ウルトラマンA全話解説

第38話 復活!ウルトラの父

監督:山際永三
脚本:石堂淑朗
伝説怪人ナマハゲ、雪超獣スノーギラン登場
 街中がクリスマス一色の中、北斗はダンと共に香代子の買い物に(荷物持ちとして)付き合わされていた。購入量は膨大で、北斗もダンも両手いっぱい状態にも関わらず更なる荷物を重ねられていた。
 というのも、購入物は孤児院の子供達へのプレゼントで、院の先生・ユカリ(八代順子)は梅津姉弟の知人でもあった。幼くして父を失い、パン屋の運転手時代にも孤児院への配達に従事し、TAC入隊後の何かと子供達に優しい姿を見せていた北斗にとっても大切な行事なのだろう。ダン共々大量の荷物を嬉しそうに抱え、ユカリ先生の容姿に対しても男2人してほくそ笑んでは香代子のツッコミを受けていた(笑)。

 大量のプレゼントと共に北斗と梅津姉弟が訪れた養護施設では子供達がある人物から贈られた(発泡スチロール製の)雪だるまを相手に明るく興じていた(←ただの袋叩きにしか見えなかったが……)。
 早速院内ではクリスマスパーティーが開催され、香代子に感謝したユカリ先生は子供達に北斗達を紹介した。TAC隊員である北斗の紹介には拍手喝采となり、最前席にいた女児に至っては北斗に抱き着くほどだった。普段市民から酷評されていても人気あるんだな、TAC(苦笑)。
 一方、梅津ダンの紹介には、「誰コイツ?」と言いたい気な無言の反応が返ってきたが、ユカリ先生はダンが「ウルトラ6番目の弟」であることを紹介………第33話の解説でも触れたが、それじゃあ意味不明だって (苦笑)。だが、何故か次の瞬間拍手喝采となった。よく分からん展開だ。

 ともあれ、プレゼントあり―の、出し物ありーのクリスマスパーティーは和気藹々と進行し、裏方では香代子とユカリ先生が互いの子供達への想いを尊敬し合っていた。そんな心温まるシーンが展開される中、『ウルトラマンA』は疎か、ウルトラシリーズ史上屈指の大ボケシーンが直後に控えていた(笑)。
 子供達と共にスクラムを組む北斗は「ウルトラマンAの歌」を熱唱。勿論「遠ーくかーがやくよー空の星に♪ぼーく等のねーがいがとーどく時ー♪」で始まるフルコーラスである…………それゆえ、勿論あの歌詞が歌われた………「今だ!変身!北斗とみーなーみー♪」…………正体バラしとるやんけ!!!(爆笑)

 宝島社の『帰ってきた怪獣VOW』でツッコまれたことで有名なこのシーンだが、この間異変は迫っていた。深夜に現れるであろうサンタクロースに関して女児と話していたユカリ先生は屋外が夜になっても明るいことを訝しがり、窓を開けて雪だるまを見た次の瞬間、雪だるまは真っ二つに割れ、中から雪超獣スノーギラン(作中では「スノギラン」と呼称されていた)が現れ、怪光線でユカリ先生を失明状態に陥れたのだった!
 ちなみにこの間、北斗はというと、子供達に「よーし上手いぞ!次、2番行ってみよう!」と脳天気にはしゃいでいたのだが………(呆)。

 勿論、ユカリ先生がこのような目に遭ってまで北斗はボケ続けた訳ではなく、院生達と共に目から血を流すユカリ先生を介抱しながら状況を確認した訳だが、その間、空飛ぶサンタクロースを見たダンは1人屋外に飛び出した。
 すると屋根の上にはサンタクロース(玉川伊佐男)が立っていた。胡散臭いサンタクロースだったが、デストロンのサイタンクが化けたブラックサンタよりはマシかな?何せ奴は本物の人殺………………いかん、このネタはチョットやば過ぎ……………
 話を戻すと、屋根の上のサンタクロースはダンの眼前で「メリークリスマス!」と告げると、煙突(←今どき?!)から屋内に入って来た。
 院生達は突如現れたサンタクロースに歓声を上げ、プレゼントを求めて駆け寄っていたが、先生が大変な状態でプレゼントねだっている場合か??!!サンタクロースを「本物」と信じ込んでいたこの子達は余程純真なのか、余程お馬鹿なのか………???

