ウルトラマンA全話解説

第19話 河童屋敷の謎

監督:筧正典
脚本:斎藤正夫
河童超獣キングカッパー登場
 冒頭は公園で遊ぶ子供達から始まった。子供達の中で安夫(野島千照)と言う少年は仲間達から軽い仲間外れにあっていた。どうも「嘘吐きやっちゃん」と呼ばれる虚言癖にあるらしい。
 そんな安夫少年が一人寂しく木の上でオカリナを吹いていたら、突如大水を伴って、河童超獣キングカッパーが現れた。だがこのキングカッパー、現れたと思ったらすぐに地面に潜ってその姿を消してしまった。プール状の頭頂部だけを地上に残して………。

 通報を受けたTACのTACパンサーに乗せられて北斗と山中がプールの残された地点にやって来たのだが、そこに屋台を引っ張っていた安夫の母(福田トヨ)が偶然通りかかり、姉(渡辺千鶴子)も駆け付けて来た。母と姉は安夫がまた虚言癖を出したのではないかと眉を顰め、安夫を咎めた。
 勿論本当に見た安夫は反論するのだが、肝心の超獣の姿が見えない。それを上手く伝えられない安夫は「プールになった…。」と告げるのだが、この伝え方では誰も信用する筈がなく、母も姉も怒り、集まっていた野次馬達も嘲笑し、山中も呆れて引き上げる、と北斗に告げた。ただ1人北斗だけが少年を憐れんで見ていたが、こういうのを「同病相憐れむ」と…………というのは少し違うか?(苦笑)
 しかし、第13話のバラバと言い、本話のキングカッパーと言い、短時間とはいえ、昼日中に現れたあれ程ガタイのある超獣(バラバ75m、キングカッパー57m)が1人か2人にしか目撃されていないとはおかしな話である。しかも昨日までなかったプールが残されているというのに………。

 常日頃の虚言癖による自業自得があるとはいえ、当然の様に友達にも信用されない安夫。一緒にプールの残された現場に行ったところ、人の好さそうな初老の男性(細川俊夫)とまだ若い妻(坂田純子)が手招きしていた。
 安夫の友人達はプール(←というより池に近いのだが)で泳がせてもらえる、と喜んだが、プールそのものが超獣であることを目撃している安夫は春山夫妻を宇宙人かも知れないと警戒して友達にも応じない様に告げたが、「証拠を見せろ。」と言われてはぐうの音も出ず、「泳げない」ということを理由に嘘を吐いているとみなされた。ちなみに安夫のカナヅチをからかい、夫婦の招きに応じた少年2人がプールでは浮き輪を使用していたことを付け加えておこう(笑)。

 果たせるかな、プールを装うキングカッパーの頭部は人を捕らえる罠で、2人の少年は引きずり込まれてしまった。1人引き返し、超獣を発見した木の上で様子を見ていた安夫は驚愕した。しかもふと木の下を見れば、姉も春山邸のプール=キングカッパーの頭に行こうとしている。勿論安夫は必死に止めたが、やはりいつもの虚言癖としか見て貰えない。慌てて木から降りて追いかける安夫だったが、その途中でついさっき超獣に呑み込まれたばかりの友人に出くわした。
 2人は春山邸のプールに何の異状もなく、行動を共にしなかった安夫を馬鹿呼ばわりしたが、その体からはへそが消えていた(2人とも安夫に指摘されるまで気づかなかった)。ということは、キングカッパーは河童ではなく雷様だったということか?(笑)

 ともあれ、安夫は再度北斗を伴って春山邸を訪れた。すると春山夫妻は「TACのファン」とまで言って北斗と安夫を歓迎。安否が気遣われた姉も得に変わった様子もなく出て来た。しかもへそもちゃんとついて。姉は10〜13歳ぐらいの少女で、さすがにおへそを出すのは恥ずかしそうだったが、TAC隊員が来たとあってはチラ見させてこれを証明。さすがに北斗も気まずそうで、これ現代だったらセクハラになるところだな(苦笑)。
 こうなっては、安夫は哀れにも姉に怒られ、北斗にまで嘘は男の恥と諭され、春山(夫の方)に至っては、安夫の言っていることが本当だったら北斗が1人でプールに潜って失われたへそを回収してくれるとまで言って笑った。伏線臭いな(笑)。

