ウルトラマンA全話解説

第32話 ウルトラの星に祈りを込めて

監督:筧正典
脚本:田口成光
超獣人間コオクス登場
 冒頭、いきなりTACの宇宙ステーションNo.5が宇宙から飛来した何者かに襲われ、破壊されたところから始まった。いきなりの破壊も情なかったが、竜隊長が山中に迎撃に向かわせようとした次の瞬間にはもう東京に迫られていたのがもっと情なかった。
 かくしてTACファルコン、TACスペース×2機が出動し、一行は敵と思しき宇宙船と遭遇。互いに機銃を掃射し合い、攻撃をよけ合っていたが、相手が何か強烈な光を発すると、単身TACスペースを操縦していた北斗は脱力状態となった。勿論そんな状態で操縦がままなる筈なく、TACスペースは錐揉みしてしまった。幸い、程なく北斗の状態は正常に戻り機首を立て直したが、不幸にもこれが「北斗の操縦ミス」と見做された。

 肝心の宇宙船は山中が同乗の今野に命じて放ったミサイルで粉砕された(何故か逸れた様に見えたのに、その直後に大爆発した)。快調な勝利を挙げ、余裕があっただけに山中も今野も北斗の異常が気掛かりだった。
 そして事故調査の結果、「機体に異常なし」と判断されたものだから当然の様に山中は北斗に雷を落とした。解決した(と思われる)からこそ容赦が無かった。
 北斗は自分が異常をきたした直前の様子を訴えたが、その光も音も他の隊員達が見聞きしていないものだから、竜隊長の好意的な意見すら「北斗に何らかの異常有り。」と見ざるを得なかった。
 とはいえ、放映から8カ月も立てば山中のヒステリー(笑)に対しても単なる分からず屋でないことは分かる。異常に納得のいかない北斗の飛行任務継続懇願に対し、竜隊長は翌日からの飛行訓練を命じ、「しばらく地上勤務で頭を冷やさせた方が良いんじゃないですかねぇ?」と言っていた山中も朝一からこれに付き合うとし、北斗も両名に感謝した。
 私見を述べると、異常飛行が起きたのは事実なので、その原因が判明しない内に(訓練とは言え)飛行を許可するのは甘い気がするのだが………(恥ずかしながら、道場主は過去勤めた会社で信じられない頻度で運転事故を起こし、運転任務から外されたことがある。心身に異常があった訳でもないのに何故そうなったかは今も不明)。

 ともあれ、直後のTAC基地内では勝利を祝って(ジュースで)乾杯が行われた。山中が独断で用意させたものだったが、竜隊長もこれをナイスアイディアとした。乗り物相手とはいえ、余程自力勝利が嬉しかったんだな、TAC (泣笑)。
 吉村がギターを取り出すと1ヶ月振りに「TACの歌」が歌われ、1人最前の問題を気に病んでいた北斗だけが完全な笑顔になっていなかったが、残りのメンバーは実にいい笑顔をしていた。やはり総合的にはアットホームさも厳しさも兼ね備えたいいチームで、現実の戦闘組織としてのリアリティも踏まえているのだが、暗さが付きまとう……極端から極端に走るのが原因と見るべきだろうか?
 それから少し時間は掛かったものの、北斗も気を取り直して明日からの訓練に闘志を燃やした。