 さすがにこの展開に北斗はサンタを怪しんだ。ユカリ先生に自分達以外に慰問を依頼した相手がいないことを確認するや、サンタを訊問。何者かと問われたサンタの答えは「見ての通りのサンタクロース」とあっては、北斗でなくても納得出来ないだろう。いみじくも北斗が言った様に一大事が起きた直後でもあったし。
 だが、サンタが怪しい人物でないことを痛い目を見ている真っ最中のユカリ先生が断言した。目が見えない分、はっきり感じるものがあるというのは些か強引な判断だが、被害の原因となった雪だるまをプレゼントした主とは明らかに声が違うとの言及が有っただけまだマシかも知れない(苦笑)。

 何とも腑に落ちない北斗だったが、そこへTAC本部の美川から都内B地区にユカリ先生同様に怪光線によって失明状態に陥る被害が続出しているとの連絡が入った(このとき美川の台詞の一部がカットされていた。口の動きからも、「●ク■」という単語が当時は放映されていたのだろう)。
 ともあれこの間も街中に巨大化して現れたスノーギランは怪光線を放ち続けており、本部では竜隊長が全員の出動を下知し、院では北斗が院生達に室内に籠るよう告げていた。そして件のサンタは嫌疑を掛けたことを謝罪する北斗にそれを気にしていないことと激励を返したのだった。

 北斗が院の外に飛び出すと、屋外は猛吹雪で、スノーギランは直接的な街の破壊に移り、TAC機内では隊員達が怪光線を遮蔽する特殊ゴーグルを着けて攻撃を開始していた。レーザー光線を照射されるスノーギランに対し、とあるビル陰から伝説怪人ナマハゲが声援(?)を送っていた。
 超獣を指揮するこの怪人は、名前の通りナマハゲそのままの姿で、こいつが何者なのかは最後まで詳らかにはならなかったが、スノーギランを暴れさせる動機は、「この国に太古から住まう八百万の神々を祀らずに、異国の神を崇めて「クリスマス」だの、「サンタクロース」等と言っている奴等を踏み潰すのじゃあ〜!!」というぶっ飛んだもの。秋田は男鹿半島から強烈なクレームが来そうな攘夷主義の怪人だった(苦笑)。隣県出身の保守論客・●部■一なら絶賛したかな?(苦笑)

 ともあれ、例によってTACの攻撃はこれといった成果を見せず、「あの超獣は雪だるまから生まれた。」という北斗の証言で竜隊長は変態編隊攻撃を指示したが、何故そう言う指示が生まれ、どんな狙いがあったのかはっきりしないまま、スノーギランが吹雪攻撃(両手と口から発していた)に移るや、TAC機は機体に大きな打撃を受けた様子も無かったのに次々に「脱出!」に追いやられた。まあ、悪天候の夜間にサングラスを着けていたのだから、戦いにくいことこの上なかったであろうとの同情の余地は存在するが。
 ともあれパラシュートで降下中に北斗はウルトラマンAに変身し、A対スノーギランの一騎打ちとなった。肉弾戦ではどちらが優勢とも言いかねたが、程なくスノーギランは怪光線をAの至近距離から照射するや忽ちAは劣勢に追いやられた。しかもスノーギランはAが苦し紛れに放ったメタリウム光線も通じない隠れた難敵だった!

 やがて吹雪攻撃と交戦攻撃を受けたAがダウンすると、スノーギランナマハゲの指示を受けて建造物を破壊し、怪光線を放って失明者を更に増やし、傍若無人に暴れ回った。
 地上では負傷した竜隊長を囲んでTACの面々がAのダウンに愕然としていた。事態を受けて竜隊長は自分に構わず市民の避難誘導を行うよう隊員達に指示した。
 山中が陣頭指揮を執って院に飛び込んだTACの面々は中にダンがいることに気付くと、何故避難しないかを詰問したが、失明状態のユカリ先生を置いていけないとして院生達は避難勧告に従わなかった(やっぱ、分からず屋が多いな、この作品……)。

 そうこうする内にスノーギランが院に迫り、何故かナマハゲも孤児院へのピンポイント攻撃を命じた。迫り来る事態に山中は自分達が囮になっている内に避難するよう促したが、飛び出そうとする彼等をサンタクロースが止め、「私に任せなさい。」と告げた。
勿論TAC隊員達にとっては「慰問にやって来たコスプレ爺さん」にしか見えないから、言葉こそは(年長者に対してか)丁寧ながら、「民間人は危ないから引っ込んでいろ。」という旨をやんわりと伝えた。
 そこへダンが前に回り込み、サンタクロースに対して彼が善人なのか悪人なのかを問うた。そんな質問をして「悪人だ。」と答える奴がいたら御目にかかりたいが(苦笑)、「君はどう思うかね?」と質問に質問で返すサンタも今なら嫌われるなあ(苦笑)。
 ともあれダンとサンタは眼と眼の会話で互いが通じた様で、サンタは満足そうに頷くと屋外に出た。

 1人屋外に残ったダンは、地面から上空に昇る稲妻と共にサンタクロースが巨大化したのを目撃。しかも振り返ったサンタの頭部には長大なウルトラホーンが有り、それをみたダンはウルトラの父の名を呟いた。
 それを聞いた今野は、サンタがウルトラの父であるというダンにウルトラの父が故人であることを告げ、美川に至ってはAが敗れたのを目の当たりにしたショックで幻覚を見た、と断じる不信振り。その脇で山中が屋外の巨大化したサンタを確認していた。
 姿が丸で違うからダンの言を真に受けた訳ではなかったが、信じる奴、信じない奴がいつもと逆だったな(苦笑)。ま、実際にウルトラの父が力尽きたのを目の当たりにしているから無理ない意見ではあるのだが。

