ウルトラマンA全話解説

第42話 冬の怪奇シリーズ!怪獣ウーの復活

監督:上野英隆
脚本:田口成光
氷超獣アイスロン、伝説怪獣ウー登場
 前話に続く「冬の怪奇シリーズ」の第2弾で、シリーズの三部作中盤に相応しく、冬山が舞台である。その中を狩人の良平(北川陽一郎)とその娘・小雪(雨宮由美)が祖父を訪ねるべく山越えの道中にあった。
 すると山中に妙な唸り声が響いたかと思うと氷超獣アイスロンが出現。アイスロンは一直線に良平と小雪に向かってきたので、良平は自分が超獣を引き付けるとして、娘には逆方向に逃げる様に諭し、猟銃を手にアイスロンに向かった。
 アイスロンを倒す為、或いはアイスロンの注意を自分に引き付ける為、猟銃を連射する良平だったが、最新鋭の銃火器を物ともしない超獣相手に兎狩り用の猟銃が通じる筈もなく、哀れアイスロンに追い詰められるや断崖を滑落した上に雪崩に呑み込まれてしまったのだった。
 一方、父の身を案じながら逆方向を走り続けていた小雪も力尽きて道中に突っ伏し、雪崩を見ていた村人達は「飯田峠の神様の祟り」と見て、アイスロンを怒れる神と誤認して逃げ惑うのだった。いつもながら思うが、怪獣・超獣が毎週登場する世界で、異形の存在を神様と誤解するかね?神様の方こそ見たことないだろうに………(嘆息)

 場面は替わってスキー場、妙高高原ホテル。妙高ということは道場主の亡父の故郷・新潟県にある妙高市が舞台か……。まあそれは関係ないが(苦笑)、そこに北斗と梅津姉弟がスキー旅行に来ていた。
 夜間でもスキーが出来る中、遊び疲れた北斗達が身を休めていると1人の老人(小栗一也)が話しかけて来た。何でもダンと同い年の孫娘がいて、今日初めて会うと云う。うん、この老人が小雪の祖父であることが露骨なまでに暗喩されているな(笑)
 だが、「今日中には着く。」という筈の孫娘はもう夜だというのに到着していない。そしてそこに最前アイスロンを山の神と誤認して逃げ惑っていた村人達が引き返して来た。ただ、アイスロン出現時よりは少しは冷静さを取り戻していたようで、村人の1人は自分が見た物を超獣では?との疑問を呈したので、TAC隊員として聞き捨てに出来ない北斗が彼等に話しかけ、夜中にもかかわらず調査に出動しようとした。
 するとそこに小雪の祖父が待ったをかけた。雪崩がいつ起きてもおかしくない夜の山に踏み込むのは危険だとしたのである(正論である)。これに対して北斗は失礼にも「超獣には慣れている。」として出掛けんとしたが、祖父は尚も、「(北斗が)超獣には慣れとるかもしれんが、この辺りのことは儂が一番よく知っておる。」として、翌朝自分が案内するから、とまで言って北斗を止めた。さすがにここまで言われては北斗も年長者の助言に従わない訳にはいかなかった(くどいが、祖父の言っていることは思い切り正論である)。

 翌朝、雪山を捜索する北斗と祖父は雪中に倒れ伏す小雪を発見した(雪山の中で一晩倒れていて凍死しなかったのは奇跡に近かった)。助け出された小雪がうわごとで父の名を呟いたため、北斗はまだ山中にいるであろう父親を探さんとしたが、祖父は1人で捜索を続けるのは無謀で、北斗が自身の命を危険に曝すより、少女を連れ帰って介抱するのを優先するよう勧めた。
 ロッジに運ばれた小雪はやがて意識を取り戻し、その名を聞いた祖父は彼女が自分の孫娘であることを初めて知り、同時に息子である良平が小雪を庇って山中で超獣に立ち向かっていったことも知った。
 これを聞いて北斗は良平を救出する為、今一度山中に入りたいから案内してくれるよう祖父に要請したが、祖父はただでさえ「雪崩の巣」と呼ばれる峠に足を踏み入れるのは危険な上、超獣が出るとなっては誰も山中に入ってはいけない、との姿勢を示した。
 これを受け、北斗はTACに超獣出現を通報したのだった。

 通報を受け、TACファルコン(竜隊長&吉村&美川搭乗)とTACスペース(山中&今野搭乗)が駆け付けた。飯田峠を一頻りパトロールしたTAC隊員達は妙高高原ホテルで北斗と合流したのだが…………………この直後のTAC隊員の心無さは、『ウルトラマンA』における「証言が信用されない」パターンを考慮に入れても「酷過ぎる!」と思わずにはいられなかった!!(怒)

