ウルトラマンA全話解説

第13話 死刑!ウルトラ5兄弟

監督:吉野安雄
脚本:田口成光
殺し屋超獣バラバ登場
 ある平和な夕暮れ前、新聞配達に励む少年・一郎(根津雅彦)とその弟・昭二(染谷利貴)は虚空に半透明の状態で立つ殺し屋超獣バラバを目撃した。慌てて電話ボックスに駆け込み、これを通報せんとしたが、バラバはその電話ボックスを襲った。
 一郎は辛うじて昭二を電話ボックスから脱出させたが、自分は電話ボックスもろともバラバの蔦に持ち上げられ、そのまま地面に叩きつけられるという何とも痛ましい殺され方で命を落とした………。
 ところがもっと悲惨なことに、一郎が超獣に殺されたという昭二の目撃証言を警察は信じなかった。必死になって事態を説明する昭二を警察官は完全に嘘吐きと決めてかかり、一郎の死は倒れた電話ボックスの下敷きになった事故と思い込んでいた。昭二は駆け付けた北斗と夕子にも必死に訴えたが、鈴木という若い署員に連れて行かれてしまった。

 警察官が昭二の証言を嘘と決めてかかったのは、他に目撃者・通報者がいなかったからである。なるほど、超獣の様な40〜60mもある存在を他に誰も見ていないのは不自然だ。
 だがそれを差っ引いてもこの警官の分からず屋ぶりは再放送を初めて見たときから今でも頭に来ている一体、どんな事故が起きれば電話ボックスが倒れるというのか?!あまつさえ、「超獣」と聞いて気の抜けない北斗に対して言った台詞が、「うちの子も同じです。嘘も本当も一緒にしてしまって。しょうがありませんなぁ……。」………………テメェの育てているガキを基準に物事決めてんじぇねぇ!!!
 ただでさえ巧みに世間から存在を隠している仮面ライダーシリーズの悪の組織じゃあるまいし、毎週怪獣・超獣・宇宙人が登場するウルトラシリーズの世界で子供が「怪獣が出たよ!」といっても端から信用されない傾向はリアリティ的にも大いに納得がいかない!恐竜生存説を唱える学者がクレイジー扱いされるのもそうだが、もうチョット何とかならなかったのだろうかとガキの頃から苛立っていた………。

 場面は替わってTAC基地本部。そこではTAC基地の特殊レーザーが奇妙な天体を捉えていた。天体はゴルゴダ星と命名されていた。勿論イエス・キリストが磔にされたゴルゴダの丘に因んだものである。間違っても御釈迦様が釜茹でになったところではない(←元ネタ分かるかな?(笑))。
 また、本話における超獣バラバの名は、イエスと共にどちらが処刑されるかと民衆に問われた殺人犯の名が由来である(イエスを処刑したイスラエルの総督は、本当はイエスを処刑したくなくて、「神の子」を名乗るイエスと「殺人犯」であるバラバのどちらを助けるべきか?と問うたところ、「神の子」を名乗ることの方が重罪を見たイスラエルの人々は口々にバラバを助けるべし、と叫んだ。このことが元でイスラエルの人々はキリスト教徒の恨みを買うことになった)。
 大丈夫か、この話?クリスチャンの方々から強烈なクレームが寄せられそうな気がするのだが…………海外でも人気のあるウルトラマンシリーズだが、この第13話・第14話は放映可能なのだろうか?
 ともあれ梶主任の説明によるとゴルゴダ星は我々人類が住まう宇宙の裏面となるマイナス宇宙に存在するという。勿論謎多き存在である。

 その頃、TACパンサーで基地に向かって期間中の北斗と夕子のウルトラリングが、超獣もいないのに光った。それを訝しがりながら車を止めて車外に出た2人は上空に「ゴルゴダの星に集まれ」というウルトラサインが浮かんでいるのを見つけた。
 ウルトラ兄弟の呼び出しとあっては否も応もないとした北斗と夕子は即座にAに変身し、マイナス宇宙に飛び込む為に光速を越えて飛び……………って、設定飛行速度のマッハ20の約44倍に当たる光速を難なく超えっちゃってますけど、いいんですかあぁ?!?!
 とんでもないスペックオーバーがあっさり為されたことに呆然とするしかなかったが、ともあれ様々な光の波や曲線や帯を乗り越えてゴルゴダ星に近づいたAは行く手に4人の兄が飛んできているのを確認すると軽い挨拶を送ってゴルゴダ星に降り立った。

