ウルトラマンA全話解説
第21話 天女の幻を見た!
監督:山際永三
脚本:石堂淑朗
天女アプラサ、天女超獣アプラサール登場
第7話では山中、第5話・第15話では今野、第16話では吉村、第4話では美川にスポットの当てた話が為されたが、放映開始3週間でついに竜隊長にスポットの当たる話が為された。
冒頭は竜隊長のアパートから始まった。夜眠る竜隊長の夢の中に美しい天女が空を舞っていたのであった。目覚めた竜隊長は扉をノックする音を聞き付けた。置時計を見ればまだ6時前と言う早朝。ガウンを纏い、扉を開けた竜隊長の前に現れたのはつい今しがた夢に現れたのと瓜二つの、少女とも大人とも断じ難い若い女性(三景順子)。
何の用かと尋ねれば、「お手伝いに雇って欲しい。」と言う。いきなりそう言われて「雇いましょう。」なんて人もいないだろう(笑)。竜隊長は独り者であることを理由に丁重に断ったが、彼女は簡単には引き下がらなかった。
相手の台詞から自分の身分がTACの隊長であること知った上で訪ねて来たこと知った竜隊長は彼女が何故に自分と自分の住所を知っているかを尋ねた(職業柄、竜隊長の住所は秘密になっている)。だが彼女は「前から知っていました。」としか言わない。
結局、竜隊長の「私にお手伝いさんは要らないし、雇うにしても身元のはっきりしない人は雇えない。」と言う正論を受けて女性は、「来てはいけないところに来てしまったんですね。」と言う意味深な台詞を残して去って行った。
まあ、竜隊長が彼女に鼻の下を伸ばしたとしても、社会的地位から独身の彼がうら若き女性を雇用関係とはいえ自宅に出入りさせる訳にはいかなかっただろうけれど(笑)。
場面は替わってTAC基地本部。見た目地震計のような計測器が、乙女座方面での星団の爆発によるエネルギーの変動を察知し、山中が驚いていた。そこへ竜隊長が出勤し、場所が乙女座なら地球に影響はなしとして、「乙女座」と言うキーワードで思い出した様に、今朝の出来事を隊員達に語り出した。普通そんな話したら、誤解招くぞ、隊長(苦笑)。
もっとも、隊員達は口の上では竜隊長をからかっていたが、本気でその女性との仲を疑っている風はなかった。普段から信賞必罰に公平公正な竜隊長の人望は相当高いとうかがえた。
場面は替わってとある郊外。ある邸宅の大門に向かってシェパードが盛んに吠えていた。特撮でも昔話でも犬が吠え立てるのは「尋常ならざる存在に対して」というのが相場だが(笑)、そこへ飼い主にしてその邸宅の住人(松坂雅治)が駆け付け、無駄吠えをたしなめていたら、果たせるかな大門から顔をのぞかせたのは竜隊長のアパートを訪れた最前の女性だった。
経緯は不明だが、青年は邸宅内に招き入れた彼女から茶の供応を受けていたのだが、彼女の立場は「お手伝いさん」になっており、互いにいつまでもこうしていたいと言い合う状態。ナンパで出会ったその日に肉体関係持つ馬鹿ップルも顔負けの急接近だった。
更に彼女は青年に竜隊長宅での一件を話し済みで、青年は竜隊長のことを「けしからん!」とし、彼女が「そのおかげで貴方と逢えた。」と微笑んでも尚、「身分なんか聞かなくったって、君の人柄を一目見ればわかる筈だ!」と語気を荒げた。
そういう問題じゃないし、一目見ただけで人格を把握出来るとは物凄い思い込みだ(笑)。松坂慶子さん演じる女性を見て「こんな美しい人が血を吸う訳がない!」と思い込んだモロボシ・ダンの上を行っている(笑)。
ともあれ、そんな不自然な展開が為されたのも女性が自然ならざる存在だからであろう。それを証明するかのように異変が始まっていた。青年は悪寒を感じ、室内の金魚は毒気に中ったかの様に水槽に沈み、偶然付近をパトロールしていた北斗も気温の低下を感じ取っていた。近くにいた主婦達に聞き込むと、電波もおかしいらしく、ラジオやテレビの受信にも異常が生じているという。北斗からの通報を受けた竜隊長は宇宙線によるものではないかと考え、初めに計器の異常を、次いで成層圏の異常を疑い、山中達に調査を命じた。