 場面は替わってとある郊外。ダンと香代子が歩いていると、ふらつくように歩く少年(高橋仁)が背後から迫るトラックにも気付かずにいた。
 あわや人身事故になるところをダンがこれを救出。気を付けろと詰る運転手と、そっちこそスピードの出し過ぎだと言い返すダン。事故になりかけたことはどっちもどっちだが、幸い運転手はとんでもない奴というほどでもない様で、バツが悪そうに悪態をついて走り去った。
 だがトラックが去った途端に少年は倒れ込み、香代子が額に手を当てるとひどい熱だった。すぐに救急車を呼ぼうとしたが、少年は生まれつきの体質で、しばらく置いておけば治まるとしてこれを拒絶した。とはいえ放ってもおけないダンと香代子は自宅で少年・星野アキラを休ませることを提案し、アキラもこれに応じた。
 ところが夜中になってアキラの熱は酷くなり、ダンは北斗を呼び、北斗もこれに応じて梅津姉弟の部屋へ…………って、医者呼ばんかい………香代子、ダン、北斗……と思っていたら、さすがに北斗は医者を呼ぶべし、と主張。アキラがそれを拒んでいる旨をダンが告げたが、北斗は医者を呼ぶ方が適切とした。
 だが、アキラは眼前の青年がTACの北斗と知ると、妙な眼力を発動した。すると北斗は昼間TACスペース操縦中に襲われたのと同じ異常に襲われ、「気分が悪い…。」とこぼしながら、ダンの批判を背に自室へ戻った。

 この異常の為か、北斗は翌朝の早朝訓練に寝坊。勿論山中からの通信に雷を落とされて、慌てて家を出ることになった。まあ山中が怒るのは当然だ。北斗の方から申し出た訓練に文句を言いもっても付き合っているのも兄貴分として本当に北斗のことを想えばこそで、義理はあっても義務はないのに早起きして基地に来ていたのだから。
 ともあれ、叩き起こされる形になった北斗はその時になって、昨夜自分が飛行中と同じ目に遭わされたことに気付き、アキラを宇宙人ではないか?と訝しがった。そう思い立つと直情的に動いてしまうのが北斗星司。ダンの部屋に向かったが、ドアノブを持った途端に同じ頭痛に襲われた(離れると収まった)。
 結局そうこうしている内に再度山中の雷通信で怒鳴り付けられた北斗はダンに置手紙を残して今度こそTAC基地に向かった。さすがに北斗が哀れだったが、山中はもっと哀れだったな、口は悪くても面倒見のいい先輩だけに。
 そんな山中は遅刻して来た北斗を怒鳴り付けはしても、すぐにTACアローに搭乗しての訓練に移るよう命じたのだった。

 その頃、目を覚ましたダンは牛乳瓶に挟まれた北斗からの、アキラに注意し、異常があったらすぐにTACに通報するようにとの手紙を見つけた。音読するダン……そして最後の「ウルトラ5番目の兄からウルトラ6番目の弟へ」の署名とウルトラサインに「Aからの手紙だ!」と声に出して喜ぶダン……アキラに聞かれたらどうすんねん(苦笑)。
 そしてその手紙をダンが無事読んでくれたかどうかを気にしながら飛行訓練を続ける北斗。山中に命じられた宙返りを普通にこなしている様に見えるのだが、山中には北斗が集中し切れていないことが分かるらしい。確かに飛行機なんてものをうわの空で操縦されては大変である。

 場面は替わってダンの部屋。ダンは何を思ったか、まだ熱のあるアキラを飛行訓練見物に連れ出した。深い考えでもあるのかと思いきや、北斗の操縦を「下手」と言い、「もうすぐ墜落する。」というアキラに「そうかもね。」と同調。普通なら「縁起でもないことを言うな!」と怒りそうなものだが……。
 やがてアキラは急降下の訓練に出た北斗操縦のTACアローに指先を向けると機内の北斗は再々度脱力感に襲われ、TACアローはアキラの描く指の動きに操られる様に宙返りを繰り返した。
 さすがにダンもこの異常を察知し、アキラの腕を払って辞めさせると、アキラの面相は眼の周りが縁どられ、唇は口紅刺した様になっていた。驚くダンに相手は超獣人間コオクスと名乗った。TAC全滅の為に北斗を混乱させると告げるコオクスを取り押さえんとしたダンだったが、見た目は少年でも相手は超獣人間で、ダンはあっさり投げ飛ばされ、高笑い共にコオクスはその姿を消したのだった。