 4人の兄達もほぼ同時に降り立つと、新マン(←帰ってきたウルトラマンのこと。世代的にこう呼ばせて頂きます)がAに何の用で呼んだのか?と尋ねた。勿論Aは呼ばれたのは自分の方だと思っていたのでそのことを告げたが、兄達は自分達の方がAに呼ばれたと思っていた。
 となると考えられるのは、何者かがゾフィー、ウルトラマン、セブン、新マンに対してはAの名を騙って、Aに対しては兄達を騙って5兄弟をゴルゴダ星に呼び出したことになる。訝しがりながらゴルゴダ星を歩いていた兄弟達は程なく、小高い丘の上に5本の十字架が立っているのを見つけた。
 ウルトラマンが1人先行して十字架の1つを見てみると、頭部にはウルトラマンの名を示す文字が書かれていた。つまりはウルトラマンの墓標だというのだ。驚いた残りの兄弟達が駆け寄って確認すると、案の定、他の十字架にもウルトラ兄弟達の名が刻んであった。

 その頃地球では、ヤプールが放射能の雨とともにバラバを派し、暴れ回らせた。バラバは自動車、マンション、鉄塔等を当たると幸いとばかりに鞭で砕いて回り、口からは炎を吐いて、街や人を襲った。やい、さっきの警察官!昭二に詫びんかい!!
 TACでは竜隊長が隊員達に出動を下知した。だが勿論そこに北斗と夕子はいない。竜隊長は美川に2人を呼び出すよう指示し、山中・今野にはTACスペースでの出撃を、吉村には自分と一緒の出撃を改めて命じた。同時に竜隊長は美川に、北斗と夕子が捕まり次第TACアローで出撃するよう伝えたのだが、連絡が繋がる筈もなく、この後美川は延々と応答しない2人に呼び続けることになった。
 過去の仕事柄、決して応答しようとしない相手に延々と電話で呼び出し続けたことが何度もあるが、これって本当に辛いんだよなぁ……哀れ、美川……。

 その頃、ゴルゴダ星のウルトラ5兄弟は地球上でバラバが暴れているのを察知し、ゴルゴダ星への呼び出しは地球をウルトラ兄弟不在にする為の異次元人の偽報であることを悟っていた。そんな中、ゾフィーは何故に地球に常駐するAだけではなく、自分達までも呼び出されたのかを訝しがっていた。
 ともあれ、ウルトラマンがAにすぐに地球への帰還を促し、Aもそれに従おうとしたが、そこへ異次元人の罠が襲った。それは冷凍ガスだった。十字架に仕掛けられた冷凍装置から発せられたもので、絶対零度に冷却する能力を持っていた。うーん……ヤプールはウルトラ兄弟が低温に弱いことを利用した戦略としていて、それはそれで着眼点としては正しいのだが、絶対零度なんか持ち出されたら寒さに強いも弱いもない気がするのだが………光速や絶対零度をこうもあっさりクリアすると何か逆に凄味が失せるような………(苦笑)。

 いずれにせよ、地球・ゴルゴダ星の双方で事態は悪化の一途を辿った。TACの攻撃は弾丸もミサイルもバラバに弾かれ、痛みを与えている様子すら見られなかった。ゴルゴダ星でもウルトラ兄弟達は低温の前に身動きもままならず、地球の状況に焦るAもエネルギー不足に陥っていた。
 そんなAに対し、ウルトラマンは自分達のエネルギーを分け与えるからすぐに地球に向かうよう促したが、エネルギーを譲渡することは兄達の命が危機に瀕すると見たAはこれを拒んだ。だがそんなAに対してウルトラマンは平手打ちを食らわせた。
 ウルトラマン曰く、このままでは5人とも死ぬことになる。中でもAは死なせるには若過ぎるとのことだった。ちなみにウルトラマンとAの年齢差は5000歳だが、これって大きいのだろうか?
 野暮な疑問はさておき、ウルトラマンに代わってゾフィーがAに兄達の気持ちが分かるかと問い、Aもそれを受け止めたことを回答すると、ゾフィーはウルトラチャージを発動して4兄弟のエネルギーを集約してAに譲渡し、Aを地球へと飛び立たせた。
 だがこれによりエネルギーの大半を失ったゾフィー達はカラータイマーも赤となり、そのまま十字架に鎖でもって拘束されてしまったのだった………。

