう命じ、梶主任が新規開発したTACバズーカ(打ち込んだ敵の体内で爆発する特殊砲弾を搭載)を山中に託した(山中は北斗に携行を命じた)。
 そしてその頃になるとザイゴンの破壊対象は広く拡大しており、その破壊行動にルミ子と次郎は追い詰められていた。そこへ飛んで来たTACスペース&TACファルコン。機内の竜隊長はいち早く危機に曝されている2人に気付いたものの、炎を吐いて暴れるザイゴンはTACの攻撃に怯まず、近づくのも容易ではなかった。
 この事態に対し、北斗は地上攻撃で梶主任から託されたTACバズーカで攻撃し、その間に2人を助けることを提案。その北斗の決意を汲み取ったのか、はてまたアイディアに賛同したものか、山中は笑いながら「止めても無理なようだな。」と言って、北斗の案を受け入れた。このワンシーンだけでも山中がただの横暴な先輩でないことがよく分かる。というか、北斗の先輩に対する無礼の方が気になったな(苦笑)。

 ともあれ、山中は笑顔で「よし行け!」と言って北斗を激励し、竜隊長も状況を察して北斗機の援護を命じた。その間も次郎とルミ子は燃え盛る炎の熱波に曝され続けていたが、そこへバズーカを持った北斗が駆け付け、2人をすぐ横の窪みに避難させた。
 一方、隊長機はザイゴンの口を開かせ、そこにミサイルを撃ち込むことに成功。山中は即座に北斗に、TACバズーカによる砲撃を命じ、北斗もそれに従った。かくして作戦自体は完全に成功したのだが、やはりTACバズーカもまた超獣を絶命させるほどの威力に達していなかった。
 北斗は更なる砲撃を加えようとしたが、ザイゴンは完全に北斗に目標を定め、炎を吐いて攻撃して来た。そのため、砲撃の体勢すらなかなか取れずにいた北斗だったが、ようやくザイゴンに照準を合わせたとき、その視界に1人の男が立ちはだかった。
 当然北斗の目には「邪魔な民間人。」としか映らない。完全な命令形で男にその場をどくよう命じるも男は動かない。業を煮やした北斗が体当たりを食らわせ、ようやくその男が北斗の方を振り向いて見せた顔は郷秀樹!!

 BGMに前作の主題歌が流れ、次郎とルミ子もこれに気付いた。だが郷は彼等に一瞥をくれるとすぐにザイゴン目掛けて走り出し(←勿論北斗の制止無視)、これにレーザー銃を照射した。レーザーはザイゴンに苦痛を与えるも、ザイゴンもまた炎を吐き、郷はこれを食らってぶっ飛ばされた。
 TACファルコン内の山中達が郷の行動を見て、無謀とも、勇敢とも評する内にザイゴンが姿を消し、負傷した郷を助ける為、山中は着陸を命じた。
 勿論郷の元には次郎達も駆け付け、無言で夕子の手当てを受ける郷の身元を明かす様に彼に飛びついた。名前を連呼され、郷も「元MATの郷秀樹。」と名乗り、郷と次郎の再会と会話に美川がMATのファイルで郷の名を見ていたのを思い出した。
 うーむ……次郎達が登場した時点で『帰ってきたウルトラマン』と『ウルトラマンA』が完全に繋がった世界の話であることは明白だったのだが、この美川の台詞から「過去MAT、現在TAC」と地球防衛の担い手が代わっていることも視聴者に突き付けられる形になった。第1話でベロクロンの前に地球防衛軍が全滅したことでTACが編成されていたが、旧作で上部組織から何度も「解散」をちらつかされていたMATはベロクロン登場以前に本当に解散させられていたこととなる
 まだ小学生の次郎君に外観上の大きな変化が見られないことからも、バット星人に基地を壊されたMATは再建も叶わず解散させられたと考えるのが妥当だろう…………哀れなり、MAT…………。

 ともあれ、ファイルの上ではゼットンとの戦いで戦死したとされていた郷だが、生きていことが次郎とルミ子の口から証言され(←実際に、2人はゼットン戦後に生きていた郷と会っている)、郷は地球防衛軍全滅の報を聞いて帰ってきたことを告げた。
 そして話題は郷が所持していたウルトラレーザーにシフトすると、その威力と、自作した郷の能力に一同は感嘆し、半ば郷がTACに入隊するような話となった。さすがに竜隊長はそこまで短絡的には判断せず(笑)、一先ず郷をTACのメディカルセンターで治療させる、として、基地への撤収に掛かった。
 再会を喜び、もうどこへも行かないで、と懇願する次郎に郷は今取り組んでいることが終わるまでは待って欲しいと告げた。些か寂しい話ではあるが、目の前に郷がいて、地球に留まる気配も満タンだったため、次郎は喜んで同意。ただ1人北斗だけが最前の展開が気に入らず、郷にガンを飛ばすのだった(←子供か!?)。

