ウルトラマンA全話解説

第35話 ゾフィーからの贈りもの

監督:古川卓己
脚本:久保田圭司
夢幻超獣ドリームギラス登場
 冒頭、湖上の吊り橋に立つ少年・浅倉雪夫(西脇政敏)は湖中から出現した超獣に襲われ、逃げまどい、放水攻撃を食らった。だがこれは雪夫の見ていた夢で、母親(浅茅しのぶ)に起こされた雪夫は、それが夢だったことと自分が寝小便してしまったことに気付いた。
 けったいな事にシーツに残された寝小便の後は夢に出た超獣のシルエットと同型だったのだが、どうやら雪夫は頻繁に寝小便しているらしく、同級生達のからかいの為にもなっており、本人にはそっちの方が深刻だった。
 小学校4、5年の年頃で寝小便がからかわれるのはある意味仕方のない事なのだが、それを理由にサッカーのチームにさえ加えないという村八分状態が生まれるのだから、やはり『ウルトラマンA』の作風は「陰」だよなぁ………クソガキどもの中には「試合中に小便漏らされたら堪らない。」と言っていた奴までいたが、ガンガンに寝小便する奴でも起きているときと寝ているときの排尿と意識の関係は全然別だぞ?まあこのクソガキどもを見て「いじめはカッコ悪い」というメッセージを伝えたという制作陣の意図があったかどうかは定かではないが………。
 だがクソガキどもの陰湿さはこれで終わりではなかった。淋しそうにする雪夫に、リーダー格のクソガキは仲間に入れて欲しかったらTACにイタ電しろ、とけしかけたのだった。確かに子供の世界では村八分を避ける為に心ならずも悪事に手を染める悪しき傾向ってあるんだよなあ………シルバータイタンも今なら「そんな奴等の仲間になんてなることない!」と雪夫に言ってやれるが、かつて子供だった時に同じ立場に置かれたら、軽い悪戯程度なら唆しに応じた可能性は低くなかっただろう。

 場面は替わってTAC基地本部。そのとき基地内はティータイムだったのだが、お茶を淹れてくれた美川に「いい奥さんになる。」とからかった今野(←これ、今だと下手すればセクハラになるんだよなあ……)は美川に小突かれ、バランスを崩した今野の零した茶が北斗の股間に掛かり、寝小便の後みたいになるというコミカルシーンが展開されていた。
 「寝小便は9歳までで終わったのに。」とぼやく北斗に竜隊長は「9歳までしていたのか?」とツッコミを入れていたが、まあ大人の世界では笑い話である。子供自分では相当な恥だが(苦笑)。そしてそこにイタ電が掛かって来た。

 クソガキリーダーによるイタ電の成功条件はTACの呼び出しに成功することで、雪夫は「超獣ドリームギラスが現れた。」と述べ、名前を聞かれた際にもしっかり本名を名乗っていた。イタ電中だというのに正直な奴だ(苦笑)。
 勿論ドリームギラス出現は虚偽だからTACのレーダーには何の反応も無かった。山中はイタ電を疑ったが、竜隊長は北斗に現場への急行を命じ、北斗はTACパンサーで駆け付けた。
当然超獣の気配はある筈もなく、現場は平和そのもの。本部にその旨を報告した北斗は、偶然現場にいたダンに浅倉雪夫を知らないかを尋ね、通報が虚偽であることを悟った。
普段は子供に甘い北斗もこのイタ電には怒りを露わにした。TACパンサーを見たときは「カッコいいなぁ〜。」と呟いてのほほんとしていたクソガキどもも北斗の怒りにはたじたじとなり(←卑怯にも逃げ出した)、親元に連行し、きつく灸を据えると告げられた雪夫は失禁するほどだった。
まあ小学生が自分より40〜50�僂肋綰悗里△訛膺諭覆靴�も戦闘を本職としている)に怒鳴り付けられたら相当怖いだろうから無理もない気はする。ともあれ、ここまで怖がられては北斗も雪夫にきつく出られず、ダンも雪夫が自らそんな悪戯をする少年ではなく、いじめっ子に唆されたものだと証言した。