その間も現地の調査を続けていた北斗と夕子は、低気温の中心と思われる邸宅を訪ねたが、そこはあの青年宅だった。青年は北斗と夕子のTAC制服を見ただけで邪険極まりない態度を取った。いきなりな態度に面食らう北斗がその理由を尋ねると、青年は「TACの隊長が嫌いだ。」と回答。何ともストレートな奴である(笑)。
何故に隊長を嫌うのか?と問えば、「驕り高ぶった人間は嫌い。」というもの。視聴者には例の乙女から聞いた話に過剰反応しているというのが分かるが、そんな背景を知らない北斗と夕子には納得がいかない。
そりゃそうだろう。
竜五郎隊長は歴代正義のチームの隊長達と比較しても、職務上厳しく出ることはあってもエラソーに振る舞うことなど皆無と言っていい人だ。他の隊長達も無駄にエラソーな人はいないのだが、それでも竜隊長は群を抜いている。エラソーな長官との比較もあって(笑)。
だが青年は異常事態の発生すら否定して北斗と夕子を邪険に追い払うと家の中に引っ込んでしまった。
諦めて帰りかけた北斗と夕子は窓から2人を見る女性に気付いたのだが、女性は驚いた様に姿を隠し、室内に戻ってきた青年の前でもどこかTACに脅えている様な様子を見せた。そんな女性を前にTACを批判し、自分が守るからと言って元気づけようとする青年。思い込みが激しいものの、根は良い奴なんだろうなあ。
余談だが、このときの青年を演じた松坂雅治氏は『ウルトラマンタロウ』で東光太郎の後輩を、『ウルトラマンレオ』で白土純隊員を演じた。幸福な役回りとは言い難かったが。
場面は替わってTAC基地本部。北斗から自分を嫌っている青年がいると聞いた竜隊長だが、身に覚えはなかった。青年とは面識がないから覚えが無くて当たり前だが、TACの隊長と言う職業を思えば、現実世界でいえば警察のキャリア組みたいなものだから、悪しき輩の逆恨みなら買っていそうな気がするが、それでも全く恨まれる心当たりがないのだとしたら竜隊長は大した人物だ(笑)。
ともあれ、青年宅に若い女性がいて、しかも近所の人達はその存在を認知していないと聞いて竜隊長と今野は様々な不自然さから、女性は今朝隊長宅に現れた者ではないか?と考えた。同時に隊長はその女性と瓜二つな女性が夢に現れたことを話し、手掛かりを求めて青年宅を自ら訪ねることにした。
青年を刺激しないよう、スーツにネクタイで、単身青年宅を訪問した竜隊長。すると屋根の上にはあの女性が立っていて、目を光らすと謎の光線が門に命中し、火花を散らせた。
直後に女性を探して庭に降りてきた青年は灌木に隠れる様にして脅える女性からTACが来たと聞いて激昂。感情的になるのは分からないのでもないのだが、「用も無いのに何度も来るなんて人権蹂躙だ!」という台詞がぶっ飛んでいた(苦笑)。用があるから来ているし、同意なく門内に入ったり、正式な手続きを経ない拘束をしたり、退去要請に応じなければ、「人権蹂躙」という言葉も若干通じるが、門の前に立っただけで何も要求していない状態で「人権蹂躙」とは恐れ入る(苦笑)。
そして彼女を守りたい一心で門に来た青年は竜隊長と遭遇。竜隊長は今しがた彼女にレーザー光線で襲われたことと、それを受けて焼けた門扉を差して彼女を地球外的存在と告げたが、TAC不信に凝り固まる青年は信じず、目の前の人間が隊長と知ると「帰れ!」の一点張りで、竜隊長も引き下がらざるを得なかった(任意の事情聴取目的で訪問したものであるから、公的な令状が無い以上、この時点で竜隊長が帰らなかったら、ここで初めて「不退去罪」と言う名の「人権蹂躙」が成立する)。
場面は替わってTAC基地本部。レーダーを注視する梶主任の説明によると、いまだ大量の宇宙線が青年の邸宅に降り注いでいた。すぐにでも何とかするための行動に移りたいところだが、竜隊長は面の割れている自分、北斗、夕子が再度訪れては、市民の安寧を脅かすことになりかねないと考え、山中、今野、吉村、美川に青年宅を張り込ませ、その報告を待っていた。
恐らくは青年だけではなく、広く一般市民の感情に配慮したものだろう。職権で正式な手続きを踏めば強制的に青年宅に踏み込むことは可能だが、敢えてそれをしないのは竜隊長の優しい人格によるものだろうけれど、これはケース・バイ・ケースがあると思うから、心根はともかく、手腕としては素直に褒め難い所だから複雑だ。
