ウルトラマンA全話解説

第24話 見よ!真夜中の大変身

監督:真船禎
脚本:平野一夫・真船禎
異次元人マザロン人、妖女、地獄超獣マザリュース登場
 冒頭はとある小学校の教室から始まった。早川健太(紺野英樹)なる少年が自分の父親に関する作文を読み上げていた。健太の父は遠洋航海をする船乗りで、当然家を空けている時間及び日本を離れている時間も長く、健太の母は身重であることがさりげなく紹介された。まあ後々への向けての伏線だな。

 その頃、海では前話で子供達を拉致していた謎の老人が土座衛門になって浮かんでいた………と思ったら、死体と思ったその体は前話で子供達に歌っていた歌を歌っており、目を見開くと、復讐の時は来たとばかりに「今に見ていろ!」と叫ぶや、体を錐揉み回転させながら海中へ潜って行った。そしてその体はヤプールとは別種族となる異次元人マザロン人の姿となった。
 まあ異次元人がヤプール1種のみとは誰も決めていないし、実際にこれまでもギロン人アンチラ星人メトロン星人Jr.宇宙仮面と言った手下、提携者が現れていたから新たな異次元人の登場自体に文句はないが、前話で巨大ヤプールが倒れた際に同時に断末魔を挙げたり、今の今まで土座衛門状態だったりしたのは一体何だったのやら………。
 ともあれ、マザロン人の覚醒は地上に赤い雨を降らせるという異常現象を伴うものだった。

 場面は替わって早川宅。そこには赤いにわか雨に降られた健太の母・早川よし子(岩本多代)が帰宅したところだった。ちなみによし子はブラウスを汚した赤い雨を公害の影響と思っていた。時代を感じるな(苦笑)。
 それにしても当時32歳の岩本多代さん…………美しい………数多くのドラマに出まくって、2016年1月11日現在も現役で、この時点でも夕子役の星光子さんや、美川役の西恵子さんよりも女優経験豊富だったことだろう………個人的趣味による見解はこの程度に留めるが、こういう嬉しい発見も『全話解説』を作らんとした副産物と言える(笑)。
 ともあれ、健太は父から送られてきた手紙と贈り物を見せ、よし子は夫の帰りが遅れることに少しがっかりしながらも、安産祈願に送られてきた赤い岩(クウェート産)に相好を崩すのだったが、ナレーションによるとそれこそが前話のラストで砕け散った巨大ヤプールの体の一部だったというのである…………さすがにしつこいな、あ奴……。

 場面は替わってTAC基地本部。そこでは北斗が赤い雨を異常事態の前触れとし、今野がそれに懐疑的な口を挟み、竜隊長が現時点ではどちらも断じ難いと語り………まあ、いつものパターンだな(笑)
 いずれにせよ、赤い雨は量こそ大したことなかったが、世界各地に広範囲に降り注ぎ、梶主任の分析力をもってしてもその実態は特定出来ていなかった。一方で、富士山麓に地殻変動が起きており、そこに北斗と夕子は滅びた筈のヤプールの影を感じており、その脳裏にはくたばる直前の巨大ヤプールの吐いた呪詛の声がリフレインしていた。

 場面は替わって早川宅。そこではよし子に異常が現れていた。最初は朝食を「象の唐揚げとクジラの目刺し」と宣う程度(勿論、物は普通に鳥の唐揚げと鰯の目刺し)だったが、「大きくなって、地球をぶっ飛ばせ。」などと、とにかくBIGサイズにこだわる言動が目立った。  そして夜になると寝床から姿を消し、朝になると戻っていたのだが、頑として夜に外に出たりなどしていないと言い張る。訝しがりながらも母の無事な姿に感極まった様に抱き着く健太…………替わりてぇ……ゴホ!ゴホ!ゴホ!…………まあ、それ以外には大して異常も見られず、優しい母として振る舞っていたのだが、夜就寝時に、着替える際に背中を露わにした(嬉々)よし子の体には大きな赤いシミの様なものがいくつも浮かんでいた………。

 赤ん坊をあやす様に子守唄を歌うよし子だったが、健太は母の体に現れていた異常が気になって仕方が無かった。そんな健太が眠りに落ちると、夢の中に現れた母は山姥の様な醜い姿−妖女に変貌して、手に蛇を持って健太を追いかけて来た。
 驚いた健太が目を覚ますと、昨夜同様母の姿は寝床に無かった。慌てて外に出ると夢の中同様、よし子はいずこかへ向かって歩いていた。それを尾行した健太が曲がり角を曲がると蝋燭の灯の海の中に母はいた。そしてその母に不気味な声が「母は創造主なり!」と呼び掛け、よし子は両手を広げてその場に跪いた。ちなみにその姿は健太目線で映されていたから、跪いた途端に岩本多代さんのナイスヒップが強調される様に映り………………以下、悶絶&自主規制)。
 そして声はよし子に超獣の母たることを命じ、その眼前には間抜けそうな表情で人間の赤ん坊と同じ泣き声を上げる地獄超獣マザリュースがいた。そしてよし子は我が子を慈しむ母の表情でマザリュースを見つめ、それを愛おしむ声を口にするのだった。完全にマザリュースを我が子と思い込み、その容姿を褒める様は親バカを計算に入れても常軌を逸していた。
 居た堪れなくなった健太が母の名を叫ぶと、振り返ったその顔は夢で見た妖女と同じものになっていた。慌てて逃げ出した健太は、TACジープでパトロール中だった北斗&夕子と偶然遭遇し、TAC基地本部に連れられた。

