ウルトラマンA全話解説
第40話 パンダを返して!
監督:鈴木俊継
脚本:田口成光
宇宙超人スチール星人登場
冒頭、ダンが友人達と独楽回しに興じていた。一斉に回して最後まで回転していた者が勝ち、というルールで、このパターンにしては珍しくダンが勝った。だが次の勝負の為にジャンケンをしたところ、10人弱でやったのが最初の一回で1人チョキを出した少年が負け、一同は一斉に嘲笑した。
何でこうもこの作品に出て来る餓鬼どもは敗者をえげつないまでに嘲笑するのか…………ヤプールが幅を利かせ、人間の負の感情を煽っていた時分なら分からないでもないが、鳴りを潜めた後も「大勢が1人を嘲笑」、「大勢が1人を槍玉」というパターンが多過ぎるから、『ウルトラマンA』って「陰」なんだよなぁ………。
ともあれ、次の勝負に移ろうしたところに、その場にダンの知人の少女・モトコ(中沢祥枝)が現れ、彼女が「パンダのおじさん」に会いに行くと聞いたダンは仲間との勝負をあっさり中断し、モトコに追随した。こいつが仲間内で頻繁に揉めるのも分かる気がする…………流石は北斗の弟分(苦笑)。
2人が向かった先はパンダ堂なる漢方薬店とも、中国物の雑貨屋ともつかぬ店で、店の中には大小様々なパンダのぬいぐるみで溢れ返っていた。
関西弁で話す店長(青空あきお)は細目・ちょび髭・オールバックの詐欺師面で、如何にも怪しげな男だったが、モトコとは顔見知りで、いつも漢方薬を買ってくれている御礼にミンミンと名付けた大きなパンダのぬいぐるみをプレゼントするという好々爺ぶりを見せていた(男友達との遊戯をぶっちしてモトコについて来ながら殆ど見向きしてもらえないダンは嫌っていたが)。
ダンとモトコが退店した直後、パンダ堂には黒マントの男(大村千吉)が現れた。彼は意味不明な言葉を口走った後、マントを大きく振るいながら体を回転させるや、店内にあったパンダグッズがすべて消え失せた。店長は半狂乱になって「パンダ泥棒!」と叫んでいたが、正確には「ぬいぐるみ泥棒」だな(苦笑)。
そしてその盗人は帰路にてダン・モトコ、そして2人と偶然出くわして会話していた北斗の横を超高速で走り去っていった。後を追ってきた店長から盗人であると知らされた北斗はTACパンサーでこれを追ったが、時速60�劼把匹辰討い襪砲發�かわらずその差は容易に縮まらず、北斗は盗人が人間ではない、と判断した。
結局盗人は足の速さのみならず、驚異的な身軽さも駆使して倉庫の中に身を隠し、巧みにトンズラしてしまったのだった。倉庫の近くには耳の遠い老清掃員がいたが、意思疎通も困難で、手掛かりとなる証言を得ることは出来なかった。
場面は替わってTAC基地本部。そこには各地から北斗が遭遇したのと同様の盗難情報が寄せられていた。黒マントの人物によるパンダグッズの大量盗難であることが共通していた。
ちょうどTACの時間に余裕があったこともあり、警察への協力もありかと話されていたところに北斗が出勤して来て、パンダ泥棒に逃げられた旨と、パンダ泥棒が人間業とは思えない運動能力を発揮したことを告げたが、例によって山中に「初夢の続き」と揶揄(というよりは軽いからかいを)されていた。
毎週超獣が現れ、人類を遥かに凌駕する宇宙人が何十種類も登場した世界にも関わらず口にされる、もういい加減にして欲しい「不信のワンパターン」だが、確かに侵略者や破壊者が多い中、窃盗、しかもパンダグッズ限定を重ねる宇宙人というのは従来と比較してかなり変わったケースではあった。
北斗の、黒マントが人間離れした身体能力を発揮したという証言に対し、吉村がその正体を宇宙人では?と推測すれば、普段は北斗を信用する傾向にある美川が「宇宙人による窃盗」を可笑しそうにしていた。信用云々というより、「宇宙人による加害」として「窃盗」がそれほど意外だったのだろう。
その頃、いつも北斗が受ける受難をダンが受けていた。
モトコは北斗が借り受けたパンダを返しに来るのを夜半までダンと待っていて、そんなモトコを見かねたダンは自分がパンダを取り戻すことを宣言(←勿論根拠なし)。夜も眠れぬほど悩むダンは夜中にアパート近くで果実を食むパンダを目撃し、慌てて香代子を起こしたが、やっとこさ香代子が起きたときには当然の様にパンダは姿を消していた(苦笑)。
勿論目撃証言は寝起きで不機嫌な香代子に信用されず、翌朝話した北斗にまで鼻で笑われた。北斗よ、普段自分と同じ苦難に遭っている人間に同情する心が貴様にはないのか??!!