 ともあれ、巨大サンタはスタンディングダウン状態のAを叱咤すると赤い光線でエネルギー注入を行ってAを戦線復帰させた。それを見たナマハゲは地団駄踏んで悔しがり……御前、本当に八百万の神々の使いか?(苦笑)
 そして勢いを取り戻したAは投げ技を多用することで肉弾戦を有利に展開。それは良いのだが、スノーギランは何故か特殊技能を一切使わず一方的に押しまくられた。再戦時によくある悪習慣だな(嘆息)
この展開に半狂乱になってスノーギランを激励するナマハゲにはサンタの装束を脱いで正体を表したウルトラの父がファザーショットを放って討ち果たし、Aも普段とは少しアクションが異なるメタリウム光線(「スーパーメタリウム光線」と呼ばれるものらしい)でスノーギランを打倒した。
 戦いを終えたAが父に御礼を述べたときには、ウルトラの父の姿は再度サンタクロースのそれに戻っていた。

 戦いが終わるとサンタクロースは等身大に戻って院の中に戻って来た。騒動の中で渡しそびれたクリスマスプレゼントを渡し直す為とのことで(笑)、院生達も再度プレゼントを求めて、ユカリ先生そっちのけで(苦笑)群がったが、プレゼント渡すから自分の元に来るように言われたダンだけがプレゼントよりもユカリ先生を気にかけている様子を見せた。さすがレギュラーメンバーだな(笑)。
 これに対して、サンタはなるほどと答えるも、自分には彼女の目を治せないとした。その理由が、「儂は魂だけの存在。」と云うものだったが、驚くダンの前で慌てて口つぐむアクションが物凄くわざとらしかった(苦笑)。

 展開の御ふざけは置いといて、ユカリ先生以外にも失明者が街中に溢れている事態に山中は不可思議な存在であるサンタに何とかならないかを懇願。困った表情を見せたサンタだったが、人々の失明を治すことが「TACへのプレゼントになるな。」、と呟いたサンタは屋外に飛び出し、再度院の屋根の上に立つと上空に向かって何かを召喚するポーズを取った。
 そこに腕を負傷した竜隊長を伴って北斗もやって来たのだが、上空には引っ張るトナカイもいない橇がやって来て、北斗を初めとするTACの面々は懐かしい再会を果たした。
 橇に乗っていたのは月(or冥王星)に帰っていた南夕子で、思わぬ再会に一同が喜びの声を上げる中、白ローブを纏った夕子がふた昔前の魔法少女の様なアクションで上空に手をかざすとそこから虹色の光線が周囲に照射され、忽ち人々の失明を完治させた。
 人々の歓声を受け、ウルトラの父は再度赤ロープを脱いで本来の姿になると橇を発進させ、夕子と共に去って行った。人々は感謝の声を送り、院生とTAC隊員達は「きよしこの夜」を唄って見送り、夕子とTACの面々は無言ながらも笑顔で手を振り合い、竜隊長はウルトラの父が常に自分達を見守っていてくれたのだと呟いた。

 かくして平和な聖夜が帰って来た。せっかくの夕子との再会に会話が無かったのは些か寂しくはあったが、夕子の再登場自体は間違いなく粋な計らいで、ウルトラの父復活と共にファンには朗報と言えただろう。そして個人的に最後に一言付け加えたい。

 再登場時の南夕子、めっちゃ綺麗!!

 と。
 美人・不美人の基準・価値観は人それぞれだし、南夕子を演じた星光子さんは卑しくも主役に抜擢された女優としてそれなりの容姿を前々から持っていた訳だが、再登場時の星さんはレギュラーを張っていた時よりも数段美しいようにシルバータイタンには感じられてならない。
 後年語られたところによると、星さんの降板は彼女の心に傷を残すものだったことが否めない。そして北斗星司・南夕子というキャラクターがそれまでのウルトラ作品の中にあって、目撃情報を(最初は)信用されない傾向が強かったこともあってか、レギュラー時の星さんにはどこか憂いの色というものが今見ても感じられる。
 ストーリー的に見れば懐かしい仲間の元に戻ったことが、背景的に見れば降板後の時間経過で吹っ切れた(と思われる)ことが星さんの表情から憂いを消し、表情を明るいものとし、レギュラー時よりも彼女の容貌を美しいものとしているように感じられるのである。
 勿論、シルバータイタンの私見・独り善がりと云われればそれまでだが、この第38話における南夕子と、『ウルトラマンタロウ』に客演したときの南夕子の美しさは必見だと今でも思っている。


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平成三〇(2018)年七月二三日 最終更新