ウルトラマンA全話解説

第11話 超獣は10人の女?

監督:平野一夫
脚本:上原正三
くの一超獣ユニタング登場
 冒頭、何の前触れもなく虚空からTACの第3レーダー基地に姿を現したくの一超獣ユニタングは口と両手から糸を吐いてパラボラアンテナを溶融・炎上させた。付近をパトロール中だった山中・吉村コンビが即座に迎撃に向かったのだが、ミサイル攻撃でユニタングを火達磨にするも、即座に体内から出た溶液で消火されてしまった。
 結局、TACスペースはユニタングの吐く糸に絡め取られ、お約束の「脱出!」となり、ユニタングは満足した様に虚空に姿を消した。
 うーん……これって、「超獣抹殺」には失敗しても、「超獣撃退」には成功したことになるのだろうか?(苦笑)

 脱出して(「山中」だけに)山中に降り立った山中・吉村は山道に出たところでサイクリング中の若い女性の一団に遭遇した。歌っている歌が何とも昭和だ(←昭和の番組だって!)。
 彼女達は大東女子大のサイクリング部員達で、山中は超獣出現の危険を告げて彼女達に山を下りるよう促した。不思議なことに彼女達はあれほどのガタイで大暴れしたユニタングを見ていないといっていたが、山中の指示には素直に従った。
 去りゆく彼女達を笑顔で見送る吉村に「デレデレするな!レーダー基地がやられたんだ!」と言いながら小突く山中。如何にも山中らしい台詞だが、吉村の方が普段真面目な彼らしくなかった。ま、これが今回のストーリーファクターである「女性」への伏線と取れる訳だが。

 その頃、TAC基地本部ではユニタングの襲撃で麻痺状態に陥った第3レーダー基地の機能をフォローする為、竜隊長は北斗と夕子にダイオードSPDを届けるよう指示していた。
 梶主任によるとそれはトランジスタ1万個分の働きをする高性能なもので、本部にも1個しかない大切なもので、竜隊長も飛行機では危険なのでシークレットロードNo.3を利用して陸送するよう下知した。


 ここで少し余談を。
 シルバータイタンは雑学程度の科学知識しか持たないが、世界最初のコンピーター・エニアック(←電子計算機である)が真空管8万8000本を要し、畳30畳敷きの面積を要したという(計算機のことを「電卓」というのも、戦後間もない頃は「卓」と一体化したり、「卓上」に置くほどのガタイを要したりしたからである)。
 シルバータイタンの記憶に間違いが無ければ、昭和60年頃には教科書程度の大きさの計算機が既にエニアックの性能を上回っていたという。当時はLSI(大規模集積回路)が生まれたばかりだったが、LSIの前はIC(集積回路)、その前がトランジスタ、その前がパラメトロン、そしてその前で真空管に至る。
 そして性能で言えばトランジスタは真空管と変わらないが、大きさが全然違い(勿論後発のトランジスタの方が遥かに小さい)、LSIは1個でトランジスタ1000個以上に匹敵する(ちなみに現代のPCに入っている平均的なCPUはトランジスタ11億7000万個分!)

 となるとダイオードSPDの性能は放映時の10年後の技術を10倍上回っていたことになるが、LSIの発明から程なく、現実の世界ではダイオード100万個分の性能を持つVLSI(超LSI)が発明されている。
 『ウルトラマンA』放映時の制作陣の想像力の大きさも大したものだが、その後10数年でその100倍の性能を持った物を生み出した現実の科学力もまた素晴らしいと言えよう。