もっとも、ダンとて単純に見たということを主張するだけの馬鹿ではない。パンダが齧ったリンゴを物証に差し出し、本場中国に出向いてパンダを見るほどのパンダマニアであるパンダ堂の店長ならそれだけでパンダによるものかどうかが判別出来る、と主張し、北斗もパンダ堂に向かった。
しかし、うちの道場主(←動物好き)はかなりの熊マニアで、日本史上最悪の熊害事件現場や各種資料館を訪れた程だが、歯形だけで動物を判別する自信は無いな(苦笑)。
ともあれ、店長は妙な唸り声を上げながらリンゴの芯を丹念に調べた結果、パンダが齧った物であることを断言した。だが、『ウルトラマンA』独特の不信傾向は尚も連発した(嘆息)。
北斗は北斗で意見を求めながら、店長に対して「酔っ払っているんじゃないでしょうね?」と露骨な不信を露呈。店長が断固として自分の見解に対する絶対の自信を主張すると北斗は(一応は)これを信用してTAC基地に連絡を入れた。
その連絡に山中が出た瞬間に「ダメだこりゃ。」と言いたくなったが、北斗の第一声が「上野動物園のパンダが逃げたという知らせは入っていませんか?」だったのにはもっと「ダメだこりゃ。」と言いたくなった(大嘆息)。
当然の様に山中は北斗を怒鳴り付けた。「お前まだ……」の直後3秒ほど空いてから「じゃないだろうな!?」となっていたから、余程酷い用語を浴びせたと思われる。尚も食い下がったのは良いのだが、「日本にもう1頭パンダがいるみたいなんです。」という突拍子無さ過ぎる報告には山中が通信をガチャ切りする有様だった。コミュニケーション能力ないのか、コイツ等…………(呆)。
通信が途切れたところにモトコが来店して、昨日のパンダのぬいぐるみを返してと言ってきた。言われるまですっかり忘れていたのだからダンも北斗もひどい奴である。言われた北斗はダンとモトコをTACパンサーに乗せ、黒マントの男(←相変わらず窃盗に勤しんでいた)に再度遭遇。モトコに彼女のぬいぐるみを取り戻す、と宣言する北斗だったが、黒マントの男はモトコのパンダを盗っておらず、TACパンサーの車内からモトコのぬいぐるみがなくなったのは北斗の過失でしかない。シナリオの不備とは思うが、ひどい話である。
ともあれ、黒マントを追ってやって来たのはまたも昨日と同じ倉庫。そこには例の耳の遠い牢番人がいたのだが、北斗は彼が「ごめん下さい。」の声掛けで出て来たことから実際には耳が聞こえると確信。尚も惚ける老人にTACガンを威嚇射撃したことで実際には聞こえていることがダンにもモトコにも明らかになった。
Bパートに入ると話は急展開した。
北斗と老人が対峙する間、パンダを目撃したダンとモトコはこれを尾行し、倉庫内に盗まれたパンダグッズが大量にあるのを確認し、その旨を北斗に知らせた。これを受けて誰の目にも老人がパンダグッズ窃盗犯であることが明白となり、老人は宇宙超人スチール星人の正体を現し、窃盗の目的が、地球人が夢中になるパンダを母星にもたらす為の密猟であることを告げ、巨大化して北斗に襲い掛かった。
この第40話が放映当時のパンダブームに便乗した物であることは明白且つ有名である。ただ時代の話題を反映することが悪いとは言わないが、この第40話の背景・構成はシルバータイタンの中でかなり酷評に値する。
