ウルトラマンA全話解説

第27話 奇跡!ウルトラの父

監督:筧正典
脚本:田口成光
地獄星人ヒッポリト星人登場
 冒頭は勿論ダイジェストによる前話のあらすじ紹介。さすがに普通の前後編と比べても重い解説だった………。
 改めてみると強敵ヒッポリト星人の要求に対し、山中もヒロシもAに対して物凄く冷たいことを言っていたことが分かる。まあ無惨な形で父を失ったヒロシには一考の同情の余地があるが、山中は無いな(苦笑)。
 同時にウルトラ4兄弟が如何に呆気なく敗れたかも思い知らされた(泣笑)。

 ともあれ、変わり果てた姿のウルトラ5兄弟を前に呆然とするTACの面々。一様に信じられないと頭を振る中、竜隊長は「非情な現実」を受け止めなくてはならないと一同を諭し、山中は自分がピンチの度にAに甘えていたことと、Aを渡すことに同意しようとしたことを謝罪した。こういう潔さはちゃんと持ってんだけどね、この男。
 そして一同が項垂れる中、ヒッポリト星人の声が地球の広範囲に響き渡った。それはTACと地球人に降伏を迫るもので、逆らうなら地球を地獄にして地球人は自分達ヒッポリト星人の奴隷にすると恫喝した。つまるところ、「Aを渡せ。」との要求も、「守護神・ウルトラマンA」から「御主人様・ヒッポリト星人」への意識替えの一環としての服従を迫る前段階の様なものだったのだろう。
 勿論竜隊長はこれを即座に拒否し、地球は地球人のもので、TACは死んでもこれを守ると宣言した。まあ竜隊長は「地球人代表」ではないにしても、「TACの責任者」であることは間違いない。何せ長官があの体たらく(第14話参照)だからな(笑)。
 この竜隊長による降伏勧告拒絶をヒッポリト星人は鼻で笑い、再考を促してその声を消した。「いい返事が出来るまで待ってやる。」としていたが、降伏勧告を拒絶し続けたら延々と待っていてくれたりして(苦笑)。
 まあそれは冗談だが、とにかく相手はウルトラ5兄弟を倒したとんでもない奴である。弱気になった吉村があのような返事をしていいのか?と竜隊長に尋ねたら、山中が怒りを露わにした。「馬鹿野郎!ウルトラ5兄弟を見ろ!彼等は自分の星でもない地球の為に死んだんだ!我々も戦うんだ!」と吉村に怒鳴り付けた…………どうやら、最前の反省は本心からだったようだ(笑)。
 勿論吉村も気持ち的には同じものを持っているだろうけれど、現実に勝てるのか?と言う疑問は拭えず、それに対して「勝つんだ!」と怒鳴りつける山中の檄も、心根としては正しいが、勝敗に関しては根拠なき精神論でしかない………。ともあれ、竜隊長は隊員達に本部への引き上げを命じた。

 だが、その帰路、思わぬ受難がTACを襲った。
 TACパンサーの行く手に一般ピープルが立ちはだかり、ヒッポリト星人への抵抗を辞めろ、と言うのである。彼等はヒッポリト星人に抵抗することで直接的な攻撃を受けることを極度に恐れていた。
 降伏すれば奴隷にされることになると言って宥める山中(←適任か?)だったが、パンピーは必ずしも「降伏=奴隷化」とは言えない、として抗戦反対を訴えた。やはりウルトラ5兄弟がやられたという事実がパンピーに大きな諦観をもたらしていた。酷な言い方だが、TACが何体かの超獣を撃破する活躍を成していたとしても、パンピーの諦観は変わらなかっただろう。5人まとめて敗れたのは前代未聞だったから(しかもたった1体を相手に)。パンピーにしてみれば確かめようのないヒッポリト星人の言葉の真偽よりも、「降伏しないと奴隷にする。」という恫喝の方が怖いのも無理はないのかも知れない。
 結局、竜隊長が「星人の支配を受ければやがては心も支配される。」、「例えTAC隊員5人の命を失っても、星人を倒して地球人36億人の勝利とする。」という旨を真摯に訴え、その場は収まった。