 ともあれ、北斗と夕子はTACパンサーで第3レーダー基地に向かったのだが、途中、通行止め箇所があり、迂回して進んでいたところ、例のサイクリング部の部員が飛び出し、北斗はこれを撥ねてしまった……………って、おい!シークレットロードに「通行止め」があったり、自転車が飛び出したりすることをおかしいと思えよ!北斗!夕子!
 まあ、そうは言っても人を撥ねてしまった以上、北斗と夕子が動揺したのも無理はない。北斗は急ブレーキに揺さぶられた夕子を心配したが、夕子は自分より撥ねられた人を案じた(←そりゃそうだ)。
 TACパンサーを下りると、撥ねられた女子大生・アヤ(美波節子)を他の部員達が囲んでいた。彼女達は口々に北斗に「スピード出し過ぎよ!」と罵りながらアヤの身を案じていたのだが、北斗は謝罪し、アヤを介抱せんとする一方で、夕子にはダイオードSPDを届けるよう指示したが、夕子がTACパンサーに戻るとダイオードSPDはまんまと盗まれていたのだった…………。
 展開的におかし過ぎるだろ、これ??

 そして場面は替わってTAC基地本部。大切なダイオードSPDを盗まれた北斗と夕子が平謝りしているところから始まった。竜隊長も梶主任も北斗・夕子を咎めこそしなかったが、その表情はかなり険しかった。怒りよりも現実問題の困難さの方が大きいのだろう。
 だが、直後にワンパタ受難が北斗を襲った。山中は北斗が遭遇した女性達が大東女子大サイクリング部員であることを告げ、吉村が「みんな可愛い娘達だっただろう?」と要らん一言を挟んだ(←山中に怒られたのを忘れたのか?)ものだから、今野が「見惚れてたなぁ?」と茶化し出した。
 北斗は慌ててそれを否定し、夕子も北斗の言う通りであることを証言した。まあ視聴者的には北斗が他の女に見惚れたりしたら夕子の制裁を受けるであろうことが分かるから(笑)、北斗に味方出来るのだが、そのままにやけ続ける吉村と今野が質悪過ぎ(嘆息)。
 だが竜隊長が北斗の落ち度を認めつつも、「被害に遭った娘さんが大した怪我がなくて済んだことを喜ぶべきだ。」と断じて、馬鹿な囃し立てを中断させた。くどいぐらい触れているが、この隊長の公平な仲裁力は特筆に値する。
 そこへ美川が昨夜のシークレットロードNo.3に修理箇所などなかったとの調査結果を報告した。だが勿論北斗と夕子は確かに見たことを主張。これを受けて竜隊長は「誰かが策謀したとも考えられる。」とし、山中が「ヤプール人の仕業ではないでしょうか?」と付け加えた。おっ!石頭の現実主義者が少し変化した(笑)。

 これら様々な証言、意見、推測、事実を受け、竜隊長は北斗が遭遇した一連の出来事を、第3レーダー基地機能回復を阻止する陰謀と断定し、TACの通信機能を守る為にもまずは第2レーダー基地の死守を急務とし、山中、今野、吉村、夕子に空からのパトロールを指示し、北斗には地上パトロールを指示した。
 ただこの指示には、リアリティ面から少し異議を挟みたい。策謀によるものとはいえ、この時点で北斗は人身事故を起こすという運転ミスを犯した疑いの残る人間である。通常このような場合は一時でも空中パトロールか通信係に回し、地上パトロールに就かせるにしても誰かと組ませて運転させないようにするものである。ま、北斗を怪しい女子大生達と絡ませる為であることは分かるのだがね。

 パトロール中、アヤを見舞おうと思いついた北斗だったが、病院に到着するとアヤは退院しようとしていた。「キャンプでみんなが待ってますから。」と彩は述べていたが、それが本当なら随分ひどい部員達である。まあ嘘なのだが(笑)。
 勿論北斗はアヤを怪しんだ。超獣出現の場や、ダイオードSPD輸送の場に居合わせ、しかもこれから向かう東湖畔はTAC第2レーダー基地の近くだという。そこで北斗は彼女達を探る為、アヤを東湖畔まで送ると申し出、アヤもこれを受け入れた。
 東湖畔で水遊びやバレーボールに興じる女子大生達の姿は平和な青春そのもので、それを羨ましがる北斗にアヤは「良かったら参加しません?歓迎しますわ。」と述べた。勿論これは冗談だったのだが、北斗は「俺ね、こういう自然に包まれた生活大好き!」としてこれに応じた(ちなみに北斗の趣味の一つは観葉植物だから、あながち嘘でもない)。
 アヤは「仕事中なんでしょ?」と疑義を挟んだが、北斗は本部に「キャンプがとっても楽しそうなのでしばらく滞在します。宜しく!」というふざけた連絡を入れた。勿論一般企業ならよくて大叱責、下手すりゃクビになりかねない報告で、これを受けた美川も「何を言うんです?!」と驚きを示したが、北斗は黙殺するように通信を切った。まあアヤが見ているからそんな台詞を用いたのは分かる。