いくらパンダブーム(おもちゃ屋の店頭にパンダグッズが満載されたのは当時の史実で、上野動物園ではパンダの前で30秒以上の立ち止まりが禁止されたほどだった)でも、本物のパンダ以外のパンダグッズを大量に盗む必然性は全く理解出来ないし、(多くの書籍やサイトでも指摘されているが)パンダの密猟が目的なら中国に行くべきである。パンダの造形もちゃちかったしな。
且つ、宇宙人の名前が「盗む」を英語で「steal」ということに由来にしてスチール星人という安直さ…………いくら子供番組でもこの構成は子供を舐め過ぎだろ、制作陣…………。窃盗目的の星人が、正体がバレた後に街中で破壊活動を行った必然性も全く不可解だし………。試行錯誤が裏目に出たり、ヤプールの陰惨さが暗い影を落としたりした『ウルトラマンA』だが、この第40話は頂けないことだらけだった。
スチール星人の巨大化に伴って生じた瓦礫に巻き込まれた北斗はダンとモトコに避難を促し、撤収したダンはTACパンサーの無線機を使ってTACに救援を要請。北斗が宇宙人に襲われているという内容に応答したのが美川ということもあって(笑)、即座にTACファルコンが現地に飛んだ。ついさっきこの40話を酷評したが、この展開に関してはなかなか良いじゃないか(笑)。
このTACによるスチール星人攻撃に救われる形で瓦礫から脱出した北斗は、TACガンで応戦したが、スチール星人がパンダ(及びこれを守らんとしたダン、モトコ、パンダ堂店長)に魔手を伸ばすに及ぶとウルトラマンAに変身した。
Aはダン達を掌中に収めて安全地帯にて解放するとスチール星人に応戦した。人間体時には驚異的な身体能力の冴えを見せたスチール星人だったが、元々は破壊よりも窃盗に精を出すタイプだったためか、肉弾戦はA優勢に進んだ。
だが何かこの戦いは展開が不可解だった。
スチール星人は街中を破壊する際には頭上の丸鋸型の突起物から破壊光線や火炎を発していたのだが、対A戦では終盤まで使わず、中盤に肉弾戦で優位に立った際も何の脈絡もなかった。
終盤でも脈絡が無いまま特殊能力攻撃を躱し切ったAがハンディシュートとメタリウム光線の二段攻撃で戦いに勝利したのだった。窃盗目的の星人ゆえに、善戦しなくても文句はないが、戦闘展開の推移に脈絡が無さ過ぎたのもこの第40話の首を傾げざるを得ない一面だった。
戦いが終わり、スチール星人によって盗まれたパンダ達の事後処理が為された。膨大な数のパンダは倉庫の中に収められていたことが判明していたので、モトコのぬいぐるみは美川によって手渡され、パンダ堂のグッズも倉庫内にあることが告げられた。
そして唯一本物だったパンダは、スチール星人が中国にて盗んだものだったことが分かり、中国に返還されることが決定……………ということは、スチール星人は本場中国にて本物を入手済み、わざわざ日本に来てまでグッズを膨大に盗む必然性は益々不可解………そもそも日中の国交が回復したばかりで、日中平和友好条約が締結される直前の大切な時期に只の警備員に送還を任せていいのか?!
まあ子供番組にそこまで国際情勢を持ち込ませても仕方ないかも知れないが、「不可解」と云う意味での酷評的ツッコミを連発させざるを得なかった第40話はかようにして終結したのだった(嘆息)。
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平成三〇(2018)年七月二三日 最終更新