 ともあれ、雪夫の股間の湿りを処理している最中、彼の失禁傾向(超獣の夢を見るとやってしまう)を聞いた北斗は自らの寝小便過去を例に雪夫に優しく接し、寝小便は病気であって(←確かに「夜尿症」ともいう)恥ずべきことではなく、それよりは嘘を吐いたり、友達の悪口を言ったりすることの方が恥ずべきことであると諭した。いい加減くどい言及ではあるが、やはり北斗は子供に優しい。
 こう出られてはさすがに雪夫も心を開き、嘘を吐かないこと、強い男になることを誓い、北斗も「君の夢に出て来るおねしょ超獣をやっつけてやる。」と宣してAバッヂをプレゼントしたのだった。

 だが、その後雪夫の身辺には異変が(というと大袈裟だが)相次いだ。超獣型の寝小便の跡は消えず、雪夫はその夜も同じ夢でドリームギラスに襲われて、大水を浴びせられて寝小便をした(虚報時のドリームギラスの名は夢に準拠していた)。
 翌朝、雪夫から夢の顛末を聞いたダンは、雪夫の夢の舞台が実在する場所であることを察知し、原因を確かめる為なのかは定かでないが、雪夫はその場所に向かった。そしてそこには寝小便の跡から抜け出て実体化した夢幻超獣ドリームギラスが現れ、雪夫は自衛隊機とジャンボ機を放水攻撃で撃墜するという大事件を目撃した。
 勿論雪夫はTACに(北斗名指しで)通報。言葉では「今度は本当なんだろうな?」と念を押した北斗だったが、さすがに今度は雪夫を信じていた。だが無情なことにレーダーにドリームギラスの存在が捕捉されておらず、今野は露骨に再度の虚報を疑った。
 雪夫を信じる北斗は頑強に今野の疑いを否定し、(竜隊長が不在だったので)山中に出動の許可を求めた。今野は北斗に対して「子供の言うことなら何でも信じるのか?」と詰問し、山中も隊長の許可を得るよう諭したが、「それでは手遅れ」とした北斗は2人を無視するように出動した。北斗も信用してもらいたければ少しは独断専行を慎めよな………。

 ともあれTACアローで湖に急行した北斗。だがドリームギラスはその前に湖中に潜って姿を消した上、雪夫の布団のしみに戻ってしまっていた。北斗は水中爆弾を湖に投下して様子を伺ったが、ドリームギラスが姿を現すことはなく、県警でも自衛隊機とジャンボ機が襲撃されたのを「空中衝突事故」と断じて竜隊長に抗議、今野は「へっ!TACの面目丸潰れだな!」と嘲笑混じりに北斗を詰り……………もう嫌過ぎ、このパターン………(呆)。

 結局状況的に北斗も雪夫の再度の虚言と断じ、「どうしてドリームギラスを攻撃しないの?」と尋ねる雪夫からAバッヂを没収し、友を裏切る奴は友じゃない、とだけ告げて半ば黙殺する態度に出た。元が気の強い方ではない雪夫はそれ以上何も言えず滂沱に暮れるだけだった。
 その雪夫の落ち込み振りを見ていられなかったダンは北斗のアパートを訪ね、雪夫は嘘を吐いていない、北斗の態度は少し厳し過ぎる、と抗議した。だが雪夫が嘘を吐いていたと考える北斗は雪夫の為にも厳しい態度は崩せない、とした。
 虚偽と信頼を巡って何とも救われない展開を辿った第35話だが、このストーリーに救いがあるとすれば梅津ダンの存在だったと言える。ダンは北斗の考えを理解した上で、それでも「少し厳し過ぎる。」として、北斗の代わりにしょげ返る雪夫を慰めると宣言した。この時、ダンは一貫して北斗を「兄ちゃん」と呼んでおり、双方の顔を潰さないように努めていた。「酔っ払い運転で死んだ父の子。」という事実に反する揶揄に苦しみ、周囲を信じず、何かにつけて突っ掛かってばかりいたダンが随分成長したものである。