 Bパートに入って、場面は地球。相変わらずバラバは傍若無人に暴れ回っていた。そんなバラバに対し、竜隊長はウルトラレーザーの使用を指令した。第10話でにせ郷秀樹に化けたアンチラ星人の武器を転用していたのだとすると、 TACもなかなかにちゃっかりした組織である(笑)
 だがこのオーバーテクノロジーも見た目、バラバに多少の痛みを与えたに過ぎなかった様で、TACファルコンはバラバの鞭に絡め取られ、竜隊長と吉村は(放射能の雨が降る中を!)脱出を余儀なくされた。
 TACファルコンがやられたのを確認した山中は、北斗達と連絡がつかずに業を煮やしてTACアローで飛んで来た美川に連携攻撃を竜隊長に代わって指示。その竜隊長もパラシュートで着陸したと同時に地上攻撃に移らんとした。
 そして地球に戻って来た北斗と夕子もTACパンサーで現場に急行していた。

 程なく、TACスペースもバラバの攻撃を受けて炎上し、山中と今野もベイルアウト(脱出)した。2人が地面に降り立った所へ北斗と夕子がTACパンサーで駆け付け、北斗はバラバの火炎攻撃に曝されていた2人を救出してパンサーに乗せるとそのままビルの間を抜けながら走行してバラバの目を逸らし、死角に回り込んだ。
 ちなみに放射能の雨は広範囲なものではなく、バラバから少し離れると被曝することはなく、4人は改めて様々な火器を持ってバラバを攻撃せんとしたが、そこで北斗はバラバに突進する昭二の姿に気付いた。
 少年は健気にも兄の仇を取らんとしてバラバに迫っていた訳だが、悲しいかなその得物はパチンコ。バラバにダメージを与えるどころか、命中しているかどうかする疑わしかった(泣)。だがそんな攻撃でもバラバには目障りだったのか、超獣はマンションの頭部を破壊し、瓦礫が昭二に降り注いだ。
 勿論これを見過ごしにする北斗と夕子ではなかったし、他のTAC隊員達も同様だった。北斗と夕子はかすんでのところで昭二を助け、兄の仇討ちを訴える昭二に北斗は、少年の言葉を信じ、少年に代わって超獣を倒す、と宣言した。
 またその三者の様子を上空から見ていた美川はこれをも守らんとしてバラバに突進し、それがために彼女の搭乗するTACアローはバラバの鞭に絡め取られてしまった。

 美川絶体絶命のピンチ!だが次の瞬間北斗と夕子のウルトラリングが輝き、2人はAに変身するとバラバの手からTACアローを奪還し、地面に降ろしてこれを救った。
 A VS バラバの一戦は、互角の一進一退に見えたが、総合的に観察すると明らかにAの方が上回っていた。鞭を駆使し、放射能の雨に守られていることを強味にAと互角に戦っていたバラバだったが、それ等が無ければ格闘能力でAに劣っていたのは明らかで、「死んだふり」という姑息な戦法も戦況を逆転出来る程ではなく、切り札としていた頭部の剣も奪われるという体たらくだった。
 Aは奪った剣をかざしてバラバを攻撃せんとしたが、姑息さではバラバよりも、その親分であるヤプールが一枚も二枚も上手だった。ヤプールはAとバラバの間の空間にゴルゴダ星で拘束されたウルトラ4兄弟の映像を投影し、これを人質としてAに抵抗中止を強要した。映像はTAC隊員達や他の一般ピープルにも見えており、竜隊長は攻撃中止を命じた。
 その後二度、三度、バラバに抵抗せんとの意志を見せかけたAだったが、ヤプールはその都度兄弟殺害をほのめかし、遂にAは戦意喪失。「恐れ入ったか!ザマあ見ろ!」と高笑いするヤプールだったが、ホント、その姑息さは恐れ入ったわ(失笑)

 結局Aは姿を消さざるを得ず、それを見た竜隊長も、昭二少年も何故かAが死んだと断じた(←何で?)。邪魔者が去ったバラバは傍若無人な破壊を続行。竜隊長はA亡き今、TACがこれを倒さなくてはならず、TACの総力を結集する旨を隊員達に宣言した。だが「総力」と言っている傍から北斗と夕子がいなかった……。

 そしてその北斗と夕子は、長距離移動と戦闘による疲れか、放射能の雨を被曝したためか、瓦礫の中に倒れ伏していた。ウルトラ4兄弟が拘束され、抵抗出来ない状態で地球とAはどうなるのか?という危機的状況を引きずったまま話は後編に移るのだった。


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平成三〇(2018)年七月一五日 最終更新