 場面は替わってTAC基地本部。そこでは郷秀樹をTACの新隊員に迎えるか否かで口論が交わされていた。歓迎派は山中で、純粋に郷の行動力と兵器開発能力を絶賛し、梶主任もそれほどの開発能力は是非ともTACに欲しいとした。
 一方の非歓迎派は北斗である(苦笑)。郷の活躍は自分の行動を邪魔したものでもあったが、周囲は郷が北斗を救った様に見ていたから、北斗としては何ともやり切れなかっただろう。
 そしてこの口論に対し、竜隊長は郷の能力を認めた上で、早計な判断をせず、もっと郷のことを知るべき、という慎重論を述べた。郷の行動に注目していた面々は郷が戦力となることに疑いないとばかりに強弁な山中、吉村、美川の気持ちも尊重した上で梶は郷の所持するウルトラレーザーの分析を、北斗と夕子には郷と会うことを命じた。
 それでも山中は納得していない気持ちを露わにしたが、竜隊長はTACの任務が持つ重さからも、過半数を理由とした早計な決断を避け、全員一致を重んじるべきとした。
 個人的には「全員一致」は変な意地っ張りや、ヒネクレ意見が1人でも存在すると何も決まらないことになり、決断出来ない合議制になりかねないことからも好きじゃないのだが、ともあれ、隊長にこう言われては、山中も従うしかなかった。

 場面は替わってTACメディカルセンター。そこには次郎とルミ子が門番とやり合っていた。2人は郷の見舞に来た訳だが、門番はTAC関係者ではない2人を通そうとしない。二言、三言のやり取りの末、やはり通してくれない門番に業を煮やした次郎は強行突入を敢行。相変わらずの悪ガキぶりである(笑)。
 そこへTACパンサーでやって来た北斗と夕子。北斗が保証したことで門番も次郎とルミ子を通すことに合意したが、その様子を病室から覗き見していた郷は「とうとうやって来たな。」と呟いた。
 この独り言も引っ掛かったが、その後も郷は次郎が持ってきてくれた大好物のおはぎに冷淡な反応を示したり、箸を左手で持って、突き刺して使ったりする様に次郎も北斗も変に思うのだった。

 そして事態はヤプールによって次の局面に移行しようとしていた。
 ヤプールの指令で姿を消していたザイゴンが再び現れ、北斗と夕子は迎撃に出た。梶主任は傷を押して病室を出ようとする郷に対し、ウルトラレーザーの貸与を求めたが、郷は「私でなければ使えません。」として単身病室を飛び出した。
 残された梶主任、次郎、ルミ子はすぐに追おうとしたのだが、病室の扉はいつの間にか施錠され、3人は軟禁状態となった。ザイゴンがメディカルセンターに向かっているのを察知した北斗が山中の指示で患者達の避難誘導に掛かった際も、3人は気付かれない有様だった。
 山中、今野、吉村が空中からザイゴンを迎撃し、北斗と夕子が避難誘導する中、竜隊長と美川も駆け付けた。竜隊長は郷も避難済みと聞いて、ウルトラレーザーが使えないのを残念がりつつも、即座にTACバズーカの使用を命じた。

 その頃、郷は屋上にてパニック状態にある地上を冷笑しながら睥睨していた。もはや彼が万人の知る郷秀樹とは異なる存在であることは明らかだった。
 そして空中と地上から攻撃を仕掛けるも、例によってザイゴンに有効打を与えるに至らず、逆に炎を吹きかけられた北斗は死に物狂いで避けるしかなかったのだが、炎は周囲に飛び火し、そんな状況に至ったところで、北斗達はまだ院内に次郎、ルミ子、梶主任が取り残されているのに気付いた。
 即座に北斗は院内に駆け込み、竜隊長は2人の女性隊員に救出までの時間稼ぎとしての迎撃を命じた。院内の北斗は声を頼りに3人のいる部屋を探り当てると、体当たりをもってしても開かない扉をTACガンで破壊せんとしたが、その瞬間、TACガンにレーザー光線が照射され、北斗はこれを取り落とした。勿論射手は郷秀樹………否、郷秀樹の姿をした偽物だった。

 北斗に郷ではない、と断じられた偽物は何者かと問われて、「ヤプールの使い、アンチラ星人」と名乗った。そして北斗を射殺せんとした変身怪人アンチラ星人だったが、そこへ北斗を追って駆け付けて来た夕子がウルトラレーザーを撃ったことで、それは阻止された。
 不意を打たれたアンチラ星人は逃亡。北斗はTACガンを拾い上げてドアノブを破壊すると室内の3人を解放した。そして梶主任に2人を連れて避難するよう告げたのは良いのだが、「郷さんは?」と尋ねられた北斗は、「あれは宇宙人だ。」とKY発言をかまし、次郎を激昂させたからやはりコイツは少しばかりお頭が弱い(苦笑)。
 いくら真実でも、懐かしい人と再会出来て喜んでいる少年が頭ごなしに否定されたら、理屈よりも感情で反発するのが分からんのか?北斗よぉ。ルミ子も信じられない旨を言葉にしたが、夕子が北斗を撃とうとしたのを見た、と説明するとその証言を冷静に受け止めたが、信じられない(というより信じたくない)次郎は郷の影を追って、駆け出してしまった。