 場面は替わってTAC基地本部。そこでは善後策を巡って夜中まで緊急会議が紛糾していた。これまでの経過を受けて、梶主任は細胞破壊ミサイルが効かなかった上は、北斗の主張−取り分け、スモッグに自らの姿を投影したというものが濃厚としていた。
 そしてそれを皮切りにTACの面々が口にすることは極めて科学的且つ論理的なものとなっていた。美川がAが谷間に消えた途端にヒッポリト星人の巨体が消えたことを口にすると、今野はヒッポリト星人の体が本当に200mもあるならヒッポリト星は地球の何倍も重力が小さい星の筈だと告げ、それを補足するように、梶主任はヒッポリト星人が地球には住めない存在である筈と述べた。
 これらの推論・意見を受け、やはり街中に現れた身長200mのヒッポリト星人は虚像だったとの確信を深める竜隊長と山中………………どうしてこういう全うな考え方を最初に出来ないんだよぉ!TACよぉ!?(苦笑)
 ともあれ、竜隊長はヒッポリト星人の本体を捉えられれば勝ち目はあるかもしれないと考え、梶主任に細胞破壊銃を携帯型にするよう命じ、散会を命じた。
 会議が終わった直後、竜隊長は美川が北斗と夕子の席に献花しようとしているのを見てそれを止めた。確かにTAC隊員達の目には、ヒッポリト星人 (の虚像)との2度目の抗戦時に2人は炎上するTACスペースから脱出もせず、戦死した様に見えた筈である。だが竜隊長には2人が戦死したとは思えず、どこかで生きていると断言した。
 確かに2人の遺体を見ていない筈だから分からないでもない。

 場面は替わって坂本宅。「散歩」と偽ってそこを訪問していた竜隊長はヒロシの姉に、父親がヒッポリト星人によって殺されていたのが間違いないことが判明したと告げに来ていた。「そら見ろ!」と鬼の首を取ったように罵るヒロシ。山中は完全に反省したが、こいつは不貞腐れたままだったな(苦笑)。
 ヒロシの痛罵はエスカレートし、父の死自体、TACとAがヒッポリト星人に抵抗したからだとしたが、それは筋違いだ、ヒロシ。君の父が亡くなったのはヒッポリト星人の初襲来時で、TACにもAにも不可抗力だったのだから。
 だがこれに対して竜隊長は、ヒロシの気持ちを肯定した上で、地球がヒロシだけのものではないことを諭した。他人の財産(=地球)を身勝手に我が物しようとする者に抵抗しなくてはならないとした竜隊長の正論にヒロシは、「でも星人は強いんだよ!」と最前とは異なる抗戦否定論を述べた………それが本音か、クソガキ……AにもTACにも非は無いやんけ………。
 まあ、子供言っていることに挙げ足取って愚痴っても仕方ない(苦笑)。シルバータイタンよりは遥かに人格者である竜隊長は、星人にも自分にも「命」があることを述べ、「命」を交換する形にしてでもヒッポリト星人を倒し、亡き父の仇は取ると宣言して握手を求めたが、ヒロシは黙り込むだけだった。ま、即座に気持ちを切り替えることを子供に求めるのも酷ではあるが。
 ともあれ竜隊長は坂本宅を辞そうとしたが、そこへ姉は亡き父の御守りを託した。姉に言わせると、坂本運転手はその御守りを持って20年間無事故で来たのを、ヒッポリト星人に遭遇して命を落とした日に限って御守りを所持せず家を出ていたとのことだった。

 基地に戻った竜隊長を待っていたのは、A地区にヒッポリト星人が現れたとの報だった。頼みの綱である細胞破壊銃はまだエネルギーが半分しか充填されていなかったが、竜隊長は少ない分接近して攻撃するとして、梶主任に持ってくるよう命じた。
 山中が銃なら自分に任せて欲しいと申し出たが、竜隊長はこれを却下した。その理由は「ウルトラ5兄弟以上の力を発揮しないと星人は倒せない。」からで、その為にはかなりの接近を要し、危険が伴う任務故に自分がやる、と宣した。筋は通っているが、「ウルトラ5兄弟以上の力の発揮」が「至近距離攻撃」というのが何だかなあ………… (苦笑)。
 尚も渋る山中だったが、竜隊長はヒッポリト星人に接近する為にも、山中には陽動攻撃の陣頭指揮を執り、虚像への派手な攻撃でヒッポリト星人の注意を引き付ける重要な役があるとして、納得させた。

 かくしてTACは出動した。そしてその出動には普段前線に出ない梶主任も志願して同行した。「自分だけ生き残る訳にはいかない。」との想いからだった。竜隊長は笑いながら「我々は死にに行くのではないぞ。」としたのに、「分かっています。」としたが、決意の程は明らかだった。
 ヒッポリト星人はTACがすぐに出て来ないのを、抗戦を諦めたと見做して、暴れながら改めて降伏を促した(←誰に?)。そこへ山中率いる陽動部隊が襲い掛かった。勿論虚像が相手なので攻撃が効果を上げることはないのだが、ヒッポリト星人は高笑いしながらTACに潔く奴隷になれとどや顔していたから、取り敢えず「意識を引き付ける」と言う役割は果たせていた。
 この間、竜隊長は単身TAパンサーでヒッポリト星人が潜む盆地に向かっていた。細胞破壊銃をスタンバイし、カプセルに籠ってスモッグに自分の姿を投影しているのを目撃した竜隊長はようやく北斗が最初に述べ、最終的にTACにて推論されたことが正しかったのを確信すると、慎重に近づき、ヒッポリト星人に照準を合わせた。
 だが発せられた細胞破壊銃もヒッポリト星人に致命傷や大怪我を負わせるには至らなかった。撃つ直前に足を滑らせたこととどう関係したかは分からないが、カプセルを破壊し、スモッグに投影された虚像を消したことだけが確認出来た効果で、竜隊長はTACガン1挺でヒッポリト星人と対峙することになってしまった。