 場面は替わってTAC基地本部。話を聞いた今野は大笑いしてへそ調べした北斗をからかい、山中はそんなことをしているからTACの評判が悪くなると叱責した。否、TACの問題は超獣を自力で倒せないことだと思うが。ちなみにこれはからかって言っているのではない。妖星ゴラン迎撃やガマスの大増殖を防いだという功績は立派に上げているのだから、名前(Terrible monster Attack)の通り超獣攻撃を成功させて入れば、世にも名高いTACは物凄く自慢出来る組織になり得るのだから。
 ともあれ、子供の言うことを極力信用しようとする姿勢を吉村にまで「だいだい子供に甘過ぎる。」とされた北斗もまた哀れだった。

 場面は替わって安夫の母が引く屋台のラーメン屋。そこで夕子は安夫の言っていることが全くのでたらめとも思えない、と北斗(と安夫の母)に告げた。確かに嘘を吐くにしては荒唐無稽過ぎる。詐欺であれ、悪戯であれ、人を嵌める為の言論には幾分かの真実が混じるか、全くの嘘にしても真実味ある脚色を加えるのが普通だ。即刻バレる嘘など害をなさない分罪が無いとさえ言える。
 吉村に「甘過ぎる。」とされる北斗は尚も安夫を信用しようとし、そうあれば良いという夕子の2人を前に母は親としては嬉しそうだったが、やはり普段虚言癖に手を焼いているイメージの方が強いのか、息子のことは放置しても良いとさえしていた。

 だがその頃、安夫の自宅では姉が起きて春山邸に向かっていた。気付いた安夫が止めても黙殺で、昼間北斗に見せたへそは偽造だった。
 これを尾行し、春山邸に忍び込んだ安夫はそこで顔や体の半分を苔の様な物に覆われて苦しむ友達を目撃した。勿論姉も同様の姿に変貌していた。そして待ち構えていた、昼間の温厚さが別人の様な凶悪な人相に変貌していた春山夫妻に捕らえられたのだった。

 Bパートに入り、翌朝、安夫はプールサイドで目覚めた。案の定、その体からはへそが消えていた。
 さすがに当の本人の体に異常が認められてはTACも疑う余地をなくし、竜隊長は春山邸の包囲を指示した。そして安夫少年はTACのメディカルセンターに運ばれ治療が施されたのだが、やはりその体は苔に覆われつつあった。
 梶主任の分析では大脳皮質ホルモンに異常が見られ、サイボーグ化しつつあるとのことで、本来なら体と共に精神も平常を失うところだが、安夫は梶主任が言うところの、「余程に気に掛けること」を支えに子供の能力を超える精神力で変貌に抵抗しているとのことだった。
 医師(松尾文人)の説明では、取り敢えず注射により精神の安定は保たれるが、体に関しては沈黙するしかなかった。そこへ安夫の母もやって来た。変わり果てた息子の姿を哀しみ、彼の言を信じなかったことを悔いて詫びる母だったが、当の安夫は(注射の効能もあるのだろうけれど)ようやく周囲が自分の言うことを信用してくれるようになったことに安堵の表情を浮かべていた。
 そしてそんな安夫に北斗は約束の履行を誓った。

 本来、「プールに飛び込んでへそを取り戻す。」と言ったのは、北斗の言葉ではなく、春山の罠だった。夕子は春山邸に向かう北斗に、「罠に嵌りに行くようなものよ。」と言って止めたが、北斗は、「あの子は危険を冒して本当のことを言い続けて来たんだ。その安夫君を裏切るなんて出来るか。俺は約束したんだ。」として、履行にこだわった。
 北斗星司という男がここまで「約束」と言う言葉を重んじるのには、中学時代の遭難経験にあった。北斗が夕子に語ったその経験によると、山で遭難した北斗達を助ける為、引率の先輩大学生は北斗達に待機を命じて1人で道を探しに行った。ところが行き違いで北斗達は他の登山隊に助けられて下山した。そしてそれに気付き得なかったその先輩は吹雪の中、三日三晩北斗達を探し続けたのだった。北斗曰く、「子供との約束だからと言っていい加減に考えたりはしなかった。命を懸けて約束を守ろうとしたんだ。」とのことで、彼のこの信念と行為に、担架に乗せられて下山した先輩を見た北斗達は皆泣いたとのことだった。そしてどんなことがあっても「約束」を守るということを誓い合ったのだった。
 この北斗の記憶に夕子も静かに頷いた。この辺りこそが、一ヒーロー、一キャラクターとしての北斗星司の誰にも負けない魅力だろうヤプールという宿敵や、ヒッポリト星人ジャンボキングの様な強敵、次々と現れるウルトラ兄弟と言った存在の前に、人としての北斗星司のこの魅力が若干薄らいでいるのが残念である。シルバータイタン自身、「全話解説」の為、『ウルトラマンA』を通して見るまで気づいていなかったのだからエラソーなことは言えないが。

