ウルトラマンA全話解説

第33話 あの気球船を撃て!

監督:筧正典
脚本:石堂淑朗
気球船超獣バッドバアロン登場
 冒頭、とある神社を通り掛かったダンはガキ大将っぽい小学生が自分より小さな子供3人から菓子や果物を脅し取っているのを目撃した。ウルトラ6番目の弟として見過ごしには出来ないとしてこれを止めようとしたところ、それより先にAの御面をした少年がジャイアンを蹴り一発で屈服させ、子供達にお菓子を返した。
 礼を言う子供達に自分はAだと名乗ったのだが、ダンがこれに大真面目に食って掛かった。Aの名を騙るのが許せないようだが、だからと言って、「俺はウルトラ6番目の弟だぞ!」と大上段に言い張っても、相手には意味不明だって、ダンよ(苦笑)。
 だが相手は怒るでもなく、ダンのことを知っていると言って御面を外した。その下から出て来たのはダンの知人・大介(吉村景文)だった。怒りっぽいダンが「大介ちゃん」とちゃん付けで呼んでいるところからして、普段からそこそこ仲は良いのだろう。ともあれ、大介は自分が大介であるとともにウルトラマンAであると告げて御面をかぶると走り出し、ダンも、助けられた少年達もその後を追った。この辺りは子供よのぉ〜。

 そんな大介とダンが町中を走っていると、その前に最前のガキ大将(ユキオと言う名前らしい)とその母(塩沢とき)が立ちはだかった。ユキオが大介に殴られたと泣きついたためである。
 しかし、このユキオは呆れたガキである。シルバータイタンは自分がいじめられっ子だった経験があるから、自分が一方的な被害者であるなら親や教師に訴えることを非とはしないが、こ奴は自分が加害者だった故に大介の攻撃を受けたのに、自分を一方的な被害者として母に泣きついて報復を図っていたのだから。
 そしてこの自己中な息子にして自己中な母ありというべきか、母親は大介が「超獣ママゴン出現!」と叫ぶほどのヒステリー女で、悪いのはユキオの方だと告げても「図々しい…。」と言って本気で怒り出す始末だった。
 余談だが、あの派手なハート形の髪形と個性的な役どころを演じていた塩沢ときさんも若い頃は普通の主婦も演じていたのか………(しみじみ)。

 そんなママゴンのヒステリーから笑いながら逃げたダンと大介だったが、ある橋の上に来た大介は空を見上げると「超獣バッドバアロンだ……。」と呟いた。だが大介が見上げていたのは普通の気球にしか見えなかった。
 ダンが推測するに、大介はすっかりAになり切っているようで、着陸態勢に入った超獣を追跡すると告げて走り出した。呆れながらもダンもこれに追随すると、気球はとある空き地に着陸しようとしており、そこには大勢の子供が群がっていた。
 「バアロン号」と記載されたその気球には胡散臭い男が2人登場しており、子供達を空の旅に連れて行くと告げた。すっかり興奮した大介は気球に群がる他の子供達を押しのけて先頭に躍り出た(小さな女の子を突き飛ばして泣かせるほどで、ダンに「何がAだ…。」と呆れられていた)。

 そんな風に突出した大介がAを名乗っているのを鬱陶しそうにしていた男達だったが、大介を「最初に乗せてやる。」として数人の子供達と共に気球のゴンドラ内に誘い、飛び立った。

 場面は替わってTAC基地本部。そこでは美川が気球の動きをレーダーで察知していたがその正体までは分からずにいた。察知物体を「異様な物」と表現する美川にTACの誇る計器がその程度の分析しか出来ないことを訝しがった竜隊長だったが、美川には対象物が動物なのか植物なのかも掴みかねていた。
 これを受けて竜隊長は「宇宙生物の権威」である吉村の意見を求めた。計器の示すデータから、相手が超獣であることを断言する吉村だったが、何の被害も出ていないことを理由に山中は疑義を挟み、竜隊長は吉村と(現場が下宿の近くである)北斗に現地調査を命じた。