 そして場面は移って屋上。そこでは郷の姿をした者が、郷とは全く異なる声でザイゴンに命令を下しているのを次郎は見てしまった。さすがにこれを見て尚、眼前の存在を本物の郷秀樹と認識し続けるほど次郎は馬鹿ではなかったが、ようやく会えた郷が偽物であったことに激昂した次郎は無謀にも偽郷秀樹=アンチラ星人に突っかかって行った。
 だが体格的にも叶う筈がなく、北斗と夕子が駆け付けたときには次郎は取り押さえられ、人質にされてしまっていた。だが良くも悪くも行動的な次郎はアンチラ星人の手に噛み付いて、相手が怯んだ隙に北斗の元に逃げ込んだ。
 既に眼の下と口周りを赤く縁取り、瞼と眉の間も黒ずませたアンチラ星人は見た目にも本物の郷秀樹ではないのが明白化していた。これまでは丸で団次郎氏が演じているみたいに本物そっくりだったのに(笑)。そしてTACガンとTACバズーカを突きつけられて尚、ザイゴンの不死身を告げていやらしく笑う偽郷秀樹はついにアンチラ星人としての真の姿を現した。ま、コイツ自身はあっさり北斗のTACガンと、夕子のTACバズーカによる砲撃を受けて射殺されたのだが……………おおっ!超獣じゃないが、梶主任開発のTAC兵器が敵対的存在を打倒した初の例だ!おめでとう!梶主任(笑)。技術的にはマリア2号の方がハイレベルだとは思うが、それでもTAC(=Terrible monster Attack Crew)の名前を思えば、今回のアンチラ星人射殺は初めて存在意義を果たしたと言える。

 ともあれ、残るはザイゴンだけとなった。だがそのザイゴンの攻撃に竜隊長、吉村、美川はルミ子を庇うので精一杯。空中攻撃組は吐炎を受けて次々と撃墜されていた。だがそのときウルトラリングが光り、北斗と夕子は次郎が煙に巻かれた隙にウルトラタッチをかわしてAに変身すると、そのまま次郎を掌の中に保護し、地上に降り立つと次郎を解放した。
 そしてザイゴンを前にしたAは、ひたすら突進力でAを組み敷かんとするのをかわすと、一振りの赤旗を発見すると、これをマタドールの如く駆使してザイゴンを挑発し、突進させてはこれをいなし始めた……………って、おい!ザイゴンは犀超獣で、牛超獣じゃねぇぞ!?
 BGMまでビゼーの『カルメン』の前奏曲を流す悪ノリで(苦笑)、完全に犀超獣としてのアイデンティティを破壊されたザイゴンは、一時はハリケーンミキサー………じゃなかった……体当たりや火炎でAを手こずらせたが、それも長くは続かず、エネルギー光球を受けて怯んだところにベルリンの赤い………じゃなかった……ウルトラナイフなる手刀打ちで首を刎ねられて絶命した。
 その後Aは消火フォッグで、ザイゴンの吐炎による火災を消し止めると、珍しく爆発せずに残ったザイゴンの生首を盛り土の上に、墓標の如く立てて置いたのだった。チョット悪ノリが目立った回だったな(苦笑)。

 そしてラストシーン。公園のブランコに次郎、ルミ子、北斗、夕子がギッコンバッコンする中、次郎は偽郷秀樹の行動を振り返って、ようやく冷静に本物の郷ではなかったことを受け入れていた。同時にAに助けられたときに郷と同じ匂いを感じたと述べると、ブランコを下りて靴を脱ぎ、裸足になって土の上に降り立った。
 つまりは「ウルトラ5つの誓い」の一節、「土の上を裸足で走り回って遊ぶこと」を実践する体勢を取った訳で、夜空に本物の郷秀樹の幻影を見た次郎は「ウルトラ5つの誓い」を改めて誓うのだった。


 尚、『帰ってきたウルトラマン』で両親同然の兄と姉を惨殺され、兄貴分と慕っていた青年に去られた失意の次郎君が少年仮面ライダー対に新たな居場所を見出すのはこの8ヶ月後の話であった(笑)。(←勿論川口氏が『仮面ライダーV3』のレギュラーになったことを言っているのである)
 そう言えば、次郎は、珠茂時に人質にされた際も偽結城丈二の手に噛み付いて、拘束を脱していたよな。偽ヒーロー人間体に取り押さえられ、噛み付いて脱出………これが本当の「歴史は繰り返す」ということだな(←道場主「そうか?」)。


次話へ進む
前話に戻る
『ウルトラマンA全話解説」冒頭へ戻る
特撮房『全話解説』の間へ戻る
特撮房へ戻る

平成三〇(2018)年七月一〇日 最終更新