 しかも悪いことに、然したるダメージを肉体に与えられずとも、虚像のトリックを暴いたことはヒッポリト星人の精神にダメージを与えたようで、ヒッポリト星人は怒りも露わに炎を吐いたり、岩を投げたりして、容赦のない攻撃を敢行して来た。
 ただ竜隊長あわや、のところでTACファルコン(山中&美川&梶主任)、TACスペース(今野&吉村)が駆け付けたので隊長戦死を避けることは出来た。だが機銃掃射が効く筈もなく、TACファルコンも、数々の変則飛行で粘ったTACスペースもヒッポリトミサイルの餌食となって撃墜された(今野・吉村は何故か被弾前に「脱出!」)。
 TACの6人を拳銃のみの状態に追い込んだヒッポリト星人は精神的な余裕を取り戻したのか、余裕たっぷりに「私の秘密を知った素晴らしい能力を褒め称えよう。だが諸君等には私を困らせる程の力はないようだな。我々ヒッポリト星人の偉大なる力を見せてやろう!」と大上段に構えるや、地上で合流したTAC隊員達に火炎を放射し、炎の円陣の中に閉じ込めた。

 燃え盛る炎の輪に囲まれ、為す術なく翻弄されるTAC。「ウルトラ5兄弟は死んだ。そして我々地球の中で最も強いTACもあわや全滅の時を迎えようとしていた」というナレーションがどこか地球人がインベーダーに対して無力なことを強調しているようで何とも無念だったが、そのナレーションは「その時…。」と続き、上空に緑の光が現れ、地上に迫っていた。
 勿論TACの面々にそれを気にする余裕はなく、今野に至っては「この世の終わりか…南無阿弥陀仏…。」と言い出す始末だったが、次の瞬間、緑の光はヒッポリト星人の足元に命中し、派手に爆発するとこれをすっ転ばした。

 直後、爆炎の中から現れたのは本邦初公開となるウルトラの父だった!

 ウルトラの父はウルトラアレイでヒッポリト星人の目を眩ませると、ウルトラシャワーでTAC隊員達を囲む火炎を鎮火させた。ついで同じ技がAに向けられると、その体を固めていたヒッポリトタールが洗い流された。
 直後、怒り心頭のヒッポリト星人が突進してきて、ウルトラの父とヒッポリト星人の一騎打ちが展開された。序盤はウルトラの父が勝負を優勢に進めた。三日月形の光弾・クレッセントショットやウルトラアレイで牽制し、ファザーチョップ、ファザーキック、ファザースロウ等の格闘技を駆使し、押しまくったが、ヒッポリト星人が頭部の突起から強烈な光を放つと形勢は逆転した。
 ヒッポリト星人は腹部からの光弾を浴びせ、カラータイマーが赤になったウルトラの父をはたきまくったが、この形勢逆転にはウルトラの父のスタミナが消耗されていたことにあった。息子達(と言ってもこの時点では実子は含まれてなかったが)の危機を救うべく、遥かM78星雲光の国から駆け付けたウルトラの父はすっかりエネルギーを使い果たしてしまっていたのだという。やはり御年16万歳ともなると、寄る年波には勝てないということだろうか?(苦笑)