 場面は替わってTAC基地本部。北斗の不可解な休暇願に美川も竜隊長も怪訝な顔をし、南は何かを探る為と推測したが、今野は女の色香に迷ったものとし、山中は首根っこを掴んででも引きずり戻す、と宣言したのだから、相変わらず信用されていない奴である、北斗は(苦笑)。
 一応、夕子はフォローを入れたが、山中、今野はおろか、吉村までもが北斗を信じようとしない。今野に至っては、北斗が飛んだのでなければ「逆立ちしてもいいぜ。」とまで言い出す。辛うじて様子見の時間が欲しいと言った夕子の懇願を竜隊長が承認したため、北斗からの連絡を待つことになった。

 そしてその夜。北斗はキャンプ・ファイアに興じながらもそろそろ変化がある筈、と構え、夕子はただ1人北斗からの連絡を本部で待ち続けていた。そして夜中に怪しい気配を感じて目覚めた北斗は、女子大生達の姿が無く、代わりにユニタングが寝転がっているのを発見。即座にTAC基地本部に連絡せんとしたが、妨害電波が流されていて叶わなかった。
 こっそりキャンプ場を向けだして仲間に伝えんとした北斗だったが、TACパンサーにはアヤが待ち構えていた。そして彼女の口からすべて(超獣の正体、目的)を聞き出した北斗はTACパンサーでその場を離脱せんとしたが、気付けば五体をバラバラにしたユニタングに囲まれていて、その手から発せられた糸に絡め取られたのだった。

 そして夜明け。北斗の悲鳴を夢に見て目覚めた夕子。何もない状態で夜通し待ち続けるのはAと体を共有する彼女の体をもってしても困難だったのだろう。目覚めた夕子には竜隊長からコーヒーが差し出された。親切な部下想いの隊長だと思う間もなく超獣が第2レーダー基地を襲撃している、との報が寄せられ、竜隊長は美川に連絡待機、吉村に空中からの攻撃を命じると、残りのメンバーには自分と共に地上攻撃に向かうよう命じた。
 そしてBパートに入り、地上からTAC第2レーダー基地に向かった面々はその途上、大東女子大サイクリング部員達と遭遇した。その中には北斗もいた。
 何をしていたと問われた北斗は、耳の後ろに差し込まれた針を媒介に操られているようで、TACの面々に極めてふざけた態度で相対した。勿論これには山中達は激怒。だが北斗は超獣退治に汲々として遊びもままならないTACの任務にうんざりしていていると対応。胸倉を掴んで殴り掛からんとした山中だったが、竜隊長に止められると「とっとと失せろ!」と言って突き放した。
 普通に考えて、怒りを感じるより不可解な北斗の言動。夕子は助け起こしながらその様子を伺うと、北斗は眼で自分はリモート・コントロールされているから助けて欲しい、と夕子に訴えた。だが、視聴者にはナレーションでは分かるが、夕子には聞こえる訳ではなく、表情や台詞は完全に相手のコントロール下にある北斗は表面的には夕子の勇ましさをからかう始末だった。
 さすがにこれには普段温厚な今野も激怒して北斗を殴りつけた。山中にしても今野にしても北斗のことを信用していないとはいえ、北斗を信じて徹夜で待つ夕子の健気さには絆され、優しい言葉もかけていたから尚更である。
 結局北斗はにやけ面のまま女子大生達と共に走り去り、TAC隊員達は怒りを通り越して呆れ果てていた。でも何かを感じ取った夕子は隊長に申し出て、単身バイクで北斗達を追った。