 勿論TACスペースに搭乗した北斗と吉村は気球と遭遇した。吉村は計器類の反応から小型超獣に匹敵するとして油断なく観察したが、目視上からは怪しいところは感じられなかった。子供好きの北斗に至っては気球内から楽しそうに手を振る子供達にすっかり気をよくし、子供達を「一種の米粒超獣」として、計器の反応を子供達によるものとし、少しでも変わったことがあるとすぐに超獣に結び付けるTACの傾向を偏見に満ちたものとして半ば吉村を揶揄するような口調で(勝手に)帰投報告する始末だった。
 だがTACスペースが引き返すと、気球の排気口から怪しげな光が発せられ、それを浴びた子供達は無気力状態と化した。勿論大介も気球を下りたときには放心状態で、ダンの呼び掛けに答えるも生返事で、あれほど夢中になっていたAのお面を落としても意に介さない状態だった。

 その後も気球は子供達を入れ替わり立ち替わり乗せて行ったのだが、やはり子供達は降りる頃には無気力状態。やがて男達は「今日はこれまで。」とし、まだ乗れずに不平を零す子供達には風船をプレゼントした。だがこの風船も罠で、その口が光るや子供達は無気力状態となって風船を手放し、それらの風船は気球の口に入って行った。
 だが、こういう怪しい現象に慣れていたためか、ただ1人ダンは気球にも乗らず、風船も受け取らず、難を逃れると大介宅に走った。

 大介の母(小園蓉子)と出会ったダンは大介に異常はないかと尋ねたら、母は大有りだという。もっともその異常はチョット注意したら一生懸命勉強し出した、という親としては実に喜ばしいもの。
 大介宅を辞したダンは帰宅途中の北斗に異常を訴えた。だが、吉村と共に気球を調査して「異常なし」と判断していた北斗はダンの訴えにも笑うばかり。一応はダンに異常を尋ねるも、「みんな大人しくなった…。」では説得力は著しく弱かったが、北斗よ、普段自分の言が信じて貰えない苦しみを嫌というほど味わっているのなら、チョットはダンのいうことを信じてやれよ………超獣は毎週現れているんだからさぁ……
 ともあれ、TACも北斗もこんな調子だから、謎の気球による子供達への影響は続いた。子供達は「大人しくなった。」、というよりは「逆らう気力を亡くした。」と言う感じだったが、親の立場から見れば「言うことをよく聞く子供になった。」と映り、母親達は先を競って我が子達を謎の気球に乗せ、地方では気球誘致の住民運動まで起こった………………何でこの作品に登場する人物の思考や行動は極端なんだよ!?
 子供番組ゆえに、限られた時間で分かり易さを優先すれば多少の極端性が求められるのが分からないでもないが、少しは「ほどほど」を知って欲しい。

 ともあれ、気球の影響はどんどん拡大し、気球に乗りそびれた子供達も渡された風船の影響を受けて行った。昼夜を分かたず子供達を乗せる程になった。
 勿論これを異常と捉える者達も皆無ではなかった。ダンは大介の変貌が信じられず、彼の様子を見に大介宅を訪ねた。母親も大介の変貌を喜ばしく思いつつも、勉強ばかりしている息子に対して「たまには遊ばなければ。」としてダンの誘いを歓迎していたから、僅かながら引っ掛かりを覚えていたのだろう。
そしてダンは大介をTACのメディカルセンターに連れて行き、頬をはたかれても殴り返さず、怒りの感情さえ見せない大介を受診させた。
 結果、大介には脳波が無いことが判明し、気球に乗ってからそうなったことがTACに通報され、吉村は「明らかに超獣です!」と断言。山中も「やっぱりそうか。」と呟き………って、おいっ!お前さっき信じてなかったじゃんかよ!!(怒)