 すっかり消耗し切ったウルトラの父は抜け殻状態のAに目をやると、突如自らのカラータイマーを外して頭上に掲げた。するとAの目とカラータイマーに光が戻り、それとは逆に倒れたウルトラの父の眼から光が失われた………。
 ともあれ、カラータイマー点滅状態ながらも、ウルトラマンAが動き出した!戦友ともいえる存在が生き返ったことに力を得たかのように竜隊長は隊員達にAの援護を指示した。
 かくしてAとTACがヒッポリト星人に向かって駆け出すや、BGMにオープニングの「ウルトラマンエース」が勇ましくフルコーラスで流れ、Aはウルトラの父が僅かに残ったエネルギーを与えたものとは思えないパワフル攻撃でヒッポリト星人を押しまくった(笑)
 ヒッポリト星人は何故かウルトラ兄弟やウルトラの父を苦戦させた多彩な武器を一切使わず、どつかれまくり、投げられまくった。Aはパンチレーザーを食らわせ、ジャンプしてからの上空からの落下式にキックを食らわせ、頭部の突起を引っ掴むとその後頭部を地面に何度も打ち付けた(←もし実戦で使ったら、見た目にもかなり危なそうな攻撃だった)。
 ここまでの攻撃に何とか耐え、振りほどいてAに反撃せんとしたヒッポリト星人だったが、Aに羽交い絞めにされたところをTAC隊員達によるTACガンでの頭部への集中砲火を浴びせられた。この攻撃はそこそこ効いた様で、先の後頭部打ち付けと言い、どうも頭部は急所だったようである。
 ともあれ、既にヒッポリト星人は戦意喪失状態に陥っており、フラフラになったところにAはメタリウム光線を放ってその体を木っ端微塵に粉砕し、遂にその息の根を止めたのだった……………しかし……これほどまでにウルトラ兄弟を苦しめ、ウルトラの父までも倒した強力な宇宙人が最も一般的な技であるメタリウム光線でやっつけられるというのはなあどうにも納得が行かん…………そりゃウルトラの父じゃないが、ヒッポリト星人もここまで来ると連戦や数々の攻撃を浴びたことで疲労・消耗していたかも知れないが、結局はメタリウム光線一発がその体を木っ端微塵にしたことを思うと、緒戦でさっさとメタリウム光線を放つか、顔を合わせた瞬間にゾフィーかウルトラマンがM87光線なり、スペシウム光線を放つか、最も格闘したセブンがワイドショットでも放っていれば早々に勝負がついていたように感じられてしまう…………最終的にAが倒したことに異論はないが、これほどの難敵こそスペースQか、それでなくてもヴァーチカル・ギロチンタイマーショット辺りの大技を駆使して欲しかったものである。

 ともあれ、地球・TAC・Aの危機は去った。安堵の笑みもそこそこに美川が還らぬ4人の兄の犠牲を悼んだが、次の瞬間、ヒッポリト星人が死んだことでゾフィー達の体からヒッポリトタールが消え失せた。そしてAがカラータイマーを空中高く放り投げるとそこから四条の赤い光線がウルトラ兄弟のカラータイマーに流れ込み、ウルトラ4兄弟もまた蘇生したのだった……………目出度いシーンなのだが、「無理矢理ハッピーエンド」の感は拭えんな、やっぱり(苦笑)
 意識を取り戻し、無事(?)を喜び合うウルトラ兄弟達だったが、程なく自分達を助けに来たウルトラの父の元に向かうと、ただ1人動かないその体の腕を胸の前で組ませると、棺を運ぶようにその体を持ち上げ、宇宙へと向かった(ウルトラの父の体は兄弟達に囲まれた状態で、寝転がった状態で飛んでいた)。

 ウルトラ兄弟達が去って行ったのを見届けたTAC隊員達は、連戦で疲れ切った体を引きずる用に帰還しようとして、次の瞬間、死んだと思っていた北斗と夕子が彼等を呼ぶのに気付いた。勿論、TAC隊員達は驚喜してその名を叫んだ。
 そして再会(?)を喜び合うのだったが、全然違う場所で行方を絶ったのだから、何事も無かった様な様子でピンピンとした体で帰ってきたのはチョット頂けなかった(苦笑)
 せめて(嘘でも)重症の身を引きずった状態で現れるか、自分達もブロンズ像にされていたとの体裁(こちらは全くの嘘ではない)を取っても良かった気がする。まあいくら前後編でもウルトラ兄弟やパンピーからの猛抗議、更にはウルトラの父の登場までが描かれた過密展開の中でそこまで気遣うのも酷だっただろうけれど。

 そしてラストシーン。場所は坂本宅。坂本運転手の仇が討たれたことを告げに来たのであろう竜隊長と北斗が辞するところで、御守りを返そうとした竜隊長に、姉はずっと持っていて欲しいとして返却を断った。だが竜隊長はヒロシが持つべきとして、いつか父の気持ちが分かるようになった時にもう一度御守りを見るよう告げた。
 ヒロシはこれに頷いた。Aの人形を持っていたところを見るとさすがに父の死直後の八つ当たり的な態度は軟化され、幾分なりとも落ち着きを取り戻していたのだろう。
 そして夕暮れ空に姉が一番星を見つけると、一同はその星をウルトラの父であり、坂本姉弟の父でもあるとして見上げ、ここにウルトラシリーズの長い歴史においても屈指の有名な前後編は終結したのだった。


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平成三〇(2018)年七月一七日 最終更新