 かくして健太からTACに母の異常が伝えられた。だが吉村は付近の住民から異常を伝える通報が一切無いことを、美川はレーダーでの捕捉が無いことを述べ、一同は健太の証言に懐疑的だった。まあそれは仕方ないにしても、「夢でも見ていたんじゃないのか?」という疑念を普段北斗に言っているような口調で言うなよなぁ、山中&今野…………大人気ない………。
 例によって竜隊長はいずれかに断ずる前に調査を命じたのだが、そこへ梶主任も地殻変動が激しくなっていることを告げたので、竜隊長は地球規模での異変が起こっている事実を差して、念入りな調査を命じた。

 場面は替わって早川宅。竜隊長から健太の母を調べるよう命じられていた北斗はそこに健太の警護を兼ねて泊まり込んでいたところに異常な気配を感じて飛び起きた。そしてまたもよし子が姿を消していることに気付いた北斗は本部にそのことを通報しながら健太を伴って公園に向かった(前夜によし子が異常を示していた場所である)。
 そして北斗、健太、通報で駆け付けた竜隊長以下TAC隊員達の目前で、健太の証言通りの展開が為された。マザロン人がいうところの、「ヤプールに選ばれた。」という存在であるよし子は妖女と化してマザリュースを前夜にもましてあやし続け、見かねた様にTACはマザリュースに一斉射撃を浴びせた。
 例によってTACの攻撃は然したる効果を上げなかったのだが、やがて北斗は妖女マザリュースにTACへの指示を行っているのを見つけ、ライフルでこれを狙撃せんとした。勿論これには健太が止めに駆け付けた。いくら見た目が変貌し、言動が不可解でも妖女が母であることに疑いはないのだから当然だろう。
 そして妖女として奇妙に振る舞う一方で、よし子の本性はマザロン人の前で苦しんでいた。そんな母の様子を知ってか知らずか、涙を流した健太は妖女に駆け寄り、竜隊長は北斗と夕子に追いかけての保護を命じた。程なく追いついた北斗と夕子に取り押さえられた健太は必死にこれに抗い、思わず手にしていた赤い石を妖女の顔面にぶつけた。
 前述した様に、赤石は巨大ヤプールの欠片で、同時によし子を妖女に変身せしめ、操るユニットでもあった。それゆえ偶然ながら健太の投石は赤石の働きを阻害し、妖女を母に戻す効果を上げた。

 よし子がまごうこと無き母の姿で倒れているのを見て即座に駆け寄り、詫びる健太。程なく意識を取り戻した母だったが、最前まで自分は熱くて赤い場所にいた筈だったのにと呟きながら周囲の寒さを訝しがり、手の甲に着いた赤いシミに脅え始めた。
 そんなよし子を案じる竜隊長、北斗、夕子の背後で、山中は今野と吉村に超獣は虚像だったに違いないと判断した旨を告げた(←攻撃に対して手応えが無かったのがその論拠)。
 だがその直後、より驚くべき報告が本部に残る美川から竜隊長に告げられた。富士山が噴火しているというのである。現実に起きた富士山の噴火が史上の大事件となったことは周知の通り。しかもTACの極東支部(拙作では便宜上「基地本部」と記しているが)は富士山麓にあるのである。
 夜中の噴火で赤く暗いという異様な空模様の中、美川の要請に従って個々に引き揚げるTAC隊員達。一緒に戻る北斗と夕子はこの景色こそがよし子の言っていた「熱くて赤い」ではないかと考えた。そしてその確信に呼応するように両者のウルトラリングが光り、2人はウルトラタッチを交わしてAに変身した。

 そしてAは富士の噴火口から真下に中へと飛び込み、マザロン人と対峙した。格闘は明らかにAが優勢で、その割には長引き、場所も火口内から地上に移ったりもしたが、途中片足式ボストンクラブと五指から放つ光線を食らった時を除けばAに苦戦らしい苦戦も無かった。最終的にAが上空から両手を光らせての手刀打ちを食らわせ、動きの鈍ったところにメタリウム光線を浴びせて勝利した。
 時を同じくして、例の謎の老人はまたも海で溺れ、やがてその身は泡となって消えた。ナレーションでも「ここにヤプールが賭けた最後の望みも消えたのである。」と語られた。
 そしてラストシーン。早川母子は北斗と夕子と共に沖合に姿を現した、父を乗せた船を眺めていた。父の様に逞しくなれと健太に言う北斗と、「大きく大きくなれ。」と言う夕子。だが同じ台詞でも、マザロン人のコントロール下に母が言った時とは後に続く言葉が違った。
 その台詞は「地球を投げ飛ばせ。」では勿論なく、「超獣をやっつけるんだ!」という強い健太の意志に満ちたものだった。


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平成三〇(2018)年七月一六日 最終更新