 ともあれ、超獣の狙いは不可解ながらも、メディカルセンターからの追加情報もあって、気球が子供達の成長エネルギーを吸い取っていたことが判明。子供達は大人しくなったのではなく、エネルギーを失って成長面でも、精神面でも弱体化したに過ぎなかったと判断され、TACとしては気球超獣が人類に敵対的な存在として意見の一致を見た(さすがに北斗もダンの話をよく聞かなかったことを後悔していた)。早速TACは気球超獣を攻撃せんとしたが、子供達のエネルギーを吸って肥大化した気球を空中で撃てば子供達を危険に曝す。それゆえ、着陸するタイミングを見計らって子供達が気球から降りたところを狙おうとしたが、すっかり気球を信用し、頼りとする母親達はTACの「あの気球は超獣です。」という説明に耳を貸さず、「教育の邪魔をしないで!」と金切り声を挙げる始末だった。
 やっぱり、この番組分からず屋が多過ぎる…………確かにバッドバアロンの気球型形態は従来の超獣とは似ても似つかないにしても、竜隊長がTACの分析データから判明したことと言っても信用されないのだから、君達、普段の北斗の気持ちがチョットは分かったかね (苦笑) ?

 ともあれ、TACに打つ手はないかに思われた。吉村によると気球を操る2人の青年は超獣の一部ではなく、操られているだけの人間で、これを撃つ訳にも行かない。次善の策として、丈夫なネットを張った上でゴンドラを繋ぐロープを切ることで気球と子供達を引き離す作戦が考えられ、竜隊長はTAC基地付近にネットを張る手配をしたが、そこまでどうやって気球を誘導するかと言う問題が残った。
 そして気球に近付けるのは子供だけ、という状況から北斗はダンに気球に乗り込ませて誘導させることを提案した。美川は危険だとして反対したが、結局「子供しか近付けない。」問う現実問題から、ダンに麻酔銃と拳銃・V09を渡し、「ウルトラ6番目の弟」というプライドを半ば挑発する形(苦笑)でダンを気球に乗り込ませた。

 ダンは北斗の期待通りに動き、気球内で青年を眠らせ、噴出口からの怪光線に対してV09で応戦しつつ、気球をTACの張ったネット上まで誘導した。ダンの働きは申し分なかったが、気球のロープはTAC機の攻撃を受けても切れず、とうとう気球船は気球超獣バッドバアロンの姿になると子供達を腹部の吸入口から体内に吸い込み、口からは突風を噴いてTAC機に攻撃を仕掛けた。
 子供達の安否を気遣ってTACは攻撃を中止し、北斗と吉村は突風攻撃でTACスペースを「脱出」し、パラシュートで降下しながら北斗はAに変身した。

 格闘戦は明らかにAに分があり、鞭状の右手、時折見せるハイジャンプ、口吻からの突風を駆使して尚、Aは然したる苦戦もなくバッドバアロンに応戦した。ただ、超獣の腹中にはダン達がいるので、Aも下手に光線等の大技を放つ訳にはいかなかった。
 とどめをさせず、一方的に嬲られているかのように見えたAだったが、それは隙を伺ってのことだった。Aは至近距離に近づくとホリゾンタルギロチンバッドバアロンの首をすっ飛ばし、次いでヴァーチカル・ギロチンでその身を縦真っ二つに斬り裂き、これを倒した。
 中の子供達は大丈夫か?と言いたくなる攻撃だったが、斬り裂かれたバッドバアロンの体からは膨大な数の風船が飛び出し、子供達の瑞々しいエネルギーを内包したその風船達は子供達にエネルギーを戻し、ダン達も風船を手に無事地上に着地したのだった。
 そしてラストシーンでは、元に戻った大介が冒頭と同様にAのお面をかぶり、元気よく遊び、今話最大の殊勲者たるダンには竜隊長も「ウルトラ6番目の弟」との賛辞を贈らずにはいられなかった。まあ、TACの作戦立案には大いに問題が残ったが、ダン自身は非の打ちどころが無かったもんな(気球に乗り込む直前に少し臆病風に吹かれかけたが、現実に即して考えれば怖くて当たり前である)。
 そしてそんなダンはウルトラの星にいる兄達に見せつける様に空に向かってVサインを向けたのだった。


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平成三〇(2018)年七月一七日 最終更新