 ダンが北斗の部屋を辞した直後、北斗は何かの気配を感じ、部屋のカーテンを開けて夜空を見上げた。するとそこには長兄・ゾフィーの姿が有り、ゾフィーは「弟よ。」と呼び掛け、北斗の疑念が間違いであり、その誤った疑念のために傷つけた少年の心を償わなければならない、と諭し、北斗はこれに頷いた。
 だが考えてみれば妙な展開だ。確かに北斗の疑念は誤りだった。だが状況的には雪夫を疑い、その疑念に即するなら厳しい態度に出ることは間違いとは言えない。というか、真実を知っているなら北斗が雪夫を傷つける前に伝えろよゾフィー!!
 自らの言葉が信じて貰えないことに苦しみ、傷つく少年の心と向かい合った重要な命題を持つ第35話だが、いきなり兄貴が出て来て「お前は過ちを犯した!」と詰り、それで真実を知るのも「何だかなぁ〜。」である。

 翌朝、学校もさぼった傷心の雪夫を探すダンだったが、TACパンサーで現れた北斗が彼を乗せ、心当たりの場所―湖に向かった。そこで見つかった雪夫は表情と言葉を失くしており、雪夫がこうなったのは「兄ちゃんのせいだ!」とダンが詰った(←せっかく、さっき褒めたのにお前まで「分からず屋」にならないでくれよぉ、ダン……)。
 そして空を見上げ、昨夜のゾフィーの言葉を思い出した北斗は「償い」の為に、「君の目の前でドリームギラスを倒す。」と告げ直して、竜隊長にTAC出動を要請した。竜隊長は即座にこれに応じ(←本当にこの人が隊長で良かった……)、北斗はTAC到着を待たずにフロッグメンスタイルで湖中に潜ると水中時限爆弾を仕掛けてその発破でドリームギラスを湖面に誘き出した。
 かくしてドリームギラスの実在と雪夫の証言の正しさが証明された。
 北斗は戦闘服スタイル(←すんげー着替えの早さ(笑))で単身ドリームギラスに応戦。程なくTACファルコン、TACスペース、TACアローも加勢に駆け付けた。

 だがTACの攻撃はドリームギラスに然したるダメージも与えられず、ドリームギラスの発する赤い放水を浴びせられて、TACアローの山中と、TACスペースの今野&吉村が「脱出!」のワンパタを辿った(苦笑)。そしてドリームギラスはダンと雪夫を襲わんとし、TACガンの弾が切れた北斗はウルトラマンAに変身して迎撃に出た。
 ドリームギラスはさほど体術に長けている風でもなかったが、撲っても蹴っても堪えない様子で人を小馬鹿にしたような笑い声を絶やさず、口からの放水攻撃もあってAはのっけから苦戦を強いられた。戦いは水中戦に展開するとAは益々苦戦。というのも、ナレーションによるとAはあらゆる戦いの中でも水中戦を最も苦手としていたからだった(←長年ウルトラシリーズを拝聴し、この第35話も3度以上見ていた筈だが、すっかり忘れていた)。
 この苦戦に、この回終始弟を見守っていたゾフィーはAを救うべく、ウルトラの秘密兵器・ウルトラマジックレイを上空から投下した。これは湖の水を瞬時に干上がらせるという超兵器で…………………湖の生態系ぶち壊し………何てことするんだゾフィー!!!
 行動の是非には大いに問題のあるゾフィーの加勢だが、ともあれAは「地の利」を得た形で形勢逆転に転じた。打たれ強いドリームギラスも空中からの体重の乗った飛び蹴りに怯んだところにメタリウム光線を食らって爆発・四散した。
 次の瞬間には湖も元の姿に戻るというもの凄い急展開を遂げていたが、湖棲の動植物は大丈夫だったのだろうか?変温動物辺りは間違いなく死んでいそうだが……。

 ともあれ、事件は落着し、雪夫は明るさを取り戻し、それを見守る北斗は過ちとそれを改めることの大切さ、信じあうことの大切さを噛み締め、命題は重かったが、展開は破天荒だった第35話(苦笑)は終結したのだった。


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平成三〇(2018)年七月一九日 最終更新