 Bパートに入ると山中が竜隊長に飛行訓練の様子を報告していた。北斗の飛行振りを酷評しつつも、「大分参っているようです。」と告げる山中。どうやら不甲斐なさへの怒りよりも、北斗への心配の方が勝っているようだった。これには竜隊長も原因がはっきりするまで地上勤務させるべし、との山中の意見を容れざるを得なかった。
 まあ話を聞く限りでは普通は医者に診させるところだろう(特に精神医に)。

 哀れだったのは、ダンの通報までもが「北斗と同類。」と見做されたことだった。アキラが超獣人間との通報を受けた山中の口調は「北斗に伝える。」といったものの、その口調は明らかに信用しておらず、横で聞いていた北斗はアキラに近づいた際に飛行中と同じことが起きると訴えたが、竜隊長にも休養を兼ねた地上勤務を命じられてしまうのだった。
 もうチョット、順序立てて分かり易く説明しろよな、北斗………。ともあれ、悔しさの収まらない北斗は木にぶら下げたロープにぶら下がって体を錐揉み回転させ、回転への耐性を付ける訓練を積み、ダンは星に祈りを込めていた。

 それからしばらくして、コオクスは超獣体に巨大化し、暴れ始めた。よく分からん奴だ。北斗に決定的な打撃(重症または謹慎状態)を与えてもいないのに。ただ目的は前述通りで、TAC基地、取り分けレーダー破壊に邁進して来た。
 TAC基地本部では竜隊長がTACファルコンとTACスペースでの出動を命じたが、北斗には連絡係を命じ、北斗は力なく応ずる返事をするしかなかった。
 そして出撃したTACだが、コオクスの指ミサイル乱射になかなか接近が出来ずに、基地の一部が破壊されるがままだった。何としても接近攻撃をせんとした山中だったが、北斗と同じ光線で脱力状態に襲われ、ついで竜隊長も同じ攻撃に曝され、堪らず北斗はTACアローで飛び出した。

 勿論コオクスは今度も北斗に対して件の光線を発したが、木にぶら下がっての錐揉み訓練が功を奏したのか、北斗は錐揉み飛行状態でも何とかコオクスに機銃掃射した。するとこの一撃がかなり効いたらしく、コオクスはうずくまった。だが次に額から弾丸を放つとTACアローは被弾、北斗は炎上するTACアローからAに変身して飛び出した。
 かくして格闘が始まったが、殴り合いでは完全にAに分があった。だからコオクスはあんな姑息な手に出たのでは?と思ってしまうほどAが一方的に優勢だったが、麻痺光線を照射すると今度はコオクスの一方的な優勢に転じた。
 光線の影響は北斗として人間体で浴びたときよりひどい程だったが、一方的に叩きのめされる中、空を見上げたAはコオクスの手先を攻撃せよとのウルトラサインを読み取った。そしてそのサインはダンからのアドバイスを反映したものだった………ダン、そこまで気が付いていたか?。どうも前話といい、この第32話と言い、その辺りがいい加減だ。シナリオ整合にミスでもあったか?

 ともあれ、Aはフラッシュハンドを今回は手から放ってコオクスの両腕を切断した。すると光線の影響も消え失せ、Aはその体をウルトラスウィングで投げ飛ばし、何故かこの勢いで立ち上がる形となったコオクスにとどめのメタリウム光線を放ってこれを仕留めた。

 ラストシーンはTAC基地本部。一行が帰投してきた中で、山中は自分も光線の影響を受けたことを差し、北斗やダンの言ったことを疑ったのをいつになく素直に謝罪し、竜隊長も同様に謝罪した。
 北斗は北斗で命令に背いてTACアローで出撃したことを謝罪したが、竜隊長は北斗の行為を緊急時の止むを得ない処置の範囲内とし、重ねて北斗とダンに礼を述べ、北斗は丸で褒美であるかのようにダンとの休暇に興じるのだった。


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平成三〇(2018)年七月一七日 最終更新