 場面は替わって春山邸。春山夫妻が怪しいのはもはや明白だったが、屋敷の中には子供達が囚われているため、竜隊長も手を出しかねていた。今野に至っては邸に向かって卑怯なまねはするなと叫び、駆け付けた北斗も屋敷内に飛び込もうとしたが、竜隊長はこれを止めて、ガス弾の発射を命じた。
 このガス弾、どんな効果があるのか詳らかではないが、今野と北斗が数発打ち込みながら、ガスマスクはおろか、ヘルメットのバイザーさえ下していなかったから、大した効果の無いものだったに違いない(笑)。しかも中にいた春山夫妻の正体は異次元エージェントアンドロイド。当然の様にガス弾に効果はなかった(苦笑)。

 そしてTACはアンドロイド達と遭遇。子供達はどこかという竜隊長の詰問にも答えず、笑いながら(男の方が)何かの電源を入れ、プールの水が動き始めた。
 相手の動きを放っておけないと見たTACは銃撃を開始。竜隊長と北斗が男のアンドロイドを倒すと、北斗はプールに向かって駆け出した。そして女のアンドロイドも竜隊長と今野に射殺されたが、夕子が腕を撃たれて負傷した。
 竜隊長達は夕子の手当てを優先したため、北斗は単身プールに飛び込み、プール内のあちこちにTACガンを放ったが、渦巻きと水中にある大量の藻に押さえ込まれた。異次元空間のヤプールは「これがキングカッパー大作戦だ!」と言って笑っていたが、ただの北斗星司捕獲に過ぎなかった(笑)。

 直後、竜隊長達はプールサイドに駆け付けたが、キングカッパーは地中から這い出て全身を現し、竜隊長は隊員達を門前まで退かせてからTACガンでの攻撃を指示した。そしてそれを追いかける様に春山邸から出て来た子供達(すぐに美川に伴われて避難した)。どうやらヤプールは北斗さえ捕らえれば後はどうでも良かったらしい。
 そして即座に北斗を捕らえたことを自慢したが、かと言って何も要求しない(苦笑)。もっとも、北斗が囚われていてはTACも全力攻撃が出来ない。キングカッパーの頭上で溺れる北斗を見たTACスペース上の山中は竜隊長にこれを報告し、竜隊長は頭部を避けての攻撃を命じた。
 この間、夕子はTACアローによる突撃で北斗を救いたいと申し出たが、竜隊長は彼女の怪我を理由にこれを許さなかった。だがキングカッパーの大暴れは止められず、腹部の口から吐く水と指からのカッパーミサイルを受けてTACスペースも撃墜された。
 そして業を煮やした夕子は竜隊長の制止も振り切って基地に戻り、TACアローに搭乗したのだった。だんだん北斗に似て来たな(笑)。

 TACアローで攻撃を敢行した夕子だったが、程なくカッパーミサイルを被弾。アローを脱出した夕子がキングカッパー頭部のプールに飛び込んで北斗とウルトラタッチしたのは言うまでもない(笑)。はっきり言って、ヤプールの北斗捕獲には何の意味も無かったな(笑)。
 Aとの格闘が始まるとキングカッパーは強くも弱くもない超獣だったが、河童の悲しさ、皿の役割を果たすプールの水がなくなると弱体化するという弱点があった。勿論水を補充すれば強くなるということでもあり、前述の武器を駆使して一時はAに対して優位にも立ったが、エースバキュームで皿の水を吸収されると当然の様に弱体化した。
 そしてAは牽制のアロー光線で動きを止めたところに第8話以来のヴァーチカル・ギロチンを放ち、キングカッパーの体をメトロン星人Jr.同様に縦真っ二つにしてこれを倒した。

 そしてラストシーン。キングカッパーに襲われた病院は瓦礫の山と化していたが、安夫は無事で、その体は「特撮番組のお約束」により(笑)、元に戻っていた。体が元に戻ったことを駆け付けた母と安夫が喜んでいたところ、竜隊長達が安夫の姉や友人達を連れてやって来た。勿論彼女等も元通りだ。
 自分を敬礼で迎える北斗と夕子に敬礼を返した竜隊長は、命令違反を犯した2人に、明日の休暇返上で子供達を海水浴に連れて行けという「罰則」を与え、実に彼らしい信賞必罰でと子供達の喜びの声の中で第19話は終結したのだった。


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平成三〇(2018)年七月一六日 最終更新