場面は替わって青年宅。冷却化によるものか、金魚鉢の金魚はすべて水中に横たわる状態だったが、青年は半袖でも寒さに気付く様子はなく、ひたすら女性を気遣っていた。
ともあれ、静かな状態なので、邸宅周囲に張り込む山中達は何の異常も察知出来ず、竜隊長も最近疲れている、と愚痴るような状態だった。
しかし、青年を刺激しないよう私服で張り込むのは良いとして、ただでさえ強面なのに夜中にサングラスをしている山中、怖くて怪し過ぎ(苦笑)。ちなみにこの愚痴は今野が通信機のスイッチを切り忘れていたため竜隊長に筒抜け(笑)で、それを竜隊長から告げられた隊員達は一様に気まずそうにし、直後に山中が気合を入れ直した。
それを笑いながら本部で聞いていた竜隊長と梶主任。更に背後の北斗と夕子にも「君達も内心そう思ってるんじゃないのか?」と笑って軽口を叩く竜隊長………こう言うところを見るとTACもZATやGUYSに負けないぐらいのアットホームさも持っているいいチームなのだが、どうも「北斗不信時の険悪ムード」のイメージが払拭出来ないのが残念だ。勿論かかる『全話解説』を展開する以上は良いシーンも悪いシーンも取り上げるつもりではいる。
ともあれ、その直後、梶主任の「日本上空の宇宙線がとうとう全部なくなりました。」の台詞に一同の表情は真剣なものに復した。
そしてBパート。もう金魚が完全に死んだ環境下で、青年は天女の姿をした女性を夢見て、恍惚の表情を浮かべていた。ところが当の彼女は青年とは正反対には悲痛の声を上げていた。
寝室で、青年や竜隊長の夢に登場したのと同じ装束を纏い、鏡の前に立つ女性が会話していた相手はヤプール。ヤプールから地球壊滅の為の指令を受け、それを拒絶する彼女だったが、ヤプールは過去の恩義を持ち出して、命令服従を強要していた。
ヤプールの説明によると、彼女―その正体は乙女座の精・天女アプラサ―はかつて乙女座が爆発した際に、ヤプールの助けで地球に避難することが出来たという過去があった。確かに命を救われた恩義とあっては、多少のことは協力して報いなければならないと考えるところだろう。だがアプラサは助けられる際にそんなことに協力する約束などしなかった、地球と地球人を愛するゆえにそんな命令に応じたくないと泣いて懇願した。
「ヤプールが異種族の命を救った。」とは何とも意外な話である(←『全話解説』制作の為に第21話を見直すまで全く覚えていなかった!)。勿論性根の腐り切っているヤプールはそんな哀訴を聞き入れる筈もなく、アプラサのことを「手下」、更には「おもちゃ」とまで呼んで服従を強要。こうなると、前述の救出劇も、「「いつか利用出来る。」という計算尽くでの恩着せ行為」か「乙女座爆発自体がヤプールの仕業」ではないかと考えてしまう。
ともあれ、そんなアプラサの嘆きの気配を察知してか、寝室に入って来た青年・シンイチ(←ここでやっと名前が出た)は悲しむアプラサを訝しがったかと思うと天女姿の彼女に舞い上がり、危険だから逃げてという彼女の悲痛な叫びも耳に入らず、部屋を追い出されて尚、「明日彼女に結婚を申し込むぞ!」と決意していた。ちなみにシルバータイタンは「ヤプールによるアプラサ救出」は全く覚えていなかったが、「シンイチの超短絡的プロポーズ決意」は覚えていた(苦笑)。
だが直後、シンイチの舞い上がりを断つかの様な、アプラサの悲鳴が聞こえて来た。恩返し強要拒否を怒ったヤプールによって彼女の顔は爛れた様に変貌していたからだった。さすがにシンイチも異変を感じ、しきりに寝室の扉を叩いて彼女への好意を訴えたが、変貌はますます進み、可憐な乙女座の精・アプラサ(身長150�僉�体重45�圈▲好蝓璽汽ぅ塞毀澄砲蓮∇釣僂修Δ壁垉ぬ�な笑顔を持つ天女超獣アプラサール(身長58m、体重2万8千t、スリーサイズ知る必要無し)に変貌させられ、その巨大化によってシンイチ宅は半壊してしまった………。
勿論これは付近を張り込んでいた山中達の気付く所となり、山中は即座にTACガンで応戦しながら本部に通報した。そこへ邸内からシンイチが飛び出して来た。あれほど嫌ったTACに助けを求めて(←まあ非のある行動ではないが)曰く、「天女かと思えば超獣だ……僕は気が狂いそうだ!!」………心配するなシンイチ、今まで狂っていたのが正気に戻ったのだから(苦笑)。
