ウルトラマンA全話解説

第41話 冬の怪奇シリーズ!獅子太鼓

監督:鈴木俊継
脚本:石堂淑朗
邪心超獣カイマンダ、獅子超獣シシゴラン登場
 正月を終え、この回から3回に渡って「冬の怪奇シリーズ」が展開された。後に『ウルトラマンタロウ』や『ウルトラマンレオ』でも季節や梃入れで行われたシリーズ化の走りと言えよう。
 冒頭、とある神社を舞台に子供達が「だるまさんが転んだ」に興じていたのだが、勿論その中にはダンがいた。じゃんけんで鬼役を逃れたダンは新太(神田一郎)という少年と共に御堂の中に隠れたのだが、そこには新太の父(堺左千夫)が一心不乱に祈りを捧げていた。
 父親は新太とダンをお祈りの邪魔だとばかりに御堂から追い出すと「カイマ様」と呼ぶ像(←贔屓目に見ても邪神像にしか見えないデザイン)に対してより一層熱心な祈りを捧げていたが、その内容は断片的でも呪いと分かるものだった。

 御堂を追い出されたダンと新太との説明っぽい会話から(笑)、新太の父が拾った神像を信仰していること、新太の父が獅子舞の名手だったのが正月にチンピラに絡まれて足を怪我したこと等が判明。父は新太の前では獅子舞なんて懲り懲り、と言いつつも獅子舞を馬鹿にする者達への呪詛を念じていたのだった。

 そんな会話から派生してダン達はかくれんぼから獅子舞を超獣に見立てた超獣ごっこに転じ、そこに北斗と美川がやって来た。
 2人が来たのは超獣反応の調査で、TAC基地本部の計器がBS地区に微弱ながら超獣反応を察知したことによるものだった。現場にはこれと言った異常は見られなかったのだが、計測に携わったと思われる吉村は計器を相当信用しているらしく、北斗と美川に詳細な調査を要請。これを見た子供達も遊びに飽きていたらしく、興味本位で超獣調査への協力を申し出ていたが、毎週毎週街中に現れてはその都度何棟ものビルが破壊される世界で超獣に対する危機感の無さは呆れるしかなかった。成程、毎週の様に北斗が不可思議な現象に遭遇してもその証言がなかなか信用されないのも無理はない(苦笑)。

 ともあれ、新太は超獣調査に邪魔な獅子舞を倉庫にしまおうとしたのだが、倉庫に着いた新太は獅子舞の被り物が取れず、その内苦痛にのたうち回り出した。新太に頼まれて連れの少年が父親を呼んで来たが、獅子舞は取れず、それどころかその眼が赤く光るや父子は催眠状態に陥り、父親が太鼓をたたき出すや、獅子舞を纏った新太はそのまま巨大化・超獣化し、獅子超獣シシゴランとなった。

 シシゴランのやっていることは太鼓に合わせてリズミカルに練り歩くだけで、顔は獅子舞そのものだからおよそ怖さを感じさせない容姿なのだが、如何せん身長57mの超獣体で、足元にある製材所や木造家屋などがその歩みに伴って破壊された。
 吉村の計測では50万馬力あるらしく、竜隊長は現場の北斗と美川に超獣迎撃よりも付近住民の避難誘導を優先するよう命じたほどだった。だが、新太父子の異変を見たケンちゃんの証言から子供達はシシゴランの正体が新太であることを知っており、ダン以下少年達は新太を見捨てて逃げることを良しとしなかった。
 北斗は新太を助けることを約してダン以外の少年を美川に従って避難するよう促し、ダンには同行を命じた(恐らく下手に避難させても従わず、勝手な行動を取りかねないと見たこともあったのだろう)。

 Bパートに入ると、新太の父の怨みが増大したのか、シシゴランも目から発火性の怪光線を放って街への破壊を強めた。勿論そんなシシゴランを放置する訳にはいかず、即座に迎撃したいところだが、シシゴランの正体を知るダンが反撃を止めて来た。そんな進むも退くもなり難い中、北斗はシシゴランが太鼓の音で動いているのを聞き付け、音のする方に単身向かって行った。
 そこにようやく竜隊長、山中、今野、吉村達がTAC機で到着したのだが、そのまま攻撃しては北斗が巻き添えを食うのを懸念したダンに請われた美川の要請で空中攻撃が中止され、竜隊長は他の隊員達にも着陸しての捜査を命じた。途中山中が北斗の為にシシゴランを攻撃出来ないことを愚痴ったものの、美川の要請はすんなり通ったのだから、日頃の信用は大切である(苦笑)。

 かくして新太の父を追った北斗だったが、マインドコントロール下に置かれた父はTACガンを突き付けられても高笑いするだけで、神像を祀っていた御堂からはその神像が巨大化して邪神超獣カイマンダとなって光背に炎を伴わせ、自身も口から炎を吐いてシシゴランの乱暴狼藉に加担した。
 両超獣は街を破壊しつつも北斗1人への集中攻撃に励んだため、北斗も半ば急き立てられた様にAに変身した。かくして久々に1対2のハンディキャップマッチに立たされたAは挟撃攻撃には苦戦したものの、一騎打ちでは明らかにシシゴランにもカイマンダにも勝っていた。
 特にカイマンダは早々に光背の炎を久々の消火フォッグで消されるや全く肉弾戦に精彩がなく、シシゴランの加勢を受けて尚優位に立てず、グリップビームを受けてあっさり絶命した。

 だが問題はシシゴランの方だった。その正体が新太であることを知るAは攻撃が出来ず、肉弾攻撃はかわせば済んだが、防戦一方で勝てる勝負は存在せず、次第にシシゴランは怪光線、火炎放射を駆使し出し、徐々にAは追い詰められた。
 そんな中、勝負の鍵を握ったのはTACの面々だった、意外にも(笑)。
 竜隊長を初め、北斗・美川を除く隊員達は新太の父が太鼓を打ち鳴らしてシシゴランを督戦しているのを発見。竜隊長は状況から新太の父が催眠術下にあるのを察知すると逸る山中を制して、TACガンで和太鼓を粉砕し、父の動きを止めた。
 そしてこの間、一方的な攻撃に曝されていたかに見えたAだったが、新太がシシゴランの腹部にいると見るや、メタリウム光線を顔面に浴びせて勝利し、地面に倒れ伏したシシゴランが白い光となってその姿を消したと思われるや、現場には気を失った新太が1人残されていた。

 かくして新太父子は正気を取り戻した。父子はTACに迷惑をかけた御詫びと、助けてもらった御礼を兼ねてTAC基地本部で獅子舞を奉納して、TAC一年間の無事を祈念して和気藹々とした雰囲気で終わったムードは良かったのだが、カイマンダ並びにシシゴランの目的・動機は全く不明のままで、消化不良が否めなかった。
 当初は獅子舞を馬鹿にされ、怪我までされた怨みを漂わせ、最後は正気を取り戻してTACへの恩義と獅子舞への誇りを語るという正反対なキャラを演じた堺氏の見事な演技をもっと活かして欲しかったものである。


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平成三〇(2018)年七月二三日 最終更新