 峠を一回りして超獣を確認できなかったTACの面々は、露骨に超獣出現を疑った。そして北斗自身が超獣を見ておらず、超獣を見たとするのが小雪とその父と、村人達と知ると、まず今野が小雪の幼さ(と言ってもダンと同い年なのだが……)から証言を当てにならないとした(怒)、次いで山中が、自分達が見た大雪崩の痕跡から峠に残ったであろう父親の生存が絶望的であることを小雪の目前であっけらかんと述べ(怒々)、良平が小雪を守らんとして猟銃を撃ちながら超獣に立ち向かったと小雪に聞いた今野は、猟銃なんかをぶっ放すから雪崩が起きたんだ、と丸で小雪の父が災害の元凶であるかのようにほざいた(怒々々)!!!!
 こいつ等本当に正義のチームか?!仮にすべてがTAC隊員達の想像通りだったとしても、娘を庇わんとして命懸けの行為に出た父親と、その父親の安否を案じる娘を前にしてこの心無さはあんまりである!!!胸糞悪過ぎるぞ、出て来い制作者!!!!(怒髪天)

 ハァハァハァ…………むうう、余りの心無い台詞のオンパレードについ興奮してしまった。ともあれ、例によって不信台詞は山中と今野の役回りで、吉村は北斗自身が超獣を見た訳ではないことだけ確認し、美川は沈黙を守り、竜隊長は村人達の証言を確認するとして、北斗には小雪を休息させるよう命じた。
 だが、このような展開受け、ひたすら父の身を案じて滂沱に暮れる小雪を見ては祖父も北斗もじっとはしていられなかった。祖父は小雪とともに、それを追って北斗も、良平を求めて山中に立ち入った。

 程なく、TACの面々は3人が山中に立ち入ったことを察知。北斗の独断専行を怒る山中だったが、「オメー等が余りにも小雪を信用しないから、北斗が動かざるを得んだけや!」の一言である。ともあれ、竜隊長は山中&今野にTACスペースで後を追うよう命じ、自身は吉村&美川と共に雪上車で後追うこととした。
 その頃、山中では祖父と小雪が必死に良平の名を叫びながら彷徨っていたが、その声は不幸にも良平ではなくアイスロンを召喚するものでしかなかった。そして2人の不幸は続き、眼前には雪中に倒れ伏した良平の姿が有った。
 更にそこへアイスロンが吹雪を噴きながら襲い掛かって来た。すると次の瞬間、死んでいると思われていた良平がむっくり起き上がったかと思うと、その身を伝説怪獣ウーに変じて2人を守るべくアイスロンに立ち向かった。

 余りに生前と異なる姿だが、小雪にはウーが父親と分かったようで、父の名を口にして静かにこれを激励し、直後に追いついた北斗もウーへの応援を口にした。かつて『ウルトラマン』で怪獣退治に対する大きな疑問を投げ掛けた存在であるウーを北斗は知っていた訳だが、TAC隊員として知っていたのだろうか?それともウルトラ兄弟として知っていたのだろうか?
 だが北斗と小雪の応援も空しく、ウーは劣勢に立たされた。第8話のドラゴリーVSムルチの如く、超獣と怪獣では強さの格が違うためか、元々好戦的ではない上に設定体重0のウーが肉弾戦に向いていないためか、ウーアイスロンの強烈なドロップキックを食らって谷間に蹴落とされると行動不能に陥った。

 ウー=父の身を案じて飛び出さんとした小雪だが、さすがにそれは北斗が止めた。そしてそこへTAC隊員達が駆け付け、アイスロンを迎撃する間隙を縫って北斗はAに変身すると雪中に倒れ伏した小雪と祖父を安全地帯に運んだ。
 そこには竜隊長達が駆け付けていて、竜隊長は美川に2人を守るよう命じると、既にTACスペースから攻撃を開始していた山中&今野に続いて、吉村と共にAに加勢し、いつもの超獣退治が展開された。
 かくして戦いが始まったのだが、アイスロンは明らかに弱い超獣だった。小雪と祖父を介抱するAに背後から襲い掛かるも、Aは振り向きざまの逆水平チョップでカウンター攻撃を炸裂させると終始勝負を優勢に運んだ。アイスロンの特技である冷凍ガスさえ、一瞬の目暗ましになったに過ぎず、ほぼ一方的にAが攻め続け、いつものメタリウム光線で勝負を決めた。
 一時、山肌にぶつかったAが雪崩を浴びた瞬間だけ優勢になりかけたが、次の瞬間TACスペースがアイスロンに機銃掃射を浴びせ、Aが体勢を取り戻すまでの時間を稼いだ。TACの在り様が酷過ぎた第42話だったが、ここだけはいい仕事をしていたな(苦笑)。
 かくして勝利したAはブルーレーザー光線を山頂に命中させて雪崩を起こし、辛うじて虫の息だったアイスロンを雪中への生き埋めとしたのだった。

 数々の災厄の元凶となったアイスロンを倒し、ようやく笑顔の戻った一同だったが、そんな中、虫の息だったウーが立ち上がった。青息吐息のウーに父の名を叫ぶ小雪だったが、ウーは小雪に顔を向けただけで無言のまま雪煙の中に去って行った。
 父との再度の別れに悄然とする小雪を元気づける様に祖父は良平が自分達を助けてくれたことを告げるのだった。そしてこれを見ていたTACの面々は小雪達の様な悲しい想いをする人々を出さない為にも、一日も早い超獣殲滅を誓うのは良かったのだが、ウーのことを知るのなら無意味な殺戮はしないようにな(苦笑)。


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平成三〇(2018)年七月二三日 最終更新