ともあれ、そこに竜隊長、北斗、夕子がTACスペース&TACアローで駆け付けてアプラサールを攻撃した。TACの攻撃が超獣を倒すに至らないのはいつものことだが、それでも痛みや打撃を与えることはあった(V7ミサイルがホタルンガを行動不能にまで追い込んだのも記憶に新しい)。だがこのアプラサールに対しては、攻撃はすり抜けているかのように効果がなく、逆にビルをも消滅させる頭上からの発光攻撃や衣を長く伸ばしての捕獲攻撃に苦戦を強いられた。
梶主任の分析によるとアプラサールの体は宇宙線で構成されたもので、実体がなく、TACの攻撃は本当にすり抜けていたのだった。
このままでは埒が明かないと見た竜隊長は北斗と夕子に自分がアプラサールの体内に突入し、内から攻撃すると告げて行動に移ったが、体内に大量にある糸状の物体に絡み取られる形となった。
アプラサールの体内では竜隊長を捕らえたことを高笑いするヤプールの声と、地球を害することを悲しむアプラサの声が交錯していた。そして隊長を囚われた形になった北斗と夕子も下手に攻撃できないままアプラサールの帯に囚われ、直後にウルトラリングの光った2人はTACスペースを捨てて(苦笑)、ウルトラタッチでAに変身した。
Aとアプラサールは殴り合いを展開し、アプラサールを地面に組み伏せたAはその体内からTACアローを奪還して竜隊長を救出した。梶主任の説明や、ミサイルすり抜けを無視するかのような肉弾戦が繰り広げられたことを変に思っていたが、どうやらアプラサールは宇宙線での体と、実体のある状態の両方を使えるようで、その体を半透明にするや、Aの攻撃はアプラサールの体を捕らえられなくなった。
こっちは相手を掴めないのに、相手はこっちを掴めるという「卑怯な幽霊体」を前にAの攻撃は命中している筈なのに空を切り続け、アプラサールの衣の帯には首を締め上げられるという状態に陥った。
だが、アプラサの意識は残っており、彼女はAに自分がヤプールに操られていることを訴え、この心の声を聞いたAは両手を広げて虹を発する様な技・異次元エネルギー遮断能力を発揮すると、「今までの苦戦は何だったんだ?!」と言いたくなるぐらいあっさりアプラサールの姿はアプラサに戻った(身長はそのまま)。
かくしてヤプールの呪縛を説かれたアプラサ。シンイチは「僕の天女…。」と呟くや、アプラサに向かって駆け出し、自分を見下ろす彼女に向かって言った。「どうしてそんなに大きくなってしまったんだい?」と…………って、驚くとこ、そこかい!?!?
結局Aはアプラサを白鳥座に連れて行くこととし、シンイチの恋は悲運に終わった。ちなみに連れて行く場所が白鳥座なのは、「乙女の姿は白鳥に乗ってこそ最も美しいから」(byナレーション)とうのが理由だったが……………白鳥座も乙女座も地球から見てそう見えるだけで、現地では白鳥の形も乙女の形もないと思うのだが…………蟹にそっくりな怪獣を見て、「蟹座から来たかも?」としていたMATの伊吹竜隊長と同じ思考の持ち主だったのか、ウルトラマンAは(苦笑)。
プロポーズまで決意したアプラサに去られ、地面に突っ伏して号泣するシンイチ。そんな彼に「夏の夜の夢だったんだ。だが夢は大切にしたまえ。」と言う励ましになっているのかどうかよく分からん言葉を掛けた竜隊長。何ともシンイチにとっては救いのないラストだったが、ヤプールの恩着せに苦しんだアプラサが救われただけでも良しとしたい気持ちを漂わせ、ツッコミどころ満載の第21話は終結した。
そういや、松坂氏は『ウルトラマンレオ』でも恋人に去られる役所を演じたんだよなあ………そっちは死に別れと言うもっとひどいものだったが。
後年、『ウルトラマン80』にて硫酸怪獣ホーを召喚するきっかけとなった失恋をした中学生も「シンイチ」だったな。偶然の一致なのか、それともこの話に因んで「シンイチ」としたのか……………日本全国の「シンイチ」さん、御免なさい(土下座)。
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平成三〇(2018)年七月一六日 最終更新