 北斗をリモート・コントロールで取り込み、夕子と引き離したことでウルトラマンAの妨害は除外出来た、とほくそ笑むアヤ。だが夕子が追って来たのに気付くと、女子大生達は夕子に襲い掛かり始めた。バイクから転倒した夕子を包囲するように自転車で掛けて様子を見ていたアヤは部下である9人の女子大生にTAC本部に向かえ、と指示した。
 すると女子大生達は自転車に乗ったままピラミッドを組むように走るとその姿はユニタングとなり、本部のレーダーに向かって歩み寄り出した。
 辛うじて意識を保っていた夕子はその様子をTAC本部に通報。だがアヤは自転車に乗った北斗を竜巻で上空高く吹き上げてしまった。恐らくは北斗を殺す為だったのだろう。だが、上空から落下する衝撃で北斗の耳からはリモコン針が外れ(笑)、夕子は落下する北斗目掛けてジャンプし、ウルトラタッチが為された。

 かくしてウルトラマンAとユニタングの決闘が展開されたのだが、殴り合いでは完全にAが押していた。形勢不利なユニタングは口と両手から糸を出してAを絡め取らんとしたが、Aが両腕をクロスさせてから仁王立ちの構えを取るボディスパークを発動すると糸は忽ち焼き切れた。
 続いてAはウルトラギロチンの変形技であるマルチ・ギロチンなる技で短剣状の4つの光線を放つとユニタングの5体はバラバラとなった。だが、このときのユニタングはアヤが担う角の部分を欠いた状態。アヤがバイクに仕込んだリモコンを発動させると5体は空を飛んで移動した。
 Aがこれを追ったところ、ユニタングの体は繁華街にて組み直され、ユニタングは鉄塔を初めとする街中の破壊に掛かった。勿論Aがすぐに飛んできて再戦となった訳だが、やはりA有利に変わりはなかった。
 だがここで角に変身したアヤがユニタングに合体すると戦闘能力が強化されたらしく、謎の発光、飛翔する角、糸吐き攻撃にAは防戦一方に追い込まれた。だがTACの援護を受けて絡め取りから脱出したAはストップフラッシュでユニタングの動きを停止させると、ウルトラシャワーでもって完全にその体を溶かし切って絶命させた。この技、ウルトラマンのウルトラ水流と見た目は変わらないのだが、どんな成分なんだろうか?

 ラストシーンはTAC基地本部。引き上げてきた一行の中で北斗は自分の発した言葉を逆の意味に変換されて発せられていたと説明し、それを聞いた竜隊長は「電磁波で自由に操ったんだろうな。」とした………ん?逆の言葉で喋ればよかったんじゃないのか?北斗よ!?
 ともあれ、事件そのものは完全に解決したのだが、別の問題が残っていることに気付かない今野は「女ってのは恐ろしいもんですね。」と呑気に呟いたが、これは女子率2割以上の職場では致命的だ。案の定、美川に北斗を疑ったことが間違いだった時の約束−逆立ちの履行を命じられた。
 当の夕子は「もういいんです。」としたが、竜隊長が履行を命じた。勿論今野の巨体は逆立ちに不向き(今野を演じた山本正明氏の身長は180�僉�体重は90��(笑))で、苦戦する今野を笑う竜隊長以下、TAC隊員達の笑顔は完全にいたずら小僧だった。最前まで怒り心頭でも誤解が解けるとあっさりアットホーム化するのがTACの良い所であり、重厚感に欠ける欠点でもあると言えよう。
 かくしてAが様々な技を見せ、色香を前にした北斗を巡り、チームとしての信頼関係に大いに疑問が残った第11話は終結した。


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平成三〇(2018)